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帯をギュっとね!連載中 二本目
1 :マロン名無しさん :2008/09/24(水) 22:09:12 ID:???
週刊少年サンデー平成元年1・2号にて「帯をギュッとね!」という漫画が掲載された。
この漫画について語ろうじゃないか。
尚、この漫画は作者が裏技を使うことで1日に1話ずつの速度で連載されるようだ。
時々反則を取られたりして変な時期に合併号になる事もあるが気にしないでくれ。

初めての人は連載中スレの楽屋裏にて詳しいルールなどを確認してから書き込んで下さい。
ちなみに今日は週刊少年サンデー平成3年18号の発売日だ。


連載中スレの楽屋裏 第26幕
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1209028846/
連載中スレまとめWiki(皆で作るまとめサイト)
http://rensai.qp.land.to/
連載中スレについて
http://rensai.qp.land.to/t/about

2 :1/3 :2008/09/24(水) 22:10:45 ID:???
第105話 熱戦つづく

個人戦のトーナメントを順調に勝ち進んでいく浜高勢。
暁泉学園・永田、三方ヶ原工高・関谷、赤石林業・酒井、佐鳴高・石塚。
彼らも負けじと勝ち残り、激戦階級、軽中量級ベスト8が出揃った。

「フン、いくら激戦区つってもなあ…軽中量級は石塚さん本命でキマリなんだよ。
 こっつの中量級の方がよっぽどハードだぜ。藤田がいるからな」
呟くのは髪を伸ばした佐鳴の袴田豊。袴田さんの弟である。
彼もまたここまで勝ち残った一人なのだ。
「優勝だって狙ってみれば?」と姉に言われるものの、いまひとつ気勢は上がらない。
彼は藤田を10年に一人とか、そういう天才と認識していた。
「でも、その藤田に浜高の巧クンは勝てたのよ」
「うーん、そうなんだよ。体もひと回り小さいのに。
 なんで粉川が藤田に勝てたのか…そっちの方が不思議なんだよね」
一時は巧をライバルのように思っていた豊。彼の心中は複雑である。

その彼の目を後ろからふさぐ誰かの手。
「だーれだ?」「へっ!?」
瞬間的に彼の脳裏に浮かぶのは一人の少女の名前。
(まっまさか海老塚サンではっ!?
 アハ、そんな急にアハハ…まさかこんな大胆なアハハハーッ…)
「え、海老塚サンかい!?いやあひさしぶり…」
顔を赤らめ喜び勇んで振り向いた豊の目にしたのは、一面識も無い猫目の少女。
「あなた誰?」
ひさしぶりの登場、杉の妹、杉薫その人だった。
「そっちが人違いしてんだろっ!!おまえこそ誰だよ!いきなり「誰だ?」なんて
 期待させといてナイーブな男心を…」
「あんた何いってんのよ…」
激昂する豊に呆れる袴田さんだった。

3 :2/3 :2008/09/24(水) 22:12:01 ID:???
軽重量級決勝戦では、暁泉の堀内平八郎が三工の武戸を降し、初優勝を決めていた。
「やったっ!平八郎!」
「暁泉柔道部2年目にして初のチャンピオンだ!」
平八郎の勝利を喜ぶ永田と佐野。その様子を保奈美は離れた場所から見つめていた。
(よかった…平八郎クン前よりずっと楽しそう…)

続いて重量級の個人戦開始。
ミッタンは保奈美に巧の試合も始まることを伝え、自分も改めて気合を入れる。
その後ろを――小さな影がててててと走り抜けていった。

軽中量級、準決勝戦。巧VS酒井。
盛り上げ役の桜子は「ちょっとここらで例のヤツでもやりましょうか?」と笑みを浮かべる。
そこに戻ってきた保奈美。その目の前で――。

「巧クーン!負けないで――ッ!」

桜子、麻理、龍子先生による「負けないでコール」。
「いーかげんにしとけよてめええ!」
「怒った!怒った!」
一年も前のネタを出されて憤る巧と、はやし立てる桜子。
「保奈美の負けないでコールじゃないからノらないかもしれないけどガマンしてねっ」
「海老塚サン海老塚サン」
調子に乗る桜子。その背後には妖気をほとばしらせる般若がたたずんでいた。

4 :3/3 :2008/09/24(水) 22:13:09 ID:???
「始めっ!」
「うおら――っ!」
号令と同時に吠える酒井。その大声に対して動じる様子も無い巧は、

「よし来いおらあっ!」

逆に胆力の籠もったその一声で酒井をたじろがせる。
準々決勝ということで両者とも気合が入っている、
そう周囲の目には見えたが、実際はそんな生易しいやり取りではない。

激しい組手争いからまず仕掛けたのは巧。
「せやっ!」「ちっ!!」
巧の背負いに酒井は即座に反応し、これを止める。

ところが――その瞬間、巧の体が逆回転。
「何っ!」
「てやあっ!」
酒井のお株を奪う左の変型背負い。
たまらず酒井は畳に倒れる。
巧は開始早々「技あり」を奪取した。

左変化の背負い投げは元々酒井の得意技だったが、巧のそれはオリジナルよりなお速い。
歯噛みをする酒井であった。

(むむう、くそ――正直いってムチャクチャ強くなりやがったなあ、コイツ…)

5 :マロン名無しさん :2008/09/24(水) 22:14:19 ID:???
前スレ
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1210339910/

6 :1/3 :2008/09/25(木) 21:16:00 ID:???
第106話 ベスト4進出

(腕力が昔と全然違う。組んだ瞬間にわかった…くそっ、どうやって攻める…?)
巧との実力差を悟ってしまった酒井は、まともに組み合うこともできず後ずさる。
(なんでこんなに近よりがたい…?なんでこんなにヤツが怖く思える?)
プレッシャーに汗を浮かべる酒井。
まともに組めないと判断した彼は、組み際の一瞬を狙って一本背負いを仕掛ける。
「ちっ!」
しかし即座に反応した巧。腰を落として背負いを防ぎ、返す刀で小外刈り一閃。
「技ありーっ!合わせて一本!それまで!」

準々決勝まできてなお一方的な勝ち方を見せた巧に、いよいよ優勝の言葉がささやかれる。
観戦していた石塚、斉藤も平静ではいられない。
そしてもう一人、暁泉の永田は次に勝てば準決勝で巧と当たる。勝算を尋ねられた彼は、
「あらやだ?ひょっとしてあんたたちあたしが粉川にビビってると思ってんの?」
心・配・御・無・用!と平八郎をつっつく。
「敵も結構レベルアップしてるみたいだけどね。こっちにも秘密兵器があるんだから」

「すごいなあ巧先輩!」「余裕だよ。このヒトは!」「憎ったらしいったらありゃしない!」
戻ってきた巧を出迎える女子部員たち。
「これでベスト4ですね!」「県大会にいけるってワケだ」「巧サンかっこよかったあ」
その中にいつの間にやら混じっていたセーラー服に猫目の少女。
「も――相手の人全然問題になんないってカンジで!やっぱり巧サンって最高!」
「…………」少女に向けられる冷ややかな視線。
「今日は絶対優勝間違いないですよね――っ!」「あ――もしもし?」
彼女の目に入ったのは麻理の姿。
「あなた誰?」
「薫ちゃん、あんたねー…唐突に現れてそのでかい態度はなんだ?」
傍若無人きわまる薫に呆れるしかない桜子であった。

7 :2/3 :2008/09/25(木) 21:17:19 ID:???
試合場では石塚が順当に勝利し準決勝進出。次は斉藤の試合である。
巧、石塚に続くことができるかどうか。
「おまえとやった酒井ぐらいの難度の相手かな?」

「白、浜名湖高校 斉藤君!」
「赤――三方ヶ原工業高 関谷君!」

去年の選手権でも戦ったことのある二人。そのときには引き分けだったが――。
(斉藤と粉川だけには今日どうしても負けられない。負けられない理由があるんだ!)
張り詰めた表情の関谷は、気合と共に斉藤と正面から組み合う。

応援席では麻理と薫が何やらおかしな様子になっていた。
麻理に「かわいい」と評された薫は彼女に身長を尋ねる。
「149センチですよ」
「私は155センチよ。そーいうあなたが私に『かわいい』なんて形容詞つかうのは
 ちょっと違うって気がするんだけど」
「でも私の方がおねえさんですよ。高校生だから」
「……張り合う気なのね」
なぜだか言い争いになる二人だった。
「わたしなんか家がお寺なんだから広いのよ!」
「ウチも田んぼあわせると3ヘクタールありますけど」
「家じゃないじゃない!」
「あ、あ、ね、試合中なのよ薫ちゃんも麻理ちゃんも!」
見かねて止めに入る保奈美であった。

8 :3/3 :2008/09/25(木) 21:18:36 ID:???
斉藤に畳に転がされる関谷。
(まだだ!主審のコールがない!ノーポイントだ、判定の材料が増えただけ!)
とはいうものの、勝負の流れは明らかに劣勢であった。
「さあっ!」
足払いに行く関谷であったが、その攻撃を斉藤はかわし、逆襲のツバメ返し一閃。
関谷を今度こそ背中から落とした。
「キマったあ!」「よーし、斉藤もベスト4だ!」
「赤はみがき青はみがき黄はみがきっていえます?」
「それより赤はながみ青はながみ黄はながみのほうがむつかしいんですー!」
「何をくだらないことで張り合ってる!」
まだ続けていた麻理と薫に桜子の怒声が飛ぶのであった。

畳に転がったまま歯噛みをする関谷。
(くっ、粉川だけじゃなかった…。この男も信じられないほど強くなってる!)

準々決勝、残るは一試合。
「粉川、石塚、斉藤と出たか…ベスト4あとひとりはこのアタシしかいないわね!」
クルリと身を翻す永田。
心配の種がなくならない平八郎だった。
「あのなー…頼むぜ、ホントに」

9 :マロン名無しさん :2008/09/26(金) 03:01:27 ID:???
前スレ消化してからのほうがいいんじゃない?

10 :マロン名無しさん :2008/09/26(金) 08:28:58 ID:???
あれ、前スレってもう楽屋裏に入ってるんじゃないの?

11 :1/3 :2008/09/26(金) 21:16:10 ID:???
第107話 強敵・永田賢

中量級の試合場では杉が一本勝ちを決めていた。
(これで準決勝進出、ベスト4確定で県大会にも出られるワケだ。
 今日初めての一本ワザも出たし、オレッてこういうふうにだんだん調子出てくんだよな)
絶好調の杉の横を通り過ぎていったのは藤田。
そういえば組み合わせは準決勝で彼と当たる。杉の優勝への道は果てしなく険しいものだった。
(浮かれていたオレがバカだった…)

一方、巧たち軽中量級の試合場では準々決勝第四試合が開始されようとしていた。

「白、暁泉学園高校 永田君!」
「赤、浜田西高校 井田君!」

「キャ――あのヒトなのかっこいいの、永田サン!」
「髪を後ろにしばってる人でしょう?目をつけてましたよお!」
「ねっ、すごい美形だもんね!」
黄色い声を上げる麻理と薫。ケンカをしているうちにいつの間にか友情が芽ばえたらしい。
「でも、なんかその美しさに磨きがかかったよーな…。
 ホント、こうゆう外見の人が柔道していいのかしら?強いんだけどさ」
「そのアンバランスなとこがいいんですよお!」

下級生組にもててもてて困っちゃう永田に、相手の井田は気分を害す。
(ちっ、柔道やるやつが髪のばしやがってふざけんなよ)
この二人のうち、勝った方と巧が準決勝で当たるわけだが。
「どーせ永田が勝つって、実力的にも。顔もすげえ差をつけて勝ってるけど」
またひどいことを口にする巧であった。しかし斉藤がいさめるように言う。
「わからんぞ、あそこの学校も結構強いからな。今どき頭が青光りしてる硬派でうってるところだ」

12 :2/3 :2008/09/26(金) 21:17:18 ID:???
「始めいっ!」「よし来いおらあ!」
開始の合図と同時に威勢よく声を上げる井田。永田はこういうタイプに辟易とする。
(…うるさいわね――。そんなにいうならそっちから来なさいよ)
しかし井田は声ばかりでなかなか攻めようとしてこない。

ラチがあかないのでこちらから仕掛けようとする永田だったが、井田は徹底的に組手を嫌う。
(コイツってば組まずに逃げてばっかし。威勢がいいのは声だけじゃん!)
「どしたおらあ!来いおらあ!」「こ、このバカ男…」
こんな消極的な相手は放っておいても「教育的指導」をくらうだろうが――。
実は、それこそが相手の作戦だったのである。
永田の集中力が切れた瞬間を狙い、井田が奇襲の双手刈りを仕掛ける。「しまっ……」
「技あり――っ!」

「こ、この野郎っ!せこい手をつかいやがって…!」
永田は怒りの本性を発動させる。

見事に作戦を成功させた井田は、寝技から逃れるべく亀の体勢を取る。ところが――。
「逃がさんっ!」
うつ伏せになっている井田に上から組み付く永田。それを見た平八郎が驚く。
「うっ、アイツ!アレをやる気だっ!」

永田はうつ伏せ状態の井田の腕を取りつつ、胴の下に足を差し込み、
肩を軸にして一瞬でひっくり返して見せたのである。
そしてそのまま十字固めを極める!
「あああああっ!」
たまらず畳を叩いて「参った」する井田。
「一本、それまでっ!」

13 :3/3 :2008/09/26(金) 21:18:34 ID:???
「せっかくの秘密兵器だったが、粉川たちに見せちまったようだ…」
苦々しい様子の平八郎に佐野が言う。
「確かに見ちまった以上はヤツら警戒してくるだろうけど、
 初めて見たのかとまどってるようだぜ。“アダムス式回転十字固め”」
それは81年の世界選手権78キロ以下級チャンピオン、ニール・アダムスの得意とした技である。

永田は試合場から、観客席の巧に対し、不敵に指を突きつける。
(来い、粉川!たとえこっちの手の内が知れたとしても、おまえには防ぐことはできん!)
その挑発に巧は、手のひらに拳を打ち付けて応える。
(永田か…てめーは…藤田との練習試合以来一か月ぶりに…くるモンがあるぜ!)

「キャ――永田さーん!」「かっこいーっ!」
燃える男たちをよそそに、女の子たちの声援が飛んだ。
「薫〜てめえはな〜兄をさしおいて敵の男の応援とはな〜!」
杉もまた別の意味でメラメラと燃えていた。
「あら、兄さんいたの?」

「しかし、これで4強が決まったワケだ」と斉藤。
「オレの方が一足先に決勝進出決めちゃうもんね!」と巧。
「ハイ、普通の顔よ」と永田。「大魔神か、おまえは!」
(おっとあぶねー。忘れられちゃうとこだった)と石塚。

こうして軽中量級、ベスト4が出揃った。

14 :業務連絡 :2008/09/26(金) 21:20:18 ID:???
次回は一回休載して、単行本11巻のおまけを紹介します。

15 :マロン名無しさん :2008/09/27(土) 01:31:29 ID:???
なんかかっこいい技きたな
永田はわざと見た目が派手な技だけ練習してるに違いない

16 :1/2 :2008/09/27(土) 20:59:54 ID:???
○単行本11巻 (表紙:海老塚桜子 裏表紙:杉清修 三溝幸宏 斉藤浩司 宮崎茂)

・四コマその1

1.杉「UFO?あーもう何度も見たことあるって。最初見たのは小学生ん時かな。
    つい最近も三日前に見たしさあ。まあ日ごろから空をよく見る習慣をつけてれば…」

2.茂「いばるなバカッ!UFO見れたらえらいんかいっ!」

3.茂「つうワケでこれを名づけて 『やおい投げ』っ!」

4.『す ま ん』


・四コマその2

1.担「外人のキャラクターだしてもおもしろいんじゃないの?」
  河「えっ?」
  担「ホラ、巧のライバルでさ、留学生とかいって」

2.キム・チウマイ…おとなりの韓国から柔道修行のために留学してきた。
  つかわなかった理由…ルックスが日本人とぜんぜんかわんないから。

3.ミハイル・スカシニゴルブリミヤノフ…ソ連出身。
  つかわなかった理由…名前が長い。

4.トペ・デ・レベルーサ…メキシコ出身。
  つかわなかった理由…なんとなく。

17 :2/2 :2008/09/27(土) 21:00:50 ID:???
・もうとまらない第11回 サンデーコミックス名物『絵筆をもってね!』

 選評/河合克敏 応募総数:807点 入選:40点

 グランプリ:残念!グランプリなし!!

 準グランプリ:愛知県・沖田そうじ〔茂・斉藤・(巧)・本人?〕
        奈良県・早乙女あかね〔巧〕
        茨城県・水谷たすく〔保奈美・桜子(実話2コママンガ)〕
            桜「帯をギュッとね!っておもしろいよ」
            保「着物の着付けマンガ?」あぢゃぱー

 topix:福岡県・相原素直〔茂(愛が、進化する)〕
     兵庫県・はやく黒帯を取りたい〔袴田さん(シャワー覗き)〕
     埼玉県・北岡恒久〔巧・典善・藤田(2コマ)」
         巧「きたねえ…ケガしてるのしってたんだ
           みそこなったぜ、藤田の野郎…」
         巧「あいつ、ドカベン読んでねェ!」

18 :マロン名無しさん :2008/09/28(日) 07:20:17 ID:???
5.マクシモビッチ…チェコスロバキア出身(ライバルではないが)
  使った理由…一体なぜ?w

19 :1/3 :2008/09/28(日) 21:08:51 ID:???
第108話 対決・永田VS.巧

巧たちの試合場では準決勝に出る選手の体力が回復するまで5位決定戦。
その頃、杉薫は思い悩んでいた。
(巧さんと…あの髪の長いお方でもうすぐ準決勝が争われる…
 ああ、いったい私はどちらの応援をすれば…)
「こらっ!」その後ろ頭を杉にどつかれる。
「ところで兄さんの試合は?応援してあげるわよ、してほしければ」
もの凄い傲慢な態度の妹にわなわなと震える杉。「何様のつもりだ?」
「だいたい、もう遅いんだよ。準決勝で負けたからな」
「え〜〜〜〜っ!いつの間に?」
「三工の藤田とやって負けちまったんだよ!ごめんね、いつの間にか終わってて!
 今ごろ決勝やってるよっ!三工の藤田と佐鳴の袴田(弟)とでなっ!」

藤田を相手に粘り続ける豊。それを心配そうに見つめる袴田さん。
豊は藤田の足技をかわし――(今だ!)得意の跳ね巻き込みで勝負に出る。
「だあっ!」
しかし藤田は即座に対応。逆に豊を大外刈りで倒し、「有効」を奪う。
「くそっ!」
なおも闘志衰えない豊だったが、その立ち上がり際を藤田に捕まる。
そしてそのまま――大腰で投げ飛ばされる。
「一本、それまで!」

がんばったな、という石塚の言葉もあまり慰めにならない完敗。
顔を向けられない豊。
(くやしい。もしあたしが男だったら敵をとってやりたいくらい…)
口には出さなかったが、袴田さんもまた強い感情を抱き、
(団体戦になったら必ず倒してやるからな。待ってろよ藤田!)
巧も決意を新たにしていた。

20 :2/3 :2008/09/28(日) 21:09:53 ID:???
個人戦中量級の優勝は藤田に決まり。しかし巧の目下の相手は暁泉の永田である。
永田の得意技は飛び込み内股と回転十字固め。巧は斉藤と十字固め対策を相談することに。

暁泉の市川監督は、永田が早くも秘密兵器を使ってしまったと聞いて呆れる。
「ついアタマに血が上っちゃって」と一応、永田も反省はしているらしい。
「でも大丈夫!どうせ浜高の考える防御策なんて、たかが知れてるわ」

「ええっ!十字固めが外せないって!?」
斉藤に相談を持ちかけた巧だったが、その返答は絶望的なものだった。
「ずいぶん前にもいったが、ヘタクソな関節技なら外すこともできるんだ。
 しかし永田のはうまいから、いったんキメられたら最後だ。ギブアップするしかない」

対策としてはとにかく逃げるしかない。寝技は危険、常に立って勝負をする。
表情を硬くする巧だったが、そこで桜子が思わぬ指摘。
「それならきっと大丈夫よ、巧クン!
 どーせ巧クンはそんなに寝技はうまくないし、寝技で勝ったの見たコトないし!」
「それじゃいつもと変わりないワケね」
保奈美も唱和し、「そうかもしんない」と納得してしまう巧であった。

と、いうところで――。
「赤、浜名湖高粉川!」
「白、暁泉学園――」
「えっ!?」「おおっ、もう出番だぞ!」

慌てて試合場に駆けつける巧。その前に立った永田は両手を自分の頬に音高く叩きつけた。
「きゃあっ!お顔がもったいないっ!」
声を上げる薫。妙に気合が入っているかに見えた永田だったが、実は違った。
「……いったあ――い。ナミダでてきちゃったぢゃないの〜」

「いくら勝つためとはいえ、ここまでこのオレにやらせやがって!許さんっ!(ほとんどいいがかり)」

顔を上げた永田は凶暴な面相に豹変していた。

21 :3/3 :2008/09/28(日) 21:11:09 ID:???
追い込まれなければ真価を発揮できないスロースターターの永田。
彼は自分で自分を叩くことによって最初から戦闘用性格になることを考えたのである。
(見事な自己暗示だ永田!これでおまえは自分の二重人格的性格を自由に操れるようになったのだ!)
汗をかきつつもどこか誇らしげな市川監督だった。

「始めっ!」
ついに火蓋が切られた巧と永田の試合。
「ああん、どっちを応援すればいいか悩む」
「ダメですよ薫さん。表面的でもいいから巧先輩を応援してください」
「…よくないわよ、麻理ちゃん」
年少組をたしなめる保奈美。そんな応援席をよそに、二人の勝負は白熱する。

激しい組手争いから、まず仕掛けたのは巧。
「来たっ!」
巧の背負いに反応する永田。
「ダアアッ!」
「よし、いけいけ――っ!強引にもってけー!」
杉の声に呼応するように、防御体勢の永田をそのまま投げに行く巧。
それに対し、永田は全力でそれに抵抗する。
(ここだ、ここをこらえれば…オレが勝つ!)
二人はもつれたまま倒れ、ポイントは無し。
しかしその瞬間、永田が巧に飛びかかる!
(もらったっ!)
永田の狙いを理解し、自分の認識が甘かったことを悟る斉藤。
(しまった!こちらがかけた技が失敗しても回転十字固めのチャンスになるとはっ!)

(いったんキマってしまえば!ギブアップするしかない!)

22 :マロン名無しさん :2008/09/28(日) 21:18:29 ID:???
自己ビンタで性格交代出来るようになったといってるけど、戻す方は大魔神方式という理不尽

23 :マロン名無しさん :2008/09/28(日) 21:44:26 ID:???
杉と藤田の試合見たかったな

24 :マロン名無しさん :2008/09/29(月) 00:00:19 ID:???
永田は胡椒や綿棒の持ち歩きと、どちらが楽であろうか
そして袴田弟より冷遇されているような杉…カワイソスw

25 :マロン名無しさん :2008/09/29(月) 00:02:11 ID:???
>>22
一度爆発させたらスッキリしておさまるんじゃないの?

26 :1/3 :2008/09/29(月) 21:06:58 ID:???
(あおむけに返されたら十字固めにはまってアウトだ!)
「こらえろ――巧――!」声を張り上げる斉藤。
だがそれも届かず、胴の下に差し込まれた永田の足が巧の身体をひっくり返す!

第109話 はねかえす!

「あ――っ!!」「返された!」「十字固め入ったか?」
「巧クン!」思わず大声を出す保奈美。

しかし、まだ完全に肘関節を極められてはいなかった。
巧は永田に取られた右腕を伸ばされないよう、左手で右の手首をつかみ、これを防いでいたのである。
「へっ、そうは簡単にいかねえもんよ」
(ちいっ!悪あがきしやがって…)

とりあえず防御はしたものの、腕が伸びきれば十字固めは完成。そうなれば巧の腕は5秒ともたない。
今、二人は全力で腕の引っぱり合いをしている。もし、巧が負ければその時点で勝負は決まる。
なおもピンチの状態は変わっていないのだ。
(ちっ、コイツけっこう力ある…このまま膠着状態が長びけば「待て」がかかって立ってやりなおしっつーことも…)

永田は勝負を決めるため、一瞬身を起こして巧の左腕を自分の両腕で抱え込み、
「でいっ」
反動をつけ、後ろに体重をかけて一気に引っぱる。
「ぐわっ!」
(どうだっ!これでもまだ粘るか粉川!)
耐え続ける巧であったが、それも既に風前の灯火。
「よし、あとひといきだぞ永田ァ!もう一回いけっ!」
市川監督の声が上がるその横で、平八郎は内心複雑な思いを抱えていた。
(ここで負けるのか粉川巧?)(おまえの力はそんなもんじゃないだろ、タッちゃん)
「とどめだっ!」

27 :2/3 :2008/09/29(月) 21:08:02 ID:???
再び反動をつけて一気に巧の腕を引き剥がそうとする永田。
しかし、そのために身を起こした一瞬――巧の目が見開かれる。

巧は捕まっている右手で自分の柔道着をつかんで固定し、
自由になった左手で、接近してきた永田の襟をつかみかえした。
(なっ、何をする気だコイツ!?)

「うおおっ」
無意識に手を握り締めている保奈美。
「おおおお!」
巧の背が――。
「おおお!」
徐々に畳から離れていくのである。
「あ――っ!」「も、もしかして!」
驚きの声が上がる応援席。
「そんな!バカな!?」

かつての国際強化選手、市川でさえ動揺せずにはいられない光景。
「た、立った!!」「あの体勢から立ちやがったぞ、こいつ!!」
巧は何と腕を取られたまま、力ずくで無理やり立ち上がってしまったのである。
「はあ……」
握り締めていた手を開き、保奈美は安堵の息をはく。
「きさま…」「ざ…残念…だったな……」
見上げる永田と見下ろす巧。そこで審判の「待て」がかかった。

28 :3/3 :2008/09/29(月) 21:09:13 ID:???
「すごいすごい巧先輩!」「キャ――やっぱし巧サン応援しちゃう!」
「さあ――反撃だあ――っ!」「もーりあがってきたー!」
女性陣の黄色い歓声。勝負はいよいよ佳境を迎える。

(今ので相当体力消耗したはずだ!立技でケリつけてやるぜ粉川!)
組んだ瞬間を狙った速攻の飛び込み内股――だが、
(タイミングが…バラバラなんだよ!)
焦りに支配されたその技にはキレがない。巧は永田の足を刈り、内股に入る前に潰す。
「くそっ!」
着地した瞬間の無防備な永田の懐に、今度は巧が滑り込む。

「うおりゃああ!」

巧の一本背負いが炸裂。ついに永田を沈めた。
「一本!それまでーっ!」

戻ってきた永田は平八郎に一言呟く。
「……くやしいよ…」
「そうだな。でもまだ次がある」
平八郎はそう言って、永田の肩を叩くのだった。
(しかし…先にオレが倒す!)
自分に向けられる平八郎の視線に巧が気づく。
(いつか、団体戦であたるだろう。それまで誰にも負けるなよ、タッちゃん)


続いて準決勝第2試合が始まる。
「赤、佐鳴高校 石塚!」
「白、浜名湖高校 斉藤!」

29 :マロン名無しさん :2008/09/29(月) 21:43:48 ID:???
これで… 序盤のライバルだった男の進路が決まるな。

30 :マロン名無しさん :2008/09/29(月) 21:51:50 ID:???
友と決勝で会おうなんて敗北フラグ以外の何者でもないし
ここは石塚が勝つんだろうなあ

31 :マロン名無しさん :2008/09/29(月) 21:52:01 ID:???
異質化には袴田サンがいるのだから既に巧と戦う理由がないからな

32 :マロン名無しさん :2008/09/29(月) 21:56:08 ID:???
というか斉藤って各校エースクラス相手にはあんまり勝ててないような

33 :マロン名無しさん :2008/09/29(月) 22:09:20 ID:???
浜高を強豪相手にも互角に闘わせようと思うと
技師の斉藤でつじつまを合わせるのが一番楽。
でも各校のエース退治までやっちゃうと巧の存在意義がなくなるんで、
今のような微妙に中途半端な強さに落ち着いたんだろう。

34 :マロン名無しさん :2008/09/30(火) 01:17:29 ID:???
つい次の好カードに目が向いてしまうな。
巧の試合と違って、どちらが勝ってもおかしくないし。
互いにどんな技が出てくるか、期待。

35 :1/3 :2008/09/30(火) 21:17:02 ID:???
第110話 二人のライバル

「まったく…たいしたヤツだよ、おまえは」
戻ってきた巧を労う斉藤。
「次はそっちの番だぞ」「まあ見ていろって」
とはいえ、斉藤の準決勝の相手は石塚である。簡単になど行くはずがないが――。

麻理と薫が巧に席を譲る。
「悪いなあ、二人とも」
「だって巧さんは、選手ですもの」
(だったら、さっきからずっと立ちっぱなしだった斉藤クンも選手だけどね…)
そんな事を思いながらも、自分も席を譲ろうとはしなかった桜子である。
「でも、二人もどかなくてもいいのに。まだ一人座れるぜ」
「そうですね、じゃあ」
巧に言われて何の躊躇も無く麻理を押し退ける薫。
と、そこで――。
「どっこらしょっと」
ベンチに座ったのは杉だった。

「…………」
杉が振り返るとそこには今まさに杉の後ろ頭に振り下ろそうと、靴を握り締めていた妹の姿が。
「お・ま・え・な――っ!今、なーにしようとしてた!?
 その手に持ってるもんは何だ?
 なんでクツを片っぽはいてないんだ!あ――?」
「フン!兄さんに話すことなんか何もないわっ!」

「いまのうちにすわっちゃいな」
二人が言い争っているうちに、桜子は麻理に席を勧める
結局、漁夫の利をしめたのは麻理だった。

36 :2/3 :2008/09/30(火) 21:18:23 ID:???
「始めっ!」
斉藤と石塚の対戦は昨年の地区予選、団体戦準決勝以来のことである。
(相手の斉藤クンはかなりの強敵。がんばって…)
斉藤の実力を知る袴田さんも、石塚を案じる。

斉藤が襟を、石塚が袖を、それぞれつかんだ状態で止まり――緊張感が一気に高まる。
まず仕掛けたのは斉藤。左の一本背負い。
「出たっ!」「でも浅いっ!」
投げられる寸前、石塚は畳に手をついてこれを防ぐ。
しかし斉藤はそこからさらに足を伸ばし、
「おりゃあ――っ!」
自分の身体ごと石塚を跳ね上げる。
「何っ!?」
畳に叩きつけられる石塚。即座に飛び起きるが、判定は――。
「技あり!」

「おいっ…!」「とったよ、あの石塚からっ!」
去年の時点では巧と藤田以外の誰一人、ポイントを取ることができなかったほどに受けの強さに定評のある石塚。
その彼からポイントを先行したのは大きい。
(しまった…!決して気を抜いたワケではないのに…)
動揺を隠し切れない石塚。
袴田さんは手を組み(神様…)祈る。

「始めっ!」
慎重に手の内を探り合っていた段階から打って変わって、火の点いたような猛攻に出る石塚。
小外刈りから朽木倒しの連続技に斉藤はたまらず倒れるが、ポイントは「有効」。
その勢いはなおも止まらない。
「ていやっ!」「ああっ!今度は背負い!」
斉藤はそれを何とか足をついてかわすが、
石塚は完全に投げを崩されながらなおその足を払ってくる。
(この体勢から技が…!しつこいなんてもんじゃない!)
(負けてたまるか…!斉藤にも…粉川にも!)

37 :3/3 :2008/09/30(火) 21:19:51 ID:???
石塚の攻撃が続き、防戦一方の斉藤。
「斉藤クンの方が押されてるの?」
「うん、すげえ気迫だ。石塚さん」
巧は保奈美にそう答える。しかし斉藤は序盤に「技あり」を取っている。
それ以上のポイントを実際に取られない限り斉藤の勝ちは動かない。

残り30秒――このまま逃げ切るかという声に、豊が激昂。
「バッカヤロオ!逆転するにきまってんだろ!」
その声に呼応するかのように石塚の背負いが斉藤に入る。
「うおおおおっ!」
判定は。

「有効!」

痛恨の表情を見せる石塚。安堵の息をはく浜高ベンチ。
残り10秒。最後のチャンスに石塚が仕掛けたのは奇襲戦法、双手刈り。
斉藤は上から身体を被せて潰す。なおも諦めず寝技を狙う石塚だが、そこで試合終了を告げるベル。
「それまでっ!」
斉藤の勝利が決まった。

(結果的には勝ったが…内容じゃほとんど負けてた。さすがだよ、あんたは)
「石塚クン!背中が丸くなってるよ、ちゃんと胸はって!」
そう微笑みかける袴田さんの目尻には涙の跡が。
「ねっ!」

「も――いじらしいんだからあ、袴田サン。大事にせんとバチ当たるで、石塚のダンナ」
(斉藤のヤツ、もっとメッタメタにやっちまえよ!石塚なんてよ!)
ちょっと照れ気味の桜子と、悔し涙を流す杉だった。

38 :マロン名無しさん :2008/10/01(水) 02:20:53 ID:???
熱すぎる・・・試合じゃないところで

39 :マロン名無しさん :2008/10/01(水) 19:58:41 ID:???
つーか試合以外のほうが面白い気がするんだぜ

40 :1/4 :2008/10/01(水) 21:02:40 ID:???
1.永「フフフ、アタシには『ひみつへいき』があるのよ。うけてみる気ある?」
2.巧「何が『ひみつへいき』だっ!やれるもんならやってみな!」
3.ふ――――っ(巧の耳に息を吹きかける永田) 巧「わ――――っ!」
4.巧「やめろおおっ!」
  桜「すごい『ひみつへいき』だこと……」
  →気絶した保奈美。

第111話 勝つことの重み

「一本、それまでっ!」「いよっしゃっ!!」
「だあ――っ!」天高く拳を突き上げ喜びを露にする茂。
インターハイ地区予選軽量級(60キロ以下)はとうとう浜高の宮崎が制した。

「えっ?」「優勝?」「したの?」
「見てろよ、おまえらはよ――っ!決勝戦だぞ!わかってんのか!?」
茂のガッツポーズも実は誰も見ていなかったという、ムナしい一人舞台なのであった。

「でも巧君の試合と斉藤クンの試合が連続してあったもんだからさ。
 ちょっと目が離せない状況で、宮崎クンのことは『すっかり忘れて』たの」
「先生、教育上もうちょっと生徒の気持ちも考えた発言を」
保奈美と麻理がフォローをして茂の機嫌も持ち直したが、直後に桜子と先生が茶化して台無し。

ミッタンも重量級でどんどん勝って、次は決勝である。
その前に軽中量級決勝戦、現実となった巧と斉藤の試合が始まるわけなのだが。

41 :2/4 :2008/10/01(水) 21:04:04 ID:???
巧も斉藤もいつも練習をしている同士。
互いの手は知り尽くしている以上、一本勝ちは無いかもしれない。
巧はベンチに腰を下ろしたまま何かを考え、仲安に呼ばれてもすぐにはそれに気づかなかった。

その頃、斉藤は一人武道館の外で、巧と初めて試合をしたときのことを思い返していた。
そしてそれは巧も同じ。当時はまだ中学生で、みんな別々の学校だったのだ。
「確か、あの時巧クン負けたでしょ、斉藤クンに」「えっ?ウソだあそうだっけ?」
保奈美に言われてそらとぼける巧。
「そうだよ――、じゃ勝ったの?」「忘れちゃったよ」
「あ、負けたかもしんない。誰か泣いてたしー」「もうバカ」
「もうバカ」「いやんバカ」
いちゃつく二人の後ろで杉と茂の寸劇。それを冷ややかに眺める桜子だった。
「本当にバカだよ、あんたたち」

(さて…行かなきゃ…)
一方、武道館の中に戻ろうとした斉藤は、自分の異常に気がつく。
(ちっ、一瞬ヒザが震えやがった。相当緊張してんだな、オレ…)

試合場にてついに、対峙をする巧と斉藤。

この二人で一位と二位は決まったのだからどっちが勝っても構わない。
しかしどちらが強いのか?注目が集まる。
市川でもこの勝負は予想がつかない。
「むずかしいな…はたしてどっちが勝つのか?」
しかし永田と平八郎が即答。「粉川!」

三工サイドにも中量級優勝を決めた藤田がやってくる。
「へえ、粉川と斉藤か。身内同士で争ってんのか。こっちの決勝戦は」
そしていよいよ――。

「始めいっ!」

42 :3/4 :2008/10/01(水) 21:05:18 ID:???
「せいやああっ!」「おおっ!」
開始と同時にいきなり仕掛けたのは、なんと斉藤。巧のお株を奪うような背負い投げ――!
「いきなり背負い…!」「今のは間違いなくポイントだ!斉藤の方が先行したっ!」
判定は「技あり!」。しかし斉藤は追撃の手を緩めない。

まるで巧が乗り移ったかのような斉藤の猛攻。巧は危ういところで場外に逃れる。
「ちょっとちょっと、斉藤クン本気でやってない?どうしちゃったんだろうねえ」
少々冷や汗をかいている桜子。しかし杉と茂には斉藤の気持ちが理解できた。
「女にはわからねえだろうな」「男にゃな、意地ってもんがあるのよ」
「ふ――ん、それで?」「えっ?それでなあ、やっぱし男ってゆうのは…」
そこで杉、ついついボケに走る。
「意地があるからEasyに生きることができないとゆう……」
「さようなら、さようならっ!」
(思いついても誰も口にせんようなダジャレを…)
桜子に蹴り飛ばされる杉であった。

(そうだよ斉藤…本気でやらなきゃ、おもしろくもなんともねえ!)
背負いにいく巧だったが、斉藤はそれをかわし、逆に大外刈りで切り返す。
しかし巧は引き手を切ってそれを防ぐ。
畳に転がってもすぐに跳ね起き、組み合う両者。
巧は斉藤の袖をつかんで力任せに振り回し――。
「この…!」
そこに生まれたわずかな隙に、巴投げ!
斉藤は畳に手をついて背中から落ちるのを避ける。判定は「有効ー!」

まさに決勝戦に相応しい好試合。
ポイントリードをしている斉藤も守りには回らず、次々に技が飛び出してくる。
藤田はその様子を鋭い目で眺めていた。
(いい試合かもしれない…しかし、粉川…今、おまえの前にいる男は…
 倒さなけりゃならない宿敵の一人には違いないはずだぞ!)

43 :4/4 :2008/10/01(水) 21:07:22 ID:???
(来るっ!)
巧の一本背負いのタイミングを狙いすまし、逆に刈り倒す斉藤。
判定は「有効」。これで再び斉藤が丸々「技あり」一つ分のリードとなる。
しかし――巧は下から斉藤を捕まえ、畳の上に転がした。
「くっ!」「ていっ!」
なんと、期せずして寝技勝負。巧は斉藤の上に覆いかぶさり――。
「あっ!」「あっ!」「は…入った」
本袈裟固めに捕らえるのだった。
「お、抑え込みだ――っ!」「入ったあーっ!」
(なっ…なんてこった…!)
(今まで…今まで一度も斉藤に寝技で勝てたことはなかったのに…)

(キメるんだここで!抑え込んで…勝つんだ!)

暴れる斉藤。しかし完璧に入った抑え込みはどうあがいても外せない。
思わず桜子が声を上げる。
「がんばれっ!あきらめないで!時間はまだあるから!最後までがんばれ!」
目を閉じる杉。
「だめだ…あれははずせねえ…」残り10秒。
(ちくしょう!早く終われっ!頼むから早く…)

(こんな時間 過ぎちまえっ!)

カウントダウンが始まる。5・4・3・2・1――そこで畳に一滴、熱い液体がしたたり落ちた。
鳴り響くベル。「時間です!」「一本!それまで――っ!」
大の字に倒れたまま、県大会の決勝も自分たち二人でやろうという斉藤。
「おまえな、顔スゲエ汗だぞ。本当に汗だけかあ?」
「な、何?どうして?汗だけにきまってんじゃん」

まっそういうコトにしとこ。
ちぇっ、バカヤロー!

44 :マロン名無しさん :2008/10/01(水) 22:27:24 ID:???
バカップル(巧&保奈美)を見た瞬間、斉藤が負けるんだろうなあとなんとなく思ってしまった・・・

あと宮崎はそういう路線なのねw

45 :マロン名無しさん :2008/10/01(水) 22:32:26 ID:???
今週やけにページ数多いな。
保奈美が珍しい表情してるな。悪戯っぽいつーか・・・

それにしてもあの角度だと杉からは桜子のスカートの中丸見えなのではないだろうか。
由々しき事態だ。

46 :マロン名無しさん :2008/10/01(水) 23:04:21 ID:???
いい展開なんだけど……

『ひみつへいき』の印象が強くて……

47 :マロン名無しさん :2008/10/02(木) 01:20:17 ID:???
男の意地wと友情は熱いなぁ
笑いと真剣勝負が共に濃い回ですね

48 :マロン名無しさん :2008/10/02(木) 02:25:57 ID:???
背負いじゃなくて偶然入った寝技で勝つのがいいね
作者この展開はかなり上手いと思う

49 :マロン名無しさん :2008/10/02(木) 08:17:04 ID:???
屈指の名勝負だった
頼むから早く終われという台詞がまた、リアルでいいな

50 :1/3 :2008/10/02(木) 21:00:49 ID:???
第112話 背中を見ながら

斉藤に手を差し伸べ助け起こす巧。これで終わりというわけではない。
これからも互いに技を磨きあい、強くなっていく二人なのだ。
「そうですよね。仲間なんだから」
二人の今の心情を保奈美が心配する必要など無いのだ。
「赤!」
改めて巧の勝利が審判によって告げられ、これにて試合終了。
二人には惜しみない拍手が降り注いだ。

浜高は五人が個人戦に出場して1位が二人、2位と3位が一人ずつ。合計四人が入賞したのだ。
「5人出て…?」「4人入賞?」
「キャ――三溝クンを忘れてた!」
大声で叫ぶ龍子先生。
「決勝戦とかいってましたよっ!応援にいかなきゃ!」
皆を連れて重量級の試合場へ走る走る。
「ひっでー先生だな!遠足の引率やったら生徒5〜6人置いてきぼりにしそーだぜ!」
「うるさいわよ!」

巧や麻理も先生の後をついていくが、斉藤だけはベンチから立ち上がらなかった。
保奈美が「行かないの?」と彼に尋ねる。
「後からいくよ。悪いけどもうバテちゃって…。
 いや…本当いうともう一歩も歩きたくないくらいだ。巧はあんなに元気なのになあ…」
それは最後の寝技で下になったからではと保奈美が問うが、
斉藤は「それだけじゃない」と微妙な返事。彼は小さく溜め息をつく。
「強かった。思ってたよりも…毎日顔合わせてんのに変ないい方だけど…」

「いったいどこまで強くなるのか…巧のヤツ」

51 :2/3 :2008/10/02(木) 21:01:57 ID:???
重量級の試合場では今まさに決勝戦の真っ最中。
ミッタンの相手はというと――。
「いやああっ!ほやあああっ!」
何とも凄みに欠ける、丸々とした男だった。

それを見て何となく安堵してしまう浜高の面々。
麻理がいつもと変わらない表情でいう。
「あんまり強そうに見えないヒトですねえ。でも決勝まで来たんだから強いのかもしれないですね」
「でも外見と実力がミスマッチのやつってそんなにいるのかね?」
などという桜子だったが、よく考えればすぐ隣にそういう人間はいた。

そうこうしているうちに試合は終了。
結局、一本技はでなかったものの、終始優勢に試合を運んでいたミッタン。
ところが――「白!」旗は相手のほうに上がった。
そのとき、桜子があることに気付く。
「胸のところ見てっ!アイツ三工の選手よっ!」
三工顧問の吉岡先生が戻ってきた彼を労う。
「よしっ、上出来だ平山!」
先生に褒められ、彼は「はあ」と照れたような笑みを見せるのだった。

「三溝クンよォ…」「わっ!見てたの?ひょっとして!」
試合を終えたばかりのミッタンに対し、山崎ばりのまわしげりをかます茂。
「何やってんだよっ!せっかく応援してやったのに!」
「は、初めの方で技ありとられちゃって!そんでもってズルズルと…あ――ごめんなさい!」

ともかく男子個人戦はこれにて全試合終了。
浜高は出場した五人全員が県大会出場権獲得、二人が優勝するという素晴らしい成績を残したのだが。
浜高の二階級制覇は軽い方から二つ。
中・重量級をとっている三工の方がやや有利というのが周囲の見方だった。

52 :マロン名無しさん :2008/10/02(木) 21:02:53 ID:???
ちょっとジンときた

53 :3/3 :2008/10/02(木) 21:03:07 ID:???
「次は私たちですね、桜子先輩!がんばりましょうね」「はいはい」
来週は女子の個人戦。桜子たちは練習のラストスパートである。
「まァ、今日の男子の試合見てなんかこう…いっちょやってやるかって気になったよ」
文字通りに「腕が鳴る」桜子。だが、杉と茂がまた茶化す。
「くせっ!実力ねえヤツがいっても似合わねえよ!」
「なによ、こっちは半分おせじでいってやってんのに!」

巧と保奈美はここで皆と別れる。日の暮れた駅前の通りを二人は歩いていく。
(巧クンが3歩歩くところを、わたしは4歩で歩かなくちゃおいつけない)
保奈美は『いったいどこまで強くなるのか…』という斉藤の言葉を思い出していた。
(この人はもしかしたらものすごく才能があって…
 人より早くどんどん先へと行ってしまうのかもしれない…)
置いていかれないよう早足になった保奈美は、歩道のタイルにつまづく。
速く歩きすぎていたかと謝る巧だったが、保奈美は「ううん、いいの」とそれを断る。


「私がついていくから…巧クンは気にしなくていいの。
 一生懸命ついていくから。私、そう決めたんだから」


「はい…わかりました…。でも変なこと決めちゃうんだな?」
「いいの!」

54 :マロン名無しさん :2008/10/02(木) 22:04:26 ID:???
くっさー!

55 :マロン名無しさん :2008/10/03(金) 19:35:41 ID:???
女子の方は人が少ないけど新キャラばかりになるんだろーか。

56 :1/4 :2008/10/03(金) 21:05:04 ID:???
桜「ねーねー知ってる?インターハイで女子柔道の個人戦やるのって91年が初めてなんだよ」
保「へえ――あれ?今年って90年じゃ…」
桜「保奈美さん何いってんの、91年でしょ?」
保「あの――でも、単行本2巻の112ページに…」桜「気のせい気のせい」
保「でも、他にもいくつか動かしがたい事実が…」
桜「そういうのを重箱のスミをつつくっていうのよ」
保「そ、それはちょっと違…」
桜「とにかくインターハイ女子柔道個人戦は90年にはまだなかったのよ。なかったの」
桜「それに91年のインターハイは地元(静岡県)だしぃ!
  郷土にゴマするにはもってこいなのよー!」
 読者のみなさんごめんなさい……。

第113話 女子個人戦開始

初夏――そのうえ今日は土曜日…普通の高校生にとって、こういう日の放課後こそが一番の楽しみなのだが。
「あ――――っ、ついにこの日が来てしまった!ど――しよ――っ!」
「桜子先輩行きましょう!」
勢いよく教室に飛び込んでくる麻理。
「いやあああ――っ!」
今になって急にダダをこねはじめる桜子。
先週は「まァ、今日の男子の試合見てなんかこう…いっちょやってやるかって気になったよ」などと
言っていたのだが。麻理が保奈美の後ろ髪をポニーにつかんで再現してみせる。
「やっぱしよく考えたらヤダよ――!絶対負けるよー、恥かくよー!」

女子の皆は先生の車で武道館へ。男子部員は見送りに。
自分はあくまで麻理のつきそい、とヤル気のかけらもない桜子に、巧が心構えをアドバイス。

しかし、桜子はそれに猛反発をする。
「あたしはド素人だから達人さんのいうとおりになんてとてもできないね!悪いけど!」
「何をてめえっ!」「アイ・ヘイト・ユーだっ!」

57 :2/4 :2008/10/03(金) 21:06:15 ID:???
車の発進に合わせて捨て台詞を残す桜子。龍子先生はその態度をたしなめる。
「あんないい方はないわね、海老塚さん」「はあ」
「あなたのためを思っていってるんだから。柔道の本とかくれたそうじゃないの」

桜子はそのときの会話を思い出す。
『一本ってのは野球にたとえりゃホームランみてえなもんだよ。それと同じくらいスカッとするぜ!』
(まったく、そんなに柔道のコトばっかしじゃなくて、もっと保奈美のことも考えてやればいいのに…)
そもそも桜子は野球などしたことがないのだから、ホームランといわれても実感など湧くわけが無い。
(ヒトのこと女と思ってないな、あのバカ…)

佐鳴高3年 袴田今日子
90年全日本体重別個人ベスト8。高校選手権体重別個人優勝。
その実力はとっくに全日本強化選手並といわれ…
当然のごとくこの地区の48キロ以下級では無敵である。
他校の選手からの注目度も高く――というよりはファンの目線を向けられていた。

その袴田さんが自分たちの方へ近付いてきて驚く女子選手たち。
しかし袴田さんは彼女たちの横を素通りし――。
「海老塚サンじゃないの」「あっ!どーもこんちは!」
まるで無名の白帯とちっこいのに話しかけた。
「あれえ、柔道始めたんだ」「ええ、まあ成りゆきで…」
桜子は袴田さんに麻理を紹介する。
「このコ、うちの1年で来留間麻理ちゃん。あのもと三工の来留間先輩の実の妹」
が、彼女の大ファンである麻理は照れてしまい、桜子の後ろに緊急避難。
「は、初めまして…」
袴田さんに握手を求められた麻理は、桜子の道着の袖でごしごしと手をふき、その手を彼女に差し出した。
「が、がんばります。よかったら試合見てください」「ええ、もちろん」

そしていよいよ――開会式。

58 :3/4 :2008/10/03(金) 21:07:51 ID:???
その頃、男子部員は道場で練習。麻理がどこまで勝ち進めるか賭けが始まる。
杉の予想はベスト8、ミッタンはベスト4と読むが、茂は二人を「考えが浅い」と笑う。
「来留間の実力はそんなもんじゃねえ…ズバリ1位!優勝だっ!」
自分が麻理に投げ飛ばされた経験からの言葉であろうが――。
「全国優勝の袴田サンがいるんだぞ!バーカ!」
「あれー同じ階級だっけ?」
「考えが浅いのはてめ――だっ!」

その状況をきちんと見てから斉藤は2位、巧は3位にそれぞれ賭ける。
「んでもってオマエは1位だったな。男だったら変えんなよ」
「ちくしょーっ!」
ともかく、今日は練習を早めに切り上げ武道館へ試合を観に行くことに。

白帯の子も少しはいて安心する桜子。女子の柔道は高校から始める人が多いので、白帯もたくさんいる。
そういう意味では年齢はあまり関係は無いのだ。

いよいよ初試合に臨む麻理。
しかし、袴田さんの声がかかった瞬間、ブリキのロボットのように固まってしまった。
桜子がその背後につかつかと歩み寄り、背中を一撃。「あっ!」
「直りました。桜子先輩ありがとうございます」「いーえ」
「袴田サンは声かけない方がいいみたい。あのコ緊張してカタくなっちゃうから」

先ほどの話の続き。女子の場合は年齢差より経験と素質の方が大事ということで、
特に麻理のように中学で黒帯を取って上がってきたようなコは要注意なのだ。
「赤、市立商業 田中さん」
「白、浜名湖高校 来留間さん」
「ハイッ!」
元気よく返事をして麻理は試合場へ出て行った。

59 :4/4 :2008/10/03(金) 21:08:58 ID:???
「あっ、あのコさっき袴田サンといたちっこい方よ」
「負けちゃえばいいのに」
袴田さんファンからの嫉妬交じりの冷たい視線をよそに――試合開始。

桜子はこの状況でのんきに応援の打ち合わせ。
「それじゃ、いっせえのせで“がんばれ麻理ちゃん”っていくよ。
 あっ、袴田サンは口パクでお願いします」
「口パクで…」

「せやあっ!」気合十分の市立商、田中。
「ハイッ!」麻理は掛け声一つ――その懐へ飛び込む!

「いっせえのお…」
「あっ……!」

「よ」
「いしょっ!」

「一本!それまでっ!」

何と、開始直後の背負い一閃。想像外の秒殺劇に会場中が呆然。
「ありゃ?」「声援をおくる前に終わっちゃった」
「へへっ!」
先輩たちに無邪気に手を振る麻理。
しかし袴田さんは彼女の力量を理解し、そして戦慄していた。


(すごい…このコこそ本物の天才だ……)

60 :マロン名無しさん :2008/10/03(金) 22:02:20 ID:???
地区優勝するような奴(宮崎)を油断していたとはいえキレイに投げてんだから、こうなるわな…

61 :マロン名無しさん :2008/10/03(金) 22:05:22 ID:???
麻理・・・只の人外じゃなく、天才?
ゴシゴシかわいいw

62 :マロン名無しさん :2008/10/04(土) 11:17:16 ID:???
つか緊張するような回路あったのねw

63 :マロン名無しさん :2008/10/04(土) 20:49:39 ID:???
麻理の思考回路は謎すぎるw。あのぶっ飛び具合を見ると
桜子が普通の女子高生に見える不思議

64 :1/3 :2008/10/04(土) 21:03:59 ID:???
第114話 初めての戦い

開始わずか10秒ちょっとで一本勝ちを決めた麻理。
桜子は女子柔道第一人者たる袴田さんに試合の感想を求める。
「ぐへへダンナ〜、どうすかあ?うちの新人のできは。なんたってこんな上玉めったにない!」
「や――!そんなたずね方しないでください!」
女衒のような品の無い桜子を止める麻理。
「そう…ね…あっという間だったけど…とにかくすごい威力のある背負いでビックリしちゃった。
 すばらしい技をもってると思う」
「…だ、そうですが、いわれてみてどうだ?このコアラ娘」
憧れの袴田さん直々の褒め言葉が頭の中でリフレイン。感涙にむせぶ麻理だった。
「う、うれしいですぅ」

次は桜子の試合だが――何しろ彼女は柔道始めてまだ2か月。麻理以外の人と組むのも初めてで、
さすがの袴田さんもアドバイスのしようがなかった。

その頃、浜高柔道場。麻理の予想はいいとして、桜子はどうするのか巧が問う。
「おまえなあ、カケが成立しねえだろ」
杉が呆れたようにいう。一年を含めて全員が一回戦負けと予想しているからである。
ところが巧は――。
「ほー、それじゃ6対1か。それでもいいぜ、カケようじゃん」
「えっ?おまえまさか…?」
「これからオレを真のギャンブラーと呼べ。ひひひ」

「赤、岩田南高校小宮さん」「白、浜名湖高校…えーと…かいろうづかさん?」
場内に起こる笑い。「プッ変ななまえ――!」こういうのはもう宿命のようなものである。
コンタクトも取って準備万端。ガンガン攻めていくよう袴田さんたちにアドバイスを貰う。
この土壇場に来て桜子は落ち着きを取り戻していた。
(ガンガン攻めてく。返されるのを恐れずに!
 あれ?なんか誰か別の人にもいわれたような気がするなあ…)

65 :2/3 :2008/10/04(土) 21:05:26 ID:???
「始め!」
開始の号令と同時に、桜子はアドバイス通り攻めていこうとするが――。
その手を払われ、簡単に組手を取られてしまう。
「相手に先にいいトコとられちゃった!桜子先輩すぐに離れてっ!」
(そ、そんなこといったって…)

桜子を振り回す小宮。
(やりぃ!たいしたコトないやつじゃん。組み手もシロートだし足元もバタバタしてるし…)
小宮は桜子を雑魚とみなし、一気に決めにかかる。
「ええいっ!」「あわっ!」
しかし桜子はその背負い投げに反応。(か、かわされた…!)信じられないという表情の小宮。
(今ぐらいの技ならかわせる!麻理ちゃんの方がもっと速いもんね)
麻理との乱取りでその速さに慣れてしまった彼女には、それより遅い技など物の数ではなかったのだ。

桜子は今度は先に引き手を取る。しかし小宮の足払い。桜子がぐらついたところで体落とし!
「いやあっ!」
(これも麻理ちゃんよりは遅いっ!!動きがわかる!!)
またもかわしてみせる桜子。小宮もその異様さを感じ始める。
そして袴田さんも――。
(驚いた…海老塚さんもすごい…相手の動きに反応するのがバツグンに速い!)

(攻めなきゃ…なんでもいいからこっちから攻めなきゃ…
 相手はあたしを真剣でぶん投げようとくるんだから…攻めなきゃこっちがやられる!)

(負けたくないっ!)

66 :3/3 :2008/10/04(土) 21:06:38 ID:???
桜子の小内刈り。「今だァ!」麻理の声が飛ぶ。
小宮の懐に飛び込んだ桜子、相手の身体を背負い――投げる!
「やったあっ!」「桜子ォ…!」

無我夢中だった桜子の上から「一本!」と声が。
「えっ?」
見上げれば高々と差し上げられた審判の手。
(今、あたし投げた…投げて…勝ったんだ!)

桜子の身体を駆け抜ける感覚。


(これかァ…確かに震えがくるほど気持ちいい…)


さてその頃、柔道場で練習中の男子たち。
「よーし、練習メニューこなしたらソッコーで会場に行くからな」
「今さら変更すんなよ巧ぃ!」
嫌味たらしい口調の杉と茂に対し、巧は「あーいーよ」と動じた様子も無い。

それを見ていた斉藤は、
(もしかしたらすっげえ弱いヤツと海老塚あたるかもしんないし…オレ変更しよっかな…)
などと悩んでいた。

67 :マロン名無しさん :2008/10/04(土) 22:07:03 ID:???
気持ちいいって・・・
何だか桜子がエロく見えてしまった。

それにしても妙に巧と桜子の関係フィーチャーしてないか?
もしかして新たに三角関係作るつもりなのか。

68 :マロン名無しさん :2008/10/04(土) 22:31:00 ID:???
桜子ついに目覚める?w
意外と巧とは信頼関係ができていたんだね
しかし麻理特訓は効果高いなぁ

69 :1/3 :2008/10/05(日) 21:18:23 ID:???
第115話 桜子、口は災いのもと

「ただ今より二回戦を行います!赤、佐鳴高校…袴田さん!」
高校チャンピオンの袴田さんの試合とあって、会場中の視線が一気に集まる。
「さすがだなー。袴田サンが出てきたらもう会場全体が注目しちゃって」
「そうですね」
「二回戦からなんかじゃなくてさ。決勝戦までシードしちゃってもいいくらいだったりして」
「そうですね」
「やっぱり高校日本一だからねえ。ちなみにシード選手だからこの試合が今日、初めてなんだよね」
「そうですね」
「……ロッテの右のエースといえば?」
「荘ですね」そーかあ?
などという桜子と麻理の掛け合いをよそに、袴田さんの試合開始。

袴田さんは開始直後、鋭い小内刈りで技ありを取り――。
「は、早いっ!」「組んだと思ったらいきなり…!」
倒れた相手にそのまま肩固めに入る。「あら、もう!?」「早すぎ…!」
「うまいっ!足払いから寝技をきめるまでの全部の動きにまったくムダがない!」
生袴田さんの試合を間近に観て、大興奮の麻理である。

そして、彼女のファンは麻理ばかりではなかった。
袴田さんの華麗な立ち技をもっと見たかったと残念がる他校の選手たち。彼女らに桜子が声をかける。
「あの、あなたは…?」「何を隠そう…袴田サンとはおともだち」
桜子の発言にツインテールを跳ね上げて驚く。
「あの…おともだちっていったいどうゆう…」「ウフフフ」

「はっ」「きり」「いっ」「て…」「タ・メ・ぐ・ち!」
「すっごおおーいい!」

70 :2/3 :2008/10/05(日) 21:19:23 ID:???
戻ってきた袴田さんにファンの子たちを紹介する桜子。調子づく彼女に保奈美と麻理が苦言を呈する。
「桜子、袴田サン迷惑してるよ、きっと」
「バチが当たりますよ、袴田サンに失礼なことすると…」
まるっきり神様扱いである。

袴田さんとのひと時を終えて満足げなファンの子たちは桜子に礼を言う。
「でも、袴田サンとお知り合いなら海老塚さんってきっと強いんでしょうね」
「そんなことないない。あたし白帯だもん」
桜子は帯の色を強調して見せるが、彼女らはそれを謙遜としてしか受け取らなかった。
「ワザと段をとってないのよ」「実力は2段以上だったりして」
「ちょ、ちょっと待ってよ」
「試合観ますよ」「応援させてもらいますね」
「あ、あの……」
妙な期待をかけられてしまった桜子。全く自業自得であった。

そして……。
麻理の二回戦。先の試合に続き、足払いから一本背負いを奇麗に決めて一本勝ち。
「ひえ――あのコもすごく強いっ!」
「やっぱり袴田サンみたいに強いひとの周りには強いひとが集まるのね」
「海老塚サンなんて、もっと強いのよ。後輩があんなに強いんだもん」
「…………」
どんどん追い詰められていく桜子。

「麻理ちゃん、あんた、もう負けてもいいよ」「えっ?」
「あんたがこれ以上勝つとあたしの立場がどんどん悪くなるの!」
最低すぎる先輩である。
「桜子、冗談でも怒るよっ!」
とにかくあの子たちの誤解を解かなければならないが――。
「赤、浜名湖高校海老塚さん!白……」
「ガチョ――ン!もー間にあわない!」

71 :3/3 :2008/10/05(日) 21:20:26 ID:???
「もう、桜子ったら…こうなったら勝てればいいんだけど…」
心配げな保奈美に麻理が言う。
「大丈夫ですよ。桜子先輩センスいいから」
しかし――桜子は組み際の出足払い一発で、あっさりと有効を取られてしまう。
そのまま寝技を狙ってくる相手に恐れをなし「こ、来ないでえ!」慌てて逃げ出す。
そのまま場外に出て審判の「待て」がかかり、再び開始線に。
「指導!」「は?あっし?」
今の桜子の行動がワザと場外に逃げたと思われ、反則を取られてしまったのである。

(足元はスキだらけだし、自分から場外に出ちゃうせい。やっぱり素人なのか?)
もう一度、足技で揺さぶりをかけてくる相手に、
(倒れるっ!キャ――ッ!)
桜子は無我夢中でしがみついていた。
「ああっ!」「これは……」
「あっ、あっ、あっ、あ――っ!」

「一本!」
「朽木倒し!」「さっきと同じ足払いを今度は返した!」「ねらってたんだ、スゴイ!」
(あはっ!無我夢中でしがみついたのがキマッちゃッたみたい)
「よかった…けど。無我夢中でしがいみついただけとか?」
「そこでキマッちゃうのがセンスなんです」

その頃、浜高柔道部の男子メンバーは、練習を早めに切り上げ学校を出るところだった。
「よ――し、武道館へいくぞっ!」「自転車軍団ゴ――!」
「小学生かよ!」(恥ずかしい…)

72 :マロン名無しさん :2008/10/05(日) 21:24:53 ID:???
去年は不調だったけど今年はやってくれると信じているぜ>荘
5年連続2ケタ勝利は伊達じゃねえ!

73 :マロン名無しさん :2008/10/06(月) 00:01:50 ID:???
センスというよりも、筋力・・・も・・・

74 :マロン名無しさん :2008/10/06(月) 06:22:35 ID:???
桜子・・・三バカと同レベルのアホだぞ・・・
勝ててよかったが

75 :マロン名無しさん :2008/10/06(月) 15:38:42 ID:???
可愛い子多いな女子柔道。
ちょっくら柔道場行ってくる。

76 :マロン名無しさん :2008/10/06(月) 20:51:32 ID:???
桜子何気に強いなww

これがセンスってモンか...
確かに凡人は10倍努力しても天才には敵わないんだよなー



>>75

無茶しやがって...

77 :1/4 :2008/10/06(月) 21:00:54 ID:???
第116話 桜子、案ずるより産むがやすし

「よっ」「こら」「しょっ!」
「げ――っ、また勝った!」「背負い投げばっかしオール一本勝ちよっ!」「すごい一年生!」
試合が進むにつれてその実力を認知される麻理。それに対し、
「やあっ!」
「こっちもエンジンがかかってきたみたい!」「さすがに強い!48キロ以下の女王!」
不動の強さを見せつける袴田さん。決勝はこの二人かという声もささやかれ始めた。

その頃、桜子は――。
「小内刈り、さがったところを、背負い投げ。思いっきり飛び込んで」
麻理を相手に隅っこで技のおさらいをしていました。

なにしろ桜子にはこのコンビネーション以外の持ち技がない。それでも一回戦はそれで勝ったのだ。
「うん、あれは気持ちよかった!よし!もういっかいあれをキメるぜよ!
 というワケでおさらいおさらい。小内刈り、背負い投げ」
(試合場の隣で打ち込みをしてるひとはよく見るけど…本当におさらいをしてるひとっていないだろうな)

「白、浜名湖高校 海老塚さん!」「赤、江田島高校 浅田さん!」
「よっしゃいくでえ豆タン!」「はいなあんさん!」「古すぎてわかんないわよ!」(答:男どアホウ甲子園)
頭の中で「小内で背負い」と繰り返す桜子。その異様な迫力に浅田さんは少し引き気味。

そして開始の号令がかかる。
「せいやあ――っ!」「小内で背負い――っ!」
思わず頭の中で繰り返していた自分の決め技を口走ってしまう桜子。
しかし運よく相手の浅田ちゃんは暗示にかかりやすいタイプだった!
小内刈りを仕掛けてくる浅田。(ってことはまさか次に背負いを…!)
その予想は的中。(やはり!)桜子は背負いに入ってくるところを背中から捕まえ、
「うりょ――っ!」
なんと裏投げで投げ飛ばした。
「一本それまで!」

78 :2/4 :2008/10/06(月) 21:02:06 ID:???
「う、裏投げ!」「女子じゃ珍しいなっ!」「でもけっこううまかったぞ」
失神してしまった浅田ちゃん。それにしても桜子に裏投げができたとは、麻理でさえも知らなかった。
「そういえば体育の時なんかに…高飛び用のマットでプロレスごっこしてたっけ」
しみじみと思い返す保奈美。
「そういうのを本番につかうなって…」

そうこうしているうちに女子個人戦地区予選も大詰め。準々決勝に進み、佳境に入っていく。
まずベスト4一番乗りを果たしたのは、優勝候補ナンバーワン。
立ち技、寝技、すべてにスキのない高校日本一の実力、袴田今日子!

そして今大会の台風の目、脅威の新人来留間麻理。
ここまでの4戦をすべて背負い投げで一本勝ちしてきて会場中のど肝をぬいた。

昨年、総体、選手権と2位に終わり、打倒袴田に燃える誠愛女子高笹ヶ瀬一子。

そしてベスト4残る一人は……。
(よ――し今度こそ小内刈りと背負い投げの連続技、成功させちゃうもんね)
相手の刈る足しか見ていない桜子、偶然にも相手が仕掛けようとしたのと同時に足を出す。
(ありゃっ?なんか違う足を刈ったよーな…!?)
「一本それまで――っ!」

「うわ――っ、見ました?相手が背負い投げかなんかねらって入ってくるところをすかさず刈りましたよ」
感心する麻理。しかし今のは限りなく偶然っぽい。
「ほら、自分でもよくわかってないってカンジだよ、あれは…」
龍子先生の指摘どおり、呆けたまんまの彼女。
(まっ、よしとする。勝ったみたいだから)
確かに運動神経、反射神経は優れているが、はっきりいって悪運の強さでここまでこられたという…。


“歩く万馬券”海老塚桜子!

79 :3/4 :2008/10/06(月) 21:03:36 ID:???
その頃、自転車軍団浜高柔道部、武道館に到着。
ずっと全速力で走ってきただけにさすがに消耗も激しかった。
「特に巧は」「よくこのペースについてきたなあ」
自転車通学ではないミッタンを後ろに乗せてきたために、既に疲労困憊の巧であった。
「お、おまえらな〜」

女子の大会を直に見るのは初めてのメンバー。中も女の子ばかりと言われ、思わず固まる。
「ほれ杉、ビビってんじゃねえよっガラにもなく!」
「おまえらだって立ち止まってんじゃねえかよ!押してんじゃねえよミッタン!」
「同時にいこうぜ、同時に!」
後輩たちの前で情けない姿を晒す杉たちだった。

準決勝を控えて入念に準備をする袴田さんのところにようやくやってきた石塚と豊。
袴田さんのことしか頭に無い石塚に、ご立腹の佐鳴高女子柔道部員のお二人。
準決勝の相手を尋ねる石塚に、袴田さんは複雑な表情をする。
「それがね、聞いたら驚くだろうな……」

「なっ…!?」「ウソだろっ!」
「ウッソ!じゃないよ〜ん」
ここまで桜子が勝ち残ったという奇跡のような展開に驚愕の杉たち。
「信じられるかあ〜!」
「当たる相手が全員病気かケガでキケンしたのか!?」
「ま、まさか一服もったとか!?」
「ハッ!なんとでもおっしゃい!」
どれほどありえないようなことではあっても、それは紛れもない事実。
「本当ですよ、桜子先輩すごかったんですから!」
「全部一本勝ちよ、いちおう…」
「見てたあたしたちだっていまだに信じられないけどね…」
桜子の肩にポンと手を置く巧。
「海老塚!」「なによ?」「よくやってくれた。ありがとう!」
ものすごくイイ笑顔を彼女に向けるのであった。
(ホラホラみんな百円ずつ出せ!海老塚にかけてよかったあ――っ!)

80 :4/4 :2008/10/06(月) 21:04:37 ID:???
(こ、こんなことになるなんて…俺、どっちを応援すればいいんだろ…)
青ざめる豊をよそに、準決勝第一試合が始まる。

「赤、佐鳴高校 袴田さん!」
「おおっ!」「待ってました畳の上の天使!」

「白、浜名湖高校 海老塚さん!」
「ん、よしっ!」「し――――ん」

(なんだか妙な展開になっちゃったなあ…豊には悪いけど…)
(もう、これこそダメでもともとだもんね。かえって気がラクだよ)
さまざまな思いが交錯する中、試合開始。

「オレたちはどっち応援すりゃいいんだ?」
「うーん、オレも悩んでる」「わたしも…」
「こらこらこらーっ!」
何とも薄情な仲間たちに囲まれた桜子だった。
(桜子…かわいそう)

81 :業務連絡 :2008/10/06(月) 21:05:59 ID:???
次回は一回休載して、単行本12巻のおまけを紹介します。

82 :マロン名無しさん :2008/10/06(月) 21:08:34 ID:???
浅田さんかわええ

83 :マロン名無しさん :2008/10/06(月) 21:16:53 ID:???
俺浅田さんに一票いれるよ

84 :マロン名無しさん :2008/10/06(月) 22:12:13 ID:???
柔道場行って来たけど下にTシャツ着込んだ男しかいなかったぜ。
浅田ちゃんかわいいな。今度超強い女子高生いるらしい福岡に行ってくるぜ。

85 :マロン名無しさん :2008/10/06(月) 23:01:50 ID:???
歩く万馬券か…鍛えたら意外と凄い戦力になりそうだな

86 :マロン名無しさん :2008/10/06(月) 23:05:17 ID:???
人気投票やんのか。おまえら誰にするよ。

87 :マロン名無しさん :2008/10/06(月) 23:29:39 ID:???
いくらなんでも袴田さんには勝てないよな
でも、もしかしたらと思ったしまうのはなんででしょ?

88 :マロン名無しさん :2008/10/06(月) 23:43:11 ID:???
>>84

無茶しやがt(ry

89 :マロン名無しさん :2008/10/07(火) 00:18:59 ID:???
桜子四強かよ!すげ〜
>>84
自転車でケツにミッタン乗せていくんだな

90 :1/3 :2008/10/07(火) 21:08:25 ID:???
○単行本第12巻 (表紙:来留間麻理 裏表紙:仲安正邦 石野雪久)

・四コマその1

1.杉「帯ギュのヒロインは誰なのか、ファンの間でも、とりざたされてきましたが…
    このたび近藤保奈美さん(16)がヒロインであると作者から正式に発表が…」
    ひゅるるるるる
2.ほ―― がん(砲丸が投げ込まれる音) 杉「きゃっ!」
  桜「ゴメンゴメン。いやー手元がくるっちゃった」
  杉「…………」

3.杉「え――このたび帯ギュのヒロインは近藤保奈美さん(16)
    そして帯ギュのアイドルとして海老塚桜子さん(16)が正式に設定されました…」

4.ひゅうっ ビィン(弓矢)
  ヒュンヒュンヒュン(ブーメラン)
  ゴン(ボーリングの球)
  杉「お――っ!」

5.杉「……(は、はかまだサンまで…)」
  袴・麻・薫「ごめんなさーい。手元がくるっちゃってえーっ!」

91 :2/3 :2008/10/07(火) 21:09:57 ID:???
・四コマその2

1.麻「帯をギュッとねマスコットガール!来留間麻理(16)で――す!」

2.袴「同じくイメージギャルの、袴田今日子(18)です」
  石(もっと目立ちたかったんだね…)

3.薫「帯ギュのプリンセス、杉薫だよ――っ!」
  杉(やれやれ…)
  龍「で、アタシは?」
  杉「えっ…」

4.龍「なんだこれは?あー?」
  (『帯ギュの女王様』のたすき)
  杉「しかし、もうこれ以上ネタが…っ!」
  桜(いちばんハマてるんじゃん)

92 :3/3 :2008/10/07(火) 21:11:00 ID:???
・技ありっの第12回 サンデーコミックス名物『絵筆をもってね!』

 選評/河合克敏 応募総数:1276点 入選:66点

 グランプリ:宮城県・RYOU〔近藤保奈美(丑の刻参り)〕

 準グランプリ:神奈川県・喜河からん〔巧・保奈美 麻理・袴田〕
        神奈川県・爆音小僧〔杉(捕まった宇宙人)〕

 topix:東京都・トロ〔安倍川高校の人達(バカめ!かかるかそんな力技が!)〕
     神奈川県・ズームイン杉田
    〔第115話のツインテールの女子(私、びっくりすると髪の毛逆立っちゃうの…)〕
     兵庫県・ガチャピン〔来留間兄妹(ゴリ押し兄妹 おしておしておしまくれ)〕
     栃木県・蒼月瑛〔袴田今日子(関守日輪モノマネ)〕
     愛知県・ビンボーマニアックス〔保奈美と麻理、お互いに相手のキャラクターに挑戦〕
    1.麻(きりり)保(にぱっ)
    2.‐3分経過‐ 麻「ぷはーもうダメ」保(へらへら)
    3.‐30分経過‐麻「保奈美先パイスゴーイ」保(にこにこ)
             桜(案外、地だったりして)

93 :マロン名無しさん :2008/10/07(火) 21:24:02 ID:???
杉はよく頑張ったと思うんだw

94 :マロン名無しさん :2008/10/07(火) 22:05:04 ID:???
イ・・・イメージギャル・・・

95 :1/3 :2008/10/08(水) 21:02:43 ID:???
第117話 桜子、袴田さんに挑戦

「しかし驚いた。海老塚がここまで頑張ったとは…なんでこんなんなると予想できたんだ、巧?」
「真のギャンブラーだから。なんつって、オレもまさかここまでヤツが生き残るとは予想してなかった」
袴田さんもまさか桜子と対戦することになるとは思わなかったのだろう。
その表情にやりにくそうな戸惑いの色がうかがえる。
「でも、そんなことでスキができると実力的に数段劣っているはずの海老塚に…よもやの不覚をとることも……」
「ないない絶対ない!」
袴田今日子親衛隊を結成していた杉たち三人、巧の言葉を否定する。

ともかく仕掛ける桜子。しかし袴田さんがその襟をつかみ、一瞬動きが止まる。
そこに奇麗に合わせた出足払い。「あっ、たっ、たっ!たっ!」
「あれっ!?」あっさりと転がされる桜子。
「桜子サン!」思わず大声を上げる豊。
判定は「技あり」。

「ああ……!」(やっぱり袴田サン強すぎる…)
実力差のありすぎる勝負に、応援さえできない保奈美。そのとき、巧の声が飛んだ。
「ほら、ボケッとすんな海老塚ァ!寝技がくるぞっ!」
「ひゃ――っ!」巧の声に反応した桜子。
抑え込まれかけながら「もうヤケ!」と、その驚異的な軟らかさで体を半回転。
着地と同時に「とうっ!」エビかタコのように後方に脱出。
「おお――っ!?この軟体動物!」「逃げ切れた!」

立ち上がった桜子は「待て」の号令も待たずにそのまま袴田さんに飛びかかる。
意表を突かれた袴田さんは、桜子にこれ以上ない組手を取らせてしまう。
(とった、とれた!今しかないっ!思いっきり飛び込んで!)

(返されるのを恐れるなっ!)

桜子の背負い、判定は――。
「技あり――っ!」

96 :2/3 :2008/10/08(水) 21:03:57 ID:???
全国優勝の袴田さんが投げられたことで沸きあがる喚声。
「おおっ、投げやがった!」「うそみてえっ!」「奇跡だこりゃ!」
杉たちもこれには驚きを隠せず、
「あんたら袴田サンの応援してたんじゃなかったの?」
龍子先生のツッコミを受ける。「あ!」
複雑そうな目で試合を見守る麻理――。

(信じらんない…信じられないよ。袴田さんを投げられたなんて…こんなことって…)
自分の為し遂げたことに自分自身で動揺する桜子。そして袴田さんは…。
(あやまる、海老塚サン。あなたを軽く見ていたこと…)
ふくらはぎを軽く叩くような、ごく浅い大内刈り。
それ一つで桜子の体勢がかくんと崩れる。そして、
「やああっ!」
体落とし一閃。審判の手が高々と上がった。
「一本、それまでっ!」
何が起こったのか分からないという様子の桜子に、袴田さんが微笑みかける。

「海老塚サン。終わったよ」
「は…はい」

「…………」
その一部始終を見届けていた杉たち。
「あ〜〜〜〜あ……」
「ん?なんだ?タメ息なんかついてェ?」
「うっ!」
ニヤニヤと指摘する巧に彼らは言葉を詰まらせた。

97 :3/3 :2008/10/08(水) 21:05:31 ID:???
戻ってきた袴田さんを労う石塚と佐鳴女子部員たち。
まあ、豊は桜子が負けてしまって暗かったが…。
「アレさ、ラストけっこう真剣になったでしょ」
石塚の問いに袴田さんは答える。
「真剣じゃなきゃ…勝てなかったと思う……」

「がんばったね、桜子。あの袴田サンから技ありとったんだもん。スゴイよ」
保奈美からタオルを受け取り、桜子は汗を拭う。
「ありゃまぐれ、ホントに。袴田サンぜーんぜんうわてだよ」
落ちこんだ様子の無い桜子。そんな彼女を杉たちは眺める。
(まったく海老塚と袴田サンじゃ勝負になるワケねーってわかってたのに…)
(一瞬、もしやって思っちまったなあ)

続いて準決勝第二試合。
「赤、誠愛女子高 笹ヶ瀬さん!」「白、浜名湖高 来留間さん!」

「さあ、麻理ちゃん、出番よ。落ちついてね」
「ハイ。いってきます」

「よいしょっ!」
「一本!」

「に、29秒……」
準決勝まできてなおこの秒殺劇に、巧も目が点。
「こ――のおばけコアラめ」

98 :マロン名無しさん :2008/10/08(水) 21:06:18 ID:???
なんだかんだでガッカリする男連中が妙にかわいかったぜ

99 :マロン名無しさん :2008/10/08(水) 21:58:37 ID:???
誠愛女子高って、なんか卑猥な響きがする

100 :マロン名無しさん :2008/10/08(水) 22:06:12 ID:???
袴田vs海老塚戦はまあ無難な所に落ち着いたな。
一矢報いたものの王者の壁は高かったという感じで。

101 :マロン名無しさん :2008/10/08(水) 22:21:52 ID:???
>>99
考えすぎだろ、このエロ助さんめw

102 :1/3 :2008/10/09(木) 21:07:43 ID:???
第118話 憧れを超えて

「えらいぞ久留間!」「ここまで勝ち残るとはっ!」「会場中を茫然自失させたぞっ!」
「それじゃ会場中が気が抜けてボーッとしてるって意味よ」
戻ってきた麻理に投げかけられる仲間たちの賞賛。
「オーストラリアの猛獣!人食いコアラ!」「……なにそれ?」
それは桜子の考えた麻理のリングネームというか異名というか、そんなものらしいが。
「人食いコアラ、いいねえ!語感が!」「どこが!」
「ひよこ番長って、どう?イメージ的に?」「えっ、ひよこ饅頭?」
桜子の提案に保奈美たちものっかり、もうボケるボケる。
そこで龍子先生、「ズバリ一撃必殺娘ってのは?どないだ?」年長者だけあってまともなことを言う。
「しかし、“娘”ってのはさすがに古いな、センスが」「銀座カンカン娘か?」
生徒の心無い言葉に先生は心に傷を負った。さらにはミッタンが、
「“娘”じゃなくて“少女”にしよう“一撃必殺少女”」
というものの、「あっそれロリコンぽくてヤダっ」と即却下。
話は一向にまとまらず、本人の意見を聞くことに。

「あの――一撃必殺なんとかでもいいんですが……できればその……
 “セクシーダイナマイツマリリン”と……」

「…………」
あまりに身のほどを知らない麻理に、突き刺さる皆の冷たい視線。
「……いいです。“一撃必殺なんとか”で……」

まだ決勝戦があるというのにはしゃぎまくる浜高の様子を遠巻きに眺める佐鳴の面々。
その中で、袴田さんが真剣な面持ちで呟く。
「でも確かに1年生が決勝進出してきたのだもの、それだけでもスゴイけど…
 あのコの本当の実力よ。ひょっとしたら優勝しちゃうかもね」
「えっ?」「今日子…」「フフ…なあんてね」
冗談めかす彼女であったが、石塚はそこに何かを感じ取っていた。

103 :2/3 :2008/10/09(木) 21:09:26 ID:???
「麻理ちゃん、ちょっといい?」
試合直前の麻理に話しかける保奈美。
「袴田サンとの試合、本当に大丈夫?」「なにがですか?」
「麻理ちゃん、袴田サンのこと尊敬してるんじゃない?声かけられただけで緊張しちゃうくらい」
返す言葉の無い麻理。実際、一回戦のときはそれで機械のように固まってしまったのだ。
「保奈美先輩…袴田サンって3年生でしょう。
 総体が終わったら、もう試合に出てこないですよね」
「そうね、きっと大学に入ってからでしょう、復帰は」
しかし、おそらくそのときには、彼女は県内にはいない。
「最後じゃないかもしれないけど、最後になるかもしれないね……どうする?」
保奈美の静かな問いかけに、麻理は強い意志をもって顔を上げた。

「わたし袴田サンと試合したい……試合して勝ちたいです」

「憧れてたんだものね」「ハイ!」
力強く返事をする麻理に、迷いはなかった。
(保奈美ってば試合前の麻理ちゃんを力づけちゃって…いいマネージャーさんになったもんだよ)
感涙にむせぶ桜子。保奈美もまたこの部で成長を遂げていたのだ。
「そろそろ時間だよ、麻理ちゃん」「ハイ!」
試合場にはすでに袴田さんの姿が。彼女の視線が麻理を射抜く。
「麻理ちゃん、お願いだよ。あたしの敵とってね」「ハイッ!」 

石塚は少し離れた位置から試合場を見守っていた。
(会場中の誰もが袴田サンが勝つと思ってるだろう…なにしろ全国優勝した経験があるんだ。
 確かに袴田サンはこのあたりの柔道社会じゃスターだ。県下でこんな活躍した選手は久しくいない。
 しかし、あの久留間ってコがもっとすごい女子柔道の常識をひっくり返すような
 スーパースターの素質を秘めたコなら……)

「ただ今より48キロ以下級決勝戦を行います!」
「赤、佐鳴高校 袴田さん!」
「白、浜名湖高校 来留間さん!」

104 :3/3 :2008/10/09(木) 21:11:01 ID:???
「いけ――っ、来留間!死にものぐるいでやれば勝てるかもしれんぞ!」
麻理の優勝に500円賭けてしまった茂の熱のこもった応援。
それはともかく、こうも周りが女子ばかりでは声援をするのも恥ずかしい。
「始めっ!」
今まで背負い一本で勝ち上がってきた麻理。袴田さんもそれを警戒する。
保奈美は巧に予想を尋ねる。麻理のいいところが出せれば互角にも持ち込めるだろうが、
相手が袴田さんほどの凄腕となると――。

「奥エリ!」麻理の奥襟を取る袴田さん。
女子の試合では奥襟を6秒間しかつかむことができない。だから技をかける瞬間にのみつかむことになる。
「せいやああっ!」
袴田さんの深く鋭い大内刈り。判定は「有効!」
麻理を刈り倒しておいて、そのまま流れるように寝技へと移行する。
「麻理ちゃん!」「いかん、つかまるぞ!」
すでに腕を取られている麻理。そのままひっくり返されたら抑え込みが決まる。
(いちかばちか…!)
「やああっ!」
そこで麻理は自ら身体を返す。意表をつかれてつんのめる袴田さん、その左腕を逆に取り返す。
(し…!しまった……!)
完全に極められる前に袴田さんは麻理を腕にぶらさげたまま立ち上がり、そこで審判の「待て」がかかった。

「麻理ちゃん!自分のペースで柔道してっ!相手に合わせちゃダメ!」
保奈美の声が飛ぶ。麻理は流れる汗を拭い、「ハイッ!」と元気よく返事。
そして試合再開――。
(うっ!急にスピードが…!)
麻理の動きが変わり、袴田さんは一瞬戸惑う。
そこで麻理は袴田さんの送り足を払い、「シュッ…」

「んしょっ!」

背負い投げ!
「おおっ!」「出たァ!“んしょっ!”だっ!」

105 :マロン名無しさん :2008/10/09(木) 22:01:44 ID:???
ひよこ番長ぴったりw

106 :マロン名無しさん :2008/10/09(木) 23:09:41 ID:???
「出たァ!“んしょっ!”だっ!」 とか言っているが、んしょんしょ言っていた覚えはない点

107 :マロン名無しさん :2008/10/10(金) 06:29:09 ID:???
前回のおばけコアラもぴったりw
前にロープのぼりしてたしw

108 :1/2 :2008/10/10(金) 21:00:19 ID:???
第119話 新しいスター

麻理の放った背負いが女王・袴田を畳に這わせる。
瞬間、静まり返る会場。審判の裁定は――。

「技ありーっ!」

「やっ…」「やったあっ!ポイントで上まわったぞ!」
袴田さんの表情が変わる。投げた直後の隙を狙った双手刈り、だが、麻理はうつ伏せで逃れる。
巧や保奈美ばかりでなく、杉たちも必死の表情で麻理に声を飛ばしていた。
麻理はしっかり脇をしめて追撃の寝技を防ぎ、そこで審判の「待て」がかかる。
激しい攻防に息を切らせる両者――。
ところで、杉たちは袴田さんの応援をしないでいいのか。

「そんなこといってる場合か!来留間が袴田サンに実力で勝つってことはなァ…!
 来留間は高校日本一の力をもってるってことだぞ!
 すでにこいつは高校総体決勝と同じようなもんだっ!」

「いやあっ!」
強引に仕掛ける袴田さんの背負い。しかし麻理は引き手を切ってそれを潰す。
さらに袴田さんは麻理のバックを取って裏投げにいくが、それさえ麻理は反応して防ぐ。
「またこらえたっ!」「試合巧者袴田につけいるスキを与えないとは!」
「あの1年生ホントに強いっ!」
もはや王者対若き挑戦者の図式ではなくなっていた。
残り時間一分、これはひょっとして、全国優勝の袴田さんが地区の決勝で…?
「すごいよ麻理ちゃん。あんたならやれる、袴田サンに勝てる!」

109 :2/2 :2008/10/10(金) 21:01:46 ID:???
袴田さんの背負いや体落しで、小さくすばしこい麻理を投げるのは相当に難しい。
これは本当に勝てるかもしれない――期待は膨らむ。

残り一分。そのとき袴田さんが観客席の石塚を見遣る。
(やるしかないよ。こんな時のために練習してたんだから…)(うん!)
視線で交わすやり取り。そして袴田さんが勝負に出る。
(このコはわたしの技を背負いと体落ししか知らない…さあ、こいっ!)
「たあっ!」
真っ直ぐに向かっていく麻理。(きたっ!)

「ああっ!内股!」

これが袴田さんの秘密兵器。元来、内股は自分より背の低い相手を投げるのに向く。
「……!」
しかし麻理は反射的に、その内股をすかし――。

「やあっ!」

そのまま袴田さんを畳に叩き付けた。
「技ありっ!」
審判の手が高く差し上げられる。

「あわせて一本!それまでっ!」

「おお――っ!」「やったっ!やってくれたよっ!」「麻理ちゃんすごいっ!」
大盛り上がりの浜高ベンチ。
「先生!見た?先生!麻理ちゃんが麻理ちゃんが〜!」「ウンウン!」
涙ぐむ桜子。
麻理の活躍を素直に喜ぶのが照れくさいのか、仲安は鼻をこする。「…ちくしょう!」

高校総体地区予選女子48キロ以下級 優勝・来留間麻理――。
これがその後、天才少女と呼ばれ、女子柔道界を湧かせるスーパースターの高校デビュー戦であった。

110 :マロン名無しさん :2008/10/10(金) 21:30:04 ID:???
天才少女?一撃必殺なんとかじゃなかったっけ

111 :マロン名無しさん :2008/10/11(土) 01:46:49 ID:???
ちょっと設定強すぎじゃない?

112 :マロン名無しさん :2008/10/11(土) 02:00:31 ID:???
まあ、すーぱーすたーって事ならいいんじゃない?
主人公がそれだとちょっと困るけど、サブキャラだし

113 :マロン名無しさん :2008/10/11(土) 20:33:56 ID:???
今回は麻里の情報がないって点が有利だったとはいえ
既に実質日本一だからなぁ。
案外こいつだけ浜高より先に行っちゃったりして。

114 :マロン名無しさん :2008/10/11(土) 20:38:04 ID:???
オリンピック金メダルか!
やけにうるさい祖父がいたりしてw

115 :1/3 :2008/10/11(土) 21:01:58 ID:???
第120話 県大会へ

「48キロ以下級優勝!浜名湖高校1年 来留間麻理 初段!」
表彰式で賞状を受け取る麻理であったが、その表情はなぜか浮かない。
「袴田サンに勝っちゃったのがショックだったのかな」
「えっ、なんでよ?」
心配する保奈美にデリカシーに欠ける巧が尋ねる。
「麻理ちゃん袴田サンに嫌われたくないだろうし…」「えっ、ちょっと何それ?」
「あっ、そう尊敬してたんだって、憧れてたんだって…」「アコガレてたあ?」
「そ、そうじゃなくてなんていったらいいか…
 もう!変なイミにとらないでよっ!純粋なんだから麻理ちゃんはっ!」
巧にはどうして保奈美が怒ったのかさっぱり見当がつかなかった。
「フッ、むずかしいもんじゃよ、女心はな、巧クンとやら」

最後に大会会長の山田先生から総評――というところで露骨に帰ろうとする浜高メンバー。
「上位の選手のみなさんは、“続く県大会”でも我が地区の代表として――」
その言葉に思わず麻理は振り向く。笑顔を返す袴田さん。そう、まだこれで終わりではなかったのだ。
まあ、麻理もすごいが桜子もよくやった。3位決定戦では負けてしまったので結果は4位。
表彰式には並べないが、初出場でこの成績は立派である。

試合が終り、これで気楽になったと伸びをする桜子だったが――。
「なお、今回から女子が年々盛んになってきたことを考慮して、
 出場メンバーをこれまでの3位以内までだったのを5位以内までとすることになりました」
彼女はそのまま後ろに倒れた。
「よかったな、海老塚。県大会だってよ」
「いいと思うんならアンタにゆずる」
もちろん、そんなことはできません。

116 :2/3 :2008/10/11(土) 21:03:37 ID:???
県大会での再会を約束する麻理と袴田さん、とついでに桜子。
今年から男子の団体戦も内容が変わり、従来の地区予選を取り止め、全県下103校を一堂に集めて
県大会が催されることになった。浜高と佐鳴の対戦成績は一勝一敗。今度こそ決着をつけようという石塚。
そうなのだ、次は県大会団体戦だ。あと一か月しかないのである――。

「おーい、そこの七人のバカ!」「あたしらもういくんだけど…」
夕陽に向かって格好をつけている浜高メンバー。
そこに出てきたのは浅田さん、それに袴田さんファンの女の子たち。
「ん?」「なにあれ?」「ねーちょっとおもしろいよ」「さっきから夕日を見つめてんの」
気がつけば女子は龍子先生の車に乗って会場を去ってしまった後。
置き去りにされたメンバーに集中する、他校の女子選手たちの視線。
「わっ!ちょっと先輩うしろ!」「げっ!」「いつの間に!」

そんなこんなで女子個人戦も好成績のうちに終り――浜高柔道場にて。
一か月後にひかえた県大会にむけて、部員10人一丸となって……。
「よしOK」「3秒間念じるんだ」「手と手があたっちゃダメだぞ」
遊んでいた……。
「よーし、今度は上から手をもどせよ」
「でもさーミッタンだよお、あがると思う?」「でも、できたらすごいです」
巧たち四人ですうっと持ち上がるミッタンの身体。
「おおっ!」「あがったよおい!」「すごいすごい!」「東洋の神秘!」

「え――い!何をやっとるかあっ!」

「でたっ!年がら年じゅうこのパターン!」
竹刀を振り上げ龍子先生登場。サングラスが誰かに似ている気がするが、気にしない方向で。
「ちょっとまって、先生!」「時計時計!」「なにい!?」
そのとき、ちょうど時計の針が4時を指した。
「礼!」「お願いしまーす!」
時間できっちりケジメをつけるとなれば、龍子先生も口は出せない。
「よーし、体操ーっ!」「うぉーういっ!」
「男子が考えたかけ声ってなんか下品だよね」「体育会系の常ですよ」

117 :3/3 :2008/10/11(土) 21:04:53 ID:???
そのとき、道場の戸が開いた。
「ここが浜高の道場だ、西久保君」
「へえ――結構広いっすねえ。これだけありゃ十分、上等!」
典善に連れられて姿を見せたのは県警の西久保さん。
今日から典善が来られない日は彼が練習を見てくれるという。

柔道の練習は一度に二時間半が限界だ。それ以上は集中力がもたない。
それゆえ、強豪の学校は朝や昼休みなどを練習にあてたりする。(中には夕食後練習したりとか)
「まっ、それはおいおい考えるとしてだ。とりあえず放課後2時間半の練習は、
 このオレがしっかり見張って手ヌキなんざいっさいできないようにするつもりだ」
厳しい態度の西久保さん。彼の目に女子部員の姿がとまる。
「おまえら女のマネージャーが3人もいるのか?時代も変わったもんだな」
彼女らが道着まで着ているのを不思議がる西久保。
「ちがいまーす。私たちは柔道をしてる部員です」
麻理の一言に西久保は停止。典善は彼を引っぱっていき、小声でぼそぼそ。
「そうだったのか!今じゃ高校にも女子柔道があったのか!」
てっきり町道場の人たちで女子柔道をやっていると思い込んでいた西久保であった。
「ねえ、あのヒト、本当にすごい実力者なの?」「いや、強いんだけどね……」

「ほら、足がそろってるっ!」「引きがたらん!返されるぞ!」
「背負いはこうふところにはいるんだっ!」
半端ではない実力を存分に見せ付ける西久保。浜高レギュラー陣がまるで歯が立たない。
巧と組み合う西久保は強烈なハッパをかける。
「県大会じゃ三工を倒さなきゃならんのだろうっ!?そんなことじゃ三工にゃ勝てんぞ!」
その瞬間、藤田の姿が西久保に重なる。(三工!藤田!)
「せやああっ!」「ちいっ!」巧の背負いを西久保はつぶす。
(ふ――っあぶねえ、あぶねえ。あいかわらず背負い投げはさえてんな)

(藤田か…県大会でこないだの練習試合の借りを返してやる!)

「乱取りおねがいしまーす」「えーっ?」
麻理にせがまれて困る西久保だった。

118 :マロン名無しさん :2008/10/12(日) 02:11:37 ID:???
>「よしOK」「3秒間念じるんだ」「手と手があたっちゃダメだぞ」
これやったことある。
ホントにさくっと浮くんだよな。ビックリした。

119 :マロン名無しさん :2008/10/12(日) 03:05:46 ID:???
ここで西久保さんがレギュラー化(?)するとは……
完全に予想外だった

120 :1/3 :2008/10/12(日) 21:11:43 ID:???
第121話 西久保の特訓

「んしょっ!」といつもの調子で石野を投げ飛ばす麻理。
その様子を見ていた西久保は何かを考えていた。
「私としたことが外見にだまされてしまったな。あんまり華奢に見えるもんだから」
「無理もないですよ」
誰でもあんな小さな子が地区優勝の実力者だとは思えない。龍子先生はそういう意味で言ったのだが。
「男だったのか」
西久保の理解はまるであさっての方向をむいていた。

「女のコなんですけど…」と先生が否定するが、西久保は信じようとしない。
「部員の中で一番男らしくないのに、Tシャツ着せて女子に化けさせましたね!?」
「なんでそんなことをしなくちゃなんないんですか、わざわざ!」

西久保は麻理を呼びつける。「腕を曲げて力こぶを見せて見ろ」
素直に従う麻理の腕を――西久保は思い切り手でつかんだ。
「いた――っ!」「柔らかすぎるな。やっぱり女か」
「あっ、麻理ちゃん泣いてるっ!ひどい、それでも大人?」
抗議する桜子に対し、西久保の反論。
「そのコが男か女か知りたかったのだ!筋肉はウソをつけん!女だ!」
「なにを、わけのわからんことを…!」

121 :2/3 :2008/10/12(日) 21:12:45 ID:???
時々バカなことをするが、指導者としては西久保は最高であった。
乱取り中、ミッタンに投げられた杉を呼びつける。
「おまえ、さっき三溝に大外刈りで投げられたな?」
「はあ」
「いいことを教えてやる」

西久保は杉に大外刈りをかけさせ――それをあっさりと返してみせる。
「わかったか?」
「か、刈りにきた足の股のそばんトコつかまえといて…残った一方の足を刈った…?」
これならでかい相手でも転ばせることができるだろう。
しかし、この技は相手が大外刈りをかけてくると分かっていなければ仕掛けられない。
「あたり前だ。観察するんだよ、敵の動きを」
技を仕掛けてくる前に刈ろうとしている足を見るかもしれないし、
足のさばきや組手の取り方、いくらでも雰囲気を匂わせるものはあるものなのだ。
「でかい奴の技は大外刈り、大内刈り、払い腰、内股、そん中から雰囲気でヤマをはれ」

この返し技を身につける練習。スキあらば大外をかけるという西久保に杉は元気よく返事。
(ククク、これをマスターすればミッタンも敵じゃねえ。見てるがいいぜ)
などと考えているその目の前で、巧がミッタンを背負いで投げ飛ばしていた。
(あっ!巧!てめ、この、先に…!)
隣に気を取られたその一瞬、杉自身が西久保の大外で投げられていた。「ありっ!?」
「なにマトモにくらってんだ!かえす練習だろ!」「ひ――」

今日は調子の良かったミッタンを投げた巧。彼を前にしてミッタンは思う。
(今、この地区で体重無差別でやったら、優勝しちまうかも知れねえ。
 たぶんそうなると、最大の敵はオレでも斉藤でも石塚でもないしな…たぶん…ヤツだ)

122 :3/3 :2008/10/12(日) 21:13:59 ID:???
県立三方ヶ原工――時間無制限本立ち乱取り5連続、
選手は相手をとにかく投げるまで交替させないという猛特訓。
藤田は五人抜きを5分そこそこでやってのけた。
「こんなに強いヒトが高校でまだ一度もタイトルをとってないとは…」
「これからだよ。柔道の有名人は皆、高二でタイトルとってっからな」
他の選手たちの調子も良い。次々勝ち星をあげていく。
平の部員でもそこらのやつには負けないぐらい層の厚い三工なのだが。
(今年の三工は普通の相手なら、どの選手が先鋒でも五人抜きできるというワケだ)
自信満々の吉岡先生。(それに今年は…ヤツもいる…)
彼の視線の先には重量級個人戦決勝でミッタンを倒した平山の姿があった。


(くそう、なんで?昨日は大外刈りで投げれた杉にかえされた)
返し技を身につけた杉に翻弄されるミッタン。その彼を西久保がまた呼びつける。

「いいことを教えてやる」

桜子は男子の方の異変に気がつく。
「最近、一日おきに強いヒト弱いヒトいれかわってるような…」

交替時間になり、再びミッタンが杉に挑む。
大外刈りを仕掛けるミッタン。
杉はさっそく例の返し技にいこうとするが、実はその大外がフェイント。
不用意に踏み込んだ足を逆にミッタンに払われてしまう。
(くっ……裏の裏を…!)
(ヒヒヒやりましたよ西久保さん)

「なんだか、最近みんなの目つきが真剣味をおびてきましたよ。
 この調子で盛り上がってくれるといいんだけど」
「そうスね」
(ただただ険悪になってくだけだったりして…)

123 :マロン名無しさん :2008/10/13(月) 01:04:08 ID:???
なんか柔道部物語思い出したw
「俺だけが強くなればいい」的なw

124 :マロン名無しさん :2008/10/13(月) 02:11:06 ID:???
女って力こぶ作っても柔らかいの?

125 :マロン名無しさん :2008/10/13(月) 09:50:30 ID:???
女子のプロレスラーならすごく固いのかもしれないけど 
筋肉の質は、どうしても男女で違うと思う。
西久保さんのおに!

126 :マロン名無しさん :2008/10/13(月) 14:25:09 ID:???
おばけコアラでもやはり女並みの筋肉なのか

127 :マロン名無しさん :2008/10/13(月) 17:18:00 ID:???
ミッタンに全く強い印象がないから
>最大の敵はオレでも斉藤でも石塚でもない
のとこで、何を言ってるんだお前はと思った。

128 :マロン名無しさん :2008/10/13(月) 17:25:27 ID:???
体積が最大

129 :マロン名無しさん :2008/10/13(月) 18:11:55 ID:???
ミッタンなんかより宮崎や杉の方がよっぽど強そうだもんなあ。
ぶっちゃけこの地区の重量級ってかなり深刻な人材不足じゃね?

130 :1/4 :2008/10/13(月) 21:15:43 ID:???
○第2回帯をギュッとね!キャラクター人気投票 結果発表!

来「前回もなんと主人公が2位という、ちょっとシャレにならない波瀾のあったこのキャラクター・ベスト・テン!
  今回はさらにひどい、いや波瀾に満ちた結果になっているようですよ」
来「まずはベスト10圏外、20位から11位まで一挙にどうぞ!」

・11位 宮崎 茂 ・12位 袴田(弟)豊・13位 倉田龍子 ・14位 杉 薫  ・15位 三溝幸宏
・16位 来留間先輩・17位 西久保さん ・18位 藤田 恵 ・19位 仲安昌邦 ・20位 ダミー山下先生/関谷和実

茂・三・龍・薫「な、なに〜〜っ!?」 
来「ごらんのように前回10位以内にいた方々が、ゾロゾロと落ち込んでいます。(ボクが16位…)
  いったい10位以内のほうはどうなっているのでしょうか? それでは第10位!」

第2回「帯ギュ」キャラクターベストテン!第10位は!
来「浅田さん、得票数36票――っ!」

・10位 浅田さん〔36票〕

茂「誰だよコイツ!?けっこーカワイイけどよ!」
薫「知らないわよこんな女!」
来「いやあ、10位からしていきなりコレです」
桜「あっ、この人ひょっとして…」
浅「そうです。桜子さんと3回戦で戦って負けた者です」
来「顔がでたコマわずかに五つ。ちなみに彼女が登場したのは、人気投票を募集した号でした。
  読者、相当この企画ナメてます」

131 :2/4 :2008/10/13(月) 21:16:41 ID:???
・9位 永田賢〔56票〕/8位 石塚孝裕〔60票〕/7位 杉 清修〔62票〕

来「いやいやこれはスゴイ。帯ギュ二大美少年が登場です」杉「に、二大だあ?」
来「この二人は女性からの支持がほとんどでした」杉「オ、オレは?」
来「それではノーマル美少年から感想を」石「前回(12位)より上ですから、うれしいですね」
来「アブノーマル美少年はどうですか?組織票とのウワサもありますが」
永「誰がそんなことを。まっ、一部に熱狂的なファンがいることは確かだけど」
来「この二人で試合したら、女性ファンの失神者がでそうです。それでは第6位いってみましょう!」
杉「ちょっ、ちょっとまって!」

・6位 近藤保奈美〔79票〕

来「あ――っ、大人しい性格が災いしてか、前回よりランクダウンの6位だ――っ」
杉「おいコラッ!」
来「最近出番がねえ…」保「少なくなっちゃって…」
杉「無視すんなってば!」

来「さあ、残るベスト5は?主人公は面目を保てるのか?
  おやあ、なんだかまだ出ていない新人もいますね?続きはまた後ほど」

132 :3/4 :2008/10/13(月) 21:19:17 ID:???
第122話 藤田家の格闘3兄弟

自宅で全日本柔道のビデオを何度も繰り返して観続ける藤田。
(小川も強いけど、吉田は最近すげえいいな。78キロ級なのに、3位だもんな。
 100キロ以上の選手を2回も投げ飛ばして勝ってるし)
一流選手の試合を参考に、研究に余念が無い。

そこにやってきたのはアマレスのウェアを着て鉄アレイを手にした少年。
「おう、なんだ、兄貴いたの?いつ合宿から帰ってきたんだ?」
藤田の弟、晶である。
「まっ、がんばってきなよ、県大会。せいぜい恥かかないように。元中学チャンピオンなんだし」
そんな弟の言い種にカチンときた藤田はその頭をはたく。
「おまえこそジュニアの大会で3位になったくらいでいい気になるなよ。アマレスなんて競技人口が少ねえんだからな」
その兄の腕を取ってひねり上げる弟。
「バカいうな!日本のアマレスはレベルが高いから関係ねえんだよっ!」
逆にその弟を投げ飛ばす兄。
「日本のお家芸つったら柔道なんだよ!だいたいそんなカッコで家ん中ウロチョロすんな、変態が!」
「注文していた新品(おにゅう)が届いたんで着たんだよ!」
「“おにゅう”だあ!?」
ついには取っ組み合いの大喧嘩に。そこに母が登場して一喝。「こらっ家ん中で暴れんじゃないよっ!」

「やっぱ、コレ思いっきり打てないな。サンドバッグほしいなあ」
庭で巻き藁を蹴る空手着の少年。そこに藤田と弟の晶が包丁をつきつけられ転がり出てくる。
「ちょっと母ちゃん開けてよ!オレ、明日試合なんだよ、もう寝るんだからよ!」
「兄ちゃんたち、また母ちゃんに怒られたのか?あいかわらず子供だなあ」
「忍!てめ、生意気なんだよ!小学生のくせに!」
「う――さぶ。いくら初夏でもこんな格好じゃ風邪ひいちまわあ!」
長男・恵は柔道。次男・晶はアマレス。三男・忍は空手。
ご近所の住人は“藤田家の格闘三兄弟”と呼び、恐れたり日夜の騒音とかで迷惑もしていた。

(県大会か…)
「ふえっくしょっ!」「うっ、きたねっ!」

133 :4/4 :2008/10/13(月) 21:20:33 ID:???
翌日――。
「もー!まだなのあの二人は!杉と巧!」
集合場所の浜松駅前に現れない二人。巧の遅刻は連載一回目からの得意技のようなものである。

佐鳴の皆も、他の学校の連中も、もう次の新幹線で出発ということで、ここで別れることに。
見送りに来た西久保さんが麻理を呼びつける。
「これが何かわかるか」「毛糸です」
西久保はそれを手の中で器用に動かし「とってみろ!」と麻理に示した。
「おおっ、こ、これは“カメ”!」「すごい!」
綾取りの高等技術に保奈美も桜子も驚く。麻理はそれを取り――。
「ゴム」「うむ、これがとれるか。やはり女だな」
彼は未だに麻理が女の子だと納得できていなかったのだ。
「あのねェ西久保さん!いま、麻理ちゃんがスカートはいてんの、ちゃんと見えてる?」

とりあえず時間が無いので副部長の斉藤とマネージャーの保奈美に部員を任せ、
間に合わないときは先に会場に向かわせることに。龍子先生は残ってギリギリまで待つ。
「先生、本当に間に合ってくださいね」
「まかせときなさい。あたしが今まで失敗したことある?」
ものすごく不安だった。

駅へと急ぐ巧と杉は同じように急ぐ男にぶつかる。
「きさま…!」「ふ、藤田…!」
「フッ…こんなところで会うとはな。なんていってる場合じゃないんだ今回だけはっ!」
状況が状況だけに三人一緒に猛ダッシュ。
龍子先生と合流し、ホームに来ていた新幹線に慌てて飛び乗ると――なぜか反対方向の車両に皆の姿が。

「乗りまちがえてしまった――っ!!」「先生――っ!」

バッグを取り落とす藤田。頭を抱える先生。
「あ――っ、どーしよ――!」「げーっ弁天島!」「やっぱし逆方向だよコレ!」
果して彼らは、間に合うのだろうか。続く。

134 :マロン名無しさん :2008/10/13(月) 21:24:34 ID:???
藤田を欠場させるとはなかなかの策士だな
え? 味方も主力二人が欠場?

135 :マロン名無しさん :2008/10/13(月) 22:13:47 ID:???
え?一人の間違いだろ?

136 :マロン名無しさん :2008/10/13(月) 22:21:56 ID:???
浅田さんに応募すると企画をナメてるなんて作者、相当この企画ナメてます

137 :マロン名無しさん :2008/10/13(月) 23:05:49 ID:???
カメからゴムってとれるか?

138 :マロン名無しさん :2008/10/13(月) 23:15:47 ID:???
カメ→ゴム

みんな気付いてないが、これはエロエロな複線……!

139 :マロン名無しさん :2008/10/13(月) 23:19:06 ID:???
>>138 な、なんだってー!!(AA略

140 :マロン名無しさん :2008/10/13(月) 23:53:54 ID:???
藤田がどんどんネタキャラ化していってるような・・・
人気順位も西久保さんにいきなり抜かれてるし。

141 :マロン名無しさん :2008/10/14(火) 00:28:04 ID:???
藤田家3兄弟は、みな名前が一文字なんだね
そこはかっこいい

142 :マロン名無しさん :2008/10/14(火) 08:02:58 ID:???
地元民としては見慣れた風景がそのまま出てきたのがうれしいな。
弁天島ふいたw

143 :マロン名無しさん :2008/10/14(火) 18:36:33 ID:???
藤田兄弟、長男だけ可愛い名前なのなwww

144 :マロン名無しさん :2008/10/14(火) 20:26:25 ID:???
三人とも男でも女でもいける中性的な名前だね
格闘兄弟なのに

苺谷先輩を思い出した

145 :1/4 :2008/10/14(火) 21:12:21 ID:???
○キャラクター人気投票 結果発表 PART2

・5位 袴田今日子〔81票〕

来「おーっと前回13位から大幅にランクアップだ!」
来「男の子からの票が多くて多くて」袴「いえーそんな」
来「お姉さんらしくしっかりしてるところがウケてるらしいですよ。この年下殺しが」袴「えっ?」
来「ハイ、次いきましょう!」

・4位 斉藤浩司〔126票〕

来「あいかわらず根強い女性人気で上位をキープ!こんな細目のどこがいいんでしょう」
斉「なに?」来「ドンドンいきましょう、いよいよベスト3の登場です!」

・3位 粉川 巧〔273票〕

来「やっぱり一位は取れなかった粉川巧!情けない、ふがいない、こんなヤツが主役だと頭にきます!」
巧「そこまでいわれる筋合いはねーよ!」杉・茂「あるある」
来「そして主人公を蹴落として堂々の第二位はなんと、なんと!」

146 :2/4 :2008/10/14(火) 21:13:25 ID:???
・2位 来留間麻理〔363票〕

来「ウチの妹、来留間麻理363票――っ!」麻「わーい!」
麻「こんなにみなさん応援してくれてうれしいです」来「いい個性もってますから、ウチのは」
巧「もちあげてんじゃないよ、文字通りに!」

来「さあついに残すところは一位のみとなりました。輝ける「帯ギュ」キャラクター人気投票、
  第一位の栄冠は…!」「あーっ!」
来「せっかくもったいつけてんのに、顔ださないでください!」桜「ありゃ見てた?」来「プンプン!」

・1位 海老塚桜子〔558票〕

来「とにかく、またもや一位だ!海老塚桜子ダントツ558票!!
  男性、女性、小学生からお年寄りまで、幅広い支持を受け無敵の二連覇達成ー!
  みなさん、『帯をギュッとね!』いちおう、少年まんがなんですけど!」
来「今、全登場人物の祝福の中、花束(ウツボカヅラ)を受けとる桜子さんです」
来「おめでとうございます。勝因はやはり柔道始めたところにありますかね?」
桜「うーん、だとしたらちょっと困りますけどね。キライだから」
来「でも、こうなるともうやめられませんね」桜「いくとこまでいくしかないでしょう!」
来「最後に、抱負なんぞを」
桜「なんぴとたりとも私の前はいかせません!」
来「と、いう結果になりました。みなさんご協力ありがとうございました。今後ともヨロシク」

147 :3/4 :2008/10/14(火) 21:14:41 ID:???
第123話 いきなりデビュー戦!

新幹線を乗り間違えてしまった巧たちは、県大会の行われる静岡市と正反対の名古屋までいってしまった。
「あっ、先生!今どこにいるんですか?えっ、名古屋を出たとこ?」
新幹線から龍子先生の電話を受けた斉藤。到着までまだ2時間ほどもかかるとあり、
とりあえず一回戦にはメンバー変更して臨むことに。
(メンバー変更って?他のメンバーつったら…)
斉藤の視線の先には一年生、石野と仲安の姿があった。「お願いだから間に合ってくださいよ〜っ!」
「それはそうだけど、いいニュースもあるわよ。三工の藤田も道づれにしてやったからね」
龍子先生のその台詞は、すぐ後ろに立っていた藤田にも聞こえていた。
「早くしてください。ボクも電話したいので…」
怖い顔で先生を睨む藤田。それはそれとして――もしや棄権かと問う一年生に、斉藤は指示を伝える。
「棄権はしない…けど最悪の場合、仲安と石野に出てもらうかもしれない」

新幹線で成り行き上対面の席に座る巧たちと藤田。
そもそも三工はバスをチャーターするはずなのだが、なぜ藤田だけが新幹線なのか。
「キライなんだよ、車が」「ハァ?」
巧にはピンと来なかったが、杉はすぐに理解する。「ははあ。車酔いすんだろ?」
図星を指された藤田。巧たちは大笑いして藤田をからかう。
「ハハ――ッ、情けねーヤツ!酔うからワザワザ別行動してんの?」
「遠足の時バスん中で前のほうに座らせられるクチだな!」
「あ――、そうだよ。うれしいかそんなに!」
額に血管を浮かべる藤田、杉を睨みつける。
「杉とかいったな。今度やる時があったら必ずてめえから一本とってやる」
「や、やれるもんなら、やってみなって」ビビリまくりの杉。
杉はこの前の個人戦、藤田に負けはしたものの、それは優勢負け。一本をとられてはいなかったのだ。
藤田とやって一本をとられなかったのは杉だけ。しかし藤田はバッサリと一言。
「負けたのが自慢になるか」「…………」何も言い返せない杉だった。
戻ってきた龍子先生は三人の険悪な空気を感じ取る。
(いくらライバル同士でも乱闘は困るし…気分を和ませねば…)
そして彼女が用意したものは。
「トランプ、やる?」

148 :4/4 :2008/10/14(火) 21:18:03 ID:???
結局、間に合わなかった巧たち。一回戦、先鋒に石野、次鋒に仲安という布陣で臨むことになってしまった。
これが初の試合となる石野は不安がるが、もちろん一年生に期待などしていない。
二人が負けても茂・ミッタン・斉藤の三人できちんと勝ちを決めるつもりである。
例え春の優勝校でも、相手が白帯とあって意気が上がる対戦者。それに対して、
「おい、石野。どうせ負けるにしても、技だけはかけていけ、経験だから。かえされてもいいからな」
「なるほど!ハイ!」のんきな浜高サイドである。
(考えてみれば運がいいなー。負けても怒られないデビュー戦なんて…強い先輩たちがいてくれてよかった)

完全にリラックスした石野。しかし、やはり素人である。
相手の安部川高校の先鋒・団吾に簡単に組手をとらせてしまう。
(あっ、これじゃエリがもてないや。このまま技かけても大丈夫かなー?)
しかも、自分が不利な状況であることも分かっていない様子だった。
背負いを仕掛けてくる団吾。その瞬間――。
「おりゃあーっ!」
石野ただ一つの持ち技、“大外刈り”が絶妙なタイミングで入る。
「一本!」

観戦していた他校の選手もこれにはビックリ。
「豪快な払い巻き込みだなー」「ああ、タイミングもバッチリだ」
「あの白帯は要チェックだぜ」「浜高か、とんでもねえ秘密兵器かくしてやがったな!」
誰もこれが偶然とは思わず、誤解と過大評価が広まっていくのであった。
石野の技を見ていなかった茂たち。戻ってきた石野に適当な言葉をかけてごまかす。
「豪快な大外刈りだよ。アレでいいんだよ」「先輩たちのアドバイスのおかげです!」
実際には彼の強引すぎる“大外刈り”は、知らず知らずのうちに“払い巻き込み”という技の形になっていた。
ともかく、デビュー戦を白星で飾った石野。その予想外の活躍に仲安は焦るのであった。
(ちくしょー、石野め。オレだって絶対一本とってやるっ!)

その頃、静岡駅に向かう巧たちは――。
「いいのかなポーカーなんかしてて」
「心配したとこでどーにもならないのよ!着く時間は新幹線に聞けってね。ほーらレイズ!」
(このヒト本当に先生なのか…?)

149 :マロン名無しさん :2008/10/14(火) 21:37:03 ID:???
レイズってことは単なる遊びじゃなくてチップを賭けてるのか……?

150 :マロン名無しさん :2008/10/14(火) 22:30:20 ID:???
きっと架空の手持ち金を設定してんのさ!・・・・・・たぶん。

151 :マロン名無しさん :2008/10/14(火) 22:41:20 ID:???
レイズってあれだろ、死んだヤツを瀕死状態で蘇生させる魔法
きっと乗物酔いで苦しんでる藤田を気遣って出た言葉

152 :マロン名無しさん :2008/10/14(火) 23:24:54 ID:???
あれ?
いつかのトイレで鉢合わせで藤田はバスの時間だとか言ってなかったっけ?

153 :マロン名無しさん :2008/10/14(火) 23:27:24 ID:???
そりゃあの時電車の時間なんて言ったらその内バレて恥ずかしいじゃないか

154 :マロン名無しさん :2008/10/15(水) 00:23:24 ID:???
もはや誰も人気投票にはつっこまないのだなw

155 :マロン名無しさん :2008/10/15(水) 00:52:04 ID:???
とうとう主人公三位か
まあ俺も麻理ちゃんに投票したしな

156 :マロン名無しさん :2008/10/15(水) 01:29:24 ID:???
お化けコアラとポニーテール強し

157 :1/3 :2008/10/15(水) 21:15:00 ID:???
第124話 アンラッキー・ボーイ

石野が勝利を収め、続く次鋒は仲安。そういえば、彼の髪の毛のことはどうなったのか、麻理が尋ねる。
そこで桜子が差し出したのは選手の名簿。そこで麻理は、仲安の苗字と名前の間に奇妙な一文字を見つける。
「あれ?なんですか、仲安・C・昌邦って」
「仲安・チャーリー・昌邦。それが彼のフルネームよ」
桜子が答え、保奈美も笑いをこらえて続ける。
「つまりぃ仲安クンは日系2世のハーフでぇ…プッ」
「あの金髪は地毛だということに…ね」
その説明を聞いた麻理、そしてこらえきれなくなった桜子と保奈美も大爆笑。
「あはははは!」「とんでもないウソでしょお!でも、それで納得させたのよ――っ!」

(野郎…ちょっと偶然っぽかったけど勝ちやがって…
 こうなったら意地でも負けられねえじゃねえか!しかも一本勝ちだとお…!)
「始めっ!」
安部川高、次鋒の餅田に対し積極的に仕掛けていく仲安。「とういやっ!」
内股にいくものの、あっさりと裏投げで潰されてしまう。
(くそっ、一本とってやりたいのに…ダメか、やっぱり!)

そこで審判の「まて」。上級生たちからは「もっと慎重にいけ」と声がかかる。
「せっかく石野がまぐれでとった一勝をムダにすんなよ!」
その言葉が仲安の胸に突き刺さった。
(ヤツがとったポイントを守るだけか?冗談じゃねえよ!)

(内股がダメなら…まだ体落としがあるぜっ!)
「でえいっ!」
しかし、その体落としも簡単に引き手を切られ、逆に小外刈りで返され「有効」を取られてしまう。
「まただよ!」「いわんこっちゃないんだよ!ぼけなすっ!」「あせるな仲安!」
「あっ!いけないっ!」
さらに仲安は餅田に後袈裟固めに捕らえられた。
(しっ…!しまった――!)

158 :2/3 :2008/10/15(水) 21:16:09 ID:???
(ダメだ、体重も敵のほうがありそうだし。このまま負けるのか…)
すでに諦めかけた仲安。こんなときに巧なら保奈美の一声であらよっと返してしまうのだが。
「でも、やっぱりここは保奈美じゃなくて麻理ちゃんのひと声よっ!麻理ちゃんどうぞっ!」
桜子に言われるまま立ち上がった麻理。会場中に聞こえるような大声で――。


「負けないでチャーリー!」


耳まで真っ赤にしたチャーリーこと仲安。
「あんの……バカヤロ――ッ!」
本当に後袈裟固めを外してしまう。時間は26秒、技あり。
彼のその反応に桜子は「もてるじゃん、ひゅ〜う!」とはやし立てるが、
「でも仲安クンみたいなのは、タイプじゃないんですよ」
きっぱり言い切る麻理であった。

時間は残り一分足らず。
すでに大幅なリードを許している以上、このままいったら負けは確実。
仲安は自分の頬を叩いて気合を入れた。
(よしっ、こうなったらどんな手をつかってでも勝ってやるっ!)

果敢に向かっていく仲安は、組み際、相手の体の下に潜りこむ。
「なにい肩車?」
「バカめ!かかるか、そんな力技が!」
確かに強引過ぎる入り方――餅田は腰を落としてそれを防ぐ。
(うるせえっ!どんな手をつかっても…)

(勝つっつったら勝つんだよっ!)

159 :3/3 :2008/10/15(水) 21:17:17 ID:???
肩車はフェイント。体重が充分に後ろにかかった餅田の足元に仲安は飛び込み、
両手で同時に相手の両足を刈った!

「だあああっ!」

そのまま背中から落ちる餅田。「一本!」審判の手が高々と差し上げられた。
「やったっ!」声を上げる石野。彼を拍手でたたえる。
(ちょっとかっこ悪りい勝ちかただったけど…こん次はもっとビシッとした試合しなきゃな)

ともかくも、これで二連勝。
「よし!一年坊、よくやった!後は先輩が5‐0のパーフェクトにキメてやるかっ!」
意気揚々と出て行く茂。
で、その通りになって、浜高は一回戦を圧勝し、幸先いいスタートを切った。
「ひでえはしょりかたすんなよ!」


「やっと着いたあ――っ!」
その頃、巧たちを乗せたタクシーがようやく県営体育館に到着。
「どうしたの藤田クン?顔がまっ青なんだけど」
「いえ…ちょとクルマに酔いまして」
本当に車に弱かった藤田。今にも吐きそうな顔で脂汗を浮かべていた。
「そ、そう大丈夫?15分乗っただけでねえ…でも、こんな弱点しってもなんにもならないけど」

160 :マロン名無しさん :2008/10/15(水) 21:59:21 ID:???
これは将来国際強化選手とかになったら海外遠征とかで苦労するな藤田w

161 :マロン名無しさん :2008/10/15(水) 22:35:00 ID:???
チャーリーってw

>「負けないでチャーリー!」
死ねチャーリー

>「でも仲安クンみたいなのは、タイプじゃないんですよ」
ナイスチャーリーwwwwwwwwwwwww

162 :マロン名無しさん :2008/10/15(水) 22:40:14 ID:???
まあ、世の中の人間だれもがタイプの相手とくっつくわけじゃないし
タイプじゃなくても何でか好きになっちゃうことはよくあることだし

163 :マロン名無しさん :2008/10/15(水) 23:11:08 ID:???
だがあの鉄壁のポーカーフェイス&あの兄の妹じゃ、どこまで本当か分からない

164 :マロン名無しさん :2008/10/15(水) 23:17:22 ID:???
チャーリーいいところもあるけどなw
麻理じゃ手強いなぁ

165 :マロン名無しさん :2008/10/15(水) 23:40:49 ID:???
今後もチャーリーで押し通すつもりか?w

166 :マロン名無しさん :2008/10/16(木) 09:05:18 ID:???
少なくともスレではチャーリーで定着しそうだw

167 :1/3 :2008/10/16(木) 21:04:28 ID:???
第125話 おまたせ!

団体2回戦 浜名湖‐富士宮南
「あ、巧先輩だっ!」「2回戦は間にあったか。やれやれ」
姿を現した巧に安堵する応援席の三人娘。
「もう!心配させて…一本勝ちしなきゃゆるさない」
そういう保奈美の目には信頼の光がたたえられていた。

「うっ、浜名湖の先鋒、粉川だぞ」「出てきやがったな」
「粉川だ」「やっぱり来てやがったか」「ヤツが粉川か」
先の大会の優勝高のポイントゲッターとあって、巧への注目度はやはり高かった。
(この大きな会場の中で、大勢の人たちが巧クンのコトを注目してる。
 会場中のみんなに見せつけてやって!巧クンの背負い投げを!)
「でたっ!」「いけーっ!」
保奈美たちの目の前で炸裂する背負い投げ。巧は今大会の初勝利を一本勝ちで飾った。
「コレよコレ!」「桜子?」「一本とらなきゃ、男じゃない!」
今日の桜子は別の方向に火が入ってしまった様子だった。

浜高の試合には県下の強豪校の視線が集中する。
優勝候補、静岡第一――。
「浜名湖の粉川か!」
「一月の選手権じゃ、ヤツ一人に3人抜きされたせいで、ウチは準決勝で負けちまったんだ!」
同じく三縞学園――。
「なあに、夏は冬と違って勝ち抜きじゃない」
「エースが一人強くても、それだけじゃ勝ち残れん」
「全国大会に出て一回戦で負けてくるチームを、また出させちゃあ県のレベルが低く思われちまうぜ」

168 :2/3 :2008/10/16(木) 21:05:32 ID:???
続く二戦目、浜高の次鋒は杉。三縞学園の頭が青光りしている選手たちが毒づく。
「とにかく粉川以外はたいしたことねえぜ。次のヤツもいきなりてこずってるもんな、二回戦程度でよ」
その後ろで桜子がパンフレットを丸め――柵を叩いて声を出す。
「なーにやってんのコラ、杉っ!ホラホラ自分から技をかける!」
その迫力にビビる三縞学園の選手たち。「きゃっ!」「なーに、このヒト!?」
そして、桜子の声に呼応するように「っーせーな!見てろっ!」
「せいっ!」杉の内股。
「よいしょーっ!」と桜子。
「一本!」
杉は見事に勝利を収めた。

「海老塚の声援で舞いあがってんじゃねえよ」
何気なく呟いた茂に、杉は超反応。
「聞こえてんだよ、宮崎!誰があんなんで舞いあがんだよ、迷惑してんだこっちはっ!」
ものすごい形相で迫られ、たじたじの茂であった。

「桜子先輩も熱くなると見さかいないですねえ。柔道のコト、キライじゃなかったんですか?」
「ねえ…すっかりノリも体育会系の…」
そんな保奈美と麻理の前で、ノリノリの桜子であった。
「ほーら、いった通りにやれば勝てんじゃん!続けよ宮崎っ!」

斉藤がきれいに一本勝ちを決め、これで二回戦終了。
茂「よっしゃ、さすが斉藤先生だぜ!」
杉「一日目を全勝でおりかえしたぜ!ちなみにオレたちいちおうシード校だから、もう今日は試合ないんだよ!」
仲「な、なんでそんな説明的なしゃべり方してんスか?」

桜「やったねベスト16!これで明日2回勝ったら、ベスト4になって決勝リーグやって優勝ってワケねっ!」
麻「説明的だなあ」

藤「フン、こんなトコで苦戦なんかしてたらハナシにならんだろうが。
  決勝リーグに残らんかぎりボクたち三工とはあたれんのだぜ」
関(ヤケに説明的なひとりごとを…)

169 :3/3 :2008/10/16(木) 21:06:32 ID:???
続いて三工の試合。遅刻野郎の藤田もここから先鋒で出場する。
「あっ平山ってデブいヒト、ひっこめましたね」
藤田の代理を務めていたのは個人戦重量級でミッタンに勝った彼らしい。
「あんなトコで丸まってますよ」
「あんた、そりゃもとからよ」
ずいぶんとひどい言い種である。
「補欠の人なのかしら…?」
「いーや、秘密兵器よ、かくし玉よ、きっと。セコイなあ、やることが…」
とか言っているうちに藤田が先鋒戦に勝利。
「相変わらず強いですね、あの人も」
「…わかってるよ、そんなコト」
舌打ちをする桜子だった。

三工も初日は楽勝、本番は明日から。龍子先生が一年生二人を呼ぶ。
「石野クン、仲安クン」「ハイ」「キミたち二人、一本勝ちだってね、頑張ってくれたわね」
というわけで二人を表彰。先生の手から二人に賞品が手渡される。
「なんだよ、ヒイキしやがって!」「ちょっと先輩に見せなさい」
「あ――っ!オレたちがもらったのに!」
杉が強奪したその品は――。
「こ、これは…」

「そのとーり。名古屋名物ういろう。あたしたちが新幹線まちがえなかったら、あんたたち食べられなかったでしょ!」
「まさかこれでチャラにしよーってワケじゃねーだろな!」

170 :マロン名無しさん :2008/10/16(木) 21:39:58 ID:???
「もう!心配させて…一本勝ちしなきゃゆるさない」
だんだんと男を服従させていく悪女のようになっていくな

171 :マロン名無しさん :2008/10/16(木) 21:43:37 ID:???
女の愛撫で男が奮い立つなら、女はそれをすることもあるのよってコトで

172 :マロン名無しさん :2008/10/16(木) 22:01:16 ID:???
じゃあ桜子方式も効果ありということで

173 :マロン名無しさん :2008/10/17(金) 20:05:31 ID:???
なんてことだ

174 :マロン名無しさん :2008/10/17(金) 20:37:55 ID:???
考えてみりゃ基本的に保奈美って声援はしないよな。
巧がピンチな時限定で大声出すくらいで。
俺は桜子の声援に背中押されたいなあ・・・

175 :1/3 :2008/10/17(金) 21:02:36 ID:???
第126話 県下の強豪たち

第一日目までに3回戦が行われ、参加103校のうち16校まで絞られた。
生き残ってきたチームは皆強豪。まさにこれからが本番である。

試合場では暁泉の永田が見事な一本勝ちを決める。
(またもや…またしても!美しくキメてしまった!芸術的なまでのワザのキレ!)
ほどけて落ちた帯を彼は拾い、
(アタシにとっての柔道、それは…)
帯の片端を背中越しに投げ、その勢いで身体に巻きつけ――絞める。
(いかにして相手をキレイに投げるかという、いわば瞬間の美!)

「…………」「す、すごいパフォーマンスですこと…」
絶句する桜子をよそに、隣で麻理が目をハートマークにしたりしていた。
そんな彼女に、「へっ、ダンスじゃねえんだからよ。勝たなきゃイミねーんだよ、勝たなきゃ」
やきもちを焼く仲安クンでした。

平八郎も勝って五回戦進出を決める暁泉チーム。
軽重量級ながら重量級をものともしない平八郎に周囲の評価も高い。
しかし、彼らにとって次の五回戦こそが本当の正念場となる。
(五回戦の相手は三工か。大物だな)
空中で視線をぶつける藤田と平八郎。
(しかし暁泉は負けん!喰ってやるさ、大物を!)

藤田と平八郎、双方に因縁の深い巧としては心中複雑。その様子を保奈美は見ていた。
(巧クン。どっちが勝つか心配なのね。
 平八郎クンにも勝ってほしいし、一勝一敗一無効試合の藤田クンとも決着つけたいし…
 でも私は平八郎クンが勝って、決勝を巧クンと闘ってほしいな…
 二人で思う存分柔道してほしい…でも、そういうんでドキドキしちゃう巧クンってかわいい…)
頬を赤らめる保奈美を桜子は冷めた目で見ていた。

176 :2/3 :2008/10/17(金) 21:03:41 ID:???
佐鳴はこれから四回戦。対戦相手は――優勝候補、静岡第一。
「たとえどんな相手だろうとやるしかないからね。かえってやりがいがあるって」
こんなときにも落ち着いている石塚。
と――踏み出した足がケーブルにつまづく。
「おっ、と、と、とと!」バランスを崩して思わずつかんだのは、立てかけてあった掃除用のモップ。
「どわっ!」盛大に転んだ石塚は、置いてあったバケツの水を頭からかぶってしまった。
「だ、大丈夫?石塚クン!」
駆け寄る袴田さん。彼の頬を伝うのは単なる水かそれとも涙か。「つめたい…」
(やっぱり動揺してるじゃん…)

なにしろ佐鳴の相手の静岡第一は、県下では三工とタメはる強豪。
選手5人が全員、個人戦地区予選代表になったぐらいにスゴイ。(それも浜高と違い中量級以上の人たちで)

しかし、佐鳴の先鋒石塚は意地を見せ、技ありを奪って優勢勝ち。
さすがの強豪もこれにはビックリ。しかし静岡第一、逆にこれで闘志が湧いて、またたくまに3タテ。
大将戦を待たずして決着がついてしまった。「あのね…」

大将の豊も結局時間切れ、引き分け。
(勝てなかった…せめて一本とりたいと思ったのに…)
戻ってくる彼の目に、温かな拍手をおくる桜子の姿が。
(桜子さん!見ていてくれたのか!)

誰も佐鳴が勝てるなんて思ってないことぐらいわかってる。
でも、たった一人の女の子に自分の精一杯の姿を見届けてもらえたら、
(優勝なんてできなくても、それで十分なんだ――っ!)
我が青春に悔いなし、と感涙にむせぶ豊――であったが。

「浜高ガンバー!」
別に豊を見ていたわけではなく、今から試合なので浜高が出てきたトコロだった。
壁に頭から突っ込む豊。「袴田!」「どうした!?」

177 :3/3 :2008/10/17(金) 21:04:43 ID:???
「つ、強い!」「浜名湖高は四回戦まできて、また全勝しやがった!」
絶好調の浜高メンバー。昨日から通してもまだ一敗もしていないと調子に乗るが、
「それはアタシも同じこと♪」
暁泉の永田登場。さらに佐野と黒柳も。
「全勝で勝ちのぼるぐれえオレたちだってやってらあ」「優勝狙うもんとしては当然だな」
「あのー、このかたも?」「ダンナはおとうふよ!おとうふ!かわいそうでしょ!」

まあ、それはそれとして。
「悪いな、タッちゃん。お先に藤田を倒させてもらうよ。
 悪玉の三工退治だ。さしずめオレは孫悟空ってとこか?」
「じゃあコイツ(黒柳)は八戒。カッパの沙悟浄(佐野)。三蔵法師(原田)。
 アタシ(永田)は観音様であ――らぴったし」
勝手に配役を決めてしまう永田であった。
「平ちゃん。今回は藤田とやるのあきらめたから。勝ってきていいぜ!」
「へへっ、そりゃどーも」

そしていよいよ、試合が始まる。
「第2試合場 五回戦!」

「赤、暁泉学園高校!」
「白、三方ヶ原工業高校!」

178 :業務連絡 :2008/10/17(金) 21:06:00 ID:???
次回は一回休載して、単行本13巻のおまけを紹介します。

179 :マロン名無しさん :2008/10/17(金) 22:06:56 ID:???
まさにラブ&コメディ回
チャーリーwは麻理に本気だったか〜

180 :マロン名無しさん :2008/10/17(金) 22:30:11 ID:???
お姉様のマネをして帯に絡まるチャーリーが容易に想像できる

181 :マロン名無しさん :2008/10/17(金) 23:46:48 ID:???
石塚さん先鋒なのか
まあ佐鳴は駒がないもんな

182 :マロン名無しさん :2008/10/18(土) 00:14:44 ID:???
袴田弟はいつ見ても袴田弟だな

183 :マロン名無しさん :2008/10/18(土) 00:53:12 ID:???
寧ろ勝ち抜き戦でもないのによくここまで上がって来れたな佐鳴は・・・

184 :マロン名無しさん :2008/10/18(土) 06:49:55 ID:???
石塚と袴田弟以外も勝たないとだめだからな
当初の石塚はイケメン設定だったのに、いつのまにか憎めない男にシフトしたな
袴田ファン対策もあるか

185 :マロン名無しさん :2008/10/18(土) 21:00:51 ID:???
>>183
引き分けトリオの健闘だろう

186 :1/3 :2008/10/18(土) 21:06:46 ID:???
○単行本第13巻 (表紙:石塚孝裕・袴田今日子 裏表紙:袴田 豊)

・四コマその1

1.71キロの世界チャンピオン、おいしいラガーが飲みたいですのCMでもおなじみ、
  日本が世界にほこる柔道の天才、古賀稔彦選手についに会えました。

2.うちのイナカにでっかい道場ができて、まあこけら落しってやつですか、古賀選手がきてくれたワケ。
  こんなチャンスめったにないから、私もかけつけました・

3.歓迎会みたいのがあったんだけど、その席でのコトだけど
  古賀選手に同行していた日体大の土屋好英選手が「帯ギュ」読んでくれてて
  サインをたのまれて、すごくうれしかったなあ。

4.で、古賀選手にもサインしたコミックスもらってもらおうと思ったんだけど
  古賀選手の名前かきまちがえちゃって大ハジかいてしまった。
  でも、気さくでやさしい世界チャンピオンは笑ってゆるしてくれました。
  ますますファンになっちゃた。

187 :2/3 :2008/10/18(土) 21:07:45 ID:???
・四コマその2

1.こないだ、サンデーの若いマンガ家さん軍団で慰安旅行にいった。
  (バスをチャーターして豪遊とくらあ)(ばっちり大雪!)
  (参加者19名の命しらずのヤローども)
  ふだんはあんまり会えないから、親交深めることができてよかったです。

2.藤田「うしおととら」和日郎さん、いいヒトなんだ。
  
  藤「オレの桜子…」他のひとにかいた色紙にちゅーしようとする。
   「やめてくれせんせー」

  あんなにシリアスなマンガかくのにギャグとばしてくれるしね。
  でも実はとってもしっかりしてて今回の旅行の幹事をしてくれたのだ。

3.椎名「GS美神」高志さん。頭いいんだ。

  椎「モンティパイソンはいいですよー、あのふきかえがまた…」
  河「オレ映画しか観てないんスよー」
  椎「最高ですよねー、あのギャグ」

  いろんなコト知っててさ。やっぱりギャグマンガは頭よくなきゃ、できないよね。
  小説なんかもいっぱい読んでるし、みならわなくちゃなー。もっと話ししたかった。

4.村枝「俺たちのフィールド」賢一さん。このヒトはうれしくなっちゃうほどバカやってくれる。

  村「うっ、カタナがぬけぬーっ!」
  河「チャンスじゃ!新人は今のうちに…」
  日光江戸村では、忍者のカタナかって背おって歩いてるしさー。
  なんつって、実はいっしょんなってあそんでたけど。

  あと「スプリガン」のたかしげ宙さんとか他の作家さんもいっぱいいましたよ。

188 :3/3 :2008/10/18(土) 21:08:47 ID:???
・気分一新の第13回 サンデーコミックス名物『絵筆をもってね!』

 選評/河合克敏 応募総数:1720点 入選:37点

 グランプリ:愛媛県・ビンボーマニアックス〔桜子(切り絵風)〕
       〔斉藤(斉藤浩二ギャグ・マスターへの道)〕
       1.斉「チャーリー、アメリカンジョークを俺に教えてくれ」
         仲「OK、OK」HAHAHA
       2.仲「『隣の家にへいができたってね』『ウォール』」
       3.
       4.斉「メモしとこう」
         仲「HAHAHA」

 準グランプリ:愛媛県・輸入パセリ〔茂・宮沢・端本・黒柳(――にしてもおデブの方と相性いい人だ)
        兵庫県・ベアー裕夫
       〔ミッタン(「ぐれちゃおっかな…!!」彼の12巻における出番21コマ、セリフ5コマ)〕

 topix:福岡県・奈緒季〔袴田(写実画風)〕
     熊本県・宮越賢人〔端本(橋本くんの放課後)〕
     奈良県・有本浩貴〔槍をギュッとね!(『うしおととら』パロディ)

189 :マロン名無しさん :2008/10/18(土) 23:53:06 ID:???
>>187
このメンツと旅行に行けたら天国だな

190 :1/3 :2008/10/19(日) 21:00:07 ID:???
第127話 暁泉敗れる!

県大会団体戦Aブロック五回戦 暁泉‐三工。この試合は大方の予想を裏切って大接戦になった。
白、三工の先鋒はいきなり超高校生、藤田恵2段。
対する暁泉は超(老けてる)高校生、原田彦蔵無段。
「一本!」
「開始10秒ともちませんでしたな」
「ま、それはしかたないとして、むしろコレはうまい作戦ですよお」
誰と当たっても勝ちそうな藤田に誰と当たっても負けるに違いない原田を当てる、
これはトランプで言えば一番良いカードで一番安いカードを倒したようなものである。
そのへんはなかなかにセコい、暁泉・市川監督。ちなみに2児のパパ。

続く次鋒戦 三工、関谷対暁泉、佐野。
時間切れ、引き分け。

中堅戦 三工、蜂野対暁泉、黒柳。
時間切れ、引き分け。

「さあて、こっからが勝負よ。アタシと平八郎で2勝して、キマリ!」
副将戦 三工、武戸対暁泉、永田。
「…いやあ強いのね。サスガに軽重量級で地区2位の男」
結局時間切れ、引き分け。

ドタン場の暁泉!ここで満を持して大将・堀内登場!
対する三工の大将、端本は三工選手一の重量級。息づまる攻防の試合となったが…。
「うおっ!!」
3分過ぎたあたりでくりだした大外刈りで豪快に一本勝ち。代表戦にもちこんだ。

191 :2/3 :2008/10/19(日) 21:01:02 ID:???
「暁泉にここまで粘られるとはな…市川監督も短い間によくこんなに強いチームをつくりあげたものだ」
そう呟く三工・吉岡先生に焦りの色は見えない。
「よし藤田。いってこい」「はい」

「案の上、むこうは藤田、か…今さっき一試合終わったばかりだが、やれるな堀内?」
「もちろん!」
そして藤田対平八郎の代表戦が始まる。
(少しばかりハンデがついてしまったが、それでも藤田を倒せるとしたらおまえしかいない…たのむぞ堀内)
メンバーの信頼を背に、藤田に立ち向かう平八郎であった。

試合開始――慎重に間合いを計り、平八郎の組手を嫌う藤田。
いかに藤田といえど平八郎に組手充分を取らせるわけにはいかない。
取らせたが最後、彼の怪力で振り回されてしまうからである。
(そうだ平ちゃん、つかんだらこっちのもんだ。
 あせるなよ、藤田のヤローが相手となると、チャンスは少ねえぜ)
勝負の行方を見守る巧。

そして平八郎がついに左手で藤田をつかまえる。
(片手で体がもってかれる!思ってた以上の力だ!)
その腕力に藤田は驚嘆する。

さらに奥襟を取ろうと伸ばしてくる右手を寸でのところで止めるが、
平八郎は構わずに力ずくで押し込み、無理やり藤田の奥襟を取ってしまう。
ついに組手充分に。平八郎が仕掛ける。
「うおおっ!」
「いった!」「大外!」
しかし――藤田はその引き手を切ってギリギリのところでかわしてのけた。

192 :3/3 :2008/10/19(日) 21:02:11 ID:???
「こい、おらあっ!」
「ぬおおお――っ!」
ぶつかり合う互いの気迫。正面から仕掛けていく平八郎。
そこで巧が気がつく。
自分の前襟をつかんでいる平八郎の左手――藤田はその手首を取って逆に手前に引き込み、
左手で袖口を絞って固定する。
「ダメだ!平ちゃ…」
巧の声が飛ぶが、もう遅い。

藤田は自由に使えるようになった右手で平八郎の背中をつかみ、そのまま投げを仕掛ける。
畳に手をついてこらえようとする平八郎。しかし――。
「うおりゃああっ!」
藤田は自分の体ごと平八郎をひっくり返した。
「ああ――っ!」
「一本!それまで!」
絶句する平八郎。
「…内股だ。ずいぶん変型だが。回転して巻き込むように投げやがった」
平八郎の怪力を技術で制して見せた藤田。解説をする斉藤も、巧も、動揺を隠せなかった。

「くっ…くそう!」
悔しさに畳に突っ伏す平八郎。
それを見下すような藤田。
「フン」
そして――その光景を目に拳を握り締める巧であった。

193 :1/3 :2008/10/20(月) 21:09:31 ID:???
第128話 嵐の予感

「あーもう、くやしーっ!!くやしいったらありゃしないっ!!」
澄み切った青空の下、永田の怒号がこだまする。浜高と暁泉の面々は体育館の外で昼食をとっていた。
佐野が巧の食べているサンドイッチをじっと眺める。
「おい、浜高さんよ。あんたらんとこサンドイッチ、ひょっとしてマネージャーの手作り?」
その通り。保奈美と桜子が早起きして作ったものである。
桜子が手伝ったと聞いて後ろの杉と茂は不安がるのだが。
「あっ、でもそちらのお弁当豪華ですね、重箱入りで」「ほんと、おいしそう」
「ああ、ウマイよ」「確かに味はな…」
佐野は永田を指差し、
「でも、つくったのがコイツだと思うと!なんか悲しくてむなしくてっ!」
男泣きに泣くのであった。
「うるさいわねーっ!男がつくっても女がつくっても、美味しいことにこしたこたあないのよ!」
永田はバッグからなんとポットを取り出し、その場でお茶を淹れて一服。

その側で同じく昼食をとっていた佐鳴。永田の言葉を石塚はしみじみと受け止めるのであった。
「美味しいことにこしたことはない…か。そうかもな…」
「…悪うござんした」
彼の手の中には袴田さん謹製の「おにぎりのはずのもの」。一見してサッカーボールにしか見えないが。
「えっ?あっ、ウソ!結構いけるよ、コレ、ねっ!」
才色兼備の袴田サンにも弱点はあった。

食事を終え、大きく伸びをする巧。その落ち着いた様子に、石塚は平八郎に巧のことをどう思うか尋ねる。
「そうスねえ…とんでもない金星をあげることもあるし、つまんねえポカもする。
 ちゃらんぽらんなヤツだ。でもねえ石塚サン。オレは粉川がどんな強いヤツに勝っても、
 ただ単にまぐれっていいきれないと思う」
「まぐれも実力のうちっていうが…確かに粉川は他のヤツとはちょっと違う気がするよ」
本当にそうならいいのだが――そろそろ時間である。桜子は休眠モードの杉たちを叩き起こす。
「おきなさつうの!」「食ったら少し休まないと…」「腹三分しか食べてないでしょっ!」
そのとき――空には黒く分厚い雲が広がり始めていた。
(荒れるのかよ?さっきまでカラッと晴れてたのに…)

194 :2/3 :2008/10/20(月) 21:10:48 ID:???
決勝リーグに進出したのは、Aブロックの三方ヶ原工業。
Bブロック、静岡第一。
Cブロック、三縞学園。
そしてDブロックの浜名湖、以上の4校。
この4校総当りのリーグ戦で優勝が争われる。

試合を前に、三縞学園の監督が選手にハッパをかける。
「いいかあ!今年は実力が伯仲しておるとみた、抜きんでてる学校はない!
 ここまできたら悲願の全国大会出場は決して夢じゃない!」「押忍!」

静岡第一の監督も。
「おまえたちの実力をそのまま出せばいい。必ず勝てる、いいな」

三工の吉岡先生も。
「いうことは何もない。……いってこい」「ハイ!」

そして浜高の龍子先生も――「コホン。え――」
「みんなちゃんと屈伸した?打ち込みしといた?体あったまってる?それからそれから
 あっ、トイレ今のうちにいっときなさいよ。とにかく落ちついて、ねっ」
(この教師は…)
一番浮き足立っていたのは先生でした。
「落ちついてないのは、あんさんでんがな――っ!」
「えろうすんまへん」
杉のツッコミに先生ペコリ。いつの間にやら漫才に。
メンバー全員大笑い、は良いのだが、周囲の冷ややかな視線が突き刺さる。
(うっ、また場違いに目立ってしまった!)

「…たくもう。あいつらなんかバカやんなきゃ気がすまないの?」
観客の桜子は怒り、石塚も平八郎もやれやれという調子であるが――。
(くっ、なんて余裕だ…)
(緊張の極限まできている生徒をああもリラックスさせるとは…なかなかやりおるわ、あの女教師)
他校の監督たちには、その振る舞いを高く評価されていた。

195 :3/3 :2008/10/20(月) 21:12:21 ID:???
「第一試合会場 赤、三方ヶ原工業高校 白、三縞学園!」
「第二試合会場 赤、静岡第一高校 白、浜名湖高校!」
「正面に向かって、礼!」
「お互いに…礼!」
「先鋒のこって!」

「始めっ!」

先鋒同士ということで、隣り合った試合場で同時に始まってしまった巧と藤田の試合。
「意地っぱりなトコは結構似てるからねー、あの二人。どっちが早く先に相手を倒すかで必死だったりして」
軽い気持ちの桜子の言葉であったが――。
「うおおお!!」
「りゃああ!!」
静一と三縞の選手の背中が畳を打つ音が二つ重なる。
「一本!」
「一本それまで!」
「……マジ?」「うそ…ほとんど同時…」
驚きの桜子と保奈美。
直接の勝負でなくとも火花を散らしあう巧と藤田であった。

196 :マロン名無しさん :2008/10/20(月) 21:24:51 ID:???
永田の弁当美味そう

197 :マロン名無しさん :2008/10/20(月) 22:15:03 ID:???
永田…意外とポットのお茶も似合うw
そして袴田さん…何も言うまいw

198 :マロン名無しさん :2008/10/20(月) 22:18:23 ID:???
>>いうことは何もない。……いってこい
これは良いパラドックスの命題

199 :マロン名無しさん :2008/10/20(月) 23:09:10 ID:???
最近どんどん永田が好きになってきたw

200 :マロン名無しさん :2008/10/20(月) 23:19:28 ID:???
男でも女でもあるっておもしろいな、永田!
龍子様は、先生というより皆のお母さんかお姉さんのようだw

201 :マロン名無しさん :2008/10/21(火) 00:08:00 ID:???
暁泉対三工に1つも感想ついてないのに泣いた。

202 :マロン名無しさん :2008/10/21(火) 00:34:47 ID:???
弁当対決がメインだから目に入ってなかったんだな

203 :マロン名無しさん :2008/10/21(火) 18:02:10 ID:???
初期の美人先生の面影がねーなしかしw

204 :マロン名無しさん :2008/10/21(火) 20:52:34 ID:???
宮崎はまだ龍子先生に憧れている気持ちがあるのかな、こんな先生でもw

205 :1/3 :2008/10/21(火) 21:00:04 ID:???
第129話 雌雄決する時

「二人ともほとんど同時に一本勝ちだなんてっ!」「こんなことってあるのねん」
「ガンとばしてるぜ、二人とも!」「あいつら西部地区じゃ有名なライバル同士らしいからな」
類のない事態にどよめきのおさまらない会場。巧と藤田はそれぞれの相手になど目もくれず火花を散らす。
「おーし!おーし!このままイッキだ!三工に負けてられねえからな!」
杉のその態度におさまらないのは試合中の静岡第一の方である。
「野郎〜っ!試合してんのはコッチだぜ」「一勝したぐらいで調子づかせるな!」

○次鋒戦 杉VS有藤
静一の次鋒、有藤の仕掛けてきた朽木倒しを、杉はうつ伏せでこらえる。ところが――。
「一本!」「なっ……!?こらえたじゃんかよっ!」
それは杉の勘違いで、一本をとったのは隣の試合場、三工の次鋒として出た平山だった。
秒殺で三縞学園の次鋒、川又を下した平山。
考えてみれば重量級地区一位を補欠になどするわけがなく、決勝まで温存をしていたのだ。
「ところで、どんな技で一本とったんだ?」「さあ?見とけばよかったかも…」

さて、こちらの試合場では、4分過ぎに有籐の背負い失敗のスキを突き、
杉が押さえ込みに入ろうとするものの――有籐は杉の足を自分の両足で挟みこんで耐える。
(このっ!このっ!ジャマだこの足!往生せいや〜〜っ!)
(死んでも離すか、ハゲ!)
けっきょく、そのまま時間切れ。引き分け。

○中堅戦 宮崎VS吉野
宮崎の相手、吉野は静岡第一のポイントゲッターで、中部地区、軽重量級一位の男。
よく粘ったが、終盤4分過ぎに内股で技あり。続く寝技で一本。相手が悪かった。
「あーん、もう頼りにならないんだからっ!」
「こ、この場合は宮崎クンを責めちゃかわいそうよ…30キロも体重が違うのよ」


206 :2/3 :2008/10/21(火) 21:01:23 ID:???
これで勝ち星はタイに並んだが――副将戦、3分過ぎにミッタンの大外刈り炸裂。
浜高が再びリードを取り戻す。
「あれが浜名湖高校の三溝かあ」「でけ〜〜っ」
「西部にとんでもなくデカイ奴がいるとは聞いていたが…」「2メートル近くねえ?」
まさに怪物、という具合に会場を騒がせるミッタン。
「目立ってますね、三溝先輩。この県大会にきても、あれほど大きな人はいませんからね」
「でもさあ、あのコが選手の中でもいちばん気が小さいなんて、みんな知らないだろうね」

○大将戦 斉藤VS大村
(あら…?三工もう終わったのかよ……)
こちらが大将戦に入ろうというとき、隣の試合場では既に三工が5戦終了して戻るところだった。
しかし、気を取られている余裕は無かった。大村の内股が斉藤を襲う。
(あっぶな〜〜コイツは強ええっ!)

静一の大将、大村は主将であり、チームのナンバーワン。個人戦中部地区中量級のチャンピオンである。
その難敵に対し、斉藤は彼の腕を取り、ぶら下がるように巻き込む。
「でたっ!」「腕返しっ!」
しかし、大村を投げはしたものの、うつ伏せに落ちてポイントは無効。そのまま場外で「待て」がかかる。
(サスガ…オレの腕返しがかわされるとは…)
大村の実力を素直に認める斉藤。だが――。
(くそう、腕返しなんてかけやがって…肩、痛めちまったらしい…!)
その後、前半好調に攻めていた大村の技に生彩がなくなり、引き分け。2‐1で浜高が勝利した。

207 :3/3 :2008/10/21(火) 21:02:38 ID:???
続く三縞学園戦、今度は負けなしの3‐0で快勝した浜高。
だが、その三縞学園を三工は4‐0で下していたのだ。
三工は浜高が苦戦した静岡第一も3‐0で下し、内容で浜高を圧倒していた。

「やべえなあ…これで三工に引き分けられなくなった」
やや焦りの色を浮かべる斉藤。決勝リーグは勝ち抜き戦ではないので引き分けがある。
つまり、代表戦が無いのである。勝ち負けが同数になると引き分けとなり、
最終戦で三工と引き分けた場合、これまでの勝ち数が同じでも内容で負けが決まってしまうのだ。

「あなたたちもこっちにいらっしゃい、近くで応援するほうがいいでしょ」
龍子先生が二階席にいた保奈美たち三人娘を呼ぶ。
「えっ、いいんですか?」
「れっきとした浜高柔道部員だもん、かまわないって」
「よーしいこっ!どーせ三工の連中みんなブン投げちゃえばいいんだからっ!」
「それもそーですねっ!」
威勢よく言い切る桜子に、賛成する麻理。
よけいなことをごちゃごちゃ考えずとも、勝ってしまえばそれで良い。実に分かりやすい答だった。

吉岡先生が静かに三工の選手陣を送り出す。
「今日、最後の試合だ。選手権の時のくやし涙を思い出せ」
そして龍子先生が手を叩き、気合を入れる。
「さあ、くるとこまできたわ。いってきなさいっ!」

208 :マロン名無しさん :2008/10/21(火) 22:33:33 ID:???
ついに三工と全面対決だな

209 :マロン名無しさん :2008/10/22(水) 00:25:45 ID:???
ミッタンが勝負どころで勝つなんて・・・

210 :マロン名無しさん :2008/10/22(水) 08:22:49 ID:???
「あれが浜名湖高校の三溝かあ」とかなんかエース級みたいな扱われ方じゃね?

211 :マロン名無しさん :2008/10/22(水) 10:38:52 ID:???
まあ実際でかくて強いんじゃない?気は弱くても。

212 :マロン名無しさん :2008/10/22(水) 12:34:06 ID:???
ミッタンまた身長のびたのか?巨体はいるだけで目立つからなぁ
杉のハゲ呼ばわりと、宮崎がまだデカいのと当たっているのが・・・笑ってしまうw

213 :1/2 :2008/10/22(水) 21:01:28 ID:???
第130話 暗雲の下

ついに降り出した雨。降水確率20パーセントにもかかわらず、本降りになりそうな様子であった。
三工対浜高、ここまで双方二勝同士、これが決勝戦ということになる。

浜高の先鋒は巧、三工の先鋒は藤田。
「粉川と藤田か」「おそらくこの先鋒戦が一番大きなヤマだ」
両校ナンバーワンのポイントゲッター同士のぶつかりあい。これを落とすとダメージはでかい。特に浜高は。
「…誰よ、こいつら好き勝手なコトを」
「桜子先輩、その人たちは――3位の静岡第一の選手です」
(うおっとお!)
ついいつもの調子で食ってかかりそうだった桜子、口元を押さえて回れ右。

静一の主将、大村が呟く。
「それにしても…」「なんだ?」「いや、なんでもない」
彼の視線の先には巧の姿が。
(あんな男が中学時代は埋れていたとは…ヤツがウチの学校にきていれば…おしい!)

そのとき――試合場に立つ巧に声援が飛ぶ。
「いっせーの、ファイト――た・く・みっ!」
その声に大村が振り向くと、そこにはキラキラと魅力的な浜高女子部員の姿が。
(応援するってことは…このコ、浜高生?これが浜高にいった理由か…?ムリないかもしれん)
(おお、ま、まぶしい)(アイドルなみのくおりてい…)

それはそれとして、いよいよ巧と藤田の先鋒戦、開始。
「はじめっ!」

214 :2/2 :2008/10/22(水) 21:02:18 ID:???
「せいやああっ!」
「さあああっ!」
気合一番、積極的に組手を取り合う巧と藤田。
まず仕掛けたのは藤田の側、巧の奥襟を取り、そのまま片手で内股を仕掛ける。
「おおっ!」
即座に反応した巧は自由な右手を畳についてこれをかわし、逆に一本背負いに入る。
「やああっ!」「おおおお!」
腰を落として一本背負いを防御する藤田。巧は返し技が来る前に飛び退いて逃れる。
ここで審判の「待て」がかかった。

「これは…背負いと内股の戦いってカンジだな」
観戦していた石塚が呟く。
「手の長い分、藤田は組手で先手を取りやすい。組んだら瞬時にカミソリのような足がとんでくる。
 ちょっとでも気をぬけばフッ飛ばされるぞ」
これは県下では藤田のライバル格の一人、大村の分析である。
(しかし、それが中途半端だと次は巧が攻める番だ。不安定な姿勢からでも懐に飛びこんで背負いを出す)
斉藤は勝負の行方を静かに見守る。

試合が再開してすぐ、また藤田が良い組手を取る。
どうあがいても組手争いでは藤田が一枚上である。
藤田は内股にいく――と見せて、瞬時に小内刈りに切り替え、巧から有効を奪う。
しかし巧も負けてはいない。寝技を狙って巧の背に覆いかぶさる藤田を亀の体勢で下から捕まえ、
なんとそのまま足を伸ばして背負い投げに行く。
まともに背中から落ちる藤田。
「や、やったっ!」「逆転!」

ところが――審判の手は上に差し上げられなかった。
「バカな…!今のが“無効”だとっ!?“待て”のコールが出ていたのか!?」
冷静な斉藤が声を上げた。
巧が藤田を投げようとする直前に、審判は“待て”を宣告していたのだ。
巧の技は「無効」――残り時間2分半、中盤をちょっと過ぎんとしていた。

215 :マロン名無しさん :2008/10/22(水) 22:06:52 ID:???
待てが出てても万が一のことがあるから投げられないよう避けるもんじゃないのかな?

216 :マロン名無しさん :2008/10/22(水) 23:12:18 ID:???
保奈っちゃんが美人なのは分かってたけど
マリちゃんもアイドル並だったんだな…

217 :マロン名無しさん :2008/10/22(水) 23:19:40 ID:???
ひよこ番長のくせにな

218 :マロン名無しさん :2008/10/22(水) 23:36:48 ID:???
清純派・元気系・ロリ系・お姉さま系各種取り揃えております。

219 :マロン名無しさん :2008/10/23(木) 00:17:50 ID:???
天然系・腹黒系・珍獣系のマニア各種ですね、分かります

220 :マロン名無しさん :2008/10/23(木) 00:27:10 ID:???
>>219
>>281の言うお姉さま系(先生?)がどこに割り振られたのか気になるw
やはり珍獣か?

マリはロリっつーよりたしかに珍獣w

221 :マロン名無しさん :2008/10/23(木) 01:11:55 ID:???
「この子」ってあるから保奈美1人に対して言ってるんじゃないの?

222 :1/2 :2008/10/23(木) 21:00:54 ID:???
はまず藤田の小内刈りに倒れる。これは“有効”となった。
その後、藤田は巧の背後にまわって寝技で攻めようとしている。
巧は藤田をそのまま背負ってやろうと立ち上がる。
寝技で背後から攻められてる場合、下の者が立ち上がれば“待て”がかかり
寝技攻撃をやめさせることができる。
審判は巧が寝技から脱出するために立ち上がったと解釈して“待て”を宣告したのである。

第131話 藤田の奥の手

「ちくしょー、もったいね――っ!一本、最低でも技ありのとこだったのによ!」
それどころか、逆に有効一つを先行されるという結果。茂の嘆きももっともであった。
(巧クン…大丈夫よね、有効ひとつぐらいはねかえしちゃうよね)
保奈美は心配そうに見つめる。
(ツキにも見放されたな、粉川!もっとも、こっちも“待った”が聞こえたから、
 投げられながら何も抵抗しなかったんだが…)
俄然有利な立場に立った藤田。有効ひとつといえど、相手が相手だけにこのポイントは大きい。
とにかく、巧には後が無い。残り2分、攻めて攻めて攻めまくらなければならず、焦りは大きいはずである。
と、いうところで――。
「おっ!?」
巧の左一本背負い。「おおっ!」
「うおおおっ!」
とっさに手を畳につく藤田。構わず投げぬく巧。藤田の額が畳をこする。
同時に立ち上がる桜子と麻理。
「「でたっ!」」
「一本!」「有効!」
「「とった!」」
判定は有効。麻理の勝ちでした。

223 :2/2 :2008/10/23(木) 21:02:06 ID:???
「有効…とりかえしやがった。あの藤田から…」
(ぜんぜんあせってなんかいねえ!これが粉川の実力…!)
自分の認識の浅さを理解する大村。その頬を汗が伝い落ちる。
「まったく…」「なんてヤツだ…」
石塚も、袴田さんも、平八郎も、思いは同じであった。

残りひとつ半(一分半)。
「へっ、藤田め表情がクライぜ。ビビってんじゃねえの?」
「巧のほうはしりあがりに調子よくなってるからな。追われるほうが追う立場より苦しいってヤツだ」
そう言葉をかわす杉と茂。
(ポイントは有効一つずつ、またふりだしにもどったわけだ)
実際、昇り調子の巧のほうが勢いは上。にもかかわらず、藤田は小さく笑みを浮かべた。
(このくらいの緊張感がないとつまらないぜ!きさまとの勝負はなっ!)
「せやああっ!」
藤田の裂帛の気合に、横で見ていた杉と茂がたじろいだ。

内股を仕掛ける藤田。それをかわして一本背負いに入る巧。
しかしそれをさらに藤田はすくい投げで返す。
「あーっ!おしい!」「ポイントならず!」「けどどっちもすげえ気合はいってるぜ!」
残り一分。ラストスパート。

「ここで、キメてやるっ!」

藤田が仕掛けてきたのは小内刈り。だが――普通の小内刈りではない?
「こ、これは……!?」

224 :マロン名無しさん :2008/10/23(木) 21:09:16 ID:???
普通の小内刈りではない………中内刈りですね

225 :マロン名無しさん :2008/10/23(木) 23:40:22 ID:???
ここへきて藤田の奥の手か
なんかヤな引きだ

226 :マロン名無しさん :2008/10/24(金) 01:15:28 ID:???
藤田との勝負の解説役はみんなで回すのかな
斉藤だけじゃもったいないしね

227 :1/2 :2008/10/24(金) 21:02:17 ID:???
「おおっ!小内刈り!」
(なんだ?足がからみつくように!あれは普通の小内じゃない!)

第132話 残り10秒

「技あり――っ!」
「な、なんだ?今の技は――っ!」
「小内刈りにしては、相手の体が一瞬投げられたように宙に浮いた!」
騒然とする場内。三工の選手たちは得意満面。

「見たか!これが藤田がここまで温存しておいた新しい技だ!
 この技の存在を知ってから半年間猛練習してきた!変型の『小内巻き込み』!」

残り時間、42秒。この終盤にきてこのポイントは大きかった。

奪われたポイントを取り返すべく積極的に攻めていく巧であったが、
そのことごとくを藤田に先制され、潰されてしまう。
「よーし、そうだ!敵が技をかける前にかけていけっ!」
「何いってやがる!ちゃんと組んでねーじゃねえか!技のかけ逃げだ!時間かせぎだ!」
抗議をする杉であったが、それもまた戦術のうちなのである。
残り30秒。選手権の時と同じような展開ではあるが、それだけに藤田は慎重になる。
もう、ムリに技を仕掛けてくることは無い。

「これは団体戦だ!悪いが確実に勝たせてもらう!
 選手権の時のような失敗はもう絶対に許されんのだっ!」

もはや組み合う気さえ無い藤田。巧は足元に飛び込む奇襲をかける。
双手刈りか朽木倒しか――しかし、いずれにしても不発。
それどころか藤田に寝技のチャンスを与えてしまう。
上から攻めている側が激しく動き続けているうちは、なかなか“待て”がかからない。
時間が無い。「この野郎!」巧は強引に立ち上がる。だが――。
「あと10秒しかない!」

228 :2/2 :2008/10/24(金) 21:03:42 ID:???
勝利を確信する藤田。巧は考えに考えるも突破口が見つからない。そのとき、斉藤がアドバイスを。
(組手に……逆らうな?)

すぐに組めれば一回ぐらいは技をかけることはできるが、藤田は組手も厳しい。
まともにいってもチャンスは無い。
保奈美は麻理に、斉藤が何をアドバイスしたのか尋ねる。
麻理にも分からなかったが、それは大事なことに違いない。
「きっと最後にチャンスをつくるための…ヒントじゃないでしょうか?」
とにかくこのまま終わる巧ではない。まだ逆転の可能性はあると麻理は言う。
「うん、そうようね、逆転するよね。他ならぬ麻理ちゃんがそういうのなら絶対そうよ」
(周りの関係ない人たちがなんていっても疑ったりはしない、決めた!巧クンを信じなきゃ!)
決意を新たにし、保奈美は勝負の行方を見守る。

(組もうとすれば逃げられる…組手に逆らうな…?)
最後の勝負を挑む巧。その脳裏に閃きが走る。(そうか!)

巧に取られた右袖を振り払おうとする藤田。巧はその動作に合わせて藤田の懐に飛び込む。
「なにっ!?」「それだっ、巧!」
片襟片袖の組手から大外刈りにいく巧。藤田はをそれを反射的に返そうとする。
巧はそこで体を入れ替え、隙の出来た襟を捕まえる。ついに組手十分の体勢。そこから――、

「でたあっ!!」
――背負い投げ!

「だああっ!」
藤田の体が畳に叩きつけられた。

229 :マロン名無しさん :2008/10/24(金) 23:02:03 ID:???
あと10秒で投げ返すとかなんと少年漫画!

230 :マロン名無しさん :2008/10/24(金) 23:06:29 ID:???
また場外か

231 :マロン名無しさん :2008/10/24(金) 23:23:08 ID:???
正直巧と斉藤はかっこいい、惚れる。ついでに杉も好き

232 :マロン名無しさん :2008/10/25(土) 15:51:14 ID:???
この藤田の奥の手って初見じゃ地味だと思ったけど、改めて考えるとかなり凶悪だな。
内股みたいにすかせないし、足を外して逃げるのも難しい。
体格が同じぐらいなら技の形に入ったが最後、
藤田がミスしない限り回避も防御もほぼ不可能じゃないか。

233 :1/3 :2008/10/25(土) 21:01:39 ID:???
第133話 相方退かず

最後の背負いは時間内。判定は――?

「技あり!」

「技あり…?」「ってことは…」「引き分けだあ!」
残り10秒足らずのところから追いつき、引き分けに持ち込んだ巧。
それに対して悔いが残るのは、99パーセント勝っていたところで勝利を逃した藤田の方である。
「ふん、浮かれてろ。ここで分けたところで、まだまだこっちの優位は変わらねえんだよ」
端本がうそぶく。そして登場したのは――。
「わっ、三工の次鋒!」「なんだコイツ?」「すげデブ!」
平山である。

○次鋒戦 杉VS平山
「杉、返し技に気をつけるんだ!オレもそいつに大外刈りかけて返されたんだから!」
個人戦で平山との対戦経験のあるミッタンが声を飛ばす。
(わかってるって。なるほど、本当に重心が低そうだわ、簡単には投げられそうにないな。
 それならそれで、足技で徹底的に攻めてやるぜ)

杉と平山の勝負をよそに、巧は先ほどの先鋒戦を思い返していた。
(4分過ぎにくらったあの技…あやうく一本とられそうだった。
 なんとかしのいだが、あの技を藤田が確実にモノにすれば、ますます手強くなるな…)
藤田もまた、同じように試合を振り返る。
(あの小内巻き込みはまだまだ未完成だ。あれで一本とるにはもっと強靭な足腰がなくては…。
 しかし、今となってはそれよりも、残りたった10秒を守りきれなかったことが腹が立つ!)
次こそ巧を必ずしとめると意気込む藤田であった。

234 :2/3 :2008/10/25(土) 21:02:34 ID:???
杉が平山に足払いをかけ、その体勢が大きく崩れる。
ここぞとばかりに大内刈りにいく杉だったが――平山は驚異的なバランス感覚で体勢を立て直し、
逆に覆いかぶさるように杉を小外掛けの形で倒してしまった。
「んぐわっ!」「技あり!」
平山の巨体に押しつぶされる杉。「こ、このドデブっ!」

足に根でも生えているかのような、平山の返しの強さ。三工選手陣が勝ち誇る。
「ざまあみろだぜっ!どんな技がきたって平山なら返せるんだ!」
「なにしろ三工で一番器用な関谷が相手になって、さんざんいろんな技の対応をマスターしたからな」
しかし、皮肉なことに平山が強くなったら関谷は選手から外れてしまったのである。
「気の毒だがな…なあ?藤田?」
「えっ?な、何すか?」
藤田は巧のことばかり考えていて、蜂野の話を少しも聞いていなかった。

「ちくしょ――っ!これじゃ本当に技かけられね――!」
焦る杉。もう時間が無い。そこで彼がとった戦法は、なんと巴投げ。
もちろん、付け焼刃の巴では平山を投げることはできない。
「杉先輩、やっぱり巴、失敗しました!」「も――バカッ!」
憤る桜子。しかし、杉は寝技に入ろうとした平山を下から捕まえ、足でその体をひっくり返す。
「おお――っ!」「これだったのかっ!!」
杉の狙いは関節技、十字固め。完全に極まってしまえば平山とて返しようが無い。
「いっいっ、痛い!痛い!」
激痛を訴える平山だったが、三工サイドから声が飛ぶ。
「こらあ“まいった”すんなっ!」「あと10秒ちょいで時間なんだぞ!」
早く降参させようと腕を絞り上げる杉。必死にそれに耐える平山。
「な、なんだか…」「ちょっとかわいそうですね」「とはいってもねえ…」
無残な光景ではあるが、三工の奴らが悪い。
結局時間切れ、「それまで!」
「…………!(またこのパターン)」

235 :3/3 :2008/10/25(土) 21:03:50 ID:???
次鋒戦は三工の平山の優勢勝ち。これで三工が一つリード。
勝ちはしたものの徹底的に痛めつけられた平山は泣いていた。それに対し杉は――。
「フッ、勝負にゃ負けたが…闘いには勝った!」
「なんにもならねーんだよ、それじゃ!」
一人で格好をつけて非難の嵐を浴びていた。

○中堅戦 宮崎VS端本
双方共に、技はたくさん出たのだが…ポイントにはならず時間切れ、引き分け。
それでも試合が終わると拍手が起こった。軽量級の茂が重量級の端本と互角に戦ったからである。
斉藤は冷静に状況を分析する。
(宮崎、よくやってくれたぜ。ここで万が一、二敗にでもなったら、三溝とオレが一本勝ちするしか
 優勝の道がなくなってしまう。だからあえて冒険を避け、確実に引き分けるのを選んでくれたんだ)

○副将戦 三溝VS武戸
今度は逆に、三工が引き分けを狙ってきた。
今日、浜高で調子がいいのは巧とミッタン。二人とも決勝リーグでも一本勝ちを続けている。
ここで引き分ければ、浜高は完全に後がなくなる。
「――ってワケだ!悪いがこれも作戦なんでな!」
「くそう!強引にいくしか…ないっ!」
ミッタンは組手争いも抜きで、直接、武戸の胴にしがみつく。そしてそこから――すくい投げ。
力任せに武戸を畳に投げつけ、技ありを奪う。
この技ありがきいて、そのまま副将戦はミッタンの優勢勝ち。

これで勝ち星は並び、勝負はまったくの互角。
優勝の行方は浜高・斉藤対三工・蜂野の大将戦にもつれこんだ。

236 :マロン名無しさん :2008/10/25(土) 21:15:15 ID:???
勝ったな

237 :マロン名無しさん :2008/10/25(土) 21:57:37 ID:???
なんだかミッタンの評価が上がってきたな
まあ唯一の重量級選手なんだから相対的にはポイントゲッターでもおかしくないんだか

238 :マロン名無しさん :2008/10/25(土) 22:02:57 ID:???
ミッタンのV・V投げはどこへ行ったのだろうか
禁止項目にでもされたのか

239 :マロン名無しさん :2008/10/26(日) 00:27:09 ID:???
ヴァンデ投げは、かけにくい・見つけられやすい・返されやすい…のどれかなのかもね
杉宮崎はギャグ&省略コースが定着しちゃったね
ミッタンは気の弱そうな表情も見なくなった印象

240 :1/3 :2008/10/26(日) 21:02:30 ID:???
第134話 団体戦決着

ますます勢いを増す雨の中、ついに大将戦が始まる。
「せっかく三溝クンが望みをつないでくれたんだからっ!勝ってよ!」
桜子の声が飛ぶ。大将の斉藤が引き分ければ、これまでの成績で自動的に二位に決まってしまう。
何としても“有効”以上のポイントを取らなければ優勝にならない。
仕掛けていく斉藤。ところが――。
「むっ!これは…」
三工大将・蜂野は異様な形の組手を取る。本来、彼の右手で斉藤の左袖をつかむのがセオリーなのだが、
今回は右手で右袖をつかみ、左手の方は斉藤の背中を取っている。
「くっ…!左の変型の組手!やはり引き分けを狙ってるのか!」
ほとんど斉藤の右腕にぶら下がっている状態の蜂野。これではいかに斉藤とて攻めあぐむ。
もちろん、蜂野の側もマトモな技が仕掛けられる状態ではない。足技中心に崩していくぐらいだろうが、
本当の狙いは“引き分け”である。
「時間かせぎか」「フン!王者の割にはセコイ真似を」
永田が吐き捨てる。とはいえ、相応の実力がなければできるようなことではない。
最近は審判の目も厳しく、技をかけながら逃げているようなものは反則を取られる。
そう見せないのもテクニックのうちなのだ。

(なんとかしなくてはっ!)
強引に攻めようとする斉藤だったが、蜂野はさっさと逃げてしまう。
そこで審判の「待て」がかかった。
「やっと動いたか審判!」「とれとれ反則!」
三工の姑息なやり方に苛立っていた巧たち。当然、審判はそれをとがめるものと思っていたのだが――。
その指が向けられたのは斉藤の側だった。
「指導!」
「なっ!?」
何と審判の裁定は、斉藤の方が消極的というものだったのだ。
盛り上がる三工サイドであったが、その中で一人、藤田の表情は硬い。
(こうまでしなくては浜高の斉藤を倒せんとは…まったく不本意だ…)

241 :2/3 :2008/10/26(日) 21:03:25 ID:???
(いつまでも…そんなのが通用すると思うなっ!)
再開と同時にまた同じ組手を狙っていく蜂野。しかし斉藤はその組み際の一瞬を狙っていた。
蜂野の左袖、その脇の近くをつかみ、巻き込むような左一本背負い。
「有効ォォ!」
「おおっ!」「さっすが斉藤先輩!」「きゃああっ!」
「ああっ!」「蜂野ーっ!」
浜高サイドから上がる歓声。三工サイドから上がる悲鳴。
藤田は心の中で毒づく。(ちっ、見たことか!)

寝技を狙っていく斉藤。ところが蜂野は斉藤の左足を自分の両足で挟み込み、
「でいっ!」そのまま体勢をひっくり返す。
「後ろけさ固めっ!おさえ込み――っ!」
「んなバカなっ!」「斉藤が寝技でつかまるなんてっ!」
寝技巧者の斉藤を押さえ込んだのはひとえに蜂野の執念である。
「負けんぞオレたちは!3年間の苦しい練習を無にしてたまるかっ!」

「絶対に、負けん!」

気迫のこもった蜂野。しかし斉藤は下になりながらも大人しくはしていない。
蜂野の左足をつかんで思い切り引っぱり、彼のバランスを崩す。
「ああっ!」「解ける解ける!」
蜂野の下で少しずつ体をずらしていき、両足で蜂野の左足を挟んだ。
「解けたっ!」
時間は21秒。判定は有効。これでポイントは指導一つ分、再び蜂野がリードすることに。
「よーし、よしよしよしっ!」「勝てる、勝てるぞ!」
「斉藤、まだあきらめるな――っ!」「いけーっ!たのむ――っ!」
しかし、無常にも鳴り響く終了時間を告げるベル。
「それまで!」
この瞬間、三方ヶ原工業高校の県大会優勝が決定した。

242 :3/3 :2008/10/26(日) 21:04:47 ID:???
「優勝!県立三方ヶ原工業高校!」
表彰式となり、優勝旗とメダルを受けとる三工の面々。
巧はすれ違う藤田と視線を交わす。
(団体戦の優勝はもってかれたが…てめえとの決着はまだついちゃいねえぜ)
「準優勝!県立浜名湖高校!」

「あ――っ!くやしー!三工のバカバカバカーッ!」
子供のように感情を爆発させる桜子。保奈美がそれをたしなめる。
「まあ、でも雪辱するチャンスがなくなったワケでは…」
「ないじゃんもお!決まっちゃったじゃん、優勝!」
桜子のその反応を保奈美は不思議がる。
「えっ、まさか桜子、聞いてないとか…」「何を?」
傍らでは龍子先生が選手たちを労う。
「ごくろーサマ。まっ、なるたけ早いトコ次の大会に気持ちきり替えて明日からいこうよ!」
「ん?」
先生のその台詞が、どうも桜子の認識とかみ合わない。
「そーだな、全国大会だもんな」「えっ?」
「これっからが本番よォ!」「あーでもラッキー」「えっ?」
「2校も出場権があるなんて今年だけだからな」「えっ?」
「いやあ、とにかく総体開催地が地元でよかった!」
「ね、ねえちょっと!みんな何?何の話をしてるの!?」

実は全国大会には北海道・東京・大阪・とその年の開催地に限り、2校出場することができるのだった。
「ほほう……どーやら知らされてなかったのはアタシだけみたいね」
負のオーラをたぎらせる桜子に、早々に逃げ出す保奈美と麻理の二人であった。

243 :マロン名無しさん :2008/10/26(日) 21:41:32 ID:???
地元って得だなあ

244 :マロン名無しさん :2008/10/27(月) 01:01:04 ID:???
え……っと今まで記載なかったよね。見事にだまされましたw

245 :マロン名無しさん :2008/10/27(月) 02:32:15 ID:???
斉藤が負けたか
ある意味主人公のライバルとして負けないかと思ったが

246 :マロン名無しさん :2008/10/27(月) 08:03:55 ID:???
何が何でも優勝を!の三工と、2位でも全国行けるからいいか、の浜高の気持ちの差を感じたな
まあ斉藤は勝つつもりで試合したんだろうが、相手は細目を見開くくらいの執念をみせたからな

247 :マロン名無しさん :2008/10/27(月) 09:41:26 ID:???
斉藤だって過去2回目を見開いてる

248 :マロン名無しさん :2008/10/27(月) 12:30:31 ID:???
実は細目を開きをきそう試合だったんだな

249 :マロン名無しさん :2008/10/27(月) 13:17:49 ID:???
>>248まちがえた
○細目の開き具合をきそう試合

250 :マロン名無しさん :2008/10/27(月) 18:51:26 ID:???
一応113話で91年のインターハイは地元開催って出てたけどな。
2校出場可能なんて聞いてねーよw最初から狙ってた?

251 :マロン名無しさん :2008/10/27(月) 19:52:21 ID:???
教育的指導ってポイントになるんだっけ?
まあ引き分けでも三工の優勝には変わりないからいいけどさ。

252 :1/4 :2008/10/27(月) 21:01:00 ID:???
第135話 個人戦に向かって

青空の下、奇麗な弧を描く桜子の肢体。見事な背面跳びで、その記録は――。
「跳んだあ、1メートル55!」
「なんで自分の身長とそんなに変わんない高さ跳べんのよ!?」
周りからも驚きと賞賛の声が飛ぶ。
「へへーっ。やったね自己新」
相変わらずの運動神経である。保奈美はバーの高さを見つめ、言葉も出ない。

「ねー見た、あそこで高跳びやってる二年」「今、すごい高さ跳んだねえ」
その様子は一年生、麻理のクラスも見ていた。
「あのヒト柔道部の先輩だよ」と、麻理は誇らしげにクラスメートたちに語る。

「すごいバネもってるわね。陸上かバレーでもやってればよかったのに」
体育の先生からも褒められて照れくさげな桜子であったが、その彼女に挑戦する者が一人。
「海老塚サンなんかに負けないわっ!近藤サン、もっとバー上げて上げて!」
「は、はい彼岸手(ヒガンテ)さん」
浅黒い肌に迫力のある体格、三つあみのお下げにリボンをした陸上部の彼岸手さんです。
「1メートル70クリア!」
「これが本職の実力よっ!」
彼女はダイナミックな正面跳びで桜子の記録をさらに上回ってみせる。
「それじゃ近藤さんもっとバーを下げて。この二人の高さでやってると他のみんなが練習できないから」
「この二人っていわれるのはちょっとな――」
先生に彼岸手さんと同列に扱われるのを嫌がる桜子であった。

麻理のクラスは50メートル走である。
「セナ、スターティンググリットにつきました。隣はマンセル」「誰がマンセルだ!」
スタート前だというのに余裕綽々の麻理。合図と同時に彼女は飛び出し――。
「6秒8!」
女子としてはとんでもない数字をたたき出すのであった。

253 :2/4 :2008/10/27(月) 21:01:59 ID:???
続いては保奈美の高跳び。桜子同様、背面跳びにいく彼女であったが、
ジャンプが低すぎてバーの高さが手の位置。
期せずして保奈美に突き飛ばされる形になったバーはあらぬ方向へ飛び、そそくさと桜子がメジャーを当てる。
「8メートル30」「そんなの計らないでっ!」
(もう…アタシってどうしてこんなに運動ダメなの?
 桜子も麻理ちゃんも、あんなに運動神経バツグンなのに…)
落ち込む保奈美であったが、その様子を巧は微笑ましく眺めていた。
(いーなあ…本当に保奈美のあーいうトコ、おもしろくて好きだなあ)
傍から見れば授業中に女子の体育を見ながらニヤニヤしてる奴なのだが。

授業終了、お片づけ。これからすぐに昼休み、というところで桜子は保奈美を道場へ付き合わせる。
お弁当を食べ終えて、「じゃ、はじめよっか」
「どうする?着替える?」「上だけでいいんじゃない?」
「そうだね…上だけはおればいいか…」

両手にたくさんの牛乳瓶を携えたミッタンを目ざとく見つける一年生たち。
「毎日これだけ飲むと先輩みたく大きくなるんですね」
もちろんそんなことはないが、ミッタンは麻理たち三人に時間があるか尋ねる。

牛乳、プロテイン、アンドはちみつ。後は混ぜるだけ、シェイクダウン!
「よーし、できたっ!」「飲もうぜっ!」
合宿所で皆が作っていたのは、筋肉増強のためのプロテインドリンクだった。
とりあえず飲んでみるものの、その味は激マズ。
どうも一年生たちの分だけハチミツを入れ忘れた様子。
これで筋肉がつけばいいのだが、全国大会までにというのは時間的にも難しい。
しょせんは悪あがきに過ぎないのかもしれないが――。

「でも、悪あがきでもやるしかねえもんな。選手権の時より一コでも勝てるようにするにはよ」

茂の呟きは選手全員の気持ちを代弁したものだった。

254 :3/4 :2008/10/27(月) 21:03:14 ID:???
バカみたいなことでも考え付くことは全部やる。選手権の時のようなブザマな負け方はしたくない。
彼らは紛れもなく本気であった。

「高校総体全国大会、8月だったな…あと2か月」
「そしてその前に!県大会個人戦ですねっ!」

「県大会…個人戦…?」
麻理の一言に固まる巧たち。
「忘れてた――っ!」「巧と杉と宮崎は体重ギリギリだったハズだろっ!」
「土曜日じゃなかったっけ?」「やだぜ、減量は――っ!」
体重オーバーにでもなれば、当然、試合には出られない。
巧たちは慌てて体重を量りに道場へ向かう。

昼休みだというのに道場には女物のピンクのスリッパが二足。
茂が中を覗いてみると「にじゅーくっ!」打ち込みをしている桜子と、その相手をする保奈美の姿が。

ただし、その格好は柔道着にブルマというものだった。

「…ナニをしてるんだろう」
「う、打ち込みだろ」
にやける杉と茂に対し、平静を保とうとする巧であったが、動揺が隠しきれていない。
二人は四時限目の体育の後、着替えるのが面倒で、
体操服の上にそのまま柔道着を上だけはおっていたのである。
「それにしてもエッチですな――っ、あのカッコは」
「いや、まったく。見慣れてたはずなのに、ちょっとしたアレンジで新鮮に…」
杉と茂、オヤジ的発想である。ついつい見入ってしまったが、はたと巧が気づく。
他の二人に保奈美までいやらしい目で見られているということに。
「おい、おまえらやめろ!見るな!」
「なんだコイツ、急にっ!」

255 :4/4 :2008/10/27(月) 21:04:33 ID:???
「桜子。県大会がんばって」
「うん。やるからにはね」
一通り汗を流し終え、桜子は県大会個人戦にむけて決意を新たにする。
「その前に……」

杉の目の前の戸がいきなり開く。
そこに立っていたのは鬼のような形相の桜子。
「……この」


『ケダモノどもが』


巧・杉・茂――。
この日から彼ら3人は――名前の後に“ケダモノ”をつけて呼ばれるようになった。

「杉ケダモノ先輩、宮崎ケダモノ先輩、さよーなら」
「大声でゆうな!」

256 :マロン名無しさん :2008/10/27(月) 21:49:40 ID:???
柔道ブルマ……ゴクリ

257 :マロン名無しさん :2008/10/27(月) 22:00:53 ID:IrTZ/EL+
内容濃すぎるだろ今回。
いろんな意味でw

258 :マロン名無しさん :2008/10/27(月) 22:22:45 ID:???
ブルマと柔道着がこんなに似合うとは思わんかった
作者は間違いなく天才

259 :マロン名無しさん :2008/10/27(月) 22:24:15 ID:???
重要なのはチラリズムだよ少年

260 :マロン名無しさん :2008/10/27(月) 22:29:42 ID:???
女子の体育を見てニヤニヤするなw

261 :マロン名無しさん :2008/10/27(月) 23:08:23 ID:???
エロキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
柔道着にブルマ!新ジャンルの始まりだな!

262 :マロン名無しさん :2008/10/28(火) 08:19:31 ID:???
断言する。この回は歴史に残る。

263 :マロン名無しさん :2008/10/28(火) 09:34:51 ID:???
少なくとも俺の心にはしっかりと残った

264 :マロン名無しさん :2008/10/28(火) 10:00:33 ID:???
巧と保奈美の夜のレパートリーが一つ増えた日であった

265 :マロン名無しさん :2008/10/28(火) 16:01:16 ID:???
しかし怒るってことは桜子も自分達がエロい格好してるという
自覚があったんだろうか。
まぁ女はそういう視線には敏感というからな・・・

266 :マロン名無しさん :2008/10/28(火) 20:53:55 ID:???
>>256-265
ここまでレスせずに待ったので、笑顔で言わせてくださいね
「ケダモノ先輩方こんにちは〜」

267 :1/3 :2008/10/28(火) 21:01:10 ID:???
保「この場を借りて、ひと言おわびしたいことがあります」
桜「それは何かとたずねたら?」ドンドン

保「実はホントの高校総体では女子の個人戦はやらないの――っ!
  スピンをくわえて一年ぶりに、えーい!」
桜「え――っ!そんなああ――っ!あんなに大見栄きってムリヤリ始めたのに――っ!」
〔こちらの思い違いでした。すみません。(作者)〕

保「でも、もう後もどりできないところまで描いてしまったから」
桜「帯ギュの中ではありっちゅうことで女子個人戦やっちゃうよ――っ!」
麻「ぜんぶ河合が悪いんでーす」


第136話 一人ぼっちの少女

県大会個人戦というワケで、再び県営体育館である。

県個人戦は各地区の予選を勝ち抜いてきた代表だけで行われる。
今日ここに集まっている選手は、それぞれ3つの地区の大会でベスト5になった者ばかり。
「でも浜高は選手メンバー全員でここにきた。まるで団体戦に出場しにきたようではあーりませんか」
こんな高校、他にある?と得意満面の杉。一応、彼が主将である。
「悪かったわね」
「おっ、暁泉学園の堀内クンと永田クンと水戸泉クン」
「黒柳だっ!」「いや失敬」

今日のこの試合もインターハイの予選。今日勝ち残ってこそ意味がある、と平八郎は言うが、
「なにしろアタイたちゃ団体戦でもう出場権もってるもんで気持ち的にラクで!大変ね、後がないヒトたちは!」
増長しまくっている杉であった。

268 :2/3 :2008/10/28(火) 21:02:12 ID:???
これから女子の個人戦、というところで打ち込みぐらいしておきたいのだが、麻理の姿が見えない。
保奈美は麻理を捜しに外へ。桜子は待機。
(やれやれ、しょーがないから佐鳴高をさがして打ち込みまぜてもらおっかな。
 それにしても、県大会ともなるとさすがに黒帯ばっかし…
 やだなあ、アタシだけ白帯で素人っぽくて)
どうにも場違いな感が否めない桜子。すみっこで一人、柔軟体操をしていると、
同じように白帯の少女が一人。県大会では珍しい白帯同士ということで、桜子は意識してしまう。
(なんか向こうも気にしてるみたい。おまけに向こうも一人だし、同じ学校のヒトきてないのかな…)
話しかけようかどうか迷っていると「あ、あの…」先手を取られてしまった。
「お一人…ですか?」「え、いえ、連れが行方不明になってて…」
それを聞き、慌てる少女。「すみません…見ず知らずの者が急に話しかけたりしちゃって…」
なぜか謝ってその場を去ろうとする彼女を、桜子は「まって」と捕まえる。
「あのさー、えーっとお、へへっ。よかったらいっしょに打ち込みしてくんない?」

彼女は別所愛子、中部地区の赤磐高校の選手であった。
畳の上では各校の選手たちが試合前の練習に余念がなく、
桜子は打ち込みのラストに投げられた選手に危うくぶつかりそうになる。
「あぶないなあ。なにもこんなせまいトコで投げなくたってねえ」
毒づく桜子だったが、睨まれてすぐ話をそらす。
とにかく打ち込みを始める桜子たちを、今の選手たちが見ていた。
「松原さん、別所ですよ」「フン…」

別所さんは高校二年で桜子と同い年。白帯ではあるが2年のキャリアがあるそうである。
「海老塚さんも白帯だけど代表じゃないですか、強いんでしょ?どのくらいやってるんですか?」
そう問われた桜子は、つい正直に「2か月」と答えてしまう。
目を丸くする別所さん。その反応につい、「1年と2か月」と訂正。
(せっかく友達になれそうだから、調子合わせとこっと)
別所さんも桜子に打ち込みの相手を申し込もうとしていたらしく、桜子から誘ってもらえて
それこそ神様みたいな人だと感動していたのだという。
いい人ではあるがオーバーすぎて疲れるタイプのようだった。

269 :3/3 :2008/10/28(火) 21:03:23 ID:???
ようやく戻ってきた麻理を叱ろうとする先生。
だが、「ゴメンなさい」と上目遣いの麻理に思わず言葉を詰まらせる。
(本気でおこれないわよね…高校生に見えないもんね。あの愛らしさが麻理ちゃんの武器ね…)
納得せざるをえない保奈美であった。
「ところで先生、桜子は…?」「海老塚さんならあのスミに…あら、いない?」

別所さんと打ち込みをしていた桜子。先ほどの松原とぶつかってしまう。
「……ちょっとお。なによ、イヤガラセのつもり?」
空気が急に険悪になる。
「大体こんなせまいトコにこないでよ。後からわりこんできてまったく!」
「だってココしか空いてるトコないもん。じゃ後からきたもんは板の間でやれってゆうの?」
「そうしてもらいたいぐらいよ」
これにはカチンときた桜子。一触即発の雰囲気の中、「えっびづっかサン!」
「袴田サン!」「チェーッスなんちて」
袴田今日子、ずいぶんと軽い態度で登場。

「こんちは三保女子の松原サン」「ええ、ひさしぶり…」
互いに県下の強豪同士ということで、袴田さんと松原は面識があるようだった。
「袴田さん。また、あなたと戦えるのね。楽しみだったのよ」
組み合わせでは当たるとしたら決勝戦。今度は負けないという松原に、
「さあ、それはわからないんじゃない?実際はじまってみないとね」
そうにこやかに返す袴田さんだった。
(袴田め…この私が勝ちのこれないとでもゆうの!)

試合は体重の軽い方から、巧、斉藤、茂の三人と、女子の方も桜子と麻理が出陣。
まずは桜子の一回戦――。
「赤、浜名湖高校 海老塚!」
「白、三保女子学院高 松原!」

「あら…?奇遇ねっ」
「こりゃあ、なんだか…負けらんないな」

270 :マロン名無しさん :2008/10/28(火) 21:17:39 ID:???
袴田さんはできる人やでー

271 :マロン名無しさん :2008/10/28(火) 21:22:48 ID:???
2ヶ月!いいな。女の子キャラ増えたw

272 :マロン名無しさん :2008/10/28(火) 21:35:59 ID:???
女子個人やらないのかよw
誰も気付かなかったのか?

273 :1/3 :2008/10/29(水) 21:00:31 ID:???
第137話 松原渚@

男子軽中量級・巧の試合を睨みつけるように眺める藤田。
(先週の団体戦ではまたしても決着がつけられなかったが…見てろよ、
 小内巻き込みが完璧になった暁には必ずオマエを仕とめてやる…)
というところで、「桜子がんばれーっ!」と応援する保奈美の声に気がつく。
(あれは粉川の〔ヤローにゃもったいねーくらいかわいい〕彼女…。
 なんであんなトコロに?粉川がやってる試合場じゃないぞ?)
その試合場では現在、桜子と松原との勝負の真っ最中。
(あ――?ありゃ確か浜高の…口の悪い女)
藤田は桜子の名前を覚えていなかった。

「あれ?あそこにいんの海老塚ちゃんじゃない?なんで試合してんの?」
永田が斉藤に尋ねる。
「なんでっていわれても…代表だから…」
「えっ!海老塚サンが!?どこ!どこっ!?」「豊クンどうどう」
どこからともなく袴田豊、鼻息荒く登場。石塚にたしなめられる。

(組手のとり方からして、たいした相手じゃないな。やっぱり白帯ね…遠慮なくいかしてもらう!)
桜子の実力を見切った松原は積極的に仕掛けていく。

松原の大内刈りに反応する桜子、そのとき別所さんの声が飛んだ。
「いけない!そこから背負いが出るっ!」
「えっ!」(ちっ!今の声は別所だな!)

松原の一本背負いに、ほとんど顔面から畳に落ちる桜子。
とっさに腕でかばうものの、判定は「技ありっ!」
取られはしたが、それで済んだのはむしろ幸い。勢いは一本でもおかしくはなかった。
(それにしても桜子のピンチに声をかけてくれたあの人…いったい…?)

274 :2/3 :2008/10/29(水) 21:01:42 ID:???
「ふん。別所があんなこといわなきゃ一本だったのに。命びろいしたわね」
うつ伏せの桜子の背中を松原はポンと叩く。その態度が、桜子のカンにさわった。

「苦戦してるみたいね、海老塚さん」
保奈美たちの下へやってきた袴田さん。
彼女が言うには、三保女子学院の松原は春の大会でこの階級3位になった選手だとか。
「立ち技はキレがあるし寝技も巧い好選手だけど…確かに才能のある選手だけどね…」

「私は大っキライよ」

桜子を大外刈りで倒す松原。さらに有効一つを加え、ポイント差を広げる。
松原は寝技には移行せず、見下すような目で桜子の姿を「フン」と鼻で笑うのであった。
(さっきからこいつの態度!こっちが弱いと思って…ナメてんの?)

松原が寝技に行かないのはその気が無いから。豪快な投げ技で一本取りたいから。
彼女は相手が自分より格下とわかると、ああやって遊ぶのである。
「でも、桜子さんをあなどりすぎると松原さんたぶんイタイ目に合う」
それは両者と試合をした袴田さんの予言であった。

巧の軽中量級と、桜子の女子48キロ以下級は隣の試合場である。
(ん、海老塚試合してるじゃねえか。勝ってんのか?)
試合中にも関わらず桜子の試合を気にする巧。
(げっ!負けてんじゃねえか!)
なにやってんだ、バカ――と、巧は目の前の相手を一本背負いであっさり片付ける。
(よしっ!今、そっちいくからもうちょい粘ってろっ!)
負けザマ見届けてやるぜ、という彼の内心が本心なのかどうなのか。

275 :3/3 :2008/10/29(水) 21:02:43 ID:???
圧倒的にリードされながらも粘り続ける桜子に、松原は少しずつ焦り始める。
(見えてきた、動きが…もうアンタの技はくわない!)
ここでキメてやる、と松原がくりだしてきた体落とし――「見えたっ!」桜子はそれに反応する。

「そ――れいっ!」

「技あり――っ!」
「裏投げで返しちゃったっ!」「今のすごく速いっ!」「桜子すごいっ!」
歓喜の応援席。
松原の決め技をかわした上での裏投げ。初めて目の当たりにした桜子の技に別所は驚きを隠せない。
(…なんて人なの?松原さんのスピードに追いついていって返し技を出した)

頭を振りながら立ち上がる松原。
「くっ……!よくも……!」
それに対し桜子は、不敵な表情で返すのだった。
「さーて、まずひとつ返したっと」

276 :業務連絡 :2008/10/29(水) 21:03:58 ID:???
次回は一回休載して、単行本14巻のおまけを紹介します。

277 :マロン名無しさん :2008/10/29(水) 21:11:58 ID:???
誰かに似ている…

278 :マロン名無しさん :2008/10/29(水) 21:29:45 ID:???
桜子&袴田さんかっこいー!桜子けっこう人気だな〜
さすが読者人気投票No.1!がんばれ!

279 :マロン名無しさん :2008/10/29(水) 21:31:28 ID:???
馬鹿トリオすら袴田さんにはっきり嫌いなんていわれたことないのに
大嫌いとまで言わせてる松原さんどんだけだよ。

280 :マロン名無しさん :2008/10/30(木) 00:31:52 ID:???
人間同性には厳しいものです

281 :マロン名無しさん :2008/10/30(木) 13:04:14 ID:???
格下相手とは言え小バカにしたような柔道をするのが許せないんじゃなかろうか?
袴田さんはその辺の柔道に対する姿勢はきっちりしてそう
地区予選でも見くびってた桜子相手に詫び入れつつ全力で戦ってたし、三バカも柔道に対しては真っ直ぐ?な姿勢だと思うし?バカだけどww


俺は柔道じゃないけど実力はあるのに相手を小バカにしたような試合するヤツは嫌いだったな
性格とか個性とか体力温存してるとか言われりゃそれまでだが相手がいて戦ってる以上はやっぱり相手に対して失礼だよなぁ...

282 :マロン名無しさん :2008/10/30(木) 14:59:20 ID:???
自分もこの場合にそれはあてはまらないと思う
ただのスポーツマンシップに基づいた発言でしょうね

高校生の運動選手でも、エリート意識に凝り固まったタイプなら実際にいそう
袴田さんの話によると、今回たまたま虫の居所が悪くて…というのでもなさそうだしね

283 :マロン名無しさん :2008/10/30(木) 18:00:48 ID:???
巧って格下相手に失礼な戦い方してないか?

284 :マロン名無しさん :2008/10/30(木) 19:51:53 ID:???
>>283
これまでにそんな記述あったっけ?

285 :マロン名無しさん :2008/10/30(木) 20:01:54 ID:???
もしかして今回のことかな
格下や後輩相手に、最良最短で倒したり自分の都合でしとめかたを変えるのと
試合中に相手をなぶって遊ぶのとでは、少し違う気がするが

自分的には、勝ち抜き戦で格下には時間をかけずに早くしとめて
後の大物にそなえて体力温存する試合運びに近いぐらいの印象かな

286 :マロン名無しさん :2008/10/30(木) 20:23:03 ID:???
寝技かけたまま隣の試合を見てて試合終了に気付かなかったのはあったな

287 :1/4 :2008/10/30(木) 21:02:07 ID:???
○単行本第14巻 (表紙:永田 賢  裏表紙:堀内平八郎)

・四コマその1 かえ歌マンガ「魔女っ子メグ」編

1.永:シャランラシャランラ オンナだなんて――お・も・お・ったらっ!
    おおまちがいよお――オ・ト・コの子ォ!
  杉「しまった、マイクとられた!」
  桜「いつのまにっ!」

2.永:(中略)←ヤバイからカット お化粧なんかもしたーいけど
    センセの血圧あがっちゃう
  市「ながたー!せめてガッコーではヤメロ!」

3.永:みにくいヤツラを投げとばせーばあ
    ノーマルのコだってイチコロよ〜ん
  麻・薫「キャーキャー」←あんまりノーマルじゃないか?

4.永:ナガタのケンは ナガタのケンは
    あたなーの心に し・の・び・こ・むっ!
    「シャランラ(ハァト)」
  魔女っ子メグのうた知らないとぜんぜんわかんないよなあ…

288 :2/4 :2008/10/30(木) 21:02:54 ID:???
・四コマその2 かえ歌マンガ「魔法使いサリー」編

1.杉:マハリークマハーリタヤンバラヤンヤンヤン
    法事になるーとやーってくる、ちょっと お茶目な小坊主さん

2.杉:せいしゅー せいしゅー

3.杉:怪しいお経を唱えると 霊と妖気を呼び〜出すの
    「アノクタラサンミャクサンボダイ」

4.杉:せいしゅー せいしゅー マホーつかい せいしゅー
    『メ〜ン』
  巧「に、二番があるのか!?」
  茂「も――い――って!」
  「メーン」じゃなくて「ニャーン」という説もある。

289 :3/4 :2008/10/30(木) 21:03:42 ID:???
・大爆笑の第14回 サンデーコミックス名物『絵筆をもってね!』

 選評/河合克敏 応募総数:1743点 入選:23点

 残念!グランプリなし

 準グランプリ:愛媛県・輸入パセリ〔多数(四コマ)〕
        1.龍「粉川・石塚とかけて“車の助手席”とときます」
          茂「ほう、その心は?」

        2.龍「どっちも彼女のシリにしかれやすい」
  
        3.茂「おおっ!うまい!!(としておこう)」
          杉「ひねりもなくくだらないが許す!!」

        4.保(…あのババア)龍子先生のスリッパに画鋲を仕込む保奈美。

        広島県・日当時数〔杉・桜・麻(四コマ『それいけ桜子!』)〕
        1.杉「へえー海老塚ってコンタクトしてたのかあ」

        2.桜「うん、ほら」ひょいっ

        3.杉・麻「げげっ!でっけぇーコンタクト!!」

        4.桜「フリスビーにもなるんだよ」ちょんちょん!

290 :4/4 :2008/10/30(木) 21:04:29 ID:???
 準グランプリ:千葉県・亀井博之〔巧・藤田〕
        1.(10巻94話より)
          藤「バスの時間だ」
          巧「バスは苦手だろ!?」

        2.藤「押すんだよ!大学まで」
          巧「……ナルホド…」

 topix:愛知県・大乃国ぽん 神奈川県・ズームイン杉田〔保奈美・麻理(合作)〕
    北海道・山田千愛 〔保奈美(SD保奈美)〕
    京都府・いちせたか〔保奈美(保奈美の増長)〕
    熊本県・しいたけ 〔桜子(『えびゃ』)〕

291 :マロン名無しさん :2008/10/30(木) 22:29:57 ID:???
今回の4コマなんだかすごく好きだw

292 :マロン名無しさん :2008/10/30(木) 22:36:42 ID:???
ふたつ共めちゃくちゃかわいいw
♪せいしゅー せいしゅー♪ポーズが好きだなぁ

293 :1/3 :2008/10/31(金) 21:04:47 ID:???
第138話 松原渚A

「技ありとりかえしたあ!」
「まだ有効ひとつとらなきゃ並ばないけど……大丈夫、桜子なら並ぶどころかきっと逆転するから!」
盛り上がる麻理と保奈美。
(裏投げねぇ…もうちょっと女のコらしい技教えろよ、浜高)
豪快すぎる桜子の技に、見ていた藤田も反応に困る。

妙な盛り上がりを周囲も気づきはじめていた。
「三保女子の松原が技ありとられたんだって?」「しかも白帯相手によお!」
(海老塚さん…あなたっていったい…?)
別所さんも桜子の戦いぶりに驚きを隠せない。

(くっ油断よ!油断しただけ…!アタシがこんなヤツに負けるハズがない…!)
格下と見ていた桜子に技ありをとられたことで、松原に焦りが生まれる。
強引に背負いにいくも不発。桜子はきっちりとそれをかわしてのける。
(それにしても浜高のあの女、動きがいい。運動神経よさそうだな。ちょっと似てるな――あのバカ野郎に…)
何やら複雑な思いの藤田。浜高の皆の近くで観戦していた袴田さんも同じことを指摘する。
「似てない?桜子さん。巧クンの柔道と」
やっぱり近くで見てきたからか――そう言われて巧は即座に否定する。
「ちょっとカンベンしてくださいよお、あんなヘタッピじゃないっスよ、オレ」

(やっぱり、この人も麻理ちゃんほどは速くない!もう投げられないぞ!)
麻理の練習相手を務め続け、その速さに慣れきっている桜子である。
生半可な技では、既に彼女には通用しない。

ポイントリードをしているにも関わらず、焦りからなお攻め続ける松原。
その出足払いに桜子の体勢が大きく崩れる。
(チャンス!このまま大外刈りで足をひっかければ…簡単にころぶ!)
キメにかかる松原、ところが桜子はその刈り足を逆に捕まえ「うりょ……」
「はい――――!!」
強引に松原の体を持ちあげ、畳にたたきつけた。

294 :2/3 :2008/10/31(金) 21:06:58 ID:???
「有効――っ!」
審判の宣告に愕然とする松原。「そんな…!」
「す、すくい投げで返した!」
この試合、驚き続きの別所さん。そのとき、彼女の周りに――。
「このバカ、とーとー追いつきやがったよ!」
「あきらめ悪りー女だな、てめーもよ!」「やるなァ…」
「も、逆転するしかないっ!」「が、がんばれ海老塚さん!」
杉、茂、ミッタン。そして永田に豊まで。桜子大応援団の到着である。
(い、いつの間に…しかもちゃっかり別所サンのそばに…)
が、桜子にとってはむしろテンションが下がる結果になった模様。

残り30秒の声がかかる。追いつかれてしまった以上、松原はもう攻めていくしかない。
しかし仲間たちの声はもはや彼女には雑音にしか聞こえない。
「うるさい!いわれなくたって…!」
それに対して桜子は、
(あ――うるさい。なんとかしてくれ、あいつら…)
応援の声を本気で嫌がっていた。

そしてついに、桜子が良い形で組手を取る。
「あ、とったっ!」「そこだっ!すぐいけっ、すぐっ!」
巧たちの声が飛ぶ。
その脇で――。
「ところでさあ、あんたドコの学校?」「階級は48キロ以下かな?」
杉と茂は別所さんをナンパしていた。

(よしっ!)
桜子の小内刈り。そしてそこから一本背負い!

松原の背中が音高く畳を打ち、そして審判の右手が高々と上がる。

「一本!」

295 :3/3 :2008/10/31(金) 21:07:59 ID:???
会場に大歓声が上がる。
「やったあ!」
歓喜の声と共に保奈美が飛びついたのは巧の右腕。すぐに気づいて二人ともまっ赤に。
「つ、つい…いつも、隣は桜子か麻理ちゃんだったから……」

(背負いでキメやがったか…ますます粉川と同じスタイルだな)
つまらん、と評する藤田だったが、結局、彼は最後まで試合を観ていた。

礼の後、一言もなく去っていく松原。タオルで顔を拭う彼女の姿に、桜子もまた言葉が出ない。
というところで、応援していた皆が桜子を取り囲んだ。
「やったなこのヤロは!」「完璧だったね、最後の背負いは!」「桜子先輩尊敬しちゃう!」
さらに永田が桜子を後ろから抱きしめる。
「海老塚ちゃんって強かったんだあ!感動のあまり抱きしめちゃう!」
「ギャ――――ッ!!」
永田のその振る舞いに、今度は豊が暴走。
それを察知した袴田さんが叫ぶ。
「みんなお願い!豊をとめてっ!」
杉たち袴田今日子親衛隊によって捕獲された豊はなおも納まらない。
「てめ――このやろー勝負しろ――ッ!」
「なーに、あれ?」
呆れる永田。袴田今日子さんの弟、豊は桜子に片思いしているのだ。

(海老塚桜子さん…一回戦、三保女子学院の松原さんを倒したということは…)
別所さんは対戦の組み合わせ表に手を伸ばす。
そして「やっぱり……」彼女は次の対戦相手を確認する。

(二回戦め……あなたと戦わなくちゃならない)

296 :マロン名無しさん :2008/10/31(金) 23:36:44 ID:???
スピード感がある展開で読んでて爽快だったな。
最初劣勢でも、たて続けにポイントをとって最後に一本を決めるというのは
以前の巧の試合のようで好きな展開だ。
二年になってからの巧は安定しすぎて、試合としては盛り上がりが少ない気がするし。

297 :マロン名無しさん :2008/11/01(土) 12:40:11 ID:???
桜子、モテ期到来か?

298 :マロン名無しさん :2008/11/01(土) 19:48:43 ID:???
永田は完全に女の子な振る舞いだな

299 :1/4 :2008/11/01(土) 21:01:11 ID:???
第139話 別所愛子@

県大会個人戦――浜高メンバー中いちばん不安なのは、
なんといっても、柔道始めて2か月ちょっとの桜子である。
桜子はいきなり強豪・三保女子学院高の松原渚初段と当たったが、激戦の末に彼女を倒し、
見事に一回戦を突破した。

松原が前大会3位の強豪と聞いて、今さらながらに驚く桜子。
でも、それに勝ったのは桜子。それぐらい強くなったのだと袴田さんに褒められて照れる。
「へー…まだ信じられないけど…ちょっとウレシイかな?」
巧くんも一生懸命応援していた、と保奈美に話を振られ、巧からも一言。
「おまえ、もうちょっと気合入れる時なんとかしろよな。
 “はにゃあ”とか“うにゃあ”とか変なかけ声ばっかしだぞ」
「えーっ!?いってないよそんなこと!」「いってるいってる」
保奈美にまで馬鹿にされたと思い憤る桜子だったが、話はそこまで。次は麻理の試合である。

「白、浜名湖高校 来留間さん」「赤、静岡第一 田宮さん」
(小さいわね、これでも本当に高校生?ま、初戦の相手としてはラクそうでラッキー!)
麻理の見た目から侮ってかかる静一の田宮。観戦している永田も心配をするが――。
「はじめ!」「せいやあ――っ!」
開始と同時に飛び出してくる田宮の懐を麻理はあっさりと取り、背負い一閃。

「一本!」

水を打ったように静まり返る会場。その中に審判の声だけが響いた。
「開始直後に一本だって」「ソ連のジェボアーゼみたいなコトしやがって」

※V・ジェボアーゼ…90年、嘉納治五郎杯・男子71キロ以下級3位決定戦で開始直後に一本をとってしまった。
          そのときの時計の電光表示の残りは「4:58」秒、つまり2秒で勝ってしまったのである。

300 :2/4 :2008/11/01(土) 21:02:09 ID:???
ざわめきがおさまらない会場。戻ってきた麻理に保奈美も桜子も惜しみなく賞賛の言葉をおくる。
「あんなかっこいいコトやられた後じゃ出ていきづらくなっちゃうな――」
すねたようにそんなことを言う袴田さん。麻理は思わず謝ってしまうが、もちろんそれは冗談。
「袴田さん。絶対、また二人で決勝戦やりましょう!」
「うん。約束だもんね。わたしもがんばるから」
互いに励ましあう二人。それを見ていた桜子も満足げ。
「いーねいーね。こーゆーライバル関係、理想だよね」
「いーのか?それで?いっとくけどあの二人の眼中にはいってないぞ、オマエは」
「巧クン、それをいっちゃあ…」

さて、浜高の他のメンバーはというと、斉藤も宮崎も順調に勝ち進んでいった。
だいたい、全国大会にも出ようって者が一回戦で負けちゃ話にならない。
「そら――そうだがよ!やっぱり女子中心にいく気だなっ!」

それはそれとして。杉が茂を再び女子の試合を観に誘う。次の試合は別所さんなのだ。
「おまえら、試合場で女のコチェックしてんの?」
「チェックだけで済むか!アタックだってかけちゃうもん、オレたち」
斉藤の問いに堂々と答える杉と茂だが、いばれることでは決してない。

「次よ、海老塚さん。用意できてる?」「いつでもオッケー!」「踊らなくてもよろしい」
どうせ知らない人ばかりだから誰が相手でも同じ、と妙に落ち着いている桜子。
保奈美が対戦相手の名を読み上げる。
「うん、あまり聞いたコトない学校、赤磐高だって。別所愛子って人」
「えっ?」

「赤、赤磐高校 別所さん!」

「あれえ、あの人白帯?」「先輩、孤独じゃなくなりましたね」
(冗談じゃないよ、まったく。袖振り合うのも何かの縁の友だちになれたかもしんないのに)

301 :3/4 :2008/11/01(土) 21:04:04 ID:???
「あのコだよ、斉藤」「ふーん。まっ、可愛いっていやあ、そうかもしれんけど」
杉は斉藤に別所さんを示すも、斉藤の方はいまいちピンとこない様子。
「あっ、コイツ、わっかんねえかなあ!」
「あの、弱々しさ、今にも折れそーな華奢なカンジ、薄幸の佳人ってゆーんですかあ!」
杉と茂の二人がかりで彼女の良さを主張するが、そのとき、対戦相手がアナウンスされる。

「白、浜名湖高校 海老塚さん!」
試合場に出る桜子は、別所さんを前にやはり心中複雑だった。

前回3位に勝ったのだから、今度は一回戦よりラクだと余裕をもって試合を観る保奈美と麻理。
しかし、その様子を当の松原が遠巻きに眺めていた。
(いい気なもんね…別所愛子を白帯だと思ってタカをくくるとやられるわよ。
 カマトトぶりじゃあ海老塚も負けるよ)

「始めっ!」「いや――っ!」

「“いやー”だって、もう高い声!」「もっといわせたいっ!」
別所さんのかけ声一つで大喜びのケダモノコンビ。こいつらのことは置いといて、
(これも勝負の世界のキビシサだよね――まっ、しかし、やるからには全力で、正々堂々やらなくちゃ…)
「ほやっ!」
桜子は真正面から別所さんに組んでいく。
(あれっ、組みやすいな別所さんとは…)

その頃、袴田さんが試合場に到着。と、いうところで別所さんの噂話を耳にする。
「あ?別所って人、出てる」「あの人、変わってるよね、あんなに強いのに白帯なんだもん」
「えっ?」

302 :4/4 :2008/11/01(土) 21:05:20 ID:???
(よーし、いくよ別所さん!)
「うにっ!」
得意の小内刈りを仕掛けていく桜子。
だが――別所さんはその刈り足を良く見てかわす。
そして、小内刈りをかわしたその足でもって、桜子の右ヒザを的確に押さえた。
「あ!」
刈り足をすかされたために右足一本の状態だった桜子。
そのヒザ下の位置を足裏で押さえられ、彼女の右足はただの棒と化す。
「わっ!」
跳んで逃げることも出来ず、そのまま前方に引き倒される――。
「びっ!」
流れるように奇麗な技、“ひざ車”である。

「技あり!」

「やっぱり……」
その光景を見ていた松原が呟く。

息せき切って袴田さんが保奈美たちのもとへやってくる。
「大変よ、桜子さんの相手!別所さん。あのコ、タダの白帯じゃないの!」
「えっ!」
「中部地区予選で優勝してる!しかも、その時三保女子の松原さんを破ってる!」


「松原さん以上の強敵だったのよ!」



303 :マロン名無しさん :2008/11/01(土) 22:25:36 ID:???
と言うことは松原さん公式戦白帯に2連敗なわけだ。

……部での立場ねーだろうなあ…

304 :マロン名無しさん :2008/11/01(土) 23:19:11 ID:???
松原さんや別所さんがそんなに有名なのに
何で1年で実質日本一の麻里が無名なんだろう・・・

305 :マロン名無しさん :2008/11/02(日) 07:30:58 ID:???
松原さん→前回県大会3位、県内では有名
別所さん、麻里ちゃん→地区大会では優勝しているが、県大会は初出場
と考えればおかしくはないかな。
別所さんのことは袴田さんも知らなかったし、別所さんは中部地区のみで有名なのだろう

306 :マロン名無しさん :2008/11/02(日) 08:19:16 ID:???
別所さんは実は腹黒で今までのモノローグは全部嘘で相手を油断させるためにわざと白帯
のまま人なんだよ

307 :マロン名無しさん :2008/11/02(日) 16:14:48 ID:???
ところで何か海産物のイメージがわいてくるのだが。

308 :マロン名無しさん :2008/11/02(日) 20:23:51 ID:???
斉藤って別所さんに対して何も思ってないようだけど
こういう奴のほうがちゃっかり付き合ったりするんだよな

309 :マロン名無しさん :2008/11/02(日) 20:48:00 ID:???
最初の頃、石塚さんの件で桜子からかってたりしてたのに
すっかり堅い人になってしまったな

310 :1/3 :2008/11/02(日) 21:06:56 ID:???
第140話 別所愛子A

「ホントに!?桜子の今やってる相手の人が、中部地区の一位の人なんですか!?」
「そうらしいの、私も今知ったんだけど…」
袴田さんのもたらした情報に騒然とする保奈美たち。
その正しさは直接戦っている桜子が一番強く感じ取っていた。
(あっという間に技ありとられてしまった…別所さんって…強いじゃん!)

(あの素早い小内刈りをかわしながらひざ車をかけるか。まさに一瞬のスキをついてくる。
 海老塚も白帯だけど、別所はタダの白帯じゃない)
桜子と別所さんの試合を両者と戦った松原が見つめる。
(別所の技は天才的にキレる!私もそれでダマされたんだから)

何がどうなってやられたのかさっぱり分からなかった桜子。とにかく小内刈りはかけづらくなった。
(うっ、てことは小内と背負いの連続パターンはつかえないの?
 あたしゃ自分から攻める技はそれしかもってねーぜ!)

どう攻めればよいのか困る桜子。別所さんは組むときは簡単に組ませてくれるのだが。
そこで麻理の声が飛ぶ。
「ダメ――!そんなに正直に組めば向こうも技をかけやすいんですよっ!」
桜子と別所さんは同じ左の組手同士。そのことにようやく気づいた桜子。
しかし先に別所さんが動く。
「いやっ!」
支え釣り込み足で桜子を崩し、そこから――大内刈りへと変化する!
「や――っ!」
「でえ――っ!」
とっさに足をついてしのぐ桜子。(こらえた…!?)

311 :2/3 :2008/11/02(日) 21:08:00 ID:???
「おおっ、のこった!」「土俵際の魔術師!」
桜子の反射神経に茂たちも驚き。「おい、海老塚。油断…」
「海老塚ァ!はなれろバカ、次がくるって!」
斉藤のアドバイスを遮るように巧の声が飛んだ。
その声に反射的に別所さんから距離を取ろうとする桜子。
その動きとほぼ同時に、別所さんの内股が空を切っていた。

「まったく、あぶなっかしくて…」
巧の一声のおかげで桜子は難を逃れたが、それはそれとして――。
「コラァ!どっち向いてるんだ君はっ!」
実は巧自身も試合開始直前だったのである。

驚くべきテクニカルな別所さんの柔道に、保奈美も袴田さんも動揺を隠せない。
「すごい連続技…」「技のとぎれがない。次々とでてくる。とても白帯の柔道じゃない」
「でもっ!それをかわしちゃう運動神経が桜子先輩にはあります!」
暗雲が立ち込めかけたその雰囲気を、麻理の明るい声が吹き飛ばした。

(支え釣り込み足と大内刈りの連続…うまく入れたと思ったのに…この人は倒れなかった……)
驚き焦っているのは別所さんの側も同じだった。

組み合う両者。そこで桜子は意を決した。
(どうなるかわかったもんじゃないけど…どうせまともにいってもかなわない)
再びの小内刈り。先ほどと同様にひざ車で迎撃しようとする別所さん。
(きた!!)
しかし、そうすればそうなるだろうことは、桜子もまた読んでいたのだ。

ひざ車のために伸ばされた別所さんの左足を、両手で抱え込むように捕らえる桜子。
「足とった!」「チャンス!」「いけっ、残りの足、刈れっ!」

「ちえいっ!」

312 :3/3 :2008/11/02(日) 21:09:08 ID:???
桜子渾身の大内刈り。
両足が共に宙に浮いた別所さんはこらえることもできず、そのまま畳に倒される。

「技ありーっ!」

「さすが先輩!」「うん!麻理ちゃんのいうとおりよ!」
一気に気勢の上がる保奈美。
「なんたって桜子は運動神経のかたまりみたいなコなんだからっ!」
「バケモンみたいないーかたすんなよ!」

「よーし、よし!やればできるじゃねーか、海老塚」
かくいう巧はというと。
「おさえ込み――っ!」
「これで30秒はゆっくり見られるな」
「なめんなコイツー!」
試合中にも関わらず、余裕綽々で桜子の試合を観戦しているのであった。

313 :マロン名無しさん :2008/11/02(日) 21:12:25 ID:???
え、えーっとこれ(巧)について袴田さん一言お願いしますw

314 :マロン名無しさん :2008/11/02(日) 21:16:35 ID:???
巧はいつの間に寝業師になったんだ

315 :マロン名無しさん :2008/11/02(日) 21:27:29 ID:???
立ち技はキレがあるし背負いが凄い好選手だけど…確かに才能のある選手だけどね…
私は大っキライよ。

316 :マロン名無しさん :2008/11/02(日) 22:51:42 ID:???
試合中に観戦なんてアリなんですか…

317 :マロン名無しさん :2008/11/02(日) 22:52:50 ID:???
主人公ならアリです
敵がやると非難されます

318 :マロン名無しさん :2008/11/02(日) 22:54:31 ID:???
藤田は桜子とタクミンのどっちを見てると思う?

319 :マロン名無しさん :2008/11/02(日) 23:21:50 ID:???
男子の試合より明らかに書き込みが多いなw

320 :マロン名無しさん :2008/11/02(日) 23:33:04 ID:???
巧ってなんでこんなに桜子に過保護なんだw

321 :マロン名無しさん :2008/11/02(日) 23:54:26 ID:???
桜子が超人的に運動神経良かったのってなんか理由あったっけ?

322 :マロン名無しさん :2008/11/03(月) 00:02:05 ID:???
ない
つーか運動神経がいい・悪いに理由なんてなくね?
単なる運だろう。

323 :マロン名無しさん :2008/11/03(月) 01:21:26 ID:???
普通の漫画なら主人公と柔道のスタイルが似てるなんてのは
ほれたはれたに発展するのがお決まりなんだが・・・
保奈美がいるからなあ・・・読めん。単に似てるってだけで終わりそうだしw

324 :マロン名無しさん :2008/11/03(月) 08:33:46 ID:???
分からんぞ、保奈実を捨てて桜子に走って最期に保奈実が桜子を殺すかもしれんしな

325 :マロン名無しさん :2008/11/03(月) 09:39:42 ID:???
保奈実が最初で最後の背負い投げをして頭から落ちた桜子が死んでしまうんだよ

326 :マロン名無しさん :2008/11/03(月) 10:05:22 ID:???
これが少女まんがなら、お互い喧嘩ばっかりだが実は、ということに保奈美が気づいて身を引く
というパターンになりそうなキャラ配置だよな

327 :マロン名無しさん :2008/11/03(月) 11:28:39 ID:???
でも、少年漫画なんだから桜子が巧に告白して、巧も「俺もお前が好きだ!」と
受け入れちゃったけど保奈美も切れずに泥沼の三角関係という展開にはならんだろう

328 :マロン名無しさん :2008/11/03(月) 12:19:53 ID:???
でも巧が抱きついても柔道の練習だと言い、押し倒しても寝技の練習だと言える素敵競技だからな

329 :マロン名無しさん :2008/11/03(月) 12:48:27 ID:???
巧の「彼女いるから余裕」がなんだかな〜
杉とか宮崎はギャグキャラだからおいといて、斎藤かミッタンに春は来ないものか

330 :マロン名無しさん :2008/11/03(月) 13:39:08 ID:???
ミッタンと同サイズの女子が出てくる訳ですね

331 :マロン名無しさん :2008/11/03(月) 13:46:49 ID:???
むしろマリよりさらに身長が低い女の子だな

332 :マロン名無しさん :2008/11/03(月) 14:45:55 ID:???
斉藤の妹ですね、わかります

333 :マロン名無しさん :2008/11/03(月) 14:52:11 ID:???
それ、たぶん犯罪だから

334 :マロン名無しさん :2008/11/03(月) 16:15:05 ID:???
別にニャンニャンする訳じゃなければ犯罪ではないだろ

335 :1/2 :2008/11/03(月) 21:04:54 ID:???
第141話 別所愛子B

かなりの変型ながら大内刈りで技ありを取り返した桜子。もう一度奇跡を起こせるか。
(でも、やっぱりマトモに教わったの背負いと小内刈りだけだもんね…)
それじゃあ――と桜子、今度は組んでいきなり背負いをかける。
身体を反らしてこれをこらえる別所さん。
その瞬間、「だうっ!」桜子は身体を返し小内刈りへと変化する。
倒れる別所さん。しかしうつ伏せだったため、ポイントは無し。
もう少し横になっていれば有効だったかもしれないが。
「でもヒザつかせたから、判定になるとコレ大きいですよっ!」
「さっきの桜子より大きく崩れたもんね!」
ごく僅差ながら桜子のリード、ということになるか。

審判の「待て」がかかり、試合は仕切りなおし。
(小内と背負いだけでもいろんな可能性があるんだ!勝てるかもしれない!)
これまで小内刈りから背負いのパターンしか知らなかった桜子。
この土壇場でその逆を思いついたのは彼女のセンスである。
「ほっほ――こしゃくなマネを……」
それは隣の試合場から観ていた巧も感心するものだったが、
「いつまでおさえこみしてるんだ!もうブザー鳴ったぞ、一本!」
自分も試合の最中だったことをすっかり忘れており、審判に怒られるのだった。

(確かにすごい運動神経。こうなったらあの手をつかおう…)
桜子の思わぬ実力に、別所さんは意を決する。
試合再開と同時に組んでいく桜子。良いところをつかみ、そのまま背負いへと入る。
が――その瞬間。(今だ!)
桜子の得意技を狙い済ましていた別所さん。背負い投げに入ろうとしたその一瞬、
背中から桜子の股そばを捕まえ、脚を伸ばす反動を利用して桜子の身体を持ち上げる。
一瞬、宙に浮く格好になる桜子。別所さんはその足を払い、そのまま畳に倒す。

「技あり!」「あわせて一本!」「それまで!」

336 :2/2 :2008/11/03(月) 21:05:54 ID:???
立ち上がった桜子は別所さんに手を差し出す。
「やるじゃん。別所さん」
二人は握手を交わし、互いの健闘を称えるのであった。
(海老塚さん、強敵だった……でも――できれば本当に、友達になれたらよかったのに……)

試合後、皆から離れて外に出て行く桜子。その後を保奈美が追いかける。
体育館の入り口前で保奈美は桜子に缶ジュースを手渡し、試合の感想を聞く。
「どうだった?今日の試合」「うん…なんか前の時と違った」
地区大会のときは初めてでワケもわからず、どうせ負けると思っていたから悔しくもなかった。
「今日も初めは負けると思ってたんだけど……
 試合してる間に…ひょっとしたらとか思って…勝てるかも…知れないって。そんで…」
そのまま手すりに突っ伏す桜子。その目には悔し涙がにじんでいた。
「勝ちたかったな…」「そうだね」
保奈美は桜子のその背をやさしく叩くのであった。

「ふーん。けっこー負けずギライなヤツだなあ」
その様子を遠くから眺めていたのは巧と斉藤の二人である。
「まーだ素人同然のくせになまいきな…それに甘やかしすぎだぞ、保奈美は」
「いいんじゃねえの、まだ。それに泣けるくらい悔しがるヤツじゃなくちゃ強くはならんさ」
「強くなるかあ――?海老塚が」
そんな言葉を交わしながら、二人は中へと戻っていった。

その頃試合場では、麻理が相変わらず見事な一本勝ちを決めていた。
彼女が睨みつけるその先には、別所さんの姿が。
(新たな目標ができた。桜子先輩のカタキ、私がとります)
麻理の目には別所さんがものすごく意地悪そうな悪女に見えているのであった。

(あれ?じゃあ先輩がもし勝ってたら試合しなくちゃならなかったんだ…?)

337 :マロン名無しさん :2008/11/03(月) 21:33:08 ID:???
見てみたいなぁ>マリと桜子の試合
マリの勝ちは動かないんだろうけど
桜子にはヒロイン(?)補整掛かってるだろうから
さくっと一本負けはないだろうな。

338 :マロン名無しさん :2008/11/03(月) 22:00:40 ID:???
桜子がマリちゃんと袴田さん以外に負けるなんて…
すげーショックだ

339 :マロン名無しさん :2008/11/03(月) 22:01:43 ID:???
> 「いつまでおさえこみしてるんだ!もうブザー鳴ったぞ、一本!」

袴(ry

340 :マロン名無しさん :2008/11/03(月) 22:03:30 ID:???
女二人の行動を後をつけて監視なんて…このケダモノコンビがっ!

341 :マロン名無しさん :2008/11/03(月) 22:15:49 ID:???
まぁまぁw。エロ目的でないからいいんじゃないか
え?実は着替えを見るためry


342 :代理 :2008/11/04(火) 21:42:54 ID:???
規制等の理由により本日から休載です
再開は月曜の予定となっています

343 :マロン名無しさん :2008/11/04(火) 22:50:38 ID:???
おk、待ってるよ

344 :マロン名無しさん :2008/11/05(水) 21:10:14 ID:???
お待ちしてます

345 :マロン名無しさん :2008/11/05(水) 22:01:28 ID:???
ゆっくり待つでゴワス

346 :マロン名無しさん :2008/11/08(土) 00:14:08 ID:???
待ってます

347 :マロン名無しさん :2008/11/08(土) 22:23:50 ID:???
柔道漫画だけに待てがかかりました。

348 :1/3(代理) :2008/11/10(月) 20:57:05 ID:???
第142話 麻理VS別所@

高校総体県予選個人戦――柔道はじめてたった2か月のくせに、図々しくも一回戦を勝ち残った桜子であったが…
二回戦では白帯なのにやけに強い、赤磐高の別所愛子に負けてしまった。
一方、浜高のもう一人、来留間麻理は勝ち残り、準決勝で別所さんと当たることに。
さあ、はたしてカタキをとることができるのか!

その頃、居残り組みの仲安と石野は倉田典善の監督の下、浜高の柔道場でトレーニングに励んでいた。
「それじゃあバーベルかたづけて10分休憩だとよ」
(片付けろったって…これ全部二人で?充分トレーニング並に、疲れるぜ)
心の中で愚痴る仲安であったが、典善は渡されたメモのとおりにしているだけである。
こんなことなら試合についていけばよかったと仲安は言うが、個人戦に補欠は無いので仕方ない。

男の先輩は五人も出ているのだから、二人ぐらいは全国に行ってほしいと希望を述べる仲安。
「二人?誰と誰?」
「巧さんさ。軽中量級は超激戦だが、万が一、巧さんが負けたとしても、
 その相手はきっと斉藤さんだよ。どっちにしてもまず一人」
後の一人は茂かミッタンか。茂は地区で優勝しているし、ミッタンはこの頃調子を上げている。
「……杉主将はかわいそうだね」
「ああ。同期にあんなヤツがいたんじゃ、3年間絶対、全国大会無理だ」
二人が想定しているのは当然、三工の藤田。それは確かに無理だろう。

後は女子の方に出場している麻理。袴田さんに勝てたんだから一番優勝に近いのではと石野が言うが、
「最近アイツは少々図に乗ってるトコロがあるから。ここらでひとつ痛いメにあって世間の厳しさってモノを…」
その会話を耳をそばだてて聞いていた典善。
「片づけ終わりましたよ」
「ん、そうか。さてと。おや、もう10分経ってる。次はロードワークだってよ、8キロ。
 コレ結構厳しい練習メニューだなあ」
「えっ?」
片づけをしているうちに休憩時間終了。まず彼ら二人が世間の厳しさを味わうことになった。

349 :2/3(代理) :2008/11/10(月) 20:57:39 ID:???
体育館の廊下で桜子と保奈美は別所さんと行き会う。
気まずそうに会釈し立ち去ろうとする彼女に、桜子はウサギのように跳びはねてその背中を捕まえる。
「まってよ別所さん!」「えっ!?」

自分の右手を一人で器用にテーピングする別所さんに、素直に感心する桜子。
今日会ったばかりの相手に積極的に話しかけていく桜子の様子に、保奈美はやきもきとする。
(桜子ったら、あんなに悔しがってたのに、自分が負けた相手でしょ。
 今朝、知り合ったっていってるけど、どういうコトなの?)
保奈美は桜子の袖をつかむ。
「いっとくけどあの人、今からウチの麻理ちゃんと試合するのよ、まだ敵なのよ」
小声で釘をさすが、それは別所さんにも聞こえていた。
「浜高の来留間麻理さんですね。さっき試合を見ました。とっても強かった」
また敵同士になってしまうんですね――とうつむく別所さん。
「海老塚さん、今日は二度も声をかけてくれてありがとう。じゃあ、私はこれで」
走り去っていく別所さん。その後を追いかけていってしまう桜子。
一人残された保奈美は「もおっ!」と呆れるが、その背後に人影が。
「嫉妬ね、近藤さん」
なぜか般若の面など持って現れたのは暁泉の永田である。

「わっ、永田さん!?」
「あなたはあの別所ってコに嫉妬してるのよっ!海老塚ちゃんがあんましあのコをかまうもんだから」
「ち、違います!嫉妬だなんてそんな…!」
慌てて否定する保奈美。
「ところでどうしてこんなトコロにいるんですか?」
永田はそう切り返されて言葉に詰まる。
「負けたからにきまってんじゃん。もうヒマになっちゃったんだ、要するに」
容赦なく切り捨てる平八郎だった。「サラッといわないでよ!」

350 :3/3(代理) :2008/11/10(月) 20:58:01 ID:???
「ただ今より、女子48キロ以下級準決勝を行います!」
気合充分に試合場に出て行く麻理。ところが、相手の別所さんの姿が無い。
と、そこに慌てて駆けつけてくる彼女。
「すみません、おくれました!」
(きた…桜子先輩のカタキ!)
絶対一本勝ちをする、と意気込む麻理。が、当の桜子はあまりそういう気分ではない様子。
(試合はじまるから急いでたのね――)
別所さんを走って追いかけてきたため、桜子は息を荒げていた。

開始と同時に積極的に攻めていく麻理。
(すごい気迫!なにか一発狙っている!?)
別所さんの予感的中。襟を取った状態から、麻理は不意打ちの右一本背負いを仕掛けてくる。
しかし、別所さんは即座にそれに反応。背負いをかわしつつ、後ろから麻理の襟首を取り、
そのまま大外刈りを仕掛ける。
「いけないっ!」袴田さんの声。

「いやああっ!」

「げ――っ!」「飛ばされたあ――!!!」
別所さんの大外刈りに、麻理の体が大きく跳ね飛ばされる。

その頃、浜高にてロードワーク中の仲安と石野。
「鉄ゲタの鼻緒が切れた…不吉な…」
「おじさん、やっぱり無理ですよ、こんなの履いてロードワークすんの。普通に走りましょうよ」
「ちっ、最近の若いヤツあ、根性のない…」

351 :マロン名無しさん :2008/11/10(月) 21:13:07 ID:???
おじさんってw

352 :マロン名無しさん :2008/11/10(月) 21:47:18 ID:???
鉄下駄は足を痛めそうだなあ

353 :マロン名無しさん :2008/11/10(月) 22:06:33 ID:???
うさぎとびとかよくやるけどアレもやり終わるとヒザ痛いんだよなー。

354 :マロン名無しさん :2008/11/10(月) 22:56:34 ID:???
再開乙

355 :1/3(代理) :2008/11/11(火) 20:58:17 ID:???
第143話 麻理VS別所A

「と、飛ばされたあっ!」
別所さんの大外刈りに宙へと跳ね上げられる麻理。
(判定は?)

「技あり!」

審判の手は真横へと伸びていた。
麻理は体重が軽いため、モロに技が入るとハデに飛ばされてしまうのである。
これだけ奇麗に飛ばされた以上、一本と判定されても文句を言えないところであった。

そこで「待て」がかかり、開始線へと戻る別所さん。
その姿を麻理は目を丸くして見つめいてた。
「投げられちゃった……」

試合再開――ところが、麻理は組手を嫌って距離をとろうとする。
(組まないの?ポイントとられてんのに?)
その態度に対戦相手の別所さんも困惑。
袴田さんも麻理を案じていた。
「いけない!ここで消極的になっちゃ…まさか、投げられたことがショックになってるんじゃ…」
それなら、と別所さんは襟を取りに行くと見せかけ、
麻理の意識を上に集中させてその瞬間、彼女の足をとりにいく。
不意打ちの双手刈りに麻理は倒され、さらに有効一つを奪われてしまう。

「逃げてちゃダメだよ、来留間!」
「攻めてかなくちゃ!後先考えなくていいから」
杉やミッタンがアドバイスを送るも、その言葉は麻理を救えるものではなかった。
(わかってるんだけど…普通にやったんじゃ、また返されちゃうかも知れない…)
得意の背負いをこれ以上ない形で返されたショックは、深刻に麻理を蝕んでいた。

(この人……こわい……!)

356 :2/3(代理) :2008/11/11(火) 20:58:37 ID:???
(まさかホントに麻理ちゃんが手も足もでないの…?どーすりゃいいのよ、そんなの!)
試合場へと駆けつける桜子。
「巧くん斉藤くん!なにボケッと見てんの!?麻理ちゃんこのままじゃ負けちゃうよ!」
何かいえないのかと詰め寄る彼女だが、
巧も斉藤もこういうパターンではどうにも良いアドバイスが思いつかない。
「なら、オマエはどうなのよ!」
「いえるワケないじゃん!いまだに技のコトなんかチンプンカンプンなのにっ!」
ふんぞり返る桜子だが、もちろん威張れるようなことではない。
「まあ、いつもそうそう来留間の背負いが返されるはずはないんだよ。いくら相手のコが強くても…。
 問題は来留間自身のメンタルな部分にあるんだ」
「メンタム!?ってコレ?」「違うっ!」
桜子のやっているそれはどうみてもメンソレータムの女の子。
ちなみにそれを略すならメンソレだと思うがいかに?
「とにかく今の来留間がパニック状態なのは確かだ。早く自分を取り戻して落ち着けたらいいんだが…」

(どうしよう。どうしよう。私負けちゃうのかな)
麻理の頭の中ではぐるぐると同じ言葉が回っている。

(いける…このままいっても勝てそうだけど、今、しかければたぶん倒せる)
ここを勝負どころと判断する別所さん。

「来留間さんがんばって!二人で決勝戦をする約束、思い出して!」
袴田さんが声を上げるが、しかし、何をいっても麻理にはプレッシャーにしかならないのだ。
(そーだったんだー!あーん、どうしよう!)

357 :3/3(代理) :2008/11/11(火) 20:58:58 ID:???
勝負をかけにいく別所さん。麻理から引き手を取り、小内刈りで足元を崩す。
(ここだっ!)
そこから内股に入る別所さん。
(投げられる――!)
その瞬間、麻理の頭の中が真っ白になる。

「や、やだ――っ!」

(内股をとめた!?)
ムリヤリ引き手を切って別所さんの内股を防いだ麻理。
(えっ!?)
そのまま返す刀で彼女を背負う。
背中が畳を打つ音が響く。何が起こったのか、呆然とする別所さんの側で、審判が手を高々と差し上げる。

「一本!」

「か、勝った…」安堵する応援席。
「よかったあ…」「やれやれ、やればできるじゃねえか」「ああ、案ずるより…な」

子供のように自分にすがりついたままの麻理を別所さんは見つめる。
(なんてすごいコなんだろう…来留間麻理さん)
土壇場になって、負けたくない気持ちが恐怖心を振り切ったのだろう。
最後の背負いは無我夢中で、ほとんど反射的に出たものである。
「キミ、大丈夫かね。試合は終ったんだよ」「はっ?」
審判に言われてようやく気がつく麻理。その彼女に別所さんは握手の手を差し出した。

(来留間さん、ついにやったね。次は私が決勝進出をキメなくっちゃ)
試合を見届け、袴田さんは決意を新たにするのであった。

358 :マロン名無しさん :2008/11/11(火) 23:42:18 ID:???
いやいや強すぎだろ、麻里

359 :マロン名無しさん :2008/11/12(水) 00:40:57 ID:???
勝てた理由特になしか・・・
何か萎えるなあ。

360 :マロン名無しさん :2008/11/12(水) 00:56:35 ID:???
今までメンソレータムを略そうって発想がなかったわ
ただ全部言うのめんどくさいよね

361 :マロン名無しさん :2008/11/12(水) 01:16:38 ID:???
負けたくないという気合だけで勝利か…
少年漫画の主人公みたいだな。

362 :マロン名無しさん :2008/11/12(水) 01:24:21 ID:???
チャーリーが麻里負けないで!と叫ぶんだと思ってたのに

363 :マロン名無しさん :2008/11/12(水) 11:12:56 ID:???
や、やだ――っ!……(;´Д`)ハァハァ

364 :マロン名無しさん :2008/11/12(水) 15:09:39 ID:???
>>362
このまま練習をいやがってたら、保奈美ポジションはすぐだなw

365 :1/4(代理) :2008/11/12(水) 21:02:08 ID:???
第144話 友だちとライバルと目標の人

(終った、私の高2の夏は…)
麻理との試合を終えた別所さんは試合場を後にする。
「おい、ドコいくの?今から斉藤、試合すんだぜ」「ちょっと!」
それと同時に桜子も席を外す。

袴田さんに「やったね」と肩を叩かれ、保奈美たちに労いの言葉をかけられる麻理。
「あのー……私、どんな技で投げたんですか?」
しかし、彼女は自分がどうやって勝ったのか、その瞬間をまるで覚えていなかった。

(さあ!今度は私が来留間さんのがんばりに応える番!)
続いて袴田さんの準決勝。麻理との約束を果たすため、気合十分の彼女である。
しかし石塚にはその応援はできなかった。
(見ていてあげられないな…今から、またヤツと試合しなきゃならないからな)
男子軽中量級の準決勝もこれから。石塚対斉藤、地区予選の準決勝の再現である。

(帰る準備しとこう。オナカもすいちゃったし…)
一人、戻ろうとする別所さん。その肩に誰かが手をかけた。「別所さん」

「三度目も声かけちゃった」
「海老塚さんっ!」

実のところ、麻理が彼女に勝ってしまったので声をかけづらかったのだが――。
「このままさよならっての、なんかイヤじゃん。せっかく友だちになれたのにさ…」
「え、海老塚さん…」
何気ない桜子の言葉だったが、その言葉が別所さんの心に響いた。
彼女は桜子の手をとり、胸に抱きしめる。
「わ…わたし、感激しました。やっぱり神サマみたいなひとです、海老塚さんって…)
別所さんのその行動に、集まる周囲の視線。
「ハハ…バカねぇ!なにいってるのよ!友だちじゃないのっ!と・も・だ・ち!なのよ、私たちはね!」

366 :2/4(代理) :2008/11/12(水) 21:02:28 ID:???
一方、石塚対斉藤。実力の伯仲している両者、互角の好勝負となる。
(斉藤、絶対勝てよ!決勝戦はオレとおまえでやるんだからな!)

また一方、こちらは袴田さん。有効を奪い、そのまま抑え込みに入る。
その試合を観戦している杉・ミッタン・茂の三人。
「ああ…うらやましいのう」「石塚さんがかい?」「いや、おさえこまれてる相手が…」
「しょーもないこといってんじゃないの!」
永田に突っ込まれるのであった。

そのまま抑え込み一本。袴田さんの決勝進出が決まる。麻理はその試合を見ながら思い悩んでいた。
(なんで別所って人と試合した時、あんなに怖かったんだろう?
 先にポイントとられたから?そんなこと袴田さんと前やった時もそうだったもん)
しかし、その別所さんも、試合を終えた後は怖い人ではなくなっていた。
なぜだろう――と考えるも、答えは出ない。

と、永田が男子軽中量級の試合場を指差す。
「ちょっとあんたたち、あそこ、なんかあったみたいよ」
そこには肩を押さえて畳に倒れる斉藤の姿が。
「な――に――っ!?」「どーしたんだ、斉藤!!」「まさかケガ!?」
大慌ての杉たち。それなら最初からちゃんと見ていろというのだが。

というところで立ち上がる斉藤。どうやら大事ではなかったらしく、そのまま試合を再開する。
しかし勝負は判定にもつれ、軍配は石塚にあがった。
(ケガをした自分が悪いんだが…くそう…これで巧との約束ははたせなかった…)
無念の斉藤。しかし、続くもう一つの準決勝では、それを晴らすかのような一本背負いで巧が決めた。

367 :3/4(代理) :2008/11/12(水) 21:02:50 ID:???
各階級の決勝戦は15分後、ほぼ同時に行われる。
男子は軽量級(60キロ以下)軽中量級(71キロ以下)
女子は48キロ以下級、52キロ以下級

浜高はこれらに三人も出る。
宮崎茂・粉川巧・来留間麻理。「オサルさんトリオ」

佐鳴も二人出る。
石塚孝裕・袴田今日子「今、もっともホットなふたり」

斉藤はケガの具合を診てもらうために医務室へ。大したことはないようだが。

そこへ戻ってくる桜子。その背後にはもう一人。
「どうも…」「別所さん!」
昨日の敵は今日の友、というヤツで、別所さんは浜高の皆に改めて挨拶をする。
「別所愛子といいます」
(なんだかしらんけど…今ここにいない杉と斉藤にはお気の毒)
思いがけないチャンスにほくそえむ茂。ここぞとばかりにアピールをしようとして、
「いやーボカァ、これから軽量級で優勝する宮崎ってもん…」
「別所さん!ききたいことがあるんですっ!」
あっさりと麻理に遮られる。その肩を巧が慰めるように叩くのだった。

自分のことを怖かったと聞かされ、驚く別所さん。
「でも、相手を怖く感じるのがはじめてだなんて、来留間さんってやっぱりすごいな。
 私なんか試合の時はいつも怖くてしょうがないのに」
柔道は今まで立っていた畳に背中から落ちたらそこで終り。
別所さんはいつも綱渡りのようにそれを感じており、おそらくそれは袴田さんでも同じことなのだ。

368 :4/4(代理) :2008/11/12(水) 21:03:13 ID:???
その頃、袴田さんは皆から一人離れた場所で、目を閉じ、
イメージトレーニングをしながら精神を集中させていた。

袴田さんが一番恐れているのは他ならぬ麻理。
彼女ほどの一流選手ともなれば、常にプレッシャーとの闘いである。
そして、そのプレッシャーに押しつぶされずに、逆に闘志に変える術も知っているのだ。
(……この人たち、すげー次元の高い話してるよ。ついてけん……)
まあ桜子は置いておいて、別所さんも袴田さんとは試合をしたかったらしい。
袴田さんは今年3年。残り少ないチャンスの一つを得た麻理を別所さんは羨ましがる。

「さあカタイ話は終わったかな?別所さんでしたね。私、宮崎という者です」
二人の会話の途切れるタイミングを見計らっていた茂。
ここぞとばかりに別所さんに声をかけるも――、
「決勝戦開始5分前です!出場選手は試合場に集合してください!」
無情なアナウンスが流れるのであった。
「よし、いくぞっ!」「ハイ!」

「ただいまより、男子軽量級、男子軽中量級、
 女子48キロ以下級、女子52キロ以下級の決勝戦を行います!」

麻理VS袴田さん。開始と同時に激しい技の応酬となり、まず右の背負いで麻理が有効を取る。
(やっぱりこのコは強い……今まで出会ったどんな敵よりも……!)

巧VS石塚。因縁の対決に互いに気合充分。
(これがオレたちにとって最後の県大会だってことを忘れんなよ、巧くん。袴田さんにとってもな…)

(来留間んとこに海老塚や男どもがいってて…巧んトコは近藤で…
 オレんとこにゃ誰もこねえでやんの…ちくしょー意地でも勝ってやる)
扱いの悪さに涙を流す茂であった。

369 :マロン名無しさん :2008/11/12(水) 21:41:40 ID:???
茂はそういう扱いだよなw

370 :マロン名無しさん :2008/11/13(木) 01:05:32 ID:???
別所さんイジメにでも会ったんか?
親切にされて嬉しいのはわかるが、泣くとか、神様発言とか……

371 :マロン名無しさん :2008/11/13(木) 02:31:06 ID:???
巧の階級には西部地区以外は碌なのいないのかよw

372 :マロン名無しさん :2008/11/13(木) 14:07:36 ID:???
袴田さんは正統派柔道家の象徴みたいだ

373 :1/3(代理) :2008/11/13(木) 21:19:39 ID:???
第145話 各階級決勝戦

県大会個人戦決勝! 女子48キロ袴田今日子VS来留間麻理!
すでに来留間、背負い投げで“有効”ポイントひとつ先取!

いっぽうこちらは男子軽中量級! 粉川巧VS石塚孝裕!
今まで二度にわたり対決した二人!互いに技を出すが手の内を知るもの同士、
なかなか決め手が出ない!ちなみにこれまでの対戦は一勝一敗!
まさに今、決着をかけて意地がぶつかる!

ついでに男子軽量級でも今、試合してます。 宮崎茂VSどっかのヒト。
「あ。あつかいが……」

白熱する麻理と袴田さんの勝負。麻理の背負いに袴田さんは即座に反応して潰し、
さらに足を払って寝技に引き込もうとする。
(あわてずに…!)
上にのしかかってくる袴田さんの身体を麻理は両足で挟み込む。
足を外さなければ押さえ込みには入れない。そこで審判の「待て」がかかった。
(はあ…やっぱ一瞬たりとも気がぬけないや)
(寝技で攻めるにしても守りがかたい…時間もないし立ち技でなんとかポイントとりかえさなくては…)

「いいぞ麻理ちゃん!こーやって自分の力ちゃんと出せば、アンタ強いんだからねっ!」
「ホントに…あのくらい元気よく技を出されてたら、私なんてもっと早く倒されてたでしょう」
桜子の声に別所さんも頷く。「ところで念のため聞いとくけど」
くるりと振り向く桜子、杉たちに質問。
「団体戦じゃあ今回に限って、二校、全国大会に進めたのよね、ウチの県」「ウン」
「ひょっとして個人戦も?」「二人でれる」「らしいね」
「で、今やってんのは決勝戦…もう二人しか勝ち残ってない」
「当然、全国大会出場はこの二人ですが……知らなかったとか?」
団体戦に引き続き、またも知らされていなかった桜子。
馬鹿にして笑う杉とミッタンに、帯をムチのようにしならせて一撃。
「なーんだそりゃ!マジに応援しててソンこいた気分!」

374 :2/3(代理) :2008/11/13(木) 21:19:59 ID:???
やさぐれる桜子はさておき、場内に袴田さんの掛け声が響く。
「技あり!待てっ!」
桜子と別所さんが目を離しているわずかな間に、袴田さんは麻理を逆転、ポイントリードしていた。
麻理がいくら強いといっても、袴田さんもまた同等近い実力を持っていた。
リードをしても袴田さんは攻撃の手を緩めない。
「すごい気迫ですね…袴田さんにとって、この一戦は全国大会より大事なのかも…」
「麻理ちゃん!まだ、とりかえせるよ、がんばって!」
「はいっ!」

桜子の声に呼応するかのように仕掛けていく麻理。
(大外――刈り!)
しかし即座に反応する袴田さん。襟を取る麻理の腕の下をくぐって抜ける。
(返される!?)
一瞬、麻理に迷いが走る。
(ううん、大丈夫だ!いくっ!)
麻理はそのまま強引に巻き込み、袴田さんを刈り倒す。
「やったあ!」
「一本、それまで――!」

全国優勝の袴田さんが負けたことで騒然となる場内。
地区の優勝の時点ではまだフロックと見なされていた感があるが、
この時、浜名湖高校・来留間麻理の名は公に広く知れ渡った。

男子軽中量級の試合場に戻ってきた斉藤は、保奈美に試合の経過を尋ねる。
「技は出てるんだけどポイントがなくて…なんだかこのままいったら引き分けそうで…」
判定ということになるかもしれない。斉藤は保奈美に互いの技の数を聞く。
「それが…途中まで数えてたんだけど…わかんなくなっちゃって…」
「……そうか、わかんなくなったか」
それだけ試合が白熱している証拠ではあるのだが。

375 :3/3(代理) :2008/11/13(木) 21:20:15 ID:???
さて、茂の軽量級の方はどうか。見れば有効二つに技あり一つで大幅リード。絶好調である。
「そーれ、みんな急げ!はやくしないと宮崎くんの優勝の瞬間、見のがしちゃうよ!」
麻理の試合を観戦していた皆が大挙して軽量級の試合場へ走っていった。

(全国へのキップは手にいれたが、しかし!県大会優勝でハクつけさせてもらうぜ!)
これまで孤軍奮闘の茂であったが、そのとき、彼を応援する声が。
「フレッフレッみっやっざっきーっ!」
彼の目に飛び込んでくる、仲間たちの姿。
(ちっ、しょうがねえな。んじゃここは一発、大技きめて…)「やらあっ!」
とどめの一本背負いに行く茂。ところがその時「今だ!」
あっさりとすくい投げでひっくり返される茂。「一本!」
「なっ…!」飛び起きてももう遅い。

「うーん、浜高の宮崎ですか?最後の背負い、不用意でしたねえ」
「まったく、あれではすくい投げで返されてもしかたないですなあ」
「せっかくリードしていながらバカですなあ」「ホントですな」
容赦の無い辛口批評の解説席。
「はっ!」
茂には皆の冷え切った視線が集中していた。

「あっちゃ――っ!こうなりゃ巧に望みかけるか」
しかし、残り時間は1分しかない。
次の中量級の試合開始に備えて準備をしつつ、巧の試合を観ていた藤田は心の中で呟く。

(なにをしている粉川!あと1分以内にケリをつけてみせろ!)

376 :マロン名無しさん :2008/11/13(木) 21:38:34 ID:???
茂は笑い要員か

377 :マロン名無しさん :2008/11/14(金) 01:28:19 ID:???
チートくさい麻里、巧に比べて宮崎の扱い・・・

378 :マロン名無しさん :2008/11/14(金) 08:09:31 ID:???
それでこそバカトリオ筆頭
桜子の帯攻撃は器用だな…あんなことできるものなのか

379 :マロン名無しさん :2008/11/14(金) 20:17:52 ID:???
2年次だよね?袴田さんが全国制したのって。
で、それを上回るのって…

380 :1/3(代理) :2008/11/14(金) 20:56:40 ID:???
第146話 巧と石塚 三度目の対決

「がんばれっ!のこりあとひとつ(1分)!」
「どっかのバカみたいにアンタも負けたらただじゃおかないよっ!」
「どっかのバカだって……」「なんとでもいってくれっ!」

自虐気味に笑いながら涙を流す茂はともかくとして、
袴田さんもまた男子軽中量級の試合場、巧と石塚の勝負の場へ姿を現す。
(私たち3年にとってはこれが最後の県大会。
 全国に進めることがきまってても、やっぱり負けてほしくない。勝って!石塚くん!)

激しく火花を散らす巧と石塚。そしてついに石塚が仕掛ける。左手で巧の襟のみをつかんだ状態から、
「でやああっ!」
「なにっ!?」「片手背負い!石塚が!?」
不完全な体勢から強引に巧を投げにかかる。
当然、逃れようとする巧。しかし、石塚は自由な右手で巧の足を捕まえた。
(ここからだ!いくぞ!)

「だあーっ!!」

自ら畳に頭を打ち付けつつ、身体全体で前方に巻き込むような背負い投げ。
判定は――。

「技あり!」

(止められかかった技を無理矢理もっていきやがった――なんという……)
本来テクニシャンの石塚が見せた強引な技に、斉藤は戦慄を禁じえなかった。

381 :2/3(代理) :2008/11/14(金) 20:56:59 ID:???
「釣り手のみの背負いから足をもって…肩車みたいに前に投げましたね。
 片手で人をつったまま、もう片方の手を自由にあやつれるなんて、
 さすが男子は力がありますね」
感心する別所さん。もっとも、男なら誰でもできるというわけではないのだが。

この終盤に来て大きなポイントを奪われた巧。
「くっそお――っ!」
(こうなったらなりふり構わず攻めてくる!くるならこいっ!)
石塚はそれを迎え撃つ体勢。

「佐鳴の大将、なかなかやるじゃねえか。キマリだな」
蜂野のその言葉に対し、藤田は控えめに返す。
「さあ……まだ20秒以上ありますからね」

果敢に攻めていく巧。石塚は組手を嫌うが、ついに巧が競り勝つ。
引き手をとられた石塚はすぐに巧を振り払おうとする。
だが――動きの雑になったその一瞬の隙に、巧は逆襟をつかむ。

しかし石塚は冷静に足払いで巧の体勢を崩す。
前のめりに膝をつきながら、それでもなお巧は石塚の足を取ろうとする。
朽木倒しか双手刈りか、石塚は即座に身体を被せてそれを防ぐ。
ところが、そこで巧が脚を伸ばして立ち上がる。
「袖釣り込み!」「完全にのせたっ!」

382 :3/3(代理) :2008/11/14(金) 20:57:23 ID:???
狙って誘い込んだのか、それとも本能的なものか。とにかく石塚の両足が畳を離れる。
「くっ!」
そこで石塚は両足で反動をつけ、自ら回転。
「おおおー!アクロバット!」「かっこいーっ!」
見事に着地。しかしその瞬間、石塚は完全な無防備になった。
巧はそのチャンスを逃さない。完璧な組手による、渾身の大外刈り。
「うおおおっ!」(くそっ!ここまでかっ!)
逃げることもこらえることもできず、石塚は畳にたたきつけられた。

「一本!」

「残り5秒たらずのとこだったぜ!」「大逆転だ――っ!」「とんでもねえ試合しやがる、こいつら!」
稀に見る好勝負に大歓声が上がる。
藤田はその光景を静かに見つめていた。
(勝つことへの執念だったら負けやしないな、粉川……上を狙える人間ってのはそういうものだろ)

「よおしっ!」
ガッツポーズをきめる巧。
――県大会個人戦、軽中量級優勝。

383 :1/3(代理) :2008/11/15(土) 20:56:42 ID:???
第147話 そして藤田は?

戻ってきた巧に、保奈美はタオルをかける。
「県でいちばん強いヒトになっちゃったね」
「まだまだ。全国大会があるからな」

石塚もまた袴田さんのもとへ。心配げな表情の彼女に「そんな顔しないで」と声をかける。
「とりあえず全国大会まで首はつながったんだ。気落ちしてるヒマなんか全然ないだろ?」

※マリちゃんのミニ情報
「あのねー、今年は地元でインターハイやるでしょ。そんでもって特別に今年だけ
 団体2校、個人でふたり、全国大会いけるんだよ」

石塚も袴田さんもこれで引退が二ヶ月伸びた。巧と麻理は全国でも大暴れをするだろうし、
こちらも負けてはいられないと気合を入れなおすのだった。

「よしよし、調子いいわね巧くん。日本武道館以降は負けがないんじゃないの、君は?」
龍子先生の言葉を桜子がまぜっかえす。
「あらそーでしたっけ?確か引き分けいっこあったような……」
それは団体戦決勝リーグの話である。巧も気にしているのか、反論をしようとするが――。
「後ろ後ろ、ご当人だよ」「なに?」
そこにはこれから試合を控える藤田の姿があった。
(藤田!!)
「出たな、三工のディック・フライが!」「格闘サイボーグですね」「え?だれそれ?」

384 :2/3(代理) :2008/11/15(土) 20:57:03 ID:???
「ひき続き、男子中量級、軽重量級、女子56キロ以下級、61キロ以下級の試合をおこないます」
ここからは杉の出番である。「藤田なんかに優勝させんな」と巧は杉にハッパをかける。
杉もまた「まかせとけよ」と自信をたたえるのだが。
「でも、できるだけ後の方で対戦することになればいいね」
「聞こえてるぞ、おまえら!」

というところで桜子たちは席を外す。どこへ行くのかと問う杉。
「着替えにいくの!汗びっしょりだもん」
その返答に杉の脳内で煩悩にまみれた妄想が広がる。
「のぞきにいこうとしちゃダメよ、いくらケダモノトリオだからって」
「しねーよ!」「いーかげん、その件忘れてくれ!」「保奈美……」
杉・茂・巧の三人はブッとい釘を刺されるのであった。

それはともかく、杉はこれから試合なので精神を集中しなければならない。ところが。
『キャッキャッ、別所さんって意外とグラマーね。桜子さんこそ』
「いかーん、幻聴が!」
頭に絡み付いて離れない妄想を振り払うため、杉はその場で座禅を組む。
「観自在菩薩・行深般若波羅蜜多・時照見五・薀皆空度・一切苦厄・舎利子……」
「さすが寺の息子…らしい精神統一だな」

ところかわって女子更衣室。
「へえ、別所さんトコってセーラーなんだ?」「ええ」

※マリちゃんのミニ情報
「女子柔道の選手はねー、着替えるスピードがあらゆるスポーツの中でも特にはやいといわれてるんでーす」
「こんきょがあるのか?それ」

「麻理ちゃんいっちゃうよ」
「あーん!まだドア開けないでください」

385 :3/3(代理) :2008/11/15(土) 20:57:22 ID:???
圧倒的な強さを見せ付けて勝ち進む藤田。
「やはり中量級の大本命だな…」軽重量級の試合場から平八郎が見つめ、
(フン、相手がでかけりゃでけえほど燃えてくるってもんだ!)豊が地区の雪辱を誓う。
「杉喜べ、藤田とは決勝までいかなきゃあたらねえぜ!」「ラッキー!」
杉はやっぱり杉でした。

ところが、その杉の相手は中量級中部地区ナンバーワン、静岡第一の大村。伏兵の登場である。
元々は中学時代から藤田と県下実力ナンバーワンを競ったほどの男であり、
そして、こと寝技に関しては藤田を凌ぐといわれていた。「はよいえー、それを!」

杉を破った大村は準決勝で佐鳴の袴田豊さえも後ろ袈裟固めに捕らえ、決勝進出をきめる。
(くっ…!こんなヤツがいたとは…!)
「強ええ…斉藤、よく引き分けたな――」「あんときゃ途中でヤツがケガしたんだ」

ついに決勝、相手は当然のごとく藤田。
立ち技の藤田か、寝技の大村か。注目が集まる中試合開始。

激しい組手争いから藤田は自分の右足を大村の足にからめるようにし、さらに左足を踏み込む。
「でやあああっ!」
「い、一本!」
騒然となる会場。決勝戦だというのに一分とかからず一本勝ち。しかも一本をとった技は――。
「あれは…団体戦の時、オレから技ありとったワザじゃねえか!」
戦慄する巧であった。

(この会場のどこかで見ているはずだ、粉川!次にきさまとやる時は
 必ずこの変型小内巻き込みでたたきつぶす!)

386 :業務連絡(代理) :2008/11/15(土) 20:57:57 ID:???
次回は一回休載して、単行本15巻のおまけを紹介します。

387 :マロン名無しさん :2008/11/15(土) 21:35:08 ID:???
藤田のポジションが、いけ好かない奴から
主人公の最大の敵に上がってきてるな

388 :マロン名無しさん :2008/11/15(土) 22:34:28 ID:???
あの初期のオカマ言葉はどこいったんだ。

389 :マロン名無しさん :2008/11/16(日) 09:17:15 ID:???
杉の煩悩の払い方はスポーツマンというより寺の息子だなぁ

390 :1/3(代理) :2008/11/16(日) 20:57:23 ID:???
○単行本第15巻 (表紙:別所愛子 裏表紙:松原渚)

・四コマその1

1.最近、帯ギュを読んで柔道はじめましたとかやりたくなりましたとかの
  おたよりが多いのだ。特に女のコ。

2.確かにうれしいことである。マンガ家冥利につきるのだが……だがっ!
  マンガの世界には都合のいいことしか描いてないんではないか?
  本来ならば、もっと柔道のイヤな部分、コワイ部分、恐ろしく忌まわしい体験も
  描くべきではなかったかっ!そういう読者のためにはっ!

3.桜「例えばどんな恐ろしいコトが……?」
  河「例えば、締めワザの練習始める前には必ずワレワレはトイレにいっていた。全員ね。
    なぜかとゆーとな…」

4.河「締められて落ちたときに
    失神すると同時に失禁してしまうこともあるからだ――っ!
    子供の時じゃないぞ、高校生がだぞー!」
  桜「うそおおおっ!忌まわしすぎるううー」

391 :2/3(代理) :2008/11/16(日) 20:57:39 ID:???
・四コマその2

1.保「あと“柔道やってるヒトは耳がギョーザになる”ってウワサがありますよねー、
    この、耳がギョーザになるってゆうのがよくわからないんですけど…?
    ただ単に耳をこうおさえて“ギョーザ”ってゆう芸のことじゃないですよね?」
  河「ああ、ギョーザね……」

2.耳たぶはひふが弱くてすぐ痛めやすい。
  ギョーザ耳とはそこに雑菌が入って化膿し、ふくれあがり、
  もとにもどらなくなってしまった耳のことであるっ!

3.袴「自然にはなおらないんですかっ!?」
  河「やわらかいうちに中身を注射器で吸い出すという手もあるが、
    何年もたってかたくなったら手術するしかない。手術費、片方だけで約50万円だ」
  桜「ひいいいっ!」

4.巧「ただ、痛みを感じるぐらいの時によく冷やしてたり、さらに痛めるようなことをしなければ
    簡単にははれたりしないはずです。
    やばいと感じたら医者にいってください。気をつけていればめったになるもんじゃないっス」
  桜「もしも『耳ぐらいでギャーギャーいうな』ってゆー指導者がいたら、
    どーかしてるぜ、そんなヤツ」
  河「昔は多かったんだよ、そーいうヤツが……」

392 :3/3(代理) :2008/11/16(日) 20:59:33 ID:???
○押さえ込みの第15回 サンデーコミックス名物『絵筆をもってね!』

 選評/河合克敏 応募総数:1840点 入選:44点

 残念!!グランプリなし

 準グランプリ:愛媛県・忠美華神〔多数(全員集合)〕
        岩手県・金田くん〔保奈美・桜子・麻理 袴田さん〕

 topix:石川県・なかむらかつひこ〔桜子・別所(女子個人戦の怪)〕
        そのいち
        桜「あたし、いつ黒帯とった?まぁいいかぁ」
        そのにぃ
        桜「別所さん、ベスト4なのに3位決定戦やんないの?」
        別「そ、それは。河合先生に聞いてみないと…」

     ※大人気!松原さん
     宮城県・わたなべ 静岡県・ゆきのすけ 愛知県・海東リリコ 神奈川県・幾田悠一郎

     山形県・大祐大好き〔保奈美(お嬢じゃねえよ)〕
     熊本県・すうらぎぱい〔桜子・保奈美・麻理・薫・袴田さん・龍子先生(各一枚)〕
     沖縄県・ふぢのや舞〔麻理(ミッタンのトランクス着用。同案多数?)〕

393 :マロン名無しさん :2008/11/16(日) 21:03:44 ID:???
落ちると失禁するってはなしは結構聞くな

394 :マロン名無しさん :2008/11/16(日) 21:22:03 ID:???
耳がギョーザはよくいるな・・・ 「昔は」って言うけど今だっているぜ

395 :マロン名無しさん :2008/11/17(月) 18:57:40 ID:???
やーめーてー
餃子は作るのも食べるのも好きなのにーー

396 :1/4(代理) :2008/11/17(月) 20:56:50 ID:???
第148話 戦いすんで…

試合場では最後のプログラム、男子重量級の決勝戦が行われていた。
「この一戦で今年の県大会も終りか…」石塚が呟く。

※佐鳴高校個人戦最終成績
 ・石塚孝裕〔軽中量級2位〕・袴田今日子〔女子48キロ以下級2位〕・袴田豊〔中量級3位〕

「最後の最後まで浜高がからんできやがったな」と平八郎。
「アタシは2回戦なんかで負けちゃったわよっ」自嘲気味の永田。

※暁泉学園個人戦最終成績
 ・堀内平八郎〔軽重量級2位〕

ミッタンが130キロの相手を投げ「有効」。決定的なポイントを奪う。
「キマリか…あのデカいヤツも強くなったもんだ。
 それにひきかえなんだおまえはっ!一回戦で負けやがって!」
成長したミッタンを素直に賞賛する蜂野は、返す刀で平山を怒鳴りつける。「すいませんっス!」

※三方ヶ原工業高校個人戦最終成績
 ・藤田恵〔中量級優勝〕

「すごいぞ、これで三階級制覇になった!
 団体の時は準優勝でいまイチだったけど、今日は三工におかえししたね!」
「ハッハッハ、ホンの実力ですな」

※浜名湖高校個人戦最終成績
 ・粉川巧〔軽中量級優勝〕・来留間麻理〔女子48キロ以下級優勝〕
 ・三溝幸宏〔重量級優勝〕・宮崎茂〔軽量級2位〕

397 :2/4(代理) :2008/11/17(月) 20:57:09 ID:???
「ところで来留間、道着はどうした?」「汗かいたので着替えました」
「表彰式はどうすんだ?」「表彰式?」
「みんな道着で出るんだよ」「えっ?」
巧に言われてようやく気づいた麻理。そんでもって……。

「女子48キロ以下級優勝!県立浜名湖高校来留間麻理!」「はいっ!」
体を硬くしてひょこひょこと歩いていく麻理。だが、それは緊張からではなかった。
「背中が柔道着に触れないように歩いてますね」
「ムリないよ。すいこんだ汗がひえてつめたくなってんの、また着るんだから」
「オマケに女子はTシャツがありますし……」
「わ――っ、アレが背中にひっつくワケだ。ピトピトと!」
無責任に談笑する桜子と別所さん。一緒に着替えていたなら教えてあげればよかったのに。

差し出された賞状を受け取ろうとする麻理。
体を前に出そうとした瞬間、冷たいTシャツが体と柔道着の間にサンド。駆け抜ける電流。


「うひひゃう!」


思わず飛び出た奇声に、整列していた選手一同大コケ。
すぐに何事も無かったように元に戻る。

巧の隣に並んでいる藤田が鼻で笑う。
「軽中量級“なら”優勝できたか」
「イヤミしかいえねーのか!オレが中量級に出てたらてめーのかわりにそこに立ってたぜ!」
売り言葉に買い言葉、小声での口げんかの応酬である。
「フカすなっ!」「てめーからいってきたんじゃねーか!」
さすがに役員の人から私語を注意されるが、険悪な雰囲気は解けなかった。
(マヌケが!)(バカが!)

398 :3/4(代理) :2008/11/17(月) 20:57:32 ID:???
表彰式も終り、帰途につく選手たち。別所さんともここでお別れ。
彼女はせっかく地元なのだから全国大会にも応援にきてくれるという。
希望に目を輝かせる杉と茂。
桜子たちは別所さんと電話番号を交換する。名残惜しげに手を振りながら、彼女は去っていった。
「いいヒトね…別所さん」「うん。2時間ちょっと前はあのコと試合してたなんて変なカンジ…」
「いやあ、ホントにいいコだよ」
「礼儀正しいしひかえめだし、おまえはひとを見る目があるぜ」
「なによ、急に?」
杉と茂の突然の褒め言葉に、疑いの眼差しを向ける桜子。
「あのコの電話番号、教えてつかあさいっ!」それが目的か。
「誰があんたらなんかに、ぺっぺっ!」

そんな電話をするよりも、インターハイでいいところを彼女に見せたほうが可能性も膨らむと
杉たちにいう巧。保奈美もそれに賛成する。
「あ、ナルホドね。じゃあ帰って明日から猛練習しなくちゃ」
「よっしゃ、気合いれてやったるで」
「そうよ、その意気よ」
杉、茂、桜子。完全に棒読み。
「なんてパターンは飽きてんだよ!」
「やってらんないって!」「帰ろーぜ、ったく!」

まあ、それはともかく――。
巧、ミッタン、麻理と優勝し、茂も2位となって全国に4名も送りこむことになった浜高柔道部。
2か月後にインターハイ本番をひかえ、またいつもどおりの練習の日々にもどるかに思えた。

399 :4/4(代理) :2008/11/17(月) 20:57:52 ID:???
体力トレーニングとして二人一組の肩車ダッシュ。
前半戦の一位はミッタン・石野組。続いて二位に杉・仲安組。
ところが折り返し地点で上下交替したとたん、石野が失速して最下位に。
代わって仲安を追いかけるのは巧・茂組。その頃には石野は女子にさえ抜かれていた。
「こ、これを五往復ですかい?死なないかしら?」
心配げな桜子。だが、その彼女を担ぎ上げている麻理はというと、
「でもコレ、おもしろいです!」いたって平気な様子であった。
「あんたが強い理由わかるよ…」
再び交替。がんばれ桜子、と保奈美から声がかかり、桜子は本気を出す。
「レーサーひゃっくう!」
「はやいはやい、すご――い!」

「肩車ダッシュ1位、杉・仲安チーム!」
勝ち名乗りを上げる二人。2位は麻理・桜子組。
「これってコンビの体重差でだいたいキマるんじゃねーの?」
毒づく3位の巧。バテバテの茂。ミッタンと石野はまだゴールしてもいなかった。

そこに医者から戻ってきた斉藤。個人戦のケガの具合を報告する。
「安静3週間です、先生」「えっ?」

「安静3週間、そのあとリハビリ一ヶ月……それまで柔道できないそうです」

斉藤のケガは肉離れ。手術の必要は無いが、それでも治るまでひと月半はかかるらしい。
インターハイの日程にはギリギリ間に合うだろうが――。
たとえ間に合っても病みあがりに大会フル出場はどう考えても無理。
斉藤抜きでも取れる相手なら斉藤は休ませたい、ということで補欠が必要になった。
皆の視線は仲安と石野に。西久保さんが呟く。

「おまえらしかいねえんだよな。ま、急造だがどっちかを
 全国でもつかい者になるように仕立てなくちゃなあ」

400 :マロン名無しさん :2008/11/17(月) 21:16:53 ID:???
これはチャーリーと石野のバトルか!

401 :マロン名無しさん :2008/11/18(火) 00:08:52 ID:???
意外な展開に・・・うひひゃう!

402 :マロン名無しさん :2008/11/18(火) 00:25:10 ID:???
うひひゃう

403 :1/3(代理) :2008/11/18(火) 20:56:16 ID:???
第149話 1991年の夏

早朝――石野が道場にやってくると、既に巧が着替えてランニングシューズをはいていた。
朝練までまだ30分もあるというのに。巧は練習前にジョギングをするというのだが。
(はっ、そういえば朝練の時、いつもボクらがくる時にはすでにきていたな。
 まさか毎日、こんなに早くきて走ってたのか……!)
巧の強さの秘密を垣間見た石野。一緒に走っていいかと申し出る。巧は快く了承。
(やっぱりあの人はすごい。こういう事がちっともつらそうじゃない、むしろ楽しそうだもんな)
自分も荷物を置いて着替えようと石野が道場の戸を開けると、そこには仲安が。
「な、仲安クンまで?きてたの?」
危うく鉢合わせになるところだった。
「てめえ石野、なにこんなに早くきてやがんだ!
 さてはレギュラーの座を狙ってマジメなところをアピールしようと……!」
「…………」

二人のヤル気を喜ばしく思う巧。その二人はというと、
「だいたいおまえ、選手に選ばれるかもしれないってなったら、
 その翌日からいきなり練習一番乗りしようなんて、あからさますぎるぞ」
「別にそういうワケじゃあ…」
なにやら牽制しあいながらグラウンドに姿を現す。
「おーい、おそいぞ!いっしょに走るんじゃなかったのか!」
「は、はいっ!」
巧に檄を飛ばされ、仲安と石野もジョギングに参加する。
「おまえらのペースにあわせて走ってなんかやらねえぞ!!ついてこれるか?」「ハイ!」

404 :2/3(代理) :2008/11/18(火) 20:56:34 ID:???
AM7:40 本格的に朝練開始の時間である。と、そこに練習には出られないはずの斉藤の姿があった。
「いや、安静にはしてるよ。おまえらが練習サボらんように見てるだけだ」
などといいつつ彼の手には『柔道実戦テクニック』なる本。
(まいったなコイツにゃ……)
こんな時にも研究を怠らない斉藤の姿勢に、巧も脱帽するのだった。

ダッシュから腕立て、ロープ登り、ジャンプ――ただの基礎的な体力トレーニングにも関わらず、
石野と仲安の気合は他の皆にも明らかにそれと分かるものだった。
練習後、斉藤が二人に声をかける。
「おう!今日はおまえらがほとんどリードして引っ張ってくれてたな」
しかし、あまり焦らないよう釘を刺す。もう大会まで日がないのだ。
「大丈夫っスよ、このくらい!」
「ボクもです。ボクは上背があるだけでヤセてるから、もっと筋肉をつけたいですから」
確かに、彼がパワーをもっとつけたらすごいだろう。陸上やってただけに脚力はあるし、強くなりそうだ――。
石野に対するそんな斉藤の評価。それを耳にした仲安は改めて闘志を燃やすのだった。
(ヤロー、ぬけぬけと…今のは選手争いの本気宣言とうけとったぜ!)

これにて朝練は終了。そこで龍子先生からひとこと、連絡事項が。
「かねてから今年はぜひ出場しようといっていた例の…九州でおこなわれる金鷲旗大会」

“夏の金鷲旗!”

インターハイと並び、夏の高校柔道のビッグイベント、金鷲旗柔道大会。
参加校じつに300校以上、規模は世界最大級の柔道大会である。
いわば柔道の甲子園といっても過言ではない。それが夏の金鷲旗なのだ。

「そう、その金鷲旗大会。今年は7月の22日から24日までおこなわれることになってるんだけど…」
息をのむ選手たち。

「出場はとりやめました」

405 :3/3(代理) :2008/11/18(火) 20:56:51 ID:???
だいたい、学校も費用を出してくれず、三工の吉岡先生に聞いたところでは、当然自腹なのだという。
三工ではそのため、選手に貯金を積み立てさせているようで、ほとんどの公立の学校ではそうなのだ。
(ちくしょ〜野球にゃ寄付金とか、ガンガンださせるくせに…)
(オレたちこれでホントに県下の強豪なのかなあ?)

まあ、今回は斉藤のケガのこともあり、無理に出場する必要はない。
そのため、ちょっとだけ部の予算が浮くことになった。そのお金で部に必要なものを買おうというのだが。
「5、6万円分だけどなにかいいアイデアない?」
先生の言葉に顔を見合わせる部員たち。そして――。
「ブルワーカー!」「単純な思いつきでゆーな」
「減量用ホームサウナ!」「買えるかあ!?」
「移動用マイクロバス!」「だから買えるもんをいえって!」
議論噴出、とてもまとまらない状態になる。そこで桜子と麻理が声を大にして主張。
「女子専用シャワー室!」「女子専用喫茶室!」
さらに保奈美までが控えめに提案する。
「あのー、洗濯機」
皆の柔道着を洗うのに必要な洗濯機、これまでもあるにはあったのだが。
「こんなのじゃなくて電気でグルグル回るのがほしいの」「ぜいたくもの!」
彼女が使っていたのは洗濯機というより洗濯板。まるで嫁いびりしているみたい。
「こうなりゃ手段はひとつ、ジャンケン一発勝負よ!恨みっこなし!」
ポン。
「勝った――っ!洗濯機――っ!」
軍配は保奈美にあがった。「しかしあんたらそろいもそろってパー?」

そしてこの日も全国大会を目指し、浜高メンバーは猛練習を繰り返した。
特に一年生の二人は道場の中でもライバル意識をむきだしにし、
その気合は浜高メンバー全体をいい雰囲気にもっていくようだった。しかし……。

妹に換えの氷を持ってきてもらい、ひたすら治療に専念する斉藤。
(今はこうしてじっとしているよりほかはないのか…この肩が治るまで……)

さて3日後、柔道部に全自動洗濯機がきた。さっそく保奈美がランドリーの“ランちゃん”と命名した。

406 :マロン名無しさん :2008/11/18(火) 20:58:46 ID:???
そろいもそろってパープリンな連中だぜ

407 :マロン名無しさん :2008/11/19(水) 06:52:56 ID:???
出場費ぐらいは親が出してくれないかな?…甘いか

408 :マロン名無しさん :2008/11/19(水) 20:22:28 ID:???
出せる親と出せない親と出さない親がいて、面倒なことになるから子供の分だけ負担は難しいのよね…

409 :マロン名無しさん :2008/11/19(水) 20:28:18 ID:???
頑固な汚れを洗うんなら二槽式の方が便利じゃないか?

410 :1/3(代理) :2008/11/19(水) 20:57:00 ID:???
第150話 仲安と石野

斉藤はひたすら耐えていた。
肉離れを治すには、ちぎれた筋繊維を絶対に動かさず、安静にしているしかない。
それは焦ってもどうにもならないことだった。

そして斉藤の抜けた穴を埋めるべく、一年生への特訓が始まっていた。
もちろん一年生ばかりがしごかれているワケではない。二年生も同じであった。
なぜなら浜高が全国大会へ進むと聞いて、県警柔道部の連中が顔を出すようになったからだ。
「まあ、おまえらもウチの県の代表だし…」
「あんまし恥ずかしい成績残してくれても困るもんでな」
わざわざコーチに来てくれた県警の人たちに対し、杉と茂の目は明らかに嫌がっていた。
「ありがた迷惑か?」「めっそうもない…」
練習が終わる頃にはメンバー全員、足腰立たなくされていた。

道場の畳に倒れたまま転がっていた巧は、ふと虫の声に気づく。
「虫が鳴いてる…」
「そりゃあ鳴くさ。夏まえでも鳴く虫はいる」
巧は保奈美に戸を開けたままにしてくれるよう頼む。
吹き込んでくる優しい風と、虫の奏でる音楽に身を包み、彼らはしばしの休息をとるのであった。
「毎日こんなハードで、大丈夫かねえ?大会前につぶれちゃわない?」
「大丈夫よ、きっと。あの調子なら…」
桜子と保奈美は縁側に腰を下ろす。
「もう夏もそこまできてるねー」
「梅雨があけたら…今年はあつくなりそう……」

411 :2/3(代理) :2008/11/19(水) 20:57:22 ID:???
雨の降り続く中、体作りは主に室内での筋力トレーニング。
斉藤の治療は続き、県警のコーチにも慣れてくる。
そして6月も終わりごろ――。

「斉藤!」

ついに斉藤が道場に戻ってきたのであった。
「もう固定しなくていいのかよ!」
「ああ、完全にというわけじゃないけどな。そろそろリハビリ始めていいってさ」
「順調にきてんじゃんか」「おお、これなら全国大会にも間に合うな」
斉藤は今から段階的にリハビリすれば、一ヶ月以内に怪我する前のコンディションに戻せる。
走り込みなら今日からでも可能なのだ。
「でも、元のコンディションにもどったとしてもコワイよ。
 ここ最近の間だけでも、おまえらえらくレベルアップしたみたいだしな」
斉藤の言葉に、誇らしげな表情をする部員たちだった。

とにかくよかったが、これからが肝心。斉藤が完全復帰しても一年生の戦力も重要なのは変わりない。
レギュラーを奪うぐらいの気持ちで、と龍子先生は一年生たちにハッパをかける。
ところで。
西久保は斉藤にリハビリの間、一年生の練習を見てくれるように頼む。
斉藤はそれに複雑な表情を見せるのだが、結局、受け入れるのだった。

翌日――。
「昨日は晴れたのにまた雨になっちゃった。せっかくランちゃんがいるのにね」
洗濯機に話しかける保奈美。それはそれとして。

石野と杉の乱取り。石野は杉に大外刈りをしかけるが、やはり通じずかわされてしまう。
そこで斉藤が声をかけた。
「石野、今のタイミングでいいんだ。引き手が切れなきゃ一本とれてたぜ」
「ホントっスかっ!」
思わぬお褒めの言葉に喜ぶ石野。一気にヤル気を高め、再び杉へと挑んでいく。
(石野はなかなかいいカンもってる。将来的にはヤツは必ず強くなるだろうな)

412 :3/3(代理) :2008/11/19(水) 20:57:37 ID:???
もう一人の一年、仲安もまた、豪快な投げを決める。
「今の体落としどうでした?海老塚先輩!」
「んーそうねえ。――ってアタシごときを投げてそんなこといってていいの、アンタ?」
「今日はまだほかのヒトに投げ技キメてないんスよ」
ちょっとここにお座りよ、と仲安を正座させ、説教モードの桜子。
そんな様子を見て斉藤は呆れるしかないのだった。(なにやってんだ…)

そこで集合がかかる。西久保は一年生の二人に前に出るように言う。
「そろそろ力をためさせてもらうぞ」
彼のその一言に、仲安と石野の表情が変わる。
(とうとうこのときが…)(きたって訳だな!)

西久保は二人にジャンケンをさせる。
「勝ちました」「よし、じゃあ石野だ」

この決定はあまりにも理不尽。仲安は西久保につかみかかって抗議する。
「ちょっ、ちょっとまってくださいよおおーっ!今までのあの特訓はなんだったんスか――っ!」
「早合点すんなバカ」仲安を踏んづける西久保。彼は石野に向こう側に立つよう言う。

「二年、全員今から石野と試合だ」

これには当然驚かずにはいられない一年生たち。だが。
「なにを驚いてる、全国大会の選手になれるほうを選ぶんだぞ。
 実際に県大会を勝ち残ってこれた二年とやれなきゃ意味がないだろ」
なるほど、まさに正論である。
だが、それを聞いていた斉藤の心中は複雑だった。
(石野と仲安…オレの復帰が間に合わなければこいつらがオレのかわりに全国大会に出るんだ…。
 チームのことを考えればこいつらが強くなってくれることにこしたことはないが、しかし…)

結局、団体戦の順番で行くことになり、一番手は巧で決定。
石野対二年生の真剣勝負が始まるのであった。
(いったい……どうなるんだろう……)

413 :マロン名無しさん :2008/11/19(水) 21:12:34 ID:???
ランちゃ〜〜〜ん(;´Д`)ハァハァ

414 :マロン名無しさん :2008/11/19(水) 21:23:34 ID:???
マジでジャンケンで決まるのかと思ってひやひやしたぜw

415 :マロン名無しさん :2008/11/19(水) 21:47:43 ID:???
斉藤がこの柔道部の頭脳だな
言ってる事が正論過ぎて、納得する事しか出来ん

416 :マロン名無しさん :2008/11/19(水) 22:39:36 ID:???
桜子に説教喰らってる仲安がかわいい

417 :マロン名無しさん :2008/11/20(木) 00:05:04 ID:???
うちの犬の名前がランだから妙な親近感を持ってしまう…
しかし斉藤はかっこいいな〜

418 :マロン名無しさん :2008/11/20(木) 00:39:43 ID:???
女子部員とも乱取りやるんだ……寝技もやるんだろうな。

419 :マロン名無しさん :2008/11/20(木) 05:39:32 ID:???
この勢いなら石野の方が代表になりそうだな


420 :マロン名無しさん :2008/11/20(木) 14:05:57 ID:???
普通はジャンケン負けた方が先にやるんじゃないのかw

421 :1/3(代理) :2008/11/20(木) 20:56:30 ID:???
「さあ巧相手に1分もつか?」「1分もったらたいしたもんだ」

第151話 挑戦!

ついに始まった石野の挑戦。攻め手に迷う石野はとりあえずいつも通りに奥襟を取りにいく。
しかし巧はその手を払い、逆に石野のエリを捕まえる。そこで石野に走る戦慄。
(巧さんはエリをもっただけでも、背負いが出せる!)
一本背負いを仕掛ける巧。しかし、石野は腰を落としてそれを防いだ。
(背負いをよみやがったか。じゃ、作戦変更だ)
石野の思わぬ反応に巧は少し驚いたが、そこですぐに体を返して大内刈りに変化する。
「一本、それまで!」「何秒?」「25秒」
(は、速い!これが巧先輩の本当のスピードか……!)
いつもの稽古では見せないような巧の本気の速さを体感した石野であった。
「あと3人だぞ。ガンバレよ」
(汗ひとつかいてない…この人に勝つなんて一生かかってもムリだ…)

何かを考えていた斉藤は、そこで石野を呼ぶ。
「攻めかたは今のでいい奥エリをもってけ」
「し、しかしとれませんでした」
「巧はスピードが違う。それにヤツだっておまえに奥エリとられるのが嫌だから、とらさなかったんだ」

石野が巧の背負いをこらえた時、実はチャンスだったと斉藤は指摘する。
彼は投げられないようこらえるのが精一杯で返し技にまで頭が回らなかったが、
もし裏投げを知っていれば、あの場面で巧を捕まえ投げることだってできたかもしれない。
わずか25秒の試合なのにここまで見ていたのか、と仲安は息を呑む。
「集中すれば必ずチャンスはある。最初から負けると思うな」

422 :2/3(代理) :2008/11/20(木) 20:56:56 ID:???
長々と相談する斉藤たちを眺める杉。次の対戦相手は彼なのだ。
「きっと杉クンを倒す必殺技を伝授してんのよ」
そんなものがあるのかと保奈美は桜子に尋ねる。
「ひとつだけある。名づけてつるつる投げ」

「ごらんのとおり杉クンの頭はつるつる。このままじゃすべってしょうがありません」
 そこで手にとりもちをぬってつかむ。で、そのままかつぎあげる。
 すると杉クン怒って、スミをドバー!あやうし石野!」

以上、桜子先生による黒板を使っての『つるつる投げ』の図解でした。
「いいたいことはそれだけかあ!?いくら女だって容赦しねえ時もなあ!」
いきり立つ杉だったが、ここで出番。「はやくいきなさいよ」

杉は石野の大外刈りをそのまま返す。西久保さんの判定は「技あり」
「おまえの技は大外刈りだけだからな。返すのもカンタンだぜ」
とはいうものの、上背があり手足のリーチも長く、必ず奥襟をとってくる石野に杉はやりづらさを感じていた。
(よし、その調子だ…1分もちこたえたぞ)
試合を見つめる斉藤。だが、結局石野は一本負けを喫してしまった。

「けっ、時間かかってんなあ」「へっ、ちょうど運動したかったんだよ」
格下の石野を相手に手こずった杉をからかう茂。
次の相手は彼なのだが、その前にまた斉藤が石野を呼ぶ。いったい何の話をしているのか。
「おさーる投げよ、伝授してるのよ!気をつけて!」
「ほ――っ、説明してみいっ!」

423 :3/3(代理) :2008/11/20(木) 20:57:27 ID:???
「宮崎スペシャル巴投げ!わかるか、このキレ味の違いが?」
そんなことを言う茂だったが、試合時間は1分57秒08。明らかに杉より遅かった。
試合は次で終り。全力を出してがんばるよう石野を激励する斉藤は、また何やら話し込む。
(斉藤、ホントにマメだなあ…本当に今の一年に二年を倒せる手があるのか?)
その様子を訝る巧であった。

だが、最後の相手はよりにもよって重量級のミッタンである。
体格も腕力も技術も経験も全てにおいて上回る相手に、石野にどう闘えというのか。
仲安は斉藤に視線を向ける。
(本気かよ斉藤さん。斉藤さんの作が成功したらヤベエ…ヤツのほーに選手の座がいっちまうぜ)
組手を取り、即座に仕掛けていくミッタン。
(きたっ!斉藤さんのいったとおりだ!)
これを予測していたのか、石野はミッタンの大内刈りをかわす。
まさかの事態にミッタンは大きく体勢を崩す。
(よし!かわした!今だ、石野!)(今だ!軸足!)

『みんなどれだけ短い時間でおまえを倒すか競争してる。たぶん組んだらミッタンもすぐに仕掛けてくるだろう
 大外か大内か内股か、とにかくすぐにくる。そして、この最初の一撃をなんとしてもかわす。
 その後にチャンスがくる!』

『軸足を狙え!おもいっきり足ではらえ!』

重い音を立てて畳に倒れるミッタン。西久保の腕が横に伸び――「技あり!」
「や、やった!」

思わず斉藤を見る仲安。
(斉藤さんの策が…バッチリ当たっちまった!)

(ヤバイ、このままじゃあ……オレも先輩を一人は投げなくちゃならない……)

424 :マロン名無しさん :2008/11/21(金) 00:37:40 ID:???
ミッタンよえーよw

425 :マロン名無しさん :2008/11/21(金) 01:13:14 ID:???
スミをドバーwwwwww
こんなん言われたらキレるわwwwww

426 :マロン名無しさん :2008/11/21(金) 10:17:46 ID:???
>>424
最近扱い良くなってきたと思ったらw

427 :マロン名無しさん :2008/11/21(金) 14:34:56 ID:???
チャーリーオワタ\(^o^)/

428 :1/3(代理) :2008/11/21(金) 20:56:22 ID:???
「い、石野が……!三溝から技ありとった!」

第152話 眠っていた力

斉藤の作戦は見事に的中。
ミッタンを初心者の石野が投げるという、まるで手品のように結果に驚きを隠せない巧であった。
だが、それでおさまらないのはミッタンの方である。
「まだだ――っ!」
立ち上がり、石野に踊りかかろうとするところに、西久保さんが割り込んだ。
「まていっ!」
そのまま投げ飛ばされ、ミッタンは畳に叩きつけられる。「な、なにゆえ!?」
「そこまでだ三溝!この試合、勝ち負けは関係ない!
 一年生がどれほど成長してるか、確認するためのもんだ、これ以上やる必要はない!」
つまり、この時点で石野は合格ということ。それにしても西久保さん、電光石火の早業でした。

それでもまだ納得できないミッタンだが、こんな頭に血がのぼった状態では怪我をするのが関の山。
「でも…」と食い下がろうとするも、「『でも』じゃないっ!」と西久保さんが一喝。
「デモは嫌いなんだよ。なにしろオレ、機動隊員だしな!」
そのつまらないギャグに即座に食いつく杉と桜子。
「えっ?なんスかあ、西久保さん?」
「よく聞こえなかったんですけど、もいちどいってくれますう?」
「わかったよ!悪かったよ!オレだってつまんなかったとおもったけどよ」

「斉藤先輩!先輩のおかげで技ありとれました。まだ信じられません」
石野は斉藤に感謝をする。
「ちがうぞ、石野。おまえに実力があるからうまくいったんだ」
もっと自信をもて――と励まされ、大いに喜ぶ石野であった。
だが、心中複雑なのはその側にいた仲安である。
(コイツ、三溝先輩を投げるとは…てコトは、オレもそんくらいの試合をしなくちゃならねえのかよ!)

429 :2/3(代理) :2008/11/21(金) 20:56:43 ID:???
ついに仲安の順番に。さっそく巧が出ようとするが、ミッタンがそれを制した。
「先にオレにやらせてくれ…今すぐ体、動かさないと気がすまねえ!不完全燃焼なんだ!」
蒸気のような怒りのオーラを噴出しながら主張するミッタン。
「あ…ああ、わかるよ気持ち。いいよ先で」「さ――んきゅ――!」
あの温厚なミッタンがここまでいうとは、相当に起こっている証拠である。
どうしようと仲安は問うが、斉藤の答は「どうにもならんなあ」と実にシンプル。
「またここで奇襲戦法なんかかけたら、それこそマズイことになりかねんよ。
 ここは投げられてくるしかない。あきらめよう」
「そ…!そんなっ…!」

あっさり畳に叩きつけられる仲安。一本、それまで。
「あーあ、かわいそ。あっという間に終わっちゃって」
「ホント、根性無しですねえ」
桜子に相槌を打つ、というより止めを刺すかのような麻理の一言だった。
(こ、こいつ仲安くんにだけは異常にキツイなあ)

斉藤がここで仲安を呼ぶ。また何かアドバイスをしているようだが、茂たちはその様子が気になる。
「斉藤め、いったいいつもなにをしゃべってんだ?なんかシャクにさわるよな」
「じゃあオレたちも円陣組んで相談すっか」
杉が妙な対抗をして茂と巧とで円陣を組むが、特に話すことはなかった。
何でもいいから話していないと相談しているように見えないということで――。
「この学校には七不思議があってな……」「よせ、バカ!」
杉の怪談話は即却下。
「サッカーはあるけどラグビーはない。
 バレーはあるけどバスケはない。
 警察はあるけど裁判所はない」
「クイズやってる場合かよ」

「ええっ!そんな不公平じゃないスか!?」
声を上げる仲安。彼に与えられた斉藤のアドバイスとは“防御に徹しろ”というもの。
しかし攻めなければ当然勝てない。理不尽な言葉に苛立つ仲安に、斉藤はいう。
「レギュラーに選ばれたければこれが最良の手だと思う。西久保さんもいってる、“勝ち負けは問題じゃない”と」

430 :3/3(代理) :2008/11/21(金) 20:57:04 ID:???
早くしろ、と西久保が仲安を呼び立てる。で、二年生たちはというと。
「忍者はあるけどスパイはない」「あっ、わかった!」
保奈美たちまで混ざって、まだクイズをやっていました。

仲安の二戦目の相手は茂。正選手としてはまだまだ一年生に負けるわけにはいかない。
斉藤に知恵をつけてもらっているならなおさら油断できない。本気を出す、と歩を進めるが、
それと同時に仲安が一歩退いた。
茂が組手を取ろうとしても徹底的にそれを嫌う仲安。まともに組まない作戦だと茂は見切る。
(それでもおそいっ!)
スピードではるかに勝る茂はあっさりと仲安を捕まえる。そしてあっさり背負い投げ、一本。
「組手争いは石野よりできるけどな…まだまだオレたちのレベルじゃないぜ」
悔しがる仲安。それを見ていた麻理はなぜか頬を膨らませるのだった。

「防御に徹しろっていったろ。宮崎は速い、背中とりにいったって、その前に今みたいにつかまるんだ」
仲安の試合ぶりに苦言を呈する斉藤。少しは攻撃しなくてはと反論する仲安だが、
今の彼の体落しや内股ではとうていレギュラーには通用しない。
「もし、どうしても投げを出すなら、体落しと内股以外にしろ。みんなの前でやってないやつだ」
そんな事をいわれても、仲安にはその二つしか持ち技と呼べるものがない。
(はっ!!まてよ……!)

三戦目の相手は杉。仲安はある決意を持って彼に対峙する。
(斉藤さん、まるで知ってるかのようにいったな…偶然か、それとも知っていたのか…)
「仲安!また守りを固めて粘る作戦か?そうはイカのキン…」
…チャンの仮装大賞、などと余裕こいていた杉。
いきなり組んできた仲安に簡単に良いところを取らせてしまう。

(もう一年以上やってない技だが……いちかバチかコイツにかけるっ!)
そして仲安が仕掛けたのは――「なにっ!?」


「一本背負い!!中学ん時の仲安クンの得意技だあ!」

431 :マロン名無しさん :2008/11/21(金) 21:42:18 ID:???
西久保さん華麗すぐるw

432 :マロン名無しさん :2008/11/22(土) 00:37:16 ID:???
な、なにゆえ?!

わらた

433 :マロン名無しさん :2008/11/22(土) 00:40:23 ID:???
来週は巧と背負い対決か?

434 :マロン名無しさん :2008/11/22(土) 01:04:42 ID:???
マリリン、嬉しそうだな

435 :マロン名無しさん :2008/11/22(土) 01:32:29 ID:???
頭脳戦も笑いも楽しめちゃう今回
円陣に加わりたいな〜

436 :マロン名無しさん :2008/11/22(土) 12:15:57 ID:???
クイズの答え分かった奴居る?

437 :マロン名無しさん :2008/11/22(土) 13:15:53 ID:???
>>436
「ある」はサンデーで連載している漫画、じゃない?

(ぶっちゃけると、当時連載していた漫画も覚えてないし
 この答えもどこかで聞いたものなので、真偽は分からないけど)

438 :1/3(代理) :2008/11/22(土) 20:56:14 ID:???
第153話 I・Hへ

「有効!」
(有効!できたんだ一本背負いが!)
正選手の杉から有効を奪った仲安。その活躍ぶりに誰もが驚かずにはいられない。
「なるほどな……一本背負いもってたのか……」
納得顔の斉藤。そして先ほどまでとは一転してニコニコ顔の麻理。
試合はこれまで。仲安と石野、共に合格である。

二年生を相手にこれだけやれればまあまあ。これなら今ここで決めてしまうこともない。
本番までまだ一ヶ月。それまでにどちらがより実力を伸ばせるか、見届けてから選手を決めることに。
顔を見合わせる石野と仲安。
「今まで初心者だと思って甘くしてやってたが……もう手加減しねーからな!」
「負けないよ」「へっ、やっとタメ口たたくよーになったな」
様々な意味で壁を乗り越えた二人。さて、それより問題なのは――。
「一年にこーまでケツあおられてる二年のほうだな。特に二名」
西久保の言葉が杉とミッタンに突き刺さる。

あと一ヶ月しかないのだから死ぬ気でやらなければとても全国レベルに追いつかない。
使えないヤツはとっとと選手を外れてもらう、と西久保は言い放つ。
しかもそれは皆をたきつけようという言葉ではなく、心底マジらしい。
「おやおや、なんだか意気消沈しちゃって」
男子の選手争いには直接関係の無い桜子、妙なポーズで彼らをつつく。
「マジでビビってんじゃないの?後輩に足元すくわれるんじゃないかって」
「バーカな、そーんな」
口ではそういうものの、皆の背後には焦りのオーラがにじみ出ていた。

(ま、本当のところは…)(一年にしてやられたってゆーより……)
(一年のいいとこひきだしたアイツの采配にやられたんだよな)
西久保と巧の視線の先には、一年と談笑する斉藤の姿があった。

439 :2/3(代理) :2008/11/22(土) 20:56:34 ID:???
「やっぱり背負いだったのか……なんでやめたんだ?身長か?」
「やっぱりわかってたんスね……そうです、中3の時に急に背がのびたんで……」
斉藤の問いにうなずく仲安。背負い投げは自分より身長の低い者にはかけづらい技なのだ。
「何年も柔道してて黒帯もとってる割には、なんかイマイチな体落しや内股だと思ってたんだ」
「イマイチ…でしたか」
容赦の無い斉藤の批評に、仲安は少々落ち込むのであった。
ひさびさにやってみたが一本背負いであったが、体はちゃんと覚えてくれていたわけである。

「なるほどな。三つ子の魂百までもってね」「うあっ!」
一瞬、麻理が二人に分裂したかに見え仲安は驚く。実はもう一人は髪を真ん中で分けた巧。
もっとも、これでは三つ子ではなく双子であるが。
「いい背負いもってんじゃんか。もったいねえぜ。斉藤先輩もそう思いますよね」
麻理の真似をして斉藤の袖をつかむ巧。はっきりいって気持ち悪い。
実際のところ、高校なら仲安ぐらいの身長のヤツは多い。杉を相手に通用もしたし、
今からでも背負いに戻った方が良いのではないかと斉藤は勧める。
ウンウンと同意する巧。そのしぐさがちょっとイヤな麻理だった。
「オレ、背負い、もういちどやってみます!こいつで選手、実力でとりますよ!」
晴れやかな表情の仲安。その様子を見て西久保は、斉藤ならいい指導者になれると感じるのだった。

「いよいよオレもうかうかしてられなくなってきたよ。
 はやいとこ本格的に現場復帰しなくちゃ居場所がなくなっちまう」
なあ、巧――と、斉藤が振り向くと、巧の姿が無い。

「保奈美せんぱーい。桜子せんぱーい」
「あらマリちゃん声が変よ?」(桜子は近視)
「きゃああ!」
いまだに麻理の真似をしたまま、保奈美と桜子をからかう巧でしたとさ。

440 :3/3(代理) :2008/11/22(土) 20:56:52 ID:???
雨天のため、柔道部は校舎内で体力づくりのランニング。
というところで、同じようにトレーニング中の野球部を発見。
一気に抜かしにかかる巧。その運動能力に野球部も舌を巻くのであった。

「ホントにもー、梅雨なんて大キライ!ランちゃんの出番、全然ないじゃない」
「今回、あたしらの出番も少ないけどね」

雨でも関係なく今日も練習に打ち込むメンバー。
積極的に巧に背負いをかけていく仲安。もちろん、そう簡単に通じるはずもないのだが、
失敗してなおそのヤル気は増していくかのようだった。
石野も、他のメンバーも負けてはいられない。斉藤はその様子を鉄アレイを手に見つめていた。

「みんな集まって!きたわよ!インターハイの組み合わせ!」
封筒を手に現れる龍子先生。ついに待ちに待った報せが届いたのである。
「予選リーグの相手だよな、えーと」「フーン、兵庫と熊本か」
今まで実感が湧かなかったが、組み合わせ表を目の前にして、いよいよ盛り上がってくる。
(よしっ!オレもあと一週間で包帯もとれる!イッキにおくれとりもどすぜ)
静かに情熱をたたえる斉藤。

そんな彼らの様子を西久保はどこか誇らしげに見つめるのであった。
(こいつら目の色が変わってきたな。これならなんとか期待できそうだぜ)

441 :マロン名無しさん :2008/11/22(土) 21:11:12 ID:???
河合のかき分けできない顔を逆手に取るとはw

442 :マロン名無しさん :2008/11/23(日) 00:20:54 ID:???
巧とはやらなかったんか、がっかり

443 :マロン名無しさん :2008/11/23(日) 00:36:24 ID:???
これからも背負いをやるのか。巧と技がかぶるな。

444 :マロン名無しさん :2008/11/23(日) 07:09:26 ID:???
部活で青春だなぁ

445 :マロン名無しさん :2008/11/23(日) 10:36:52 ID:???
分かるんだけど鉄アレイ持つとシュールだ

446 :マロン名無しさん :2008/11/23(日) 11:33:20 ID:???
麻理のちょっとイヤにワラタw

447 :マロン名無しさん :2008/11/23(日) 16:57:34 ID:???
麻理りんがいつものポーカーフェイスじゃないのは珍しいw

448 :1/3(代理) :2008/11/23(日) 20:56:27 ID:???
第154話 梅雨明けの日

個人戦県予選から3週間と3日――予想したよりかなり早く斉藤が本格的に復帰してきた。
久しぶりに袖を通す道着の感覚、その喜びを彼は噛み締めていた。
「斉藤クン、やっと柔道着がきれる実感にひたっております」
「しかしながら自分の汗のニオイがしみついた道着をクンクンとかいでる姿には、
 異常なほどの彼の柔道に対する執念が……」
「わっ!おまえらいたのっ!?」
恥ずかしい姿を杉と茂に目撃されていた斉藤、思わず狼狽し取り乱す。

道場では皆が斉藤の登場を待ちわびていた。
やっぱり道着着ているときがいちばんカッコイイと褒める麻理。
誰もが彼の復帰を歓迎している光景を、桜子は穏やかな目で見つめていた。
「よかった……ムリしないでね」
「あ、ああ。ありがと……」
あまりに予想外な桜子の言葉に照れる斉藤。だが、その彼女の心中はというと。
(よかった、ホント――によかった!これで9人で練習できる!
 9人ってコトは内込みや乱取りの時に一人あまるってコト、これで少しはラクできるのよ!)
と、そのとき道場に現れたのは西久保さんはじめ県警柔道部のおにーさんがた。今日は何と三人。
(でも、こいつらがきちゃ全々関係なくなるのよ――っ!)

西久保は斉藤の道着を脱がせ、怪我の具合を確認する。
「肩か……まァ、おいおい技のこととか考えてくとして…まだひと月近くあるしな……」
「はい。ボクもいくつか考えがありますので……ひとつひとつ試してみるつもりです」
そんな二人のやりとりを妙に感じる巧だった。

449 :2/3(代理) :2008/11/23(日) 20:56:52 ID:???
いよいよ乱取り稽古、というところで斉藤に対して申し込み殺到。
「なんでみんなオレんとこくんだよっ!」
「わからないのかい?」「アタイたちゃこの時をまってたんだよ!」
杉たちは三週間以上のブランクで本調子のでない斉藤を投げ倒し、
これまで斉藤に投げられ続けていた貸しをまとめて返済してもらうつもりなのだ。
「もー投げて投げて投げて」などと彼らがアピールしているところに、巧が漁夫の利をさらっていった。
乱取り相手は巧で決まり。杉たち三人はあぶれたところを、
「お――ちょうど3人いたぜ!」「こいつら選手だ!遠慮なく鍛えてやってくれ!」
県警のおにーさんがたに捕まってしまいましたとさ。

さっそく乱取りを始める巧と斉藤。しかし組み合った瞬間、巧は違和感を抱く。
というところでまず仕掛けたのは斉藤だった。
「おおっ、さっそくだっ!」「巧を体落しで崩した!」
ブランク明けにも関わらずこの技のキレ。ポイントにはならないだろうが、健在ぶりを見せ付ける。
「ちくしょう、寸前で引き手はずされちまった。やっぱつかってなかったから握力が落ちてんだ」
大会までにはトレーニングして握力を戻すという斉藤だったが、立ち上がった巧は言う。
「斉藤、左手あげてみせてくれよ」


「バレねーうちにおまえを……一回でも投げてやろうと……思ってたんだがな」


斉藤の左腕は肩の高さより上に上がらなかった。
これはべつに痛くて上げられないわけではなく、テーピングで固定してあるため。
つながったばかりの筋肉をすぐに引っぱるのは危険なためこうして保護をしているのだ。

だが、腕が上がらない以上、かけづらい技も当然出てくる。
影響の少ないのが内股や体落し――巧の察したとおりだった。

450 :3/3(代理) :2008/11/23(日) 20:57:14 ID:???
多彩な技が売りだった斉藤がその長所を封じられ、インターハイはどうなるのか。
だが、斉藤自身はそれほど落ち込んだ様子でもなかった。
「この左手でもできることを考えればいいだけなんだから。手の内だったらいくつもあるさ」
オレって器用だし――などと、しれっと言い放つ斉藤。
その態度に暗くなりかけていたメンバー、大会前に自分たちでつぶしてやると息巻く。

そんな斉藤の態度を賞賛する保奈美。
皆に心配をかけまいとつとめて明るく振る舞っている、という彼女の見方を、桜子は否定する。
「あんたが思ってるほど深く考えちゃいないのよ。アレは柔道バカなの!
 マジで柔道できるのがうれしくてしょーがないの!
 ケガしたのどーしたのよりそっちのほうがうれしくてしょーがないの。
 だから今日は明るいのよ、アイツは」
ふ――っ、とため息をつく桜子であった。
(……よく見てるじゃん)

そして翌日、東海地方一帯に梅雨明け宣言が出され……浜高柔道部はいよいよもって近づく
インターハイ本選に向けて合宿にはいった。

「まっ、インターハイのこともある。でもその前に……期末テストがあるのよ!
 部活動の時間をへらさず勉強の時間をつくるにはこれしかないっ!」

龍子先生主催、柔道部合同勉強会である。
「えーと、1192つくろう遣唐使?」
「894にもどした平安京?」
「794うぐいす鎌倉幕府?」
「ぜ、全部ちがう……」
ちなみに正解はこれ。
@794 平安京遷都 A894 遣唐使廃止 B1192 鎌倉幕府成立

451 :マロン名無しさん :2008/11/23(日) 23:15:09 ID:???
よ、よく高校生になれたなこいつら(汗

452 :マロン名無しさん :2008/11/24(月) 00:13:45 ID:???
自分の柔道着をやっと着れて嬉しいのは分かるがニオイかぐのはやり過ぎw

453 :マロン名無しさん :2008/11/24(月) 03:34:35 ID:???
やっぱり桜子は斉藤とくっつくのかな?

454 :マロン名無しさん :2008/11/24(月) 09:57:12 ID:???
>>453
今回の話はちょっとそう見えたな

455 :マロン名無しさん :2008/11/24(月) 16:43:53 ID:???
うん、意外なほどつながりの深さを知ったよね
斉藤と桜子か〜

456 :1/3(代理) :2008/11/24(月) 20:56:20 ID:???
第155話 合宿始まる

結果はどうあれ期末テストも終わり、学校は夏休みになて、柔道部も本格的な合宿練習に入った。

 ※テスト結果
 殿:杉清修(学年順位8位) 姫:近藤保奈美(同12位)
 士:三溝幸宏 農:斉藤浩司 工:粉川巧 商:海老塚桜子 丁稚:宮崎茂

本選まであと2週間。練習はより実戦向きなものに重点が置かれるようになった。
普段の練習に近い内容は、午前中までに終わり、午後には各自それぞれの得意技を磨き、
最後に試合形式の乱取りでその日に学んだことを実践するという形をとった。

しかし斉藤一人だけは少し違っていた。
練習は一部にケガをして筋力の衰えている左腕のリハビリを加えていた。
(仲安、石野、おまえらがいくら強くなろうがな、そう簡単には選手の座をくれてやるわけには……)
「いかないんだ!」

練習上がりに麻理をシャワーに誘う桜子。その前に立ちはだかったのは杉だった。
「シャワーだあ!?そんなもんよりなあ……汗を流すなら、コレだ!」
いつの間にか全員水着姿の柔道部メンバー。(杉だけなぜかビキニパンツ)
桜子の顔が引きつった。

「うおりゃあ――っ!」「ていっ!」「いけ――っ、チャーリー!石野、手をかせ!」
「や、やめてくださいよお、コラァ石野てめえっ!」
「気分はそーかい!」
夜のプールではしゃぎまくる皆に、桜子が声を上げる。
「ちぇっ、子供みたい。あんたらね――!余力残しとかないと明日の練習で死ぬよ――っ!」
とはいえその姿はとても気持ちが良さそうで、麻理も水着を持ってくればよかったと悔やむのだった。

457 :2/3(代理) :2008/11/24(月) 20:56:42 ID:???
「1ばん三溝、海底火山噴火やります」
飛び込み台の上から直立不動の姿勢でプールに倒れこんでいくミッタン。
その面積の広い体が水面を叩いた瞬間、まさに火山の噴火を思わせる大きな水しぶきが上がった。
プールサイドにまでその水が飛んできて怒る桜子だったが、それを眺めていた麻理はもう辛抱たまらんという様子。
「はいりたーい、はいりたーい」
「ダメよ、あんた今Tシャツのしたブラもつけてないじゃん!
 いくら男の子みたいでもあんたは女なんだから!」
「じゃあじゃあ、上、タオルでこーやって、下、ブルマーのビキニでは?」
「ダメダメ!そんなのあぶなっかしすぎる!」
無邪気さゆえの麻理の提案を桜子が即、却下した。

(こりゃあいい……水の抵抗が腕と肩に適度な負荷をかけてくれるな)
そんな周囲の喧騒をよそに、斉藤はプールでの運動のリハビリ効果を確かめていた。

その頃、合宿所ではマネージャーの保奈美が夕食の準備。ところが冷蔵庫の中に卵が無い。
もう時間も遅いので龍子先生が車で買出しに行こうとしたそのとき、
良いタイミングで巧がプールから戻ってきた。

「そんじゃいってきます」
夜道を考え、巧と保奈美の二人で買出しに行くことに。しかし、先生には裏の思惑があった。
(フフ、合宿中はそうそう二人っきりになれないもんね……フフフ、あたしってキューピッドさん?)
卵を買いに行くだけなら自分一人でも良かったのに、と巧は不思議がるが、そこはそれ。

体育館のシャワーを浴びて戻ってきた麻理と桜子。怖がりの桜子は真っ暗な学校におっかなびっくり。
「あっ、あれ誰だろー?」「んぎゃ――やめろよ、そうゆうコトゆうの!」
思わず麻理に抱きつく桜子だったが、べつに彼女を脅かそうとしてやったわけではなかった。
「あっ、あれはなんとっ!!巧先輩と保奈美先輩!」
さっそく後を尾行しようとする桜子を「ダメですよ桜子先輩!」と麻理が引き止める。

「みんなにも教えましょう」
(こいつ、染まってきたな……)

458 :3/3(代理) :2008/11/24(月) 20:56:59 ID:???
久しぶりに巧と保奈美の二人で歩く夜道。梅雨も完全にあけた空には星がちりばめられていた。
(でもウチの学校のまわりってほんと静か……ちょっと緊張しちゃう……)

その頃、巧たちを送り出した龍子先生はちょっと思い悩んでいた。
(考えてみたら、やっぱヤバイかな?最近のコはススんでるし……でも巧クンと近藤さんに限ってねえ、そんな……)
迎えに行こうかと考えているとき、ふと気がつく。
(あれ…?そういえば……ヤケに合宿所静かねえ……)

不意に保奈美の肩に手を回す巧。
「巧く…」「保奈美」
巧は「こっちだっ!」といきなり保奈美を引っぱり、物陰へと連れ込む。
状況がつかめない保奈美に静かにするよう示し、電柱の後ろから眺めていると――。

「ホントに見たのかよ、おまえら?」
「まちがいないって!二人でこっちの方へいったの見たんだから!」
桜子を先頭に野次馬ご一行様がゾロゾロと歩いていく姿が見えた。

結局何も見つからずに戻ってきた彼らを出迎えたのは、竹刀を手にした龍子先生。
捜していたはずのターゲットの姿もそこにあり、彼らは唖然とする。
「どこほっつき歩いてたのかな?キミたちは!」
「こんな夜中に何してたの?さがしもの?」
夜中に無断で抜け出した部員たちを叱りつける先生。巧と保奈美もそんな彼らをにやにやと笑うのであった。

罰として一時間正座――っ!!

「海老塚おまえな――」「ガセネタつかませやがってコラァ」「ホントだってばー」
「フカシこきやがって」「いかなきゃよかった……」「ぐーぐー」

459 :マロン名無しさん :2008/11/24(月) 21:29:47 ID:???
杉が保奈美より頭いいとは予想外だ
あのつるつるがいいのか…

460 :マロン名無しさん :2008/11/24(月) 23:48:25 ID:???
せっかくのプールシーンなのに男のみ
いい雰囲気?と思いきや尾行を撒くだけ

なんだろ、このモヤモヤ感

461 :マロン名無しさん :2008/11/25(火) 16:18:52 ID:???
作者の目が黒いうちはラブコメなんかにゃさせないのよ!

462 :1/3(代理) :2008/11/25(火) 20:56:16 ID:???
第156話 花火の夜

91’・夏――全国高校総体がついに始まった。
盛りあがる地元。
「インターハイは毎年やるトコもちまわりで変わるらしいに」
「オリンピックみたいなもんだらあ?」
街に時折現れる……いかにもな高校生の一団。そして柔道種目も明後日から始まる。

覚えてるだろうか、沖縄尚北高校玉城一史。この男、当然、普通の高校生ではない。
春の高校選手権個人戦無差別級の優勝者。
すなわち現時点、日本中の高校生の中で一番強い男なのだ!
そして春の大会の団体戦の一回戦で、巧は彼に敗れていたのだった。

その頃、浜高柔道部はまだ学校にいた。
今年のインターハイは地元なので宿舎を借りるワケじゃなく、通いで参加するからである。
乱取り稽古中、足を滑らせて顔面から畳に激突する杉と巧。
もう、暑いわ、室内だわ、猛特訓だわで、道場に汗がたまるぐらいなのだ。

(やはり完調ではないにしても、今の一年より斉藤のほうがはるかに上か。
 ヤツはやっぱり外せない戦力。すると残るは、一人……)
仲安か石野か、西久保は出場選手枠最後の一人をどちらにするか悩んでいた。

練習後、くっついて大会のプログラムを見るメンバー。
「ミッタンよお、おまえ胸囲いくつ?」「125センチ」
「それ自分より大きいヤツ見たコトある?」「一度もないよ」
暁泉の黒柳は同じくらい。杉はプログラムに記載されている選手のデータを見て数える。
「おまえよりデカイ胸囲のヤツが大会いくと7人もいるーっ!」
「だいたい、この胸囲140センチってどんなヤツなんだよっ!?」
高校生どころか人間離れをした体格の人間が揃う全国大会。
平均体重をとると浜高はビリかもしれない。その事実を嘆く杉たちだった。

463 :2/3(代理) :2008/11/25(火) 20:56:33 ID:???
桜子が杉の手からプログラムを奪い取る。
「そんなふーにグチばっかりいうのやめなよっ!いいかげんにひらきなおったらっ!?」
そうはいうものの、今日は疲れを残さないために夜の練習もなく、明日の練習も午前のみ。
やることがないだけにプレッシャーに悩まずにいられないのだ。

体を動かしている間しかそれを忘れられないと説明する斉藤。だが、
「あんたもこんなもんで左手鍛えてるじゃん!も――間に合わないってっ!」
桜子は斉藤からもハンドグリップを没収する。もちろん、意地悪をしているわけではなかった。
「これ以上は左手をいじめるだけなんじゃないの?休ませてやんなよ」
彼女のその言葉に、斉藤は「……ああ」と素直に従うのだった。

そういえば、巧は何をしているのか。
イメージトレーニングといいながら畳に横になっている彼に杉が近付いてみると、
「クスクス、しょうがないなあ……そうじゃないって保奈美……ムニャムニャ」
眠りの世界を旅する彼は、実に恥ずかしい寝言を口にするのであった。

「このバカたれ――っ!」
寝転がる巧を杉が思い切り蹴り飛ばす。「痛てっ、なあにすんだバカ!」
「てめえがのん気に寝てるからだ!!おまけに近藤が出てくる夢なんか見やがって……」
「夢〜〜?んなモン見てねえぞ!」
巧は杉に蹴られたショックで夢の内容を忘れていた。
「いってたんだよ寝言をなあ!」
「えっ、どんなんどんなん!?」
思わせぶりな杉の態度に、皆の興味が集中する。
「いやあ、あまりにハードすぎてちょっとここではいえないね」
「フッ、フカシこいてんじゃね――ぞっ!」

464 :3/3(代理) :2008/11/25(火) 20:57:25 ID:???
そんな具合に盛り上がっていたところに、タイミングよく保奈美が戻ってくる。
「ちょうどいいトコにきたね、あんた。聞いて聞いて!巧くんがね……」
「まて――いっ!」
さっそく告げ口をしようとする桜子を巧は止めようとするが、ミッタンに羽交い絞めにされて動けない。
ところが、保奈美の方がそれを遮った。
「ゴメン、後にして!みんな、あの音、聞こえるでしょ!?」

「花火ですよ!」「今やってるの!」

彼らが校舎の屋上に上ると、大小様々な美しい花火が夜空を彩っていた。
海辺のほうの町でやっているのか、ちょうど夜の練習のない日にやるとは幸運である。

「おお……コレだよ!花火なんだよ」
「オレたちゃすでに筒に仕込まれた花火みたいなもんか」
「そう、そして後は……」
「散るだけ?」
「その前だっ!」

そう、ジタバタしたってもう遅いのだ。「よーし、こうなりゃ一発……」


           『でっかい花火あげてやる!』

465 :マロン名無しさん :2008/11/25(火) 21:03:08 ID:???
『でっかい花火あげてやる!』
これって花火を筒に仕込む前じゃね?
屁理屈なのはわかってるけどね

466 :マロン名無しさん :2008/11/25(火) 21:44:45 ID:???
恥ずかしい寝言を言って恥ずかしいシミを作ったりしてないのだろうか?

467 :マロン名無しさん :2008/11/25(火) 23:06:47 ID:???
>>465
筒に仕込んだ後でも点火の具合が悪いとへぼって感じでうまく上がらないんじゃないか?

468 :マロン名無しさん :2008/11/26(水) 00:06:13 ID:???
しかしここ最近ラヴラヴだな、巧と保奈美

469 :マロン名無しさん :2008/11/26(水) 00:13:55 ID:???
特に恋のライバルがいる訳でもないから安穏としてるな

470 :マロン名無しさん :2008/11/26(水) 03:16:27 ID:???
桜子にしても佐鳴との試合以来そういう話は一切なくなったな。

471 :マロン名無しさん :2008/11/26(水) 17:45:27 ID:???
めちゃくちゃ青春してるねぇ

472 :1/3(代理) :2008/11/26(水) 20:56:55 ID:???
「あれ?ここは……?インターハイ会場か?」
気がつくと仲安は試合場に立っていた。そこに襲い来る誰かの手。
「ちくしょう試合中だったのか!でえい!」
見事な一本背負いで相手を投げ飛ばし、一本をとる仲安。
ところが彼が投げた当の相手はというと――。
「な、なにっ!?おまえは……!!石野ォ!?」「ま、まいった……!」

困惑する仲安。敗れた石野を温かく迎える浜高柔道部の仲間たちは、なぜか相手側に座っていた。
「野郎、選手を石野にとられたからって、敵のチームにはいりやがるとはっ!」「ゆるせんっ!」
そんな事を言われて驚く仲安、慌てて対戦表を確認すると、そこには敵の先鋒として記された自分の名前が。

「待ってくださいっ!オレは味方ですよ――っ!」
「だまれ、きさまは悪者だっ!」「自分の柔道着をよく見るがいい!」
いつの間にやら自分の身を包む柔道着が黒くなっていることに仲安は気がつく。
「これじゃあどう見たって悪者だあーっ!」

「なんかうなされてるぞ」「変なユメでも見てんじゃないの?」
陽もまだ昇っていない時刻――。
悪夢にうなされる仲安の枕元を取り囲むように、柔道部メンバーが集まっていた。
「しかし、やるなら今のうちだ」「そうだな、ヒヒヒヒヒヒヒヒ」

「うわああ――っ!」


第157話 なぐり込み!


「オ、オレのアタマ……真っ黒になってるうっ!」
洗面所で鏡に写る自分の姿を見た仲安は驚愕する。
彼のトレードマークとも言うべき金髪が、寝ている間に黒に染められてしまっていたのだ。
水で洗い流そうとするが落ちない黒。墨ではなく、本物の毛染めであった。

473 :2/3(代理) :2008/11/26(水) 20:57:14 ID:???
コレはイタズラにしてもシャレにならない。杉に抗議をする仲安であったが、
「命令したのはアタシです!いつまでも日系2世、仲安・チャーリー・昌邦でとおるわけないでしょ!」
薬を手に龍子先生登場。それは仲安としても、試合場でチャーリー呼ばわりされるのはイヤだが。
しかし、彼はまだ今この時その髪を染めさせた理由に気がついていなかった。
「キミに選手としてでてもらうの。選手として」
そう、これは正式に彼が選手として抜擢されたお祝いの意味もあったのだ。

西久保も今の時点では仲安が上と認めていた。
背負い投げをするようになって見違えるように良くなったのだ。
斉藤は補欠として登録される。とろくせーことをやっているとその場で交替だ、という彼に、
仲安は少し申しわけなさそうな表情をする。
そしてそれよりも――。(石野……)

選手の座を争ったもう一人のことを仲安は気にしていた。
「やっぱりかなわなかったよ。でも、ホッとした。ボクにはまだ試合なんて無理だし……」
それは仲安に気を病ませないための石野の心遣いであったのだが、

「あったり前田日明なんだよっ!インターハイなんだぞー!
 おまえなんかノコノコでてってみろー!ルールもまだ完全に把握できてないくせに、
 大恥かくだけだってーの!」

「少しは謙虚にならんか――い!」
調子に乗りすぎの仲安の頭を典善がパンフレットの角で殴りつけた。
「あっ、お父さん、西久保さん。車きたの?」
時刻は五時半。八時半に会場に入るためにはもう出発をしなければならないのだ。
ところが、そこに停まっていたのは――。
「こ、これは……」「まさかケーサツの……」「護送車だったりして……」

474 :3/3(代理) :2008/11/26(水) 20:57:28 ID:???
本当はマイクロバスを借りにいった典善たち。
だが、お盆にインターハイが重なるこの時期、どこのレンタカー屋にも空きがなかったのである。
こんなのに乗っていったら生徒が犯罪者に間違われると抗議する龍子先生だったが、
当の生徒たちには意外と好評のようだった。
「ホント、コレしかなかったんですよ。とにかく急がないと時間が……」

インターハイ、柔道競技会場。
そこに三方ヶ原工業の選手たちの姿もあった。
「とうとうきたってカンジだな、藤田」「ええ……」
さすがに全国大会、雰囲気からして違う。皆が皆、それぞれ地元では化け物のように怖れられている連中ばかり。
その化け物が500人以上もここに集まっているのだ。
「もしも、今ここにヤクザの組がひとつ丸ごと乗り込んできても、きっと半殺しの目にあって追い返されるぜ」
「確かに……しかし、ボクたちもその仲間なんでしょう?」
緊張の面持ちの蜂野に対し、藤田は気後れすることもなく、彼らを対等の相手と見なすのだった。

と、会場の玄関先に乗り付けてくる護送車。まさか犯人が乗っているのかと騒ぎになりかける。
「いいか、大急ぎで出ろよ!オレはすぐ車返しにもどらなきゃならん!」
西久保がドアを開けると飛び出してきたのは――。
「こ…粉川!浜高!!」
まさかの見知った顔に驚く藤田。
「ふ――。死ぬかと思った」
一息つく巧。護送車なので冷房がなかったのである。

騒然とする周囲の様子に少し戸惑う面々。警察沙汰を起こしただの鑑別所から来ただの、
凶暴だからいつもアレで移動しているだの、期せずして敵にプレッシャーを与えたようだった。
もっとも、実情を知る藤田にはただ呆れられるだけであったのだが。
(あのバカども……いったいなに考えて生きてんだ!)

「なあ、西久保クンよ……考えてみたら新幹線つかえばよかったんじゃないか?」
「あ!!」

475 :マロン名無しさん :2008/11/26(水) 22:02:22 ID:???
面白い。
全国大会初戦の日だってのに、これでこそ浜高であり帯ギュって感じ。

476 :マロン名無しさん :2008/11/26(水) 22:26:01 ID:???
巧が最初パトカーで昇段審査うけにきたことを思い出した

477 :マロン名無しさん :2008/11/26(水) 23:09:51 ID:???
なんて勢いのある1話なんだ
いちいち笑ってしまった

478 :マロン名無しさん :2008/11/27(木) 00:30:25 ID:???
護送車いいなあ

479 :マロン名無しさん :2008/11/27(木) 06:09:16 ID:???
警察関係者でよかったよな
これが葬儀社関係者だったりした日には…

480 :マロン名無しさん :2008/11/27(木) 11:59:32 ID:???
死神ジュードーマスターとして名を馳せるかも

481 :1/3(代理) :2008/11/27(木) 21:18:27 ID:???
入場行進のために整列する選手たち。
「ところでなんであんたらいるの?個人戦は明日からだぜ、まちがえんなよ」
「オレらも開会式はでるんだよ!」
個人戦準優勝で全国大会出場権を得た石塚、大村、平八郎。
彼らは団体2位の浜高の後ろをついていくのだ。ちなみに1位の選手は三工と一緒に入場になる。

個人戦の選手は開会式に出るだけ。午後は帰って練習とのこと。
そこで浜高の皆に声がかかる。振り返るとそこには見知った顔が。
「あの……浜高のみなさん。こんにちは。おひさしぶりです」
別所愛子。県大会2回戦で桜子を破り、3回戦で麻理に負けた女子48キロ以下級の選手である。


第158話 本番!


インターハイが開かれると、地元の高校生が手伝わされる。
別所さんの学校は偶然にも柔道会場の担当になったのだ。
というわけで、彼女が今着ているのは公認スタッフTシャツである。
杉はクルッと回ってよく見せてほしいと頼む。
「こんなもんですけど……」
いわれるままに素直に従う別所さん。ひらりと翻るスカートも可愛らしい。
「やったー、まわったまわった!」「あっ、ひどーい!」「うれしいなーっと!」
彼女のその仕草にキャホーと喜ぶ杉たちだった。

「粉川さんでしたね。県大会の個人戦で優勝した……」
別所さんは巧に話しかける。緊張して喋りもたどたどしい彼女は、
顔を赤らめたまま「がんばってください」とぺこり。
他のメンバーにも「みなさんもがんばってください」と激励して彼女は去るが、
その態度は明らかに巧に対するものとは違っていた。

482 :2/3(代理) :2008/11/27(木) 21:18:48 ID:???
「さてと、まだかなあ、開会式は?」
わざとらしく話を逸らす巧に杉のデコピンが炸裂。「ってーっ!何しやがる!?」
さらに続けて茂のしっぺが右腕をピシリ。「おわあっ!」
「試合前だからケガしないような制裁にしてやった」
「ありがたく思え」
「別にオレが悪いわけじゃねーだろ!」
巧は抗議するものの、嫉妬に身を焼く杉たちに真っ当な理屈が通じるようなはずもなかった。
「近藤にゆうぞ」と杉の一言が巧の胸に突き刺さる。

「いえば?ただほめられて激励されただけじゃん」
「じゃあゆうよ。別所さんの態度」
「『尊敬してます』っていったあと、ほほ赤くしてうつむいたってゆうよ。事実だもん」

「たのむからいわないで…………」
(そんなに近藤さんがこわいのかこのヒトは……)

そしていよいよ始まる入場行進。観客席には出場選手の父兄たちが集まっていた。
宮崎父「おお――出たぞ!ウチの茂が!」
三溝姉1「ホラ、お母さん、あそこ、幸宏よっ!」
三溝母「えッ、ドコ、ドコにいるのユキちゃん?」
三溝姉2「お父さん、ちゃんとビデオとってる!?」三溝父「あ、ああ」
薫「おじいちゃんカメ仙人みたーい」

桜「……今日初めてみんなの家の人と会ったけどさ……
  人生ってなんなんだろうって、ふと考えさせられたね」


『ただいまより――第40回全国高等学校柔道大会を開会いたしますっ!』

483 :3/3(代理) :2008/11/27(木) 21:19:04 ID:???
前年度優勝校 東名大藤沢――。
前年度準優勝 春の選手権優勝 千駄谷学園――。
第一回大会よりこれまで40回連続で出場している超ド級の名門 天味高校――。
そして昨年度ベスト8、春3位着実に力をつけ――この大会こそ悲願の優勝を狙う尚北高校!

どれ一つとっても一流がそろう、これこそ全国大会。
(いくら歴史を築いてきた名門だろうが、己個人の実力で退けをとってると思ったことは一度もない。
 見ていろ、久しぶりに藤田恵の名を全国に知らしめてやる!)
気後れすることなく勝利の意志を固める藤田。そして――。

(とうとうここまできた……インターハイ全国大会――)
整列する巧は感慨深げにその空気に浸っていた。(藤田……あんなトコにいやがる)
ぐるりと場内を見回す彼の目に留まったのは、因縁深きあの男の姿だった。

(見つけたぜ玉城! あと少しだ、あと少しでてめえと闘える!)

そして第一日目、団体戦予選リーグが開始。兵庫の教英高校、そして熊本の東名大二高。
浜高はこの二校とリーグ戦を行い、一位になればトーナメントに進めるのだ。

西久保さんのデータによると、熊本が強敵。先に当たる兵庫の方がまだ楽な相手だそうで、
こちらをガンガン攻めて熊本にプレッシャーをかけるよう龍子先生は指示する。

というわけで、この試合は斉藤を温存、仲安が出場することに。
実力で劣る分、気合でカバーしようと猛る彼は、巧に気合を注入してくれるよう頼む。
「巧さん、ほっぺたに一発ビンタはってください!ここに!」
「ここにじゃねえよ!やだよ!FMWのファンか?おまえは!」

そしていよいよ試合場に整列する両校。いかにも強そうな教英の選手たちを見て、
(うん!相手にとって不足なしっ!)やる気をみなぎらせる巧。
(あわわわわわ)完全に浮き足立つ仲安。

(こいつらのドコがいったい比較的ラクな相手なんだ?しょっぱなから綱わたり状態だったりして)

484 :業務連絡(代理) :2008/11/27(木) 21:19:25 ID:???
次回は一回休載して、単行本16巻のおまけを紹介します。

485 :マロン名無しさん :2008/11/27(木) 22:59:00 ID:???
まさか別所さんを絡ませるとは
静かに恋の炎を燃やしそうなタイプは怖いなあ

486 :マロン名無しさん :2008/11/28(金) 02:22:39 ID:???
別所さんがまた出てくるとは思わなかった

487 :マロン名無しさん :2008/11/28(金) 08:47:14 ID:???
別所さん絡ませるなら
桜子に彼氏作って、その相手に別所さんが惚れてしまい
気付いた時には友情と愛情のバランスが崩れ、ドロドロした空間になればいいのに
と思った俺は鬼畜

488 :1/3(代理) :2008/11/28(金) 20:56:37 ID:???
○単行本第16巻 (表紙:倉田龍子 裏表紙:西久保)

・四コマその1『Fにことわりもなく!』

1.来(キュー太郎) 「なにたべてんの?ショーちゃん」
  巧(ショーちゃん)「わっ、キューちゃん。ちがうよ、夏休みの宿題の工作だよ」

2.来(キュー太郎) 「なあんだ、つまんないの。いくぞピーコ」
  巧(ショーちゃん)(ちぇっ、手伝いもしないや。キューちゃんってホントにいそうろうしてるだけの
            タダのムダめし食いだもんな。となりのノビタくんちのネコ型ロボットは
            いろいろ役に立ってくれてるってゆうのに……)

3.杉(ノビタ)   「DRYも〜ん!夏休みの宿題をやるための機械だしてよ〜ん!」

4.典善(DRYもん)「『電気イス』〜!眠くなったら1000ボルトの電流が流れて起こしてくれるから、
            どんなナマケものでもテツ夜ができるんだ」

489 :2/3(代理) :2008/11/28(金) 20:56:55 ID:???
・四コマその2

1.特報 帯をギュッとね17 予告

2.浜高の前に 新たな敵の出現!
  保「ああっ!」

3.全国の強豪を相手に きまるか?巧の背負い投げ!
  西「3位だったんだよ」

4.そしてケガを克服した斉藤に、 チャンスはのこされてるのか!
  麻「く――」

5.近日公開
  「おいっ!」「なんじゃこりゃあ!」
  「ちっとも画面と文句あってねえぞ」「なんかつまんなそーだぞ!」

490 :3/3(代理) :2008/11/28(金) 20:57:10 ID:???
○熱戦の第16回 サンデーコミックス名物『絵筆をもってね!』

 選評/河合克敏 応募総数:1475点 入選:26点

 グランプリ :栃木県・母と7人の女〔桜子(7人の姉妹とその母による合作〕

 準グランプリ:大阪府・鈴木智緒〔保奈美・別所(10巻と15巻の表紙の服装入れ替え)〕
        千葉県・謝夢まなつ〔斉藤兄弟(さいとうきょーだいかいものにいく)〕

 topix:間違い指摘ネタ
     兵庫県・藤村信子〔桜子(11巻P373コマ目・桜子の指が6本)〕
     福岡県・A定同盟〔別所(15巻・別所さんの右手の包帯)〕
     千葉県・魔矢鷹〔15巻P179・豊VS大村戦、豊の台詞(くっ…、こんなヤツがいたとは…)
             しかし実際には団体戦の大将戦で引き分けたことがあった〕

     東京都・素人 ひゅんすか〔袴田・石塚(袴田様とその下僕)〕
     静岡県・ゆきのすけ〔巧・麻理・来留間先輩(3つ子の魂100までもってね)〕
     埼玉県・ゴリ〔保奈美・桜子(「道着が臭い、きつい 夏」)

491 :マロン名無しさん :2008/11/28(金) 21:07:10 ID:???
DRYもんクソワロスwww
ひみつ道具でもなんでもねえwww


492 :マロン名無しさん :2008/11/28(金) 21:32:44 ID:???
キューちゃんは本当に無駄飯ぐらいそうだな

493 :マロン名無しさん :2008/11/28(金) 23:26:18 ID:???
ドライもんwww

494 :1/2(代理) :2008/11/29(土) 20:56:39 ID:???
第159話 予選リーグ開始

○先鋒戦 兵庫 教英・能勢VS静岡 浜名湖・宮崎

いよいよ始まった教英高校との第一試合。インターハイ最初の試合であるだけに、
ここで勝って弾みをつけたいところである。
「茂――っ!相手はたぶん見かけだおしだ、サクッと勝ってこい、サクッと!」
宮崎父の声援が飛ぶが、サクッと、というのはいくらなんでもどうか。

激しい組手争いで、互いに相手にいいところを取らせない。
(ようし……みてろよ……)
茂は組手を無視して一息に相手の懐に飛び込む。
その小内刈りを能勢はかわすが、それを茂は狙っていた。
浮いた右足を手で捕まえ、そのまま朽木倒しで相手を畳に転ばせる。
「有効!」

「きゃあああ!有効だって!」「宮崎先輩すごーい!」
「でかした茂!みたか好恵!」「うん!」
ポイントを先行した茂に盛り上がる応援席。この有効は大事にしていきたいところ。
(大事にいくさ、無理はしない。しかし、チャンスがありゃいくぜ!)

試合再開。茂は慎重に試合を進める。
(どうせこいつは正面から組んでこない。どちらか横へ飛ぶはずや)
ポイントリードした相手の心理を読む能勢。茂の目の動きから次の攻撃を察知する。
(右……いや…下、小内刈りかっ!)
その読みどおりに小内刈りを仕掛けてしまう茂。
刈り足をかわされ、体勢が大きく崩れたところを能勢の体落しが炸裂する。

「一本!」

495 :2/2(代理) :2008/11/29(土) 20:57:06 ID:???
これぞ全国大会。どこの学校でも一流ばかり。
茂が敗れて一勝を先行された浜高。こうなると仲安ではやはり厳しい展開にならざるをえない。

自陣に戻った能勢は浜高サイドをみつめる。
(すげえスピードやったな、あいつ。軽量級で団体戦にでてくるだけあるわ。さすが全国大会やな)
実は全国の重みを味わったのは向こうも同じだったのである。

○次鋒戦 兵庫 教英・明石VS静岡 浜名湖・杉

一勝を取り返そうと焦る杉。何しろこの試合、副将には斉藤ではなく仲安が入っている。
一年生で経験も実力も不足している仲安ではまず勝てない。
だが、杉は積極的に攻めたもののあと一歩決め手を欠き、引き分けに終わる。

○中堅戦 兵庫 教英・多田VS静岡 浜名湖・三溝

中堅戦は三溝125キロ、多田130キロの重量級同士の対決となった。
なんとしても一本勝ちをと、大技の一発を狙う三溝と、それを相手が返し技を狙うという展開。
2分過ぎ、三溝が内股にいこうとしたところを返され有効をとられてしまったが、
逆に終了間際、大内刈りで有効を取り返し――そのまま時間切れとなり、引き分け。
これにより1‐0のまま、あと二人というところまできてしまった!

「いっこ負けててあと二人ってコトは…」「あといっこ負けたらハイそれまでよ」
「次は副将、仲安くん……」「ああああ」

これはチャンスだと仲安に告げる巧。
これで仲安が勝てば地元の英雄、新聞に載ったりTVにでたり……と仲安をたきつけるが、
はっきりいってそれ以前の問題である。

「いけえ川西!」「おまえでキメたれっ!」
(よりによって強そうな野郎がっ……!)
足の震えが止まらない仲安。それでも「始めっ!」の号令と共に走り出した。

496 :マロン名無しさん :2008/11/29(土) 21:46:56 ID:???
これは展開的にチャーリーが勝つのか?

497 :1/2(代理) :2008/11/30(日) 20:56:48 ID:???
第160話 アトがない!

○副将戦 兵庫 教英・川西VS静岡 浜名湖・仲安

この試合に仲安が負ければ、その時点で浜高の負けが決定してしまう。
仲安の父兄が来ていないと知った杉の両親は、自ら音頭をとって仲安を応援する。
「おやさしいご両親ね。うらやましいな」
「お人よし過ぎて困っちゃいます」
保奈美の賞賛を謙遜する薫だが、
(じゃ、だれの遺伝なんだ?コイツの性格の悪さは……)
桜子の疑問ももっともだった。

ただ一つ望みがあるとすれば、この試合に仲安が引き分けてくれること。
そして巧が一本勝ちしてタイにする。
しかし川西と組み合った仲安ははっきりと力量差を自覚してしまう。
隙を見て離れるべきと考え、奥襟をつかむ川西の吊り手を外そうとするが、
逆にその隙を相手につかれてしまう。
「うおいっ!」
川西の内股。何とか膝をついてこらえるものの、
「さあっ!」川西はそのまま体ごとのしかかって仲安を潰す。
「有効!まて!」

(だ、だめだ、やっぱり…勝てっこねえよ、オレじゃあ……)
ポイントを先行され、弱気になる仲安。そこで巧の声が飛ぶ。
「さがるなっ!いけっ仲安!」
その声に仲安は奮起する。
(そうだっ!オレには杉先輩にも通用した背負いがある!)

左の一本背負いにいく仲安だったが(フン、まだまだよっ!)
川西は投げに入ろうとした仲安の股そばをつかんでひっくり返す。
「すくい投げ!」(ダメだ!背負いも返えされるかっ!)
どうにか決定的なポイントは逃れたものの、そのとき、弾みで川西の膝が仲安の顔面に――!

498 :2/2(代理) :2008/11/30(日) 20:57:13 ID:???
川西のすくい投げによるポイントは有効。だが、仲安が立ち上がらない。
ようやく身を起こした彼の口の端からは、赤いものが滴っていた。
「血!?口の中を切ったの!?」
桜子の言葉に一瞬、身を震わせる麻理。
川西はこの出血により仲安が動揺すると考え、勝利を確信した。

ところが、なおも果敢に攻め続ける仲安。返されても返されても背負いを仕掛けていく。
「こいっ、おらあっ!」
大幅にポイントリードされているにも関わらず、この負けん気。
あの出血は逆に彼の闘志に火をつけていた。

「なにが“こい”だ!ポイント負けてるくせに!」
激昂した川西は自ら攻めていく。その大内刈りをかわした仲安は大外刈りで逆襲。
「しゃらくせえっ!」
しかし川西もまたこれを大外刈りで返そうとする。
ところがその一瞬、仲安がその足を外した。
刈り足をすかされ、川西の体勢が大きく崩れる。
(い……今だっ!)


「うおおおっ!」


仲安の一本背負いがついに、川西の体を回転させる。
「技あり――っ!」

「技ありだって!すごいっ!」
思わず隣の桜子をつかんで振り回す麻理。

「やったっ、仲安!ポイントリードしたぞっ!」

499 :マロン名無しさん :2008/11/30(日) 21:14:52 ID:???
おやあ、何やらラブ臭がどんどん濃くw

500 :マロン名無しさん :2008/11/30(日) 21:18:04 ID:???
桜子と麻理がか。

501 :マロン名無しさん :2008/11/30(日) 22:35:28 ID:???
>>500
それはちがーーうw

502 :マロン名無しさん :2008/12/01(月) 00:32:42 ID:???
今だ!チャーリー負けないでっ!

503 :マロン名無しさん :2008/12/01(月) 01:42:30 ID:???
地元での戦いだからチャーリーの名前を知ってる人も結構いるんじゃなかろうか…

504 :マロン名無しさん :2008/12/01(月) 20:39:56 ID:???
チャーリー髪黒くされちゃったから、気づかない人も多いだろうね
麻理と一緒にいたら中学での知り合いはわかるかも

505 :1/2(代理) :2008/12/01(月) 20:56:54 ID:???
「本当に……投げれた……」


第161話 薄氷の戦い


「技ありだ技ありだ!ポイント逆転したあ!」
大はしゃぎの麻理の隣で、ぶん回された桜子は目をチカチカさせていた。

残り時間は一分ちょっと。こうなればもう勝つしかない。
川西は大外刈りで再度逆転を狙ってくる。
「あぶなーい!」「ちょっと麻理ちゃ……」
川西の攻撃に倒れる仲安。審判の判定は無情にも「技ありーっ!」。
「バカア!」「ひ〜〜〜〜!」
だんだんと熱のこもってくる麻理は、無意識に桜子をヘッドロックで締め上げる。

残り時間は一分を切り、この時点でまた相手が有効二つ分のリード。
もはや絶望的かと思われたそのとき、審判が手を振ってその判定を訂正。
「有効――っ!」
これによりポイントは川西が有効三つ、仲安が技あり一つ。
有効がいくつあっても技あり一つには勝てないのだ。
(しもたーっ!こんなんやったら、さっき倒した時、速攻で寝技いきゃあよかったで!)
自分の詰めの甘さを後悔する川西。だが、時既に遅し。

「よかった!まだ勝ってる!」
安堵する麻理。そのとき、ようやく桜子の異変に気づく。
「あれ?桜子先輩なにしてんですか?」
「な、なにって……今、あんたに選手生命絶やされるところだったんだよ」

506 :2/2(代理) :2008/12/01(月) 20:57:21 ID:???
残り時間40秒。徹底的に守りに入る仲安。
このまま逃げに逃げても反則はせいぜい「注意」どまり。「警告」までとられなければ形勢は変わらない。
(逃げて逃げて逃げきってやる!マグレでもなんでも、このオレが技ありとれたんだ。絶対守りきるぜ!)

残り時間12秒。だが――川西はこのまま終わらなかった。
「うっ、腕返しっ!」
突然の奇襲攻撃に反応できない仲安。しかし畳に顔面から落ち、判定は無効。
「な、なにしとる!川西!寝技や、まだ間に合う!」
教英監督の声に我に返る川西。そして同時に仲安もまた、顔を伏せたまま反応していた。
寝技に行こうとする川西の首に足を巻きつけてそれを止める。

そしてそのとき、試合終了を告げるブザーが鳴った。
不敵な笑みを浮かべる仲安。「それまで!」

「この流血大王」
勝利をもぎ取り戻ってきた仲安を出迎える巧。これでいよいよ大将決戦である。


○大将戦 兵庫 教英・西宮VS静岡 浜名湖・粉川

スコアは1‐1だが内容はそれぞれ一本勝ちと優勢勝ちでなお教英有利。
引き分けでも勝てるが相手は二階級も下。勝ってキメてこい、と教英監督は西宮を送り出す。

だが、そのとき彼は浜高の余裕に気がつく。(浜名湖高のヤツら……笑ってやがる……)
次の瞬間、彼は思わず立ち上がっていた。
その目の前で豪快に炸裂する巧の一本背負い。
「一本、それまで!」
「しもうた……ヤツが…あの男が敵の最強のポイントゲッターだったんや……」

浜名湖高校予選リーグ一回戦、対兵庫・教英高校2‐1で勝利。
浜高柔道部始まって以来の全国大会一勝目であった。

507 :マロン名無しさん :2008/12/01(月) 21:32:05 ID:???
流血大王か
結構畳で怪我するんだよな

508 :1/3(代理) :2008/12/02(火) 21:00:04 ID:???
第162話 超高校級

予選リーグ、VS兵庫・教英戦、最後は大将・巧が背負いで一本勝ち。浜高はついに全国大会で勝利を収めた。
巧もすごいがやはり仲安が副将戦をとったのが大きい。斉藤の称賛に照れる仲安。
「浜高にも強いコがいたのねえ」「粉川ってゆうコよ」「粉川くーん!」
ミッタンのお姉さんの声に、顔を赤らめて会釈を返す巧。
「かわいいー!幸宏(ミッタン)にいって、今度家に遊びにこさせちゃおう!」
おねーさま方の不穏当な発言に、「ピクッ」と反応する保奈美。

(よかった、勝てて……粉川さん今日も調子いいみたい……)
別所さんの視線もやはり、整列する巧の方へ。
(やっぱりカッコイイな)

「あっ!」
(今、背筋に冷たいモノがはしったような感覚が……?)
身を震わせる保奈美。それは危機に対する乙女の勘というものか。(ああっまたっ!)
「保奈美さん、はい、ジュース」
実は薫が缶ジュースを保奈美の背中に当ててイタズラをしていただけでした。

ともかく、これで今日はもう一戦。熊本との試合を残すのみである。

「おい、マズったぞ、第二代表の浜高、予選リーグ一つ勝ったってさ」
ノーマークの浜高の勝利に焦る地元テレビクルーたち。
だが、第一代表の三工の試合が始まるところだったので、それもしかたがないことだった。
ただ――大将戦の一本勝ちの絵が撮れなかったことは悔しがる。
柔道は実際には寝技や判定で決まる試合が多いため、絵的にどうしても地味になるのだ。
「なんてヤツ?その一本とったのって」「えーと確か……こながわ?って読むのかなァ」
その会話を側で聞いていたのは、三工の大将の位置に座る藤田である。
(粉川(こがわ)だよ、バーカ)

509 :2/3(代理) :2008/12/02(火) 21:00:27 ID:???
三工の試合は副将戦を終えた時点で2‐0。大将戦を残して三工の勝ちが決まった。
後は藤田が最後を締めくくるのみである。
(さて、TV局の人。いい絵がとりたいんだろ?
 だったらこの試合――絶対に目を離さないようにしてるんだな!)

教英との試合を終えた浜高の面々は、石塚たちと合流する。
その目の前では今まさに藤田の試合が始まろうとしていた。
「せやあっ!」
見事な一本勝ちを披露する藤田。それはレンズ越しに見ていたカメラマンさえ戦慄させるものだった。

全国大会でも一本勝ちが取れる藤田を称賛する石塚。巧も含め、こういうのを“超高校級”とでもいうのか。
「“超高校級”!東名大藤沢の窪ノ内のような……」
「うん。あと天味の浜崎とかね」
「千駄谷学園の橘と鳶嶋も強いでしょ」
「うん、特に鳶嶋は軽中量級の優勝候補で“10年に一人の逸材”といわれてるしな」
石塚と平八郎のやりとりに、杉も巧も「へー」と感心するばかり。
「ぜんぜん知らないんじゃない?」「えっ!?」「いやっ、あはははははは」

それに加えて石塚は、もう一人の名前を出す。
「それとやっぱりアレかな、尚北の玉城」
「あっ、それならわかる!知ってる!」
浜高と沖縄湘北は春の選手権の一回戦で対戦したことがあるのだ。
「コイツが春にやって負けてんだよ!」
「そのあとおまえとミッタンも負けて3人抜きされただろっ!」
醜く言い争う茂と巧。
「まっ、オレが引き分けで止めたけどねっ!」
「あの時は玉城がもう疲れきってたんじゃないか」
自画自賛する杉に冷静に突っ込むミッタン。
(要するにみんなケチョンケチョンにやられてんだね…)

510 :3/3(代理) :2008/12/02(火) 21:00:45 ID:???
ウワサをすれば、ちょうど尚北、しかも玉城の試合をやっている最中だった。
技ありから押さえ込みに入る玉城。
(ちっ、なんでえ。予選リーグぐらい一本とってみろっての)
心の中で毒づく巧であったが。
「150キロある秋田八曲農高の山内をおさえこむとは!」「ちなみに玉城は95キロ」
なんと50キロ以上もの体重差のある相手を押さえ込んでいた玉城。
沖縄尚北は3‐1で秋田八曲農高を下した。

超強豪校ともなると予選リーグを5‐0で勝ち残るようなところもあった。
神奈川・東名大藤沢 5‐0 大分・臼山
 奈良・天味    5‐0 島根・出雲大付属
 東京・千駄谷学園 5‐0 高知・土佐丸
今年のインターハイ、大会前の評判では尚北・東名大藤沢・天味・千駄谷学園が4強といわれていた。
しかし、それらの間隙を縫って、上位進出を狙っているチームもあまたいた。
一応、浜高もそう……なんだけど。

会場のフリードリンクにはしゃぐ杉たち。スタッフの女子高生たちに積極的に話しかけていく。
と、そこで巧はばったりと別所さんに出くわした。
試合を見ていたと巧に言う彼女の手には、何かが握られていた。
(今なら他の人がそばにいない…渡さなきゃ)
しかし、タイミング悪く熊本と兵庫の対戦が始まるということで、巧は行ってしまった。

(渡せなかった……お守り……)

熊本代表・東名大二高、兵庫教英に3‐0で勝利。
浜高が苦戦した教英を見事に破ってくれました。
「最初の試合はガラにもなく緊張しちまってて、実力が出せなかっただけよ。
 仲安程度の技がヤツらに通用したんだ。オレらだってやってやれねーことねえぜ」
「同感だな。いっちょ気合いれてやったるか!」
一試合目では良い所がなかった茂・杉・ミッタンの三人。改めて気合を入れなおす。
だが、側で聞いていた仲安は実に微妙な心もちだった。
(ほめられてんだかけなされてんだか……)

511 :マロン名無しさん :2008/12/02(火) 22:00:13 ID:???
別所さん…完全にラヴですな

512 :マロン名無しさん :2008/12/02(火) 22:47:18 ID:???
巧ばかりが、何故モテる・・・

513 :マロン名無しさん :2008/12/02(火) 23:44:11 ID:???
主人公補正というやつか?

514 :マロン名無しさん :2008/12/03(水) 01:08:43 ID:???
すごく強いのに嫌みのないスポーツ馬鹿ってやつですね
それより杉や桜子に相手がいないのが不思議でしょうがないなぁ

515 :マロン名無しさん :2008/12/03(水) 17:44:05 ID:???
最初読んだとき巧の苗字をこなかわと読んだのを思い出した

516 :1/3(代理) :2008/12/03(水) 20:56:54 ID:???
第163話 本領発揮

「この青いのくださーい」「ブルーハワイですね」
会場内の売店でカキ氷を買う麻理。どんな味かといざ口をつけようとしたそのとき、
「こらっ、麻理ちゃん!」横あいから桜子がそのカップを強奪した。
「おなかこわしちゃうじゃん。アンタはしあさって試合あるんだから」
選手として体調管理は当然の義務。ではせっかく買ったこのカキ氷はどうするか。
「必殺カキ氷一気!」「いやーん!」
桜子はスプーンすら使わずに、そのカキ氷を豪快に飲み下すのだった。が……。
「うおお……いてて」
後頭部を抑えて苦悶する桜子。カキ氷一気は危険な副作用があるからやめようっ。

と、麻理は別所さんの姿を見つける。再会を喜び合う二人。
そして顔を合わせるのは初めての保奈美が挨拶をする。
「浜高のマネージャーで近藤といいます。こんにちは」
「こんにちは」と同じく挨拶を返す別所さん。
この時まだ彼女は巧と保奈美の関係を知らない。

「あっ、海老塚さん」別所さんは今度は桜子を見つけるが、
なにやら不思議な踊りを踊る彼女に困惑する。

桜子は別所さんの肩をがしっとつかみ、「ん〜〜〜〜っ!」
「別所ちゃーん、元気だったかね――!?あ――なおったなおった」
高いテンションで話しかけるのであった。「は、はい…」

その頃、Dブロックの試合場では沖縄尚北が勝利し、予選リーグ突破を決めた。
浜高は隣のCブロック。ここを勝ち残れば次はいよいよ彼らとの決戦になる。
「その前に……勝ちのこらなくちゃな」
巧は冷静に言いながら、その拳を無意識に握り締めていた。

517 :2/3(代理) :2008/12/03(水) 20:57:13 ID:???
と、そこでテレビ局が千駄谷学園を取材しているのが目に留まる。
まだ予選リーグだというのに、さすが優勝候補。注目をされているらしい。
その中で、インタビューに答える二人の選手がいた。
「あれが石塚さんがいってた橘と鳶嶋か。
 やっぱし、鳶嶋って小さいな、巧と同じ71キロ以下の軽中量級だし」
斉藤の言葉に「ふ――ん……」と気の無い様子の巧。それよりも目の前の試合が大切なのだ。

試合前に打ち込みをしておこうと練習場を訪れた二人は、そこで杉たちと行き会う。
「バカ、てめえら、どこにいたんだよ」「えっ、尚北の試合見てたんだけど……」
「捜してたんだぞ、おまえらいねーから先にアップすませちまったよっ!」
先に出て行く彼らを見送りつつ、あることに斉藤は気がつく。
「けっこう汗かいてたな…いくら夏場といっても……何本打ち込みしたんだあいつら?」
巧はその彼らの姿に、少し嬉しそうな表情をするのであった。

続いて――いよいよ東名大二高との決勝トーナメント進出をかけた試合が始まる。


○先鋒戦 熊本 東名大二高・杉本VS静岡 浜名湖・宮崎

(……仲安があそこまでやれたんだ!こいつらだってかけはなれた実力もってるわけじゃないって
 仲安が証明しやがった。1コ上の意地だ。今度は絶対 勝つ!)

開始と同時に激しい攻め合いを見せる両者。
(たのむ宮崎、勝ってくれ!決勝リーグにいこうぜ!)
応援にも熱が入る。

足払いで体勢を崩してから茂の奥襟を取る杉本。完全に組手を取られてしまったが――。
(いやっ、今こそチャンスだっ!)

518 :3/3(代理) :2008/12/03(水) 20:57:31 ID:???
「おうっ!」
茂は自ら畳に沈み込み、杉本の腹を蹴り上げる。
「巴!」「うまいっ!」

「くそっ!!」
茂の巴投げをとっさに畳に左手をついてしのぐ杉本。だが、
「逃がさねえっ!」
取っていた右腕を離さず、茂は畳に転がった状態のまま、その右足を杉本の首に絡める。
「おらあっ!」
そのまま体を伸ばし、この形は――逆十字固め!

「ああっ!いけん!ガッチリはいっとる!」「相手は軽かぞ、立ってもちあげえっ!」
熊本サイドから声が飛ぶ。両足で立って相手を持ち上げれば「待て」になるのだ。
「逃がすなっ!がんばれ!」「おおお!!」
だが、杉本はここで力尽き、畳を二度叩いて“まいった”をした。

「一本!それまで!」

「おおしっ!」「おまえはえらいっ!」「これでひとつリードだ!」
盛りあがる浜高サイド。幸先の良いスタートを切った。
「やりい…!」

519 :マロン名無しさん :2008/12/03(水) 21:32:24 ID:???
宮崎が勝っても今ひとつお得感がないな

520 :マロン名無しさん :2008/12/03(水) 22:40:28 ID:???
本来はこの体重で全国でてるから一番お得なんだけどな

521 :マロン名無しさん :2008/12/04(木) 07:05:02 ID:???
一気飲みしないでカキ氷食べたいです

522 :1/3 :2008/12/04(木) 21:07:53 ID:???
第164話 予選リーグ突破

「よしっ!よしよし!よくやった!」
息子の勝利に男泣きの宮崎父。こうなると次鋒の杉も負けるわけにはいかない。

有力校の東名大二が先鋒戦を取られ、関係者に驚きが広がるものの、なお熊本有利の評価は動かない。
浜高はあくまで初出場の無名校。この扱いもむしろ当然なのだ。


○次鋒戦 熊本 東名大二高・秋山VS静岡 浜名湖・杉

開始早々仕掛けてきた秋山の背負いを杉は見事にかわしてみせる。
(こいつは背負いをつかうのか!?だったらかわすのは得意だぜ!
 なんせ背負いだったらもっとうまい巧とさんざん乱取りやってるからな!)

慌てずに敵を崩してから攻めろという監督の指示に、大内刈りを仕掛けていく秋山。
「きたっ!!」
しかし、それは杉の読みどおり。刈り足を逆に出足払いで切り返す。
畳に倒れる秋山。審判の右手が――真横に伸びた。

「ワザ、」「あり!」

その試合に注目をしていたのは尚北の玉城である。
尚北の他のメンバーもやはり周囲と同様、東名大二高が有利と予想をしていた。
「Cブロック?東名大二でキマリだろ」
「あそことは先月も練習試合やったばかりだし、今さら見るところなんて……」
「いや……東名大二、負けそうだ。今、次鋒戦終わって2‐0になった」

技ありを守って杉の優勢勝ち。あと一人勝てば浜高の勝利が決まる。
ついに東名大二高は追い詰められた。

523 :2/3 :2008/12/04(木) 21:09:28 ID:???
○中堅戦 熊本 東名大二高・上田VS静岡 浜名湖・三溝

三溝の仕掛けた内股をこらえる上田。
「悪あがきはみっともないわよ、敵のデブ!」「とっとと倒れなっ!」
(あれがミッタンの姉さんたちとは……)
気弱な弟とは正反対のおねーさま方の迫力にたじたじの桜子である。

三溝は内股の足をかけたままケンケンで上田を追いこんでいき、ついにその体をひっくり返す。
ぶつかりそうになった審判はジャンプ一番、飛び退きつつも「技あり――!」と宣告。
「おお――し!」「もらった――っ!」
「ああ――っ!」「そげな……!」

「ちょっとお審判!なんで今のが一本じゃないのよーっ!」
「ひいきしてんじゃないの!!」
もう止まらないおねーさま方に、桜子は一言もなかった。

浜高が有力校の東名大二に勝ちそう、その大番狂わせがいよいよ現実味を帯び、スタッフの間も騒然となる。
それを側で聞いていた藤田は「フン!」と鼻を鳴らすのであった。

試合は残り10秒。カウントダウンが始まり――そしてついに終了のブザーが鳴り響く。
「ホントにきまっちゃったよ、オイ。三人目でえ!」
「宮崎、杉、三溝で3タテだ!」
大興奮の浜高サイドに対し、肩を落とす東名大二。
(知らんやった、こげん強かチームとは……兵庫ん時とぜんぜん動きが違とるじゃなかか)
相手の実力を見誤った東名大二の監督はそう悔やむのであった。

524 :3/3 :2008/12/04(木) 21:11:19 ID:???
「よーし、オレだってやってやる!前の試合と違って今度はなんもプレッシャーないもんな!!」
意気揚々と出ていく副将・仲安だったが、背負いをあっさり裏投げで返され一本負け。
「プレッシャーがあったほうがいいくらいね、あのコは……」
せっかくいい流れできた試合が台無し。こめかみを押さえる龍子先生だった。

そして大将巧は、3分過ぎに背負いで一本とって快勝!東名大二高戦をしめくくった。

その様子をドキドキしながら見守っていた別所さん。
(すごい、また勝ったあ!)

彼女の様子に二階席の保奈美たちも気付く。
「きっと今の試合、応援してくれれたのね」「へー。ずっと見てたのかなあ?」
そこで桜子、わざわざ地雷を踏みにいく。
「誰かを個人的に応援してたりして。それがまた巧くんだったりして」
そんな彼女の発言に対し、保奈美は氷の微笑を浮かべる。
「そーゆー冗談大キライ」

「浜名湖がオレたちの明日の相手になるとはな……春の大会の再現になっちまうな」
「ホントになあ……」
最後まで試合を見ていた尚北の面々。中でも玉城は奇妙に嬉しそうな表情をみせるのであった。


浜高、インターハイ一日目を勝ち残り、決勝トーナメント進出!
明日の初戦の相手は沖縄代表、尚北高校!

525 :マロン名無しさん :2008/12/04(木) 21:30:26 ID:???
その地雷は本物だぞっー!

526 :マロン名無しさん :2008/12/05(金) 00:55:18 ID:???
なんかミッタンのお姉さんがしっかり応援してくれてるんで安心した。

527 :マロン名無しさん :2008/12/05(金) 11:01:46 ID:???
別所さんと三角関係でどろどろした展開になるのかなワクワク

528 :1/3 :2008/12/05(金) 21:04:09 ID:???
高校総体一日目、予選リーグを浜高は勝ち残ることができた。
二日目は団体戦決勝トーナメントと個人戦の一回戦がある。
「ほらあ、みんなボサッとつったってないで!したくをしたしたあっ!」
「ええっ!?」「な、なぜ!?」
「帰るわよ――っ!」(PM 6:00)
実はその二日目の個人戦のために、軽量が当日あって……。
「寝るのよ――っ!」「寝れるか?……」(PM 9:00)
「おきるのよ――っ!」(AM 3:00)
「だあーっ!」「いくら県内つっても近くに旅館ぐらいとってくれー!」
その計量が朝の6時からだったりするのだ。


第165話 新たな出会い


「71・5。ハイ、ダメ!」
重量オーバーであっさりとはねられてしまった巧。
このままでは軽中量級の試合にエントリーができないので、今から汗をかいて体重を落とすことに。
汗の出やすい夏場であったのが不幸中の幸いではあるが、汗をかきやすいように
長袖ジャージの上に柔道着を羽織った姿はかなり恥ずかしいものがあった。

(これで外走ってたら…重量オーバーしてるヤツってバレバレだな。知ってるヤツには見られたくねー)
「重量オーバーしたみたいだな。そのみっともねえカッコで走ってくるのか?」
いきなり藤田の言葉で出鼻をくじかれてしまった。
そういえば、計量の時に藤田の姿を見なかったのだが――。
「おまえこそなんでこんなトコにいるんだよ。とっとと計量いけよ!」
「いくよ!関係ないだろおまえには!」
というところでトイレから出てくる蜂野。
「あいたぞ藤田。おまえもするんだろ」「あ、ハイ」
「なんだよ、おまえも本当はギリギリなんだろーが!」
「うるさい!念には念をいれるんだよ!」

529 :2/3 :2008/12/05(金) 21:05:24 ID:???
とにかく、巧は汗をかくしか仕方がない。
体育館を出て走り出したところに、それに気づいた人影があった。
「なんだ、他にもいたんだな……よかった、オレだけじゃなくて」

団体戦決勝トーナメントの開始まで、まだ一時間半もある。
やることがなくて落ち着かない杉たち。
まあ、6時からここに用があったのは個人戦に出場する巧と茂だけだったのだから仕方ない。

そこにやってきたのは沖縄尚北。これから打ち込みを始めるようで、杉たちは場所を移ろうとする。
「あっ、まって!動けないの……マリちゃん寝ちゃった……」
「おこしゃいーだろ!」
保奈美の膝枕でおねむの麻理のために逃げそびれた杉たちは、偶然にも尚北の取材の様子を耳にする。

トーナメント二戦目に尚北と千駄谷学園と当たるということで、コメントを求めにきた雑誌記者。
これが実質上の決勝戦となると予想する専門家も多いらしいが――浜高はまるで無視されていた。

「確かに千駄谷は強敵です。橘くんとは春の大会の個人の決勝でもあたりましたし……鳶嶋くんもいる。
 この二人は強力です。どちらかとやんなくちゃならないけど、やるからには必ず勝たないと。
 引き分けたりしたら、尚北が負けてしまいます。大変厳しいトコだと思います」
記者の質問に答える玉城。
「ただ、今日一回戦であたる浜名湖も強敵ですから」
彼の口から出た予想外の学校名に、記者は戸惑う。


「あそこには強力なポイントゲッターがいます」


530 :3/3 :2008/12/05(金) 21:06:42 ID:???
その頃、汗をかくためにひたすら走り続ける巧。
その後ろにぴたりとついてくる人影があった。
いつの間にか二人の呼吸音が重なり、彼は巧の隣に出る。

短く刈られた坊主頭にチームジャージを着た彼は、巧にペコリと会釈をした。
「個人戦、出るひと?」
気さくに声をかけてくる彼は、巧と同じく軽中量級の選手らしい。
つまり彼とは敵同士。こんなところで話などしている場合ではないのだが。

体育館前に戻ってきた巧は、彼のジャージの背中にある文字に気がつく。
(セ……センダ…千駄谷学園!?)
「キミ……千駄谷学園なの?」
巧に問われ、彼はまだ自分が名乗っていなかったことを思い出す。


「そう、千駄谷学園2年。鳶嶋雅隆ってゆうんだ。よろしくな粉川くん!」


その名前は石塚の口から、平八郎の口から、そして玉城の口から、幾度となく出たものだった。
(こいつが……鳶嶋…!)

531 :マロン名無しさん :2008/12/05(金) 21:45:48 ID:???
まあ六時間寝れればいい方だよな

532 :マロン名無しさん :2008/12/06(土) 00:32:19 ID:???
玉城からの巧の評価、やけに高いな。一回しか試合してないのに。
そして同階級のライバル来ました。

533 :マロン名無しさん :2008/12/06(土) 03:30:20 ID:???
一回試合して相手の実力を感じたんだろう

534 :1/3(代理) :2008/12/06(土) 20:57:56 ID:???
第166話 尚北の実力

「まさかベスト16に残るとはな!やるじゃねーか、おまえら!」
たいしたものだと巧たちを激賞する西久保さん。彼が高校の頃は予選リーグ落ちで終わったのである。
それなら自分たちの勝ちだという杉に対し、西久保さんはシャツの中からメダルをポロリ。
「そのかわり個人じゃ3位だったんだよ」このためにわざわざ持ってきたらしい。

ベスト16ならあと4回勝てば優勝。だが、この後の組み合わせはというと、
「一回戦目、沖縄尚北、これに勝っても二回戦目、たぶん千駄谷学園。
 すると、こっちのブロックからは天味がきて……反対側からは東名大藤沢か、三工が有力でしょうね」

東名大藤沢は去年の宮崎インターハイ優勝校。
天味は過去何回も優勝しており、今でもすごく強い。
千駄谷は春の武道館で団体優勝。
沖縄尚北はこの前の浜高が参加しなかった金鷲旗大会で優勝。

一通り聞き終えた西久保の一言。
「まあ、おまえらもよくここまでやった。しかし、こういうことはいい思い出にはなると思うぞ」
「まだ終わってないですよっ!」

一方、個人戦出場組はというと――。
どうにか計量をパスしてきた巧。石塚たち静岡県勢に合流した彼は、歩いてくる鳶嶋に気がつく。
向こうも巧に気づき、気さくに声をかけてきた。
鳶嶋も無事に計量を通ったらしく、互いに健闘を約束しあう。

千駄谷学園の鳶嶋という超有名人と親しげに言葉を交わす巧に、困惑する石塚たち。
「いやあ、性格よさそうなヤツだぜ。いくら全国的に有名つっても、やっぱ同じ高校生なワケだしさあ」
図太いというかニブいというか、平然とそんなことを言う巧に大物の器を感じるのだった。

535 :2/3(代理) :2008/12/06(土) 20:58:23 ID:???
(二日目になってしまった……)
昨日はついに巧に渡すことができなかったお守りを大切に抱える別所さん。
面と向かって渡せる勇気があれば、と悩む彼女であったが、その目の前に浜高の面々がやってくる。

(や、やっぱり恥ずかしい……)
つい身を隠してしまった彼女は、いっそ誰かに頼んでお守りを渡してもらおうと考える。
考えられるのは麻理、桜子、保奈美の三人。
頭の中でシミュレートしてみるが、天真爛漫すぎる麻理は早々に除外。
となると考えられるのは――。

体育館前で打ち込み練習をしていた浜高メンバーに、龍子先生が集合をかける。
「今日の決勝トーナメント、一部メンバーチェンジします。副将・仲安くんを斉藤くんに!」
まさか本当に思い出つくってこいという意味ではないかと訝る斉藤。
だが、これは当然、勝つための布陣である。
「わかりました。全力つくしてやります」
そう返答する斉藤の顔にはやはり隠しきれない喜びの色があった。
「やっぱココは斉藤先輩しかいないっスよ」「悪いな、仲安」「なーにいってんスか!」
「たのむぜ斉藤!」「たよりにするぜオッサン!」
ついに復帰する斉藤を歓迎する仲間たち。
「がんばるよ……でも……いまドサクサにまぎれてオッサンっていったのはダレだーっ!」

その頃、道場では尚北が今度はテレビの取材を受けていた。
インタビュアーが尚北の監督に、玉城の紹介をお願いする。
「チームのキャプテンで、うちのポイントゲッターです。春の個人戦優勝しています。
 まあ、本来は95キロの軽重量級なんですが、ご承知のとおり春は体重無差別でした、
 これに勝って本人、大いに自信をつけました」
続いて彼の得意技の解説。
「得意技は背負いです。体重はありますが、身長はそんなに高くない。
 そこで逆にそれを利用して相手の懐にもぐりこむ技を身につけさせたのです」
それができるのは玉城が太っている割にスピードがあるから。そこが彼が他とは違う点なのだ。

536 :3/3(代理) :2008/12/06(土) 20:58:43 ID:???
そこにやってくる浜高。うまい具合にインタビューの内容から相手の戦力を確かめられることになった。
「先鋒は新城、先鋒の選手は攻撃型がいい。得意は背負いですが、足技も結構うるさい選手です」
(コイツがオレの相手か。オレより一つ上のクラスくらいだな。71キロか)
茂が表情を引き締める。

「次鋒は仲宗根。得意は内股、すくい投げ」
(オレはコイツか。体格がすげえ違うってワケじゃないな)
杉も気合充分、だったが。
「それよりなによりコイツは投げられません。バランスがいいんです。
 どんな強豪とあたっても技あり以上をとられたコトがない。負けない柔道をする男です」
思ってもみない相手の特技を聞き、コケる杉だった。

「中堅、与那嶺。うちで一番体格のいいヤツです。140キロありますからな」
(オレより20キロ重いか……しかし身長じゃ勝ってる。いい勝負だぜ)
ミッタンにも気後れは無い。何しろ彼は身長197センチ。今大会ナンバーワンなのだ。

「副将・当間。得意はまあ、一本背負いですかなあ」
(それだけか?)
斉藤はやけに簡単に終わった副将の解説に、引っ掛かりを覚えるのだった。

尚北の取材が終り、今度は浜高が道場を使える順番になる。
巧の打ち込み相手の仲安は、玉城の紹介が見れなくてよかったのかと尋ねるが、
「そんなもん見なくても、知ってる、よ、っと!」
仲安を投げ飛ばした巧の視線の先には、今まさに道場を出て行こうとする玉城の姿が。
「ヤツの得意は背負いだ。それもめっぽう速い。大外刈りと小外刈りの連絡もあった、足技もかなりキレる」


(忘れるわけがねえ!こっちゃあこの半年、あの試合を思い出すたびにウシャクシャさせられたんだ。
 玉城! 必ずきょうでケリにしてやる)

537 :マロン名無しさん :2008/12/06(土) 21:32:26 ID:???
西久保さん、全国3位ってすげぇな

538 :マロン名無しさん :2008/12/07(日) 03:44:07 ID:???
ミッタンそんなでかかったのか

539 :1/4(代理) :2008/12/07(日) 20:56:51 ID:???
第167話 先鋒勝負

インターハイ二日目、決勝トーナメント。ここまで来るとテレビの中継も入り、断然盛り上がりが違う。
えも、今日がいつもと違うのはやはり、皆が応援に駆けつけてくれたから。
静岡の中央体育館の一角が全部、浜高生で埋め尽くされているのである。
たったの五人から始まった柔道部、ここまでの苦労が報われたというか、感涙にむせぶ保奈美であった。

もうすぐ浜高の出番。別所さんは今度こそ巧にお守りを手渡すべく算段を立てていた。
(浜高がきたら粉川さんだけを呼んで、お守りを渡してひと言、がんばってください。
 ちょっと弱いかな……“コレ私だと思ってください、本当はいつもそばにいて応援したいんです”
 なーんちゃって、バカバカ)
自分の妄想にバンバンと壁を叩く別所さん。(いける!これでいこう!)

そしていよいよ浜高の入場――。
別所さんは急いで駆け寄ろうとするが、その目の前をどこかの柔道部が塞いでしまう。
(ああっ!おニクの壁がっ!)
重量級の肉塊に阻まれて近づけない別所さん。思わず声を上げる。
「まってください!浜高のみなさん!」

つい“浜高のみなさん”と言ってしまった別所さん。ここで巧にだけ用があるというのはどう考えても怪しい。
そしてやはり杉たちの目が何かを期待して輝いていた。
その期待を裏切れない別所さん。巧のために用意していたお守りを“浜高の皆に”差し出す。
歓喜の涙を流してそれを受けとる杉たちとは裏腹に、別所さんはものすごく落ち込んでいた。
彼らが去ってから、溜め息を一つ。

(でも粉川さんは個人戦もでる。明日もくる。負けないもん)

540 :2/4(代理) :2008/12/07(日) 20:57:12 ID:???
試合場では千駄谷学園の橘が一本勝ちし、二回戦への進出をきめる。
次はいよいよ浜高の出番。と、斉藤は試合場に見たことのある顔があることに気付く。
「ロス五輪金メダルの山下だ!」
その向こうには斉藤(浜高の斉藤にあらず)。日本柔道のビッグ2が観に来ていたのだ。
今は二人とも監督なので、スカウトに来ているのかもしれない。
(なるほど、鳶嶋もスカウト対象か)

先ほどまで千駄谷の試合を撮っていたカメラマンの動きがあわただしくなる。それもそのはず、
『春の選手権では並いる重量級をたおし、個人優勝。そして先の金鷲旗では団体の優勝に導いた立役者!
 スーパー高校生玉城率いる沖縄尚北高校の登場です』
全国の大学関係者のスカウトの目が光る。

それに対するのは浜高。
そこで――一瞬、場内アナウンスが聞き取れなくなるほどの大声援があがる。
「学校のみんなだ」「とうとうオレたちにも大応援団がついたぜ」

『さあ、この大声援にのって――強豪沖縄尚北に一泡吹かせることができるか、浜名湖高校!』
『それをはねかえし、優勝にむかってつきすすむ足がかりを固めるか、沖縄尚北!』

そしてついに、先鋒戦が始まる。「互いに礼!はじめ!」


○先鋒戦 沖縄 尚北・新城VS静岡 浜名湖・宮崎

組手争いの駆け引きなど無しに、強引に取ってくる尚北・新城。早々に背負いを仕掛けてくる。
しかし茂はそれをかわし、即座に逆襲の巴投げ。その判定は――。

「技あり!」

541 :3/4(代理) :2008/12/07(日) 20:57:29 ID:???
『技ありです!浜名湖高、先鋒宮崎、見事な巴投げで技あり先取!
 優勝候補の一角、沖縄尚北。初戦、先鋒戦からいきなりピンチです!』
これが別所さんのお守りパワーか、茂はいきなり大幅なリードを奪う。
技ありを先行された新城は、それを取り返すべく果敢な攻め。再び組手を取り、茂をコーナーへ追い詰める。
軽い足技からまたも背負い。茂はそれをこらえ、今度はすくい投げで切り返す。「有効!」
「なに、どうしちゃったのアイツ?アナボリックステロイドでも注射したんじゃないの?」
「危険な冗談はやめて桜子!」

これは尚北にとって予想外の苦しい展開――のはずなのだが、それを眺めている玉城たちは涼しい表情をしていた。

後に玉城が控えている以上、何としても前半戦で勝ち星を稼いでおきたいところ。
茂は新城の三度目の背負いもこらえる。が、
「今度は寝技で攻めるってか!」
これも茂は何とかしのぎきる。残り一分。新城もあれだけ強引に攻めているのだから相当に疲れているはず。

ところが、新城はこの終盤まで途切れることなく攻め続けながら、なおもその勢いを落とさなかった。
(コ、コイツ、つかれを知らねーバカか!?)
またも背負い。茂はこれをかわそうとするが、新城はそこでさらに脚を伸ばして茂を追い込む。
「そいやあーっ!」
茂は奇麗に一回転し、畳に叩き付けられた。
玉城が首を掻っ切るジェスチャー。「じ、えーんど」

「一本!」

(ヤツらやっぱり優勝候補だぜ。ヤツらに勝てるとしたらキセキでも起こすしかねえ!
 この試合にオレは、別所さんの愛のキセキがおきるのを信じるっ!)
別所さんから渡されたお守りをその胸に抱く杉。その様子を見せつけられてしまった当の別所さん、絶望。

(なっ!なに考えてんの!?)

542 :4/4(代理) :2008/12/07(日) 20:57:51 ID:???
(そ、それは本来、巧さんのために買ってきたお守りなのに。人にあげたお守りって、なんか自分のコトみたいでヤダ)
やきもきする別所さんだったが、もはやそこに手は届かない。

「ったく、味方のピンチだってのに、なにモタモタしてんの。やっぱり杉には期待できないね」
「で、でも杉くんだって……ほら、熊本戦の時も勝ったじゃない」
何か杉にはきつい桜子。保奈美があわててフォローする。

杉の相手の仲宗根は非常に投げれにくく、技あり以上はほとんど取られたことがないという。
そんな強敵を相手にどう戦うべきか、勝機の見えてこない杉だったが――、
(いかん!迷いはすてろ!気持ちだけはポジチブにもっていかなくては!)
首を振り、新たに気合を入れる。

(なにしろ今のこのオレの体には、別所さんの愛のエネルギーがあふれまくってんだ!)

(コイツ……なんか変だぞ)
杉の妙な振る舞いに対戦相手の仲宗根、ドン引き。
それはともかく、次鋒戦が始まるのであった。

543 :マロン名無しさん :2008/12/07(日) 21:04:20 ID:???
杉キメエw

544 :マロン名無しさん :2008/12/07(日) 21:07:56 ID:???
> 別所さんの愛のキセキがおきるのを信じるっ!
頼むからシリアスな顔でギャグかますのはやめてくれwwwww

545 :マロン名無しさん :2008/12/07(日) 21:26:45 ID:???
杉が勝とうと負けようと、どうでもよくなってきたw

546 :マロン名無しさん :2008/12/07(日) 22:42:30 ID:???
むしろ負けていい気がしてきたw

547 :マロン名無しさん :2008/12/07(日) 23:03:12 ID:???
負けたらどうなるんだ?

548 :マロン名無しさん :2008/12/08(月) 00:27:36 ID:???
何か別所さんキャラ違うな。
こんな積極的なんか。言わないだけで結構色々思うことはあるみたいだしw

549 :マロン名無しさん :2008/12/08(月) 02:21:21 ID:???
杉キモイからまけろw

550 :1/2(代理) :2008/12/08(月) 20:59:50 ID:???
第168話 スキを突く

○次鋒戦 沖縄 尚北・仲宗根VS静岡 浜名湖・杉

「なにがなんでも勝つ!オレたちには勝利を祈ってお守りをくれた女神がいる!きさまらにはいまい!」
別所さんの愛を胸に、果敢に攻めていく杉。
内股を仕掛けるが、そこは受けの強さに定評のある仲宗根。あっさりと切り返され、有効を奪われてしまう。

(有効ひとつ。もらったな…)玉城は既に余裕の表情。
仲宗根を投げれる人間はそんじょそこらにはいない。彼の受けの強さは半端ではない。
何しろ彼は公式戦において、かれこれ一年以上も技あり以上のポイントを取られたことがないほどなのだ。
たかが有効一つ、しかしそれは杉を窮地に立たせるに充分なものだった。

「兄さんなぜかもう敗けそうなんだって!」「なにい!?まだ始まって間もないのにかっ!?」
「ええっ?そうなのあなた?」「よくわからんがそうらしいっ!」
柔道のことなどてんで詳しくない杉一家は、実況の内容に困惑していた。

攻めて攻めて攻めまくる杉。だが、そのことごとくをかわされてしまう。
再びの内股もすかされ、杉は畳に崩される。しかしポイントは無し。
さらに立ち上がり際を狙って足を取りに行く。
「倒れろっ!いーかげんにっ!」
だが、その朽木倒しさえ不発に終わる。

闘志においては尚北にも負けていない杉であったが、攻め続けた結果、体力の消耗も激しい。
(さすがにバテてきたぜ)
と、そこで彼の目に飛び込んできたのは試合を見つめる愛の女神、別所さんの姿。
(ぜ、ぜんぜんっ!平気でっすっ!)
その瞬間、杉はあっさりと体力を回復し、立ち上がるのだった。

551 :2/2(代理) :2008/12/08(月) 21:00:09 ID:???
今日の杉は気迫が違う。だが、技をかけても相手に通じなければ勝てはしない。
しかし西久保さんが冷静に言う。
「確かに杉が普通に技かけたんじゃ、今の敵には通用せんな。もともと格の違う相手なのかも知れん。
 しかし、なにもしねえより技をガンガンかけてったほうが、勝負のアヤってもんが微妙に変わってくるもんだぜ」

(たまにゃこっちからも技かけさせろっ!)「くる!」
投げを仕掛けてくる仲宗根に対し、杉はその出かかりで足を出して潰した。
(杉……なにか考えがあるなっ!)
信頼のまなざしを向ける巧。そして、杉の戦いぶりを見ていた茂は己を恥じていた。
(情けねえ!オレも最後まで杉のように気迫を持続できていたら勝てたかも知れないのに!)

そこで審判の「待て」がかかった。主審と副審二人が中央に集まって何やら討議。そして――。
『こ、これは……教育的指導ですか!?』
仲宗根に「教育的指導」が与えられた。
普通は30秒以上技をかけないと教育的指導を取られてしまう。
が、この場合、仲宗根に相手より先に攻めていく技がなかったため、消極的ととられたのである。

「教育的指導」では「有効」にぜんぜん並ばない。
しかし、これ以上技をかけなければ本物の「指導」、そして「注意」。そうなると敵も焦るかもしれない。

(ちいっ!ヤローの方こそかけ逃げくせえ技が多かったじゃねーか!)
試合再開、そこで、(後へ引いた!チャンス!)
杉の見せた不用意な隙に、大外刈りを仕掛けていく仲宗根。
しかしその瞬間、杉は体を開いて受け止め――小外刈りで彼の足を刈る!


「うおおおっ!!」


仲宗根の体が畳に落ち、審判の手が横へと伸びる。「技ありっ!」
『技ありです!浜名湖・杉、技あり以上を絶対とられない男、尚北の仲宗根から技ありをうばいました!
 ポイントの上でも逆転して優位に立ちました!ジンクスは破れたあ――!』

552 :業務連絡(代理) :2008/12/08(月) 21:00:31 ID:???
次回は一回休載して、単行本17巻のおまけを紹介します。

553 :マロン名無しさん :2008/12/08(月) 21:50:58 ID:???
西久保さんのおかげだな

554 :マロン名無しさん :2008/12/08(月) 21:59:35 ID:???
西久保さんなんかしたっけ?
…と思ったらこの返し技っていつだったか教えてもらったあれか。


555 :マロン名無しさん :2008/12/08(月) 22:03:25 ID:???
別所さんのおかげだろ

556 :マロン名無しさん :2008/12/09(火) 01:03:13 ID:???
杉のこわれっぷりがおもしろいw

557 :1/2(代理) :2008/12/09(火) 20:57:19 ID:???
○単行本第17巻 (表紙:仲安昌邦 裏表紙:石野雪久 来留間麻理)

・四コマその1 〔実写版 帯をギュッとね〕

1.藤田恵・河合克敏「逃げずにきたことをほめてやるよ、粉川!」
  粉川巧・佐藤唯史(元チーフアシスタント)「おまえこそな、藤田!」

2.藤「粉川……おまえ……」

3.藤「太ったな」
  巧「くっ!そういうおまえだって…」

4.巧「原作にはないハゲが……」
  藤「ほっとけ!!」

・四コマその2 

1.今回「絵筆」の特別審査員としてご近所のマンガ家、上條敦士先生に審査をお願いした。
  上「よっ、河合くん」

2.※カラオケBOX店内
  上「う――ん……どれがいいかねえ……?」
  河「17のAの10番っスかね」

3.河「あなたァァにィ〜〜」(熱唱中)

4.上「……結局決まらなかったね」
  河「…………」

558 :2/2(代理) :2008/12/09(火) 20:57:36 ID:???
○上條敦士先生を特別審査員におむかえしての 第17回サンデーコミックス名物『絵筆をもってね!』

★応募総数2472点。でもページの都合上、1472通より23点を厳選。
残りは次回にまわし、第18回は現時点で締め切ります。ゆるして!

 グランプリ :京都府・百村あまる〔巧・保奈美・他〕
        ★河合「昔、切り絵でこういうのを見かけましたよね、教科書のさし絵とか…」
        ●上條「赤ちゃんもユメを見るのかしら?」

 準グランプリ:神奈川県・ABLF〔保奈美・他(帯ギュ進化論)〕
        1.[最初]保「保奈美です」「おー」
        2.「君に投票するよ」モテモテ
        3.[最近]保「?」ピュー
        4.袴「バブル景気は去ったようね」保「はかまださん…」
        ★河合「どそっくり」
        ●上條「オレは、社長秘書・令子がスキだな」

    上條賞:静岡県・鈴木真知子〔袴田(はかまだ‐愛‐)〕
        ●上條「Tシャツにしたいね、コレ。大中とかで…」
        ★河合「真知子さんには、上條先生が色紙をおくってくれるそうです。
            いやでもムリヤリおくりつけますから…」

 topix:神奈川県・少女a〔桜子(土俵際の魔術師 海老塚桜子 ココニ有リ)〕
     東京都・ウルダンディー〔巧・鳶嶋(重量オーバーな2人)〕
     大分県・YAMAGA!〔巧(筋をギュッとね!)〕

559 :1/2(代理) :2008/12/10(水) 20:57:12 ID:???
第169話 殊勲の一勝

技あり以上をとられたことのない男、尚北の仲宗根から杉が技ありを奪ったことで場内騒然。
別所さんもそれに驚く。ちなみに彼女、実は杉と三溝と斉藤の名前は知らない。

(つい二か月前に西久保のオッサンから教えてもらった技だ。今日ばかりは礼をいわなくちゃならないぜ)
(よくぞこの大舞台でキメてみせてくれた。日頃のおまえの地道な努力が実を結んだんだ)
杉と西久保、声に出さずとも心の中で師弟の絆はつながっていた。

今の技の名を杉の祖父が保奈美に尋ねるが、彼女には始めてみる技だった。
同じクラブの人間も知らない技ということで、薫はそれを杉が隠れて編み出したオリジナル技と勘違いする。
「兄さん独自の必殺技!そう、とりあえず“杉スペシャル”とでも名づけましょう!」
ところが麻理が真実を話す。
「杉先輩の今の技ですか?アレは小外刈りのちょっと変型で、西久保さんという人が杉先輩に教えてくださったんです」
恥をかかされた薫は心の中で毒づくのであった。
(知ってたんなら、もっと早くいわんかい!このカマボコ口!)

試合では、追う立場になった仲宗根が果敢に攻めていく。
彼の仕掛けた内股が杉を倒し、判定は「有効」。これではまだ逆転にはならない。
にもかかわらず、玉城はなお余裕を持って試合を観戦するのであった。
(受けの強さが光る仲宗根だが、技だって相当キレるんだぜ。少なくともおまえらよりはな)

残り一分半。両者の気迫がぶつかり合う。
(こんなヤツのまぐれの一発で負けになってたまるか!ブン投げるっ!)
(だ――っ!正直いってこわいっ!)
ここで奥襟を取られたらアウト。杉は徹底的に守りを固めようとするが、
(往生際が悪いぜ!)ついに仲宗根に捕まってしまう。

560 :2/2(代理) :2008/12/10(水) 20:58:00 ID:???
完全に仲宗根の組手。前半で体力を消耗しすぎた杉は、既に息があがってきている。
奥襟を持たれている手を引き離す力も残っていないかもしれない。
「なにやってんの、このままじゃあぶないってさ――っ!組手を切って組手を切って――!」
焦りを含んだ桜子の声が飛ぶ。

(ヤツが技を仕掛ける寸前に最後の力をふりしぼって……たぶんまた内股か……)
残り少ない体力を一点に集中するため、頭をフル回転させ仲宗根の手を読もうとする杉。
(しまった!大外刈り!)
杉はとっさに左脚を引いて仲宗根の大外を受け止めようと構える。
だが、その瞬間に仲宗根の体勢が変化した。
(大外はフェイント!実は内股だ!)

「やっぱり!」
しかしそれは杉の読みの範疇だった。
「そうかっ!」
杉は奥襟をつかむ仲宗根の左腕から頭を抜き、その手を切る。
そのまま彼の背後を取り、裏投げで返す!

「技あり!」

思わず立ち上がる浜高メンバー。

「あわせて一本!それまで!」
『浜名湖・杉、一本勝ちです。ふたつめの技ありをとってあわせて一本勝ち!
 仲宗根の内股を見事に返して技ありをもぎ取りましたっ!
 浜名湖高校、優勝候補の沖縄尚北から一勝をかえし、スコアをタイにしました!』

561 :マロン名無しさん :2008/12/10(水) 22:05:30 ID:???
杉、やれば出来るんだな、お前
これでこれまでの鬱憤をまとめて返したんじゃないか?


あれ、てことはこれで杉君の確変は終了ってコト?

562 :マロン名無しさん :2008/12/10(水) 22:30:24 ID:???
>>561
うむ、これで終わり。奮戦の代償としてアキレス腱が切れ背骨が折れたズラ。

563 :マロン名無しさん :2008/12/11(木) 00:19:15 ID:???
杉スペシャルすげーw


564 :マロン名無しさん :2008/12/11(木) 01:54:55 ID:???
杉は個人戦では藤田と同階級のせいで全く活躍シーンがなかったからここで挽回だな

565 :マロン名無しさん :2008/12/11(木) 16:17:49 ID:???
こんなに杉が活躍した回はない。よかったよかった


566 :マロン名無しさん :2008/12/11(木) 16:31:33 ID:???
これは杉の命が散るフラグだな

567 :1/2(代理) :2008/12/11(木) 20:56:20 ID:???
第170話 アクシデント

優勝候補の沖縄尚北から一勝をかえしたことで大盛り上がりに沸き立つ会場。
賞賛の声の中、桜子が立ち上がり――、
「ナイス裏投げ!すごいぞ――っ!!」
二階席から手を振った。
その姿は試合場の杉からも見えた。「へっ!」

続いてはミッタンの出番。戻ってきた杉に対し、巧が「別所さんにいいとこ見せられたな」というが、
「えっ?ああ、まァな」
それはもう杉にとってはどうでもよいことになっていた。


○中堅戦 沖縄 尚北・与那嶺VS静岡 浜名湖・三溝

今大会ナンバーワンの長身、三溝に対し、尚北の与那嶺も体格では負けていない。
身長では10センチ低いものの、体重では15キロも勝る140キロ。大型選手同士の対戦となった。

地元代表の浜高に対する応援の声が高まる中、先手を取って仕掛けたのは三溝。
超重量級の与那嶺を内股で浮かせるものの、腹ばいになってポイントは無し。
不発にこそ終わったものの、場内はすごい歓声。三溝も手ごたえを感じていた。
(いける!いくら尚北とはいえ、バケモノみたいに強いのは玉城だけ。
 他のヤツらは勝てない相手じゃない!もう春の大会の時のオレたちじゃないぜ!)
「こい、おらあ!」

リーチの長さで勝る三溝に対し、与那嶺は自分の組手に入れない。
優勝候補・尚北の選手を相手に三溝は明らかに押していた。
「幸宏――!負けんじゃないよ――!」「投げちゃえ投げちゃえ!」「大股刈りよ――!」
ヒートアップするおねーさま方の応援。ちなみに、そんな技はありません。

568 :2/2(代理) :2008/12/11(木) 20:56:41 ID:???
そしてついに大きく試合が動く。
三溝の腕をかいくぐり、与那嶺が懐に飛び込んでくる。
「小内かっ!」
三溝はそれに反応するも、足元がぐらつく。そこで与那嶺がさらに大内刈りに変化する!
畳に左手をついてこらえようとする三溝。
ところがその時、赤畳の縁に小指の先がひっかかる。
「!」
判定は「技あり」。そこで「待て」がかかるが――三溝が手を押さえて立ち上がれない。

(つう――、つき指ににちゃ痛すぎるっ!どうなったんだ?)
怪我の具合を確認しようとする三溝の目に飛び込んできたのは――、
曲がってはいけない方向に曲がってしまっている自分の左手の小指。
(ど、どうりで痛いわけだぜ!指の脱臼!?)

怪我をして治療をしたら、その時点で失格負けになってしまう。しかし、このまま試合を始めるのももちろん不可能。
(今だって鳴きたいほど痛いの必死でガマンしてんのに……これでなにか触れでもしたら地獄の激痛が……)
どうすれば良いのか分からず、手を震わせる三溝。その時、対戦相手の与那嶺の顔が目に入った。
(勝ったな!)このアクシデントにより自身の勝利を確信した与那嶺。
彼のその口元には余裕の笑みが浮かんでいた。


(この野郎!今のきさまのツラで覚悟ができた!)


「んぐっ……!」
三溝は自分で脱臼した指を引っぱる。
なんと彼は自力で脱臼した指を元の位置にはめ込んでしまったのだ。
立ち上がり、与那嶺と対峙する三溝。試合再開である。

(ふん、ただのつき指じゃねえんだろうが!やられるために立ちあがってきたようなもんだ!)
「こいっ!」

569 :マロン名無しさん :2008/12/11(木) 20:59:53 ID:???
ぎやああああいたそう

570 :マロン名無しさん :2008/12/11(木) 21:37:31 ID:???
杉がラブコメ

ミッタンいたいいたいいたいいたいいたいいいいいいい

571 :マロン名無しさん :2008/12/11(木) 21:56:15 ID:???
指の脱臼したことあるのでよくわかります。

572 :マロン名無しさん :2008/12/11(木) 23:05:50 ID:???
杉はやっぱり桜子狙いだったか。
ここまではっきりした描写は初めてだな。

573 :マロン名無しさん :2008/12/11(木) 23:38:11 ID:???
>>572
今回のってそういう描写なのか?
それなら三工相手に一勝一分した時のほうがよっぽど…

574 :マロン名無しさん :2008/12/11(木) 23:40:08 ID:???
来週はスリーお姉さんズの
「幸宏、負けないで」でミッタン覚醒だな
これで勝つる

575 :1/4(代理) :2008/12/12(金) 20:56:33 ID:???
審判規定第43条 試合中に負傷、発病、また事故のため試合を継続することができない場合。
(1)ケガしたほうに責任のある場合は、ケガしたほうの負け。
(2)ケガをさせたほうに責任のある場合は、させたほうの負け。(危険なワザをしたりして)
(3)どちらの責任でもない時、偶然にケガしてしまった時も、ケガしたほうが負け。
とあって――この時、ケガしたほうがやれるといっても無理と言われたらもう負けで、
試合を続行するためケガを手当てするのも、ちょっとだけしか認められていない。
手当てしていいのは鼻血や爪の関係。
問題なのは、新たにケガをしたところに薬品を塗ったり、包帯、テーピング、サポーターなどをしてはいけないということ。
コールドスプレーを吹き付けて失格になった例もある。
「だけど、前に巧が保奈美に薬ぬってもらうシーンありましたね」
河「すまなんだああ!」※ちなみにこれは平成元年5月1日付で改正になったルール。


第171話 乾坤一擲!!


尚北対浜名湖、1‐1のイーブンで迎えた中堅戦、与那嶺が早くも技ありを奪ってリード。
巻き返しをはかりたい三溝は攻めていくしかないのだが――。
(くっ、指をもとにもどしてもまだ痛みがひかん!それでも組まなくては勝てん)
脱臼した指を無理矢理に治したものの、その部位は変色し、痛みが間断なく三溝を襲うのであった。

それでも組手をとりにいく三溝。
(ぐっ……握っただけでもこんなに痛いのかっ!でもなんとか引き手をとれた!)
しかし与那嶺は振り払うように、軽々とその引き手を切ってしまう。
逆に襟をつかもうとしてくる与那嶺。伸ばしてくるその手を防ごうとして、ケガをしている位置に当たる。
「ぐあっ!」
その激痛に思わず大きな隙ができる。与那嶺はそれを見逃さず、三溝を刈り倒して「有効」を取る。

苦痛に呻く三溝。しかし与那嶺は情けをかけようなどとはしない。
(そんな手でやろうとするからだぜ。オレはエリをとりにいこうとしただけだかんな。自業自得だ、あまいんだよ)

576 :2/4(代理) :2008/12/12(金) 20:56:58 ID:???
「いかん!やっぱりさっきのケガだ!」
二階席から観ていた西久保が三溝の変調に気づき、手当てのために下へと急ぐ。
「はっ!わたしマネージャーなんだ!」保奈美も救急箱を手にその後を追う。

左手をまともに使えない三溝。ついに「教育的指導」がつく。
技をほとんど出せないのだからそれは仕方がないのだが――、
状況を知らない応援席からは、その消極的な姿勢についにブーイングが起こる。
「何やってんだ――っ!」「技かけなきゃ勝てねーぞおー!」
そのあまりにも心無い声に桜子が反論しようとするが、そのとき――三人の姉たちが立ち上がった。


「何やってんだじゃねえだろっ!ウチの弟はあれでも一生懸命やってんだよ!」


そのあまりの迫力に、応援席は静まり返るのであった。「飛天菩薩みたーい」
そして父の応援の声が響く。
「幸宏がんばれっ!最後までがんばれ!」

三溝はなお諦めてはいなかった。片手でも勝つ方法を、なんとかする方法を考えていたのだ。
与那嶺の小外刈りを内股で返そうとする三溝。しかし与那嶺はこれを難なくしのぐ。
(くそっ、片手の内股じゃやっぱり逃げられる……)

すごいケガにも関わらず、絶対に諦めない三溝の姿勢に、観戦していた別所さんもいつしか引き込まれていく。
(がんばれ!がんばれがんばれ!)

「がんばれ――っ!浜高――!」

577 :3/4(代理) :2008/12/12(金) 20:57:15 ID:???
その頃、西久保と保奈美は治療の準備に奔走していた。
「おい、マネージャー、バケツあったか?」「ありましたあっ!」
「よーし、次はァ!ちょっと氷もらうぜ!」「ケガ人なんです、すみません!」

しぶとく粘り続ける三溝に業を煮やした与那嶺は、強引に攻めにかかる。
と、ここで三溝のスタミナが切れたのか、頭が下がり始める。
与那嶺に有利な組手――そのとき、三溝の右手が与那嶺の腰の位置をつかんでいた。
「あっ!」「むっ!」巧と、そして玉城だけがそのわずかな変化に気づく。

与那嶺が止めを刺しにいこうとしたその瞬間、三溝がその懐に飛び込む!
「ああっ!」「これは…!」「大腰かっ!」
「与那嶺えっ!」玉城が立ち上がって叫ぶ。

三溝の起死回生の大腰、しかし片手ではやはりかかりが浅い。
逃れようとする与那嶺であったが――「こ、こいつっ!」
逃がさない。三溝は足を運んで追い込んでいく。
そして最後の最後、痛みを振り払い、左手で引き手を取る。


(もってくれよ、左手!)


「おおっ!」「かついだーっ!!」
宙に浮く与那嶺の巨体。それをそのまま畳の上に叩きつけた!

「一本!それまで!」

578 :4/4(代理) :2008/12/12(金) 20:57:30 ID:???
西久保と保奈美が試合場に飛び込んできたと同時に上がる大歓声。
「な?なんだ!?」
今まさに試合が終わった瞬間だった。勝ったのか、それとも負けたのか。

保奈美が別所さんの姿を見つけ、どうなったのか問う。
「勝ったんですよ!大腰で一本勝ち!大逆転です!」

「勝ったのね勝ったのね幸宏が!」「よかったあ〜〜っ!」
姉たちの目に、そして父親の目にも涙が浮かぶ。

中堅戦が終り、優勝候補・尚北が無名の初出場高を相手に一勝先行されるという緊急事態。
「すまねえ、こんなヤツらに……!」「当間、たのむぞ!」
「わかってる」
尚北高副将・当間に対するは浜高副将・斉藤である。

『さあ、このまま勢いにのって強豪・尚北を相手に大番狂わせをおこすのか、地元・浜名湖高校。
 それとも地力を見せて反撃するか尚北、次は副将戦です!』

579 :マロン名無しさん :2008/12/12(金) 21:14:47 ID:???
ミッタンかっけえ。
つか県大会あたりからミッタンずっと勝ちっぱなしのような気が・・・

580 :マロン名無しさん :2008/12/12(金) 22:25:24 ID:???
まあでかいからな。

581 :マロン名無しさん :2008/12/12(金) 22:26:14 ID:???
ミッタンほんと強くなったよな。精神的にも昔の気弱とはぜんぜん違う。
キャラの扱い的にも、杉・宮崎との三バカから抜け出したかんじだし。

582 :マロン名無しさん :2008/12/12(金) 22:32:03 ID:???
リーサルウエポムだからな

583 :マロン名無しさん :2008/12/12(金) 22:44:15 ID:???
体格いい奴が技術と精神を積み重ねると、普通の奴が同じだけ重ねるのより強くなるからなあ…マジで。

584 :1/2(代理) :2008/12/13(土) 20:56:12 ID:???
第172話 副将戦互角!

○副将戦 沖縄 尚北・当間VS静岡 浜名湖・斉藤

浜高の一勝リードにより大波乱の様相を呈する決勝トーナメント一回戦。
しかし、まずはミッタンの負傷の治療が先。保奈美はそこで別所さんも近くで見ないかと誘うのだった。

指の脱臼というケガを押して無理に戦っていたミッタンを西久保ははたく。
「……バッカ野郎!無茶しやがって……」
とはいえ、それは決して怒っているような様子ではなかった。

とにかく今は冷やすしかない。先ほど用意した氷水入りのバケツにミッタンの左手をつける。
「大丈夫?」「ああ、これなら痛みもかなりおさまるよ」
(結構ひどいケガかもしれないとはおもってたけど、脱臼だったなんて……しかも、そんなんで勝ったなんて……)
取り乱すことも無いミッタンの様子に、別所さんは言葉も無かった。

応援席からはものすごい声援。
なにしろ勝利に王手をかけているのは浜高、後一人で強豪・尚北を破れるのである。


副将戦は高度な技術戦となった。
当間の内股をこらえた斉藤は、即座に背負いで切り返す。
しかし当間もそれをかわして今度は巴。斉藤はそれもしのぎきる。
目まぐるしく入れ替わる攻防に、一瞬も目が離せない。

かつて浜高と尚北は全国大会で一度対戦をしている。
結果としては尚北が三人残して勝っているが、この当間と斉藤はそのときにも当たっていた。
その試合は引き分けに終わる。つまり当時の二人の実力はほぼ互角だったわけである。

585 :2/2(代理) :2008/12/13(土) 20:56:32 ID:???
当間の大内刈りをかわした斉藤は、小内掛けで逆襲。
これは深く入ったかと思われたそのとき、当間に引き手を切られてしまう。
持ちこたえられ、ポイントは無し。
(やはり……テーピングのせいで、左手がフルに使えないのか?)
いまひとつ調子の出ない斉藤を巧は案じる。

玉城につなぎさえすれば――そういう意思で果敢に攻め立ててくる当間。
その大内刈りをかわした斉藤は、絶好の組手を奪う。
(今度は絶対に離さん!)

内股にいこうとする斉藤。だが――「きたっ!」
またも当間に引き手を切られ、技を止められてしまう。
その大きな隙に当間が飛び込む!

「おりゃああっ!」

大外刈り一閃。斉藤はなすすべなく畳に沈んだ。
「一本!」

「ちくしょおおっ!」
あまりにも痛い敗北に畳に突っ伏す斉藤。

ここまでのスコアは2‐2。
両校とも一本勝ちが二つずつで完全に互角。
決着は巧と玉城の大将決戦に委ねられた。

586 :マロン名無しさん :2008/12/13(土) 22:09:23 ID:???
さすが主人公、いい所が回ってくるなあ

587 :マロン名無しさん :2008/12/13(土) 22:54:40 ID:???
別所さん気が多くね?
まあ、あんなケガをして試合したなんて漫画みたいなシーン目の当たりにしたら気になるか

588 :マロン名無しさん :2008/12/14(日) 01:08:45 ID:???
斉藤がここまであっさりと負けたのは初めてだな。

589 :マロン名無しさん :2008/12/14(日) 01:14:13 ID:???
>>588
話の都合もあるし、怪我してるってこともあるし…
っていうか斉藤が最後に快勝した試合っていつだっけ?
なんか怪我したりおっさん相手に引き分けたり
巧に寝技で負けたりと、ろくなシーンが思い出せないんだが。

590 :マロン名無しさん :2008/12/14(日) 01:14:50 ID:???
こりゃあ・・・巧が勝っても
次に向けて相当なハンデになるな

591 :マロン名無しさん :2008/12/14(日) 20:45:31 ID:1SQbb7TH
 

592 :1/2(代理) :2008/12/14(日) 20:57:40 ID:???
第173話 大将決戦

技と技との対決となった副将戦を制したのは尚北の当間。
スコアは2‐2のイーブン。勝敗の行方はついに大将決戦にまでもつれ込んだ。

痛恨の一本負けに突っ伏していた斉藤が、ようやくのことで立ち上がる。
『斉藤くんが悔しがるのもよくわかります。浜名湖としてはなんとしてもこの場面で決着をつけたかったでしょうな』
『と、いいますと?』

審判が斉藤に服装を正すようにいう。そこで当間は斉藤の抱えていたハンデに気づく。
(テーピング…肩全体をおおってる……あれで固定されてたから引き手を切れたのかもしれんな)

『と、いいますのは次の大将戦は浜名湖にとって大変分が悪い。
 これは、決して浜名湖の大将・粉川くんが弱いといってるワケではなくて――相手が強すぎます』
『そうです、おそらくこの会場にいる選手の誰もがこんな場面では出会いたくない相手でしょう!』


『その相手とは尚北最強の切り札、玉城一史!
 この春、日本武道館で行われた高校選手権・男子個人、無差別級の優勝者!』


現在の高校生では最強の男、玉城。今日初めての出番に、報道のカメラが、ライバルの視線が集まる。
「結局、尚北の勝ちだ。玉城がキメる。浜名湖は玉城が出てくる前に勝ちをきめなくてはいけなかった」
そう語るのは同じく優勝候補、東京代表・千駄谷学園の橘である。その隣には鳶嶋もいた。
(粉川とかいったな、彼は――玉城があいてとは運のない……)

出陣する自分を激励するメンバーの前に、穏やかな顔を見せる巧。
戻ってきた斉藤はすれ違いざま、彼のその表情を見る。
「アイツ今、笑ってた…」

593 :2/2(代理) :2008/12/14(日) 20:58:00 ID:???
泣いても笑ってもこれが最後。巧の脳裏に、これまでの仲間たちの戦いぶりが甦る。
(仲安……宮崎……杉! 三溝!)

「礼!」

(斉藤……)

「始めっ!」



(おまえらのおかげでついにここまできたぜ!もういちど玉城とやれるとこまで!)



○大将戦 沖縄 尚北・玉城VS静岡 浜名湖・粉川

『さあはじまりました大将戦!あっ!?』
開始直後、いきなり巧が仕掛ける。
玉城の前襟を取っての背負い、一瞬、玉城の足が畳から離れる。
「ぬおおっ!」
もつれて畳に倒れる両者。判定は無効。二人とも即座に立ち上がり、試合は続行される。
『は、早くも浜名湖・粉川の先制攻撃がありました!開始直後にいきなり背負いっ!
 しかし、さすが玉城、すんでのところでかわしました!まさに一瞬の出来事!』
『それにしても驚きました、粉川!いくら虚をついたといえ、高校チャンピオンの玉城の体を一瞬、
 宙に浮かせた惜しい技!おそろしく思いきりのいい選手です!』

(やはり、あなどれないヤツだったな!粉川巧!)
(玉城!てめえを倒す!)

594 :マロン名無しさん :2008/12/15(月) 00:03:41 ID:???
巧の背負いが玉城を倒すと信じて―――河合先生の次回作にご期待ください

595 :マロン名無しさん :2008/12/15(月) 00:14:04 ID:???
確かにこれで終わってもおかしくないな。

596 :マロン名無しさん :2008/12/15(月) 07:21:26 ID:???
鳶島との対戦フラグは投げっぱなしかよw

597 :1/2(代理) :2008/12/15(月) 20:56:21 ID:???
第174話 玉城猛襲

「ファイト――!」「がんばれ――っ!」
並んで巧の応援をする保奈美と別所さん。
〈がんばれ巧さん!〉と本当は名前まで叫びたいけど恥ずかしい愛子であった。
顔を見合わせてにこりと笑う二人。
傍から見れば微笑ましい姿であるのだが――それはさておき。

再び背負いを仕掛ける巧。しかし玉城は全体重を後ろにかけてそれを防ぐ。
が、巧は即座に足を取りにいく。攻撃の手を緩めない。しかし場外に出てしまい、「待て」がかかる。
『いや、おどろきました。こんな選手がいたとは!高校チャンピオン玉城を相手に全く物怖じする様子がありません!
 まさにこれまでの浜名湖高メンバーの大健闘ぶりを象徴するようだ!』

「よーし、いい、いい!この調子でいけっ!それ、こっがっわっ!」
会場を席巻する粉川コール。完全にアウェーの尚北側だが、なおも余裕があった。
「ちっ、まだ玉城が本気を出してないだけなのに、うるせーヤツらだ」
「でも…なるたけ早いとこ本気出してほしいけどね……」

「なんだ?玉城、調子悪いのかよ?」「さあー?」
観戦していた千駄谷学園の橘と鳶嶋の二人も、やや肩透かしの気分。
「もしかしたら相手の粉川もけっこう強いのかもしれない」
「オイ、相手はあの玉城だぞ。本気のアイツに勝てるのはオレぐらいしかいねえよ」
そう言い切る橘に鳶嶋は反論する。
「オレたちっていえよな。いちおう」
見るからに重量級の橘はともかく、巧と同階級のはずの鳶嶋も、大した自信を見せつけるのだった。

598 :2/2(代理) :2008/12/15(月) 20:56:44 ID:???
激しく動き回っていた巧と玉城がここで静かになる。
両者とも自分の組手にしづらい状況で、体勢が膠着をする。

互いに襟を取っているので、ここから相手の袖を取りたいところなのだが――。
(さて、そろそろいくぜ。粉川)

ついに玉城が動く。
巧の襟を捕まえていた左手を瞬時に右手に持ち替え、そこから左の背負いにかつぐ!
「うおっ!!」
そのとき他のメンバーが立ち上がり、後ろの保奈美たちには見えない。
慌てて脇から身を乗り出す彼女の目に飛び込んできた光景は、畳に倒れた巧の姿。

「技あり――!」
「巧くんっ!」

ついに出た玉城必殺の背負い投げ。序盤、巧の連続攻撃になかなか技が出せなかったが、
初めて出したこの技ひとつでいともあっさり「技あり」を取ってしまったのである。
『それにしても玉城、組手のとれない体勢からよくあのような背負いを出せましたね』
『投げる前に、あの体勢からでも投げられるように、組手を持ち替えたんです。
 いかなる場合でも背負いが出せるようにかなりの訓練を積んでいるのでしょう。たいしたものです』

技ありをとられてしまった以上、巧は攻めていくしかない。
引き手を取った巧は今度こそ一本背負いにいくが、玉城はそれをもすくい投げで切り返してしまう。
「だありゃあっ!」勢いよく畳に叩きつけられる巧。
「きゃあ――っ!」「ま、まさかっ!」

「有効!場外、待て!開始線に戻って!」

何とか首の皮一枚つながったものの、勢いだけなら技ありでもおかしくはなかった。
(フン、悪運の強いヤツだ)
「やろお……」
余裕の玉城。巧は歯噛みして彼を睨みつけるのだった。

599 :マロン名無しさん :2008/12/15(月) 21:11:56 ID:???
ダメだ、やっぱ勝てる気がしないわ

600 :マロン名無しさん :2008/12/15(月) 21:18:32 ID:???
保奈美の一声があれば、技有り二つ三つ取られていても簡単に逆転するよ

601 :マロン名無しさん :2008/12/15(月) 22:34:30 ID:???
2つとられたら負けるから!

602 :杉妹 :2008/12/15(月) 23:44:44 ID:???
なるほど、巧さんは技ありをいくら取られても負けない方法を編み出したのですね!

603 :1/2(代理) :2008/12/16(火) 20:56:58 ID:???
一本負けは免れたものの、あの巧がこうも一方的に――杉たちは目の前の光景に愕然とする。
心配げに試合を見つめる保奈美。別所さんはそんな彼女の横顔に思う。
(保奈美さん……ひょっとして……)

試合開始後30秒で背負いが炸裂していきなり技あり。
50秒をまわったところで今度はすくい投げで有効。
一分経過しないうちに技あり、有効、ひとつずつ。これが玉城の本当の実力なのか。

玉城の凄まじいまでの攻撃に地元応援団の粉川コールも止んでしまう。
「ピ、ピンチの今こそ応援しなくちゃいけないのよ、わかってる、マリちゃん!」
「そ、そうですよね」
何とか皆を鼓舞しようと桜子は一人、粉川コールを再開しようとするものの、
他の誰もそれに唱和しようとせず、結局、彼女の声も小さくなっていってしまう。

なおも諦めることなく仕掛けていく巧だったが、玉城に体落しであっさりと切り返されてしまう。
何とかこらえる巧であったが、玉城のキレのある技の前に振り回されるばかり。
(足!)
わずかな隙を突いて小内掛けを狙う巧。それをかわそうとして玉城のバランスが崩れる。
そのタイミングに合わせて懐に飛び込む!
『粉川、背負い――っ!』
「いくかっ!」
しかし玉城は担ぎ上げられる寸前に体をかぶせ、巧の背負いを潰してしまった。

604 :2/2(代理) :2008/12/16(火) 20:57:15 ID:???
巧の攻撃はまたも不発。得意の背負いを再三放つも、玉城には通じない。
巧にとっては本当に苦しい展開になってきたが――それでもなお彼は攻め続ける。

「あきらめの……悪いヤツだっ!」
巧の組手を振り払おうとする玉城。そのとき、彼の目に巧の姿が映る。
臆することもなく猛ることもなく、ただ無心に攻めることしかないその表情。
それを見てしまった玉城は一瞬、たじろぐのであった。

(野郎……ぼちぼちとどめをさして、おとなしくさせてやるぜ!)

勝負を見つめる浜高メンバー。しかし、その顔は厳しい。
「さっきの背負い、完璧なタイミングだったはずなのに……」
「ああ、あれで玉城が倒せないっていうなら……いったいどうすりゃヤツに勝てるんだ!」

残り時間は2分を切った。このまま玉城優位のうちに終わってしまうのか。

そしてついに、玉城が絶好の体勢を取る。
(よしっ、オレの組手になった!!)

それに対する巧は――――。

605 :業務連絡(代理) :2008/12/16(火) 20:58:12 ID:???
年末年始の予定ですが、年末は仕事の都合上忙しくなりますので、
現在連載中の単行本18巻分を区切りとして、勝手ながら休載とさせていただきます。
再開は新年1月4日(日)を予定しています。

606 :マロン名無しさん :2008/12/17(水) 02:19:40 ID:???
ここで見せ場の一つもないと話が進まないから逆転はするだろうな

607 :1/2(代理) :2008/12/17(水) 20:56:26 ID:???
第176話 活路

(よしっ!引き手をとった。オレの組手だ!)
文句の無い体勢からついにくりだされる玉城必殺の背負い投げ。
絶体絶命かと思われたそのとき、巧は足をついてこらえた。
「なにっ!?」
しかし玉城はすかさず大内刈りで追撃をかける。
ところがそれでも巧はまだ転ばない。
さらに連続で小外刈りを仕掛けてくるも――巧はそれを振り払った。
「場外、待てっ!」

『すごい、まさに猛攻でした。玉城、背負い、大内、小外の連続!が、しかし!
 浜名湖・粉川、耐えました。チャンピオンの攻撃をしのぎきりました』
ポイントの上では玉城の大量リードはかわらない。それでもまだ諦めない。
不屈の闘志を巧はその胸に持っていた。

「すげえ、巧さん……」その巧の戦いぶりに、他のメンバーも気持ちを奮い立たせる。
「中盤を過ぎて疲れが出てくるとこなのに…逆にどんどん動きがよくなってきてる」
「まだあきらめるのは早すぎるぜ!」
「こうなったら残り時間、一発でも多く技をかけてくしかねえっ!」
そして、保奈美と別所さんも。
「巧くん、ファイト――!」「がんばれ――っ!」

巧は帯を締めなおし、再び気合をみなぎらせる。
「おおしっ!」

608 :2/2(代理) :2008/12/17(水) 20:56:58 ID:???
「ヤケにてこずるな……」
高校日本一の実力にもかかわらず巧を仕留め切れない玉城に、千駄谷学園の橘が不審がる。
そして鳶嶋も――(粉川巧か……)。

残り時間、一分半。再び盛り上がる粉川コールの中、試合は再開される。
「必ずしとめてみせる!一本勝ちでなっ!」
玉城が背負う。
「やれるもんなら!」
巧は襟をつかむその手を切り、
「やってみろ!」
逆に小外刈りで返す。
「やらあっ!」
それをさらに玉城が内股で迎撃。
激しい技の応酬の中、玉城の背負いを潰した巧はその立ち上がり際を狙った。
「うお!!」

「であああっ!」

巧の一本背負いが玉城の体を大きく回転させる。
そして、畳の上へと落とした。


「技あり!」

609 :マロン名無しさん :2008/12/18(木) 00:55:53 ID:???
おお、キター

610 :マロン名無しさん :2008/12/18(木) 01:03:46 ID:???
とりあえず技ありで反撃するのはお約束だな。
けど、やっぱり今までで一番の強敵なのか、
ここまでの展開はじっくり描かれている感じだ。

611 :マロン名無しさん :2008/12/18(木) 02:17:46 ID:???
>>610
春の無差別王者なんだから現在一番強い高校生だぞ

612 :マロン名無しさん :2008/12/18(木) 08:33:33 ID:???
現在日本一って事は、玉城倒した後に
「ふっ奴はまだまで小物」
「真の日本一になりたくば、我々を倒すことだな」
と四天王やら六歌仙が出てくるんですね

613 :1/4(代理) :2008/12/18(木) 20:56:32 ID:???
『な、なんと!粉川!背負い!技ありだーっ!』


第177話 勝利への秒読み


「巧くん……!」「やった――っ!」
潰されても潰されても背負いをかけ続け、ついに技ありを取り返した巧のその執念。
大喝采が上がるものの――それでおさまる玉城ではなかった。
『おおっ玉城、粉川の体をひっくりかえすか!?締めです、玉城は締めを狙ってます!』
技をきめた直後の大きな隙。玉城は背後から巧を捕まえ、後方へ引き込もうとする。

ところが、巧はそれに反応する。寸前にとっさに体をひねり――倒れて上になったのは巧。
しかもこれは、絡んでいる足を抜けば押さえ込み完成という絶好の体勢だった。

巧が玉城を投げたことに驚きを隠せない千駄谷学園の橘と鳶嶋。と、その隣には。
「またやりやがったぜ、粉川のヤロー」「ええ。春の選手権の時と同じだ」
なんと三工の面々が観戦していた。
「玉城も高校チャンプなんていわれてるわりには、だらしないヤツですよ」
藤田が言う。まあ、彼は以前に玉城から判定勝ちをしているので口ばかりではないのだが。
その彼のことを鳶嶋は知っているようだった。
「へえ、驚いた。藤田だぜ、アイツ」
「誰?」
「2年前、中学の78キロ級で、優勝したヤツだ」
(そうか、コイツも確か粉川と同じで地元……粉川の実力に詳しいはずだな……)

巧は絡んでいる足を抜きにかかる。だが「! いかん!」そこで斉藤の声が飛んだ。
「巧!のっかるな!もってかれるぞ!」
その声とほぼ同時に玉城が体を回転させ返そうとする。
寸でのところで難を逃れる巧。斉藤のアドバイスがなければ危ないところだったのだ。
「くそう!もう少しのところで!」

614 :2/4(代理) :2008/12/18(木) 20:56:58 ID:???
「巧!自分のエリで玉城の首をキメろ!首の下にまわしたほうの手にエリをもたせるんだ!」
本来ならば巧にとって寝技は到底、得意分野とはいえない。
だが、斉藤の的確な指示により、確実に玉城を追い込んでいく。
「重心を後ろにかけろ!そのまま、空いた手を使って足を抜けっ!」
「ちくしょう、誰だ!?こいつに指示を出してるヤツはっ!?」
「足を抜けっ!もう一方の足を玉城の足の付け根において、ひっこ抜けっ!」
そしてついに――巧の足が抜ける!
「ぐおおおっ!」
それでもなお力ずくで体勢をひっくり返そうとする玉城だったが、
巧は体の位置を変えてその抵抗を封じ込める!


「抑え込み――っ!!」


「よおしっ!!」
そこで立ち上がったのは桜子応援団長。
「もーはなすなよ巧っ!さ――“粉川”コールいくぞーっ!マリちゃん」「ハイ!」

「それにしても……」「おまえの指示のおかげだぜ、斉藤」
大声を出しすぎてむせる斉藤。
(ここで……ここでキメろよ、巧!)

『なんということでしょう!71キロに満たない粉川が、95キロの玉城を抑え込みました――っ!
 いや、それだけではない!これはもっとすごいことです!
 高校柔道界の頂点に立つ男を、今までまったく無名だった選手が抑え込んでいるのです!』

既に抑え込みから10秒経過。技ありがあるので残り15秒。
完璧な横四方固めが決まり、玉城は抜け出すことができない。王者・尚北がこのまま一回戦で消えるのか。
(なんてヤツだ…)鳶嶋は冷や汗を流す。

615 :3/4(代理) :2008/12/18(木) 20:57:16 ID:???
王者・玉城の敗戦がいよいよ現実味を帯び、場内騒然。残り時間10秒。
「ああっ!キメてた首がっ!」
玉城の渾身の抵抗により、首を封じていた巧の左手が外れてしまう。
首が自由になった玉城は、今度は“エビ”の姿勢で後ろに下がる。
『玉城の体はもう赤畳から出ている!場外に逃れられるかっ!』
抑えている側の体も完全に外に出なければ場外にはならず、寝技は続行される。
だが――場内に残っているのはもう巧の膝から下の部分のみ。
「きさまのようなザコに負けるはずがないっ!オレは高校チャンプだっ!」

「逃がすかァ!」

巧は左手で玉城の袖をつかみ、その体を再度引き戻す。
「うわああっ!」
そしてついに時計の表示が25秒を示し、高らかに試合終了のブザーが鳴った。

「技あり――っ!あわせて一本!それまでっ!」

『やりました!ついにやってのけました!殊勲の大金星!
 浜名湖・大将 粉川巧! 高校チャンプ、尚北・玉城一史を破りました――!』

「うおおっ!」
雄叫びを上げ、巧はその勝利を誇る。
『いきなり無名の選手が高校無差別のチャンプを破っただけでも驚くべきことですが!
 彼は玉城より2つも階級が下の軽中量級の選手なのです!まったくすごい選手があらわれました。浜名湖高校・粉川巧!』
畳に手をついてうなだれたまま、玉城は立ち上がることができない。
『信じられない!玉城、まさかの敗北!本年度金鷲旗大会優勝校、尚北!ベスト16どまり!
 インターハイ決勝トーナメント一回戦、大波乱がおきましたっ!』

「んなバカな……」
あまりにも予想外すぎる結末に、唖然とする橘と鳶嶋。
「人ごとじゃないぜ。次はオレらが浜名湖とやんなきゃならないんだからなあ」

616 :4/4(代理) :2008/12/18(木) 20:57:33 ID:???
試合を見届けた藤田は舌打ちを一つし、その場を歩き去る。
(……あの野郎!)巧が高校チャンプを破った光景は、彼にとって充分な衝撃であった。

(よかったっ!本当にすごいっ巧さん!)
別所さんも勝利を喜ぶ。
戻ってきた巧は斉藤に礼をいう。彼のアドバイスがなければ玉城を抑え込むなどできるはずがなかった。
「んなことねえさ…」と斉藤は謙遜するのだが。
「そうだぞ、てめえ一人の力で勝てたと思うなよ!」「みんなの力で勝てたんだぜ!」
「いたいいたい!」杉たちにより巧はボコボコにされてしまう。

そこで桜子が二階席から保奈美にタオルを投げる。
これで巧を労えという計らいだが、それを空中で巧が横取り。
「もう!バカ!疲れてんのに!そんなことして!」
そして笑顔をかわす二人。その姿を別所さんは見てしまった。

斉藤が別所さんにお守りの礼をいう。
特に覿面の効果があった杉は感謝のしようもない。
「アレが効いたんだやっぱり!」「勝利の女神だね!なんちゃって」
「いいえ…みんなの実力ですよ」
皆が談笑する中――別所さんは静かにその輪の中から離れていった。
(今まで気づかなかった……巧さんがいちばん優しい目をするのは、保奈美さんを見る時なのね…)

「あれ、別所さんは?」「あら?」
気がつけば既に彼女の姿はそこになく――。


浜名湖高校、決勝トーナメント一回戦突破。ベスト8進出!

617 :業務連絡(代理) :2008/12/18(木) 20:57:53 ID:???
次回は一回休載して、単行本18巻のおまけを紹介します

618 :マロン名無しさん :2008/12/18(木) 21:46:09 ID:???
71キロで95キロ抑え込むぐらいは普通じゃないか?

619 :マロン名無しさん :2008/12/18(木) 22:01:04 ID:???
いつものように怒涛の反撃で最後は一本かと思ったら寝技とはな
ウラをかかれた

620 :マロン名無しさん :2008/12/18(木) 22:05:08 ID:???
玉城が負けたのは巧であり斉藤であったわけか。
ひとりの力だけでは勝てなかったってことでなかなかいい落しどころじゃない?

621 :マロン名無しさん :2008/12/19(金) 00:14:26 ID:???
斉藤の活躍が渋いな
まさにいぶし銀

622 :マロン名無しさん :2008/12/19(金) 01:04:00 ID:???
巧が寝技で勝ったのは斉藤戦以来かな?

623 :マロン名無しさん :2008/12/19(金) 02:09:36 ID:???
最近巧の寝技が上達しすぎ

624 :マロン名無しさん :2008/12/19(金) 02:11:52 ID:???
保奈美との稽古の成果だろうな

625 :マロン名無しさん :2008/12/19(金) 10:12:24 ID:???
>>621
怪我で負けた分の救済措置も含めての今回の活躍かな
あれ、誰かもう一人負けた人もいたような…

626 :マロン名無しさん :2008/12/19(金) 15:36:08 ID:???
>>624
それじゃ仕方ないな。

627 :1/3(代理) :2008/12/19(金) 20:57:04 ID:???
○単行本第18巻 (表紙:玉城一史 裏表紙:三溝三姉妹)

・四コマその1 『金曜ドラマ 高校教師2003』

1.巧は10年後、高校の先生になっていた。
  巧「歩くんいってきます」
  保「パパにバイバイして」
  現役選手時代は数々のタイトルをとったが、今は良きパパだ。

2.巧「今日から諸君らの担任になる粉川だ!まっ、一年間なかよくやっていこう!」

3.賢子「あら先生、ウチは女子高よん」
  茂子「先生と生徒が仲良くするって、どのへんまで仲良くしていいの?」
  杉子「茂子、新任の先生からかっちゃダメよ、赤くなってるじゃん」

4.巧(やな女子高にきちゃったなー。まあコイツらとなら浮気とか不倫とか絶対なさそうだからいいや)
  しかし新任教師巧を密かに恋する生徒がすでにいたのだ。つづく。

628 :2/3(代理) :2008/12/19(金) 20:57:28 ID:???
・四コマその2

1.別「ぶっちゃけた話、私、先生のことが好きなんです!」
  巧「なにっ!?まてっ!ぶっちゃけるな別所っ!」

2.巧「ボクは浮気はしないのだ!」
  別「でもっ!」
  巧「それ以上近づかないでくれ!ウチのカミさんは浮気にかんして超能力みたいにカンが鋭いのだっ!」

3.保「はっ!」

4.保「巧くん!まだ進路指導終わらないのっ!?」
  巧「あ、ちょうどこのコで終りだよ。もうすぐ帰るね」
  別(完全に奥サンにアタマあがらないのね…)
  この年、夢の家電製品“どこでもドア”が実用、市販化されていた。(ホントはムリだろうけど…)

629 :1/3(代理) :2008/12/19(金) 20:57:46 ID:???
○ビッグな第18回 サンデーコミックス名物『絵筆をもってね!』

 選評/河合克敏 応募総数:1690点 入選:75点

 グランプリ:東京都・ウルダンディー〔巧・保奈美〕

 準グランプリ:福岡県・森田しの〔桜子(パラパラアニメ)〕

 topix:「保奈美VS別所」
     愛知県・くれくれたこら〔保奈美(巧を見つめる保奈美)〕
     群馬県・夢幻〔別所〕
      1.別「今まで気づかなかったっ…巧さんが一番優しい目をするのは保奈美さんを見る時なのね」
      2.別「そうよね私なんかじゃ」 
      3.別「ふぅ」すたすた
      4.別「保奈美 殺す!!」
     愛知県・日ノ丸CIA〔保奈美(よく効くおふだだこと……)〕
     愛知県・ベンゼンアツヒコイケダ〔巧・保奈美・別所(柔道必殺技 大どんでん返し)〕

     「16巻表紙 アンタは誰なの!?」
     埼玉県・寿かめキチ〔龍子先生・他〕
     北海道・猫森「同案多数?」にゃんぴー

     熊本県・すうらぎぱ〔三溝三姉妹(名前募集)〕
     愛媛県・維摩居士〔桜子(県大会女子個人戦について)〕
      1.『ただ今から女子個人三位決定戦をおこないます。
         赤、浜松高校 江崎具理子さん。白、赤磐高校 別所愛子さん』
      2.(女子更衣室・お客様は音声のみの放送でございます)
        桜『別所さんって意外とグラマーね』
        別『桜子さんこそ』
      3.三位決定戦を控えた別所さんを着がえに誘ったのは……。
        桜「そ、それって……私?」その通り。
     福岡県・博士〔巧(主役。)〕

630 :マロン名無しさん :2008/12/19(金) 21:48:39 ID:???
ナチュラルに女装するなあ

631 :マロン名無しさん :2008/12/20(土) 00:43:29 ID:???
「ぶっちゃけるな」すげえ受けたw
今度使ってみよう

632 :マロン名無しさん :2008/12/20(土) 01:06:35 ID:???
10年後高校教師なんてドラマ誰も知らないだろうな

633 :マロン名無しさん :2008/12/20(土) 09:53:40 ID:???
巧は本当にこれぐらい恐妻家になってそうだな

634 :マロン名無しさん :2008/12/20(土) 23:15:12 ID:???
賢子・茂子・杉子(清子じゃないのか)ワロスw
永田違和感ねえw
恵ちゃんや堀内平子ちゃんや三溝幸子ちゃんも
怖いもの見たさで見てみたいようなそうでもないような…

635 :マロン名無しさん :2008/12/22(月) 08:28:12 ID:???
保守

636 :マロン名無しさん :2008/12/24(水) 00:50:12 ID:???
保守

637 :マロン名無しさん :2008/12/25(木) 07:53:44 ID:???
保守

638 :マロン名無しさん :2008/12/26(金) 22:12:27 ID:???
保守あり

639 :マロン名無しさん :2008/12/28(日) 00:17:14 ID:???
ホシュっとね!

640 :マロン名無しさん :2008/12/29(月) 12:04:45 ID:???
保守

641 :マロン名無しさん :2008/12/30(火) 14:15:20 ID:???
保守

642 :マロン名無しさん :2009/01/01(木) 01:08:02 ID:???
新年保守

643 :マロン名無しさん :2009/01/01(木) 07:04:26 ID:???
あけおめ!
保守

644 :マロン名無しさん :2009/01/01(木) 17:08:58 ID:???
おめでとうございまーす。

645 :マロン名無しさん :2009/01/03(土) 00:08:53 ID:???
保守っとね!

646 :業務連絡 :2009/01/04(日) 20:53:44 ID:???
明けましておめでとうございます。帯ギュスレあらすじ書きです。
本日は第三回キャラクター・ベスト・テンの模様をお送りします。
本編の再開は明日からとなります。

647 :1/6 :2009/01/04(日) 20:55:01 ID:???
○第3回「帯をギュッとね!」キャラクター・ベスト・テン 結果発表

保「今回、どんなふうになってるのかしら?」茂「どーせ1位はまた海老塚だろ?」
斉「あれ?でも、アイツきてた?」三「そういえば、まだ今日は見てないぞ?」

AD「大変です、海老塚桜子さんと粉川巧さんがまだ会場にきてません!」
来「え――っ?まいったなあ、主役がいなくちゃ話になんないよ」
AD「ええ、いったいドコに雲がくれしたのか」
来「なんたって海老塚クンは2年連続で1位とってんだよ、帯ギュの大事な主役だよ!それがいないなんて……!」
「あっ、正面モニターに電気が!」「まだ始まってないのに!」

桜『ハーイみなさん!あなたの桜子でーす』

杉「あのバカ、中継させてんのか?」
来「海老塚さん、今あなたはドコにいるんですか?」

桜『ハワイ』
豊(ビ、ビキニ…)

桜『まあ、結果がわかってる勝負ほど、つまんないものないしー。出番がきたらまた呼んでねー。バイバーイ』
茂「ここまで増長してたとは……」杉「余裕かましやがって…」

来「もー、このままいっちゃえ!第3回、帯ギュキャラクター・ベスト・テン、発表です!」

648 :2/6 :2009/01/04(日) 20:56:15 ID:???
・第10位 袴田今日子〔得点:434〕

来「おお?いきなり佐鳴のヒロイン袴田今日子!最近、出番は少なかったけれど、
  根強いファンが多いのがこのヒト。やはりベスト・テン入りははたしましたっ!」
来「しかし、前回5位より大幅ダウンです」
石「いやー今回はたまたまだよ」
来「などといってる石塚クンは、今回13位でした。(前回8位)ヒトの心配してる場合じゃありません!」

・第9位 宮崎 茂〔得点:553〕

来「ここ最近、女子中学生を中心に人気をぶり返し、前回11位から今回9位とランクアップ!」
茂「おっしゃ――っ!」
麻「“すぐムキになるところがかわいい”だって」
仲「そーか、“かわいい”っていわれてんのか、宮崎先輩」
茂「おまえらなあっ!」

・第8位 永田 賢〔得点:606〕

来「彼も最近ほとんど出番がありませんでしたが!その妖しい個性についた熱狂的ファンに支えられ、
  前回よりアップの8位…」
永「応援してくれたみんな……これが私からのお礼よっ!(脱衣)」

しばらくおまちください。
(永「なに!?はなしてよっ!」「ヨシキには負けられないのよっ!」「どこへ連れてく気!」)

来「大変失礼いたしました。第8位の永田クンは欠席だったようです」

649 :3/6 :2009/01/04(日) 20:57:20 ID:???
・第7位 杉 清修〔得点:805〕

杉「まっ、こんなもんか」

※今回は3人記名して、一番を3点、二番を2点、三番を1点と計算して集計している
来「なんだか三番目に彼をあげる人が多いんですよね。
  一番二番と書いた後で“他に誰いたっけ”“しょーがねえなあ、杉にでもしとけ”って票ですね、コレは」
杉「分析すんな!いわなきゃわかんないことまで!」

来「そして第6位は、ついにでました!なんとボク!前回16位から返り咲き――っ!」
AD「ちがうよ。コラ、モニターひいて、ひいて」来「うっ!」

・第6位 来留間麻理〔得点:1027〕

薫「6位は麻理ちゃんでしたーっ!やっぱり最近出番が少なく、それがひびいたか、
  前回2位から大幅に4ランクダウン!」
保「大丈夫、麻理ちゃん?」
袴「耐えるのよ」(アタシなんて五つ落ちたんだからね……)
麻(こ、これからはもっとセクシーさを前面にだすしかない……)

・第5位 近藤保奈美〔得点:1255〕

来「おお、前回6位よりアップだ、近藤保奈美!
  浜高のなかではマネージャーという地味なポジションですが、
  その美しさと時おり見せる大ボケのギャップに支持が集まった様子」
保(それにしても巧くん、本当にドコいっちゃったのかしら)

650 :4/6 :2009/01/04(日) 20:58:21 ID:???
・第4位 斉藤浩司〔得点:1639〕

来「ああ――っと、またコイツです、3回連続4位です。
  斉藤浩司!相変わらず女のコからの支持が強ーい」
来「今年はケガしたり、大事な試合でコケたりとしてきたのですが!
  逆にそれが同情をひきやがりました。じつに計算高いイヤな男!」
杉・茂「そうだそうだ!」
斉「何でそうなるんだよっ!」

来「さあ!いよいよベスト3の発表です。ADくん、ドラム」
ダラダラダラダラ

・第3位 別所愛子〔得点:1690〕

来「なーんと第3位は、近ごろ赤マル急上昇の新人!別所愛子さ――ん!」
別「え――っ!わ、私ですか!?」

来「いやあ、もうこの悲しみをたたえた表情とか、ひかえめでいじらしいところとか。
  そんでもって柔道も強いときてますからね――」
別「いいえ、そんな……」
別「本当に私が3位なんて…いいんでしょうか」
薫「またまたコイツはもうツボをこころえてるよ。うまいねー」

来「それでは第2位の発表にいきましょうか」
石「あれ、巧クンまだ出てないぜっ?」豊「あっ、気づかなかった」袴「て、ことは……」

651 :5/6 :2009/01/04(日) 21:00:27 ID:???
桜(ふーん、巧クンが2位とはね、なかなかがんばったじゃない?)

来「第2位は……うっ!」薫「えっ?」
桜(なーに!巧クンじゃないの?)

来「な、なんと第2位は……海老塚桜子さんです!3連続1位なら――ず!
  常勝海老塚、ついに破れたりー!」
桜「どわあ――っ!」

・第2位 海老塚桜子〔得点:2344〕

麻「ええ――っ!」茂「す、すると1位は…!」杉「ま、まさか!?」
西「オレ、まだ呼ばれてないけど、まさか……」龍「西久保さんは12位!」

AD「フフフ。この日がくるのをまっていた。ある時はアゴでこきつかわれるAD。しかしてその実態はっ!」
巧「第3回帯ギュ キャラクター人気投票一位、粉川巧――!天は我に味方した!!おごる海老塚ひさしからず!」

・第1位 粉川 巧〔得点:2670〕

杉「おーおーうれしそうに。考えてみりゃはじめて1位とったんじゃねえか、主役のくせに……」
茂「1位とってなかったらADのカッコしたまんま正体明かさなかったんだぜ、きっと」
三「いえてるいえてる」

来「これは驚きました、とんでもない大番狂わせです。浜高が尚北に勝ったことなど目じゃない!」
 「それではハワイを呼んでみましょう。海老塚さーん、敗れた感想など」
桜「えっ、なに!?こっちはそれどこじゃないんだよ!」
 「ちいっ!これでこの海老塚桜子に勝てたと思うなよ巧め――っ!
  かならず復活してやる!とりあえずこのまま日本まで波にのって帰ってやる――っ!」「ムリだって」

652 :6/6 :2009/01/04(日) 21:01:29 ID:???
第3回 帯ギュ キャラクター人気投票全結果

1.粉川 巧 〔2670点〕
2.海老塚桜子〔2344点〕
3.別所愛子 〔1690点〕
4.斉藤浩司 〔1639点〕
5.近藤保奈美〔1255点〕
6.来留間麻理〔1027点〕
7.杉 清修 〔805点〕
8.永田 賢 〔606点〕
9.宮崎 茂 〔553点〕
10.袴田今日子〔434点〕
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
11.三溝幸宏 〔355点〕
12.西久保  〔331点〕
13.石塚孝裕 〔263点〕
14.仲安昌邦 〔259点〕
15.袴田 豊 〔250点〕
16.藤田 恵 〔243点〕
17.来留間大志〔187点〕
18.倉田龍子 〔160点〕
19.浅田さん 〔153点〕(おまえらよ〜!)
20.松原 渚 〔125点〕
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
21.倉田典善(DRYもん)22.鳶嶋雅隆     23.杉(落ち目)薫    24.原田彦蔵 
25.玉城一史       26.三溝シスターズ  27.藤田ママ       28.ランちゃん(愛人号)
29.市川(暁泉監督)   30.河合克敏     31.当間真也       32.堀内平八郎 
33.麻礼葉        34.石野雪久     35.ブラン・マクシモビッチ36.丸智奈 
37.トペ・デ・レベルーサ 38.杉のじーさん   39.斉藤の妹       40.ダミー山下 田村強い子

653 :マロン名無しさん :2009/01/05(月) 01:22:24 ID:???
別所さんは頑張ったな
ベスト10に入りそうとは思ったが
まさか3位とは、恐ろしい子

654 :マロン名無しさん :2009/01/05(月) 04:01:18 ID:???
まさか巧が一位とるとは
たしかにこのところ主人公並に見せ場があったからな

655 :マロン名無しさん :2009/01/05(月) 07:18:44 ID:???
一番を3点、二番を2点、三番を1点っていう方式にすると
主人公は点を稼ぎやすいからね。

656 :1/2 :2009/01/05(月) 20:52:38 ID:???
第178話 斉藤の決断

四強の一角、尚北がまさかのベスト16どまり。
しかも主戦の玉城が負けたとあり、会場内はいまだ騒然としていた。
地元ということもあり大盛り上がり。浜名湖高校の名はこれで大きく知れ渡った。
観戦をしていた石塚たちももはや大した感想の言葉もでない。
「この波に乗って次も、といいたいところだけど、相手、千駄谷学園なんでしょ?
 またまたすごい強豪なんだもん、ついてない」
袴田さんはそういうが、今年の千駄谷は金鷲旗大会の決勝で尚北に負けている。
浜高はその尚北に勝ったのだから、これはひょっとすると――。

「あ――っ、石塚さん、袴田さん、堀内クン!見ててくれたっ?今の!」
桜子と麻理が石塚たちを見つけて駆け寄ってくる。
桜子は「やったねっ!」と三人にタッチし、そのまま嵐のように戻っていく。
次の試合まで休憩が10分しかないから仕方がないが、それにしても元気である。
「浜高のカラーだな。みんな明るいよ」「それが強さの秘密だったりしてね」

練習用の道場では、鳶嶋と橘が先の試合を報告する。
「おおっ、尚北、負けたんだなあ。何つったっけ、相手?見てたんだろ?」
「浜名湖高校っス」「インターハイは初めてだそうですよ」
二人の前には柔軟体操をする選手がいた。
「オレもロビーのモニターで見てたけど……あの、玉城とやったヤツいたよな。そいつの名前だけ聞いとこうか」
「粉川。粉の川と書いて粉川と」
顔を上げた彼の顔は、目の前の鳶嶋とよく似ていた。
「粉川ね……ちょっとめずらしい名前だな。おぼえやすいぜ」

657 :2/2 :2009/01/05(月) 20:54:36 ID:???
医務室でミッタンはケガをした指のテーピングをしてもらう。
それでなんとか出場はできそうだが、やはり左手の握力は半分以下にまで落ちてしまうらしい。
ここは補欠の仲安に出てもらったほうがいいのか――皆が顔をつき合わせる中、斉藤は一人、輪から離れる。

そこで桜子と麻理が合流。先ほどの試合の感動で麻理は興奮しきりである。
玉城を背負いで投げたのは確かに巧の力。でも、あそこで玉城を抑え込めたのは斉藤のおかげ。
「オレが玉城を抑え込もうとした時、いろいろ指示してくれたんだよ。斉藤が」
「えっ、てことはてことはァ!二人のチームワークが高校チャンピオンの玉城を倒したんですね」
麻理のその言葉に、巧は相好を崩す。
「そうだな。いいことゆうな、麻理ちゃん」
いいコだからアタマをなでてやろう、と麻理を本当になでる巧。ところで、その斉藤の姿が見えない。

その頃、斉藤は体育館の外にいた。
偶然にその姿を見つける別所さん。(あっ!あれは浜高の目の細い人……)
その彼女の前で斉藤はおもむろに上着を脱ぎ、テーピングを外し始める。
(テーピングを変えるのかしら?こんなところで?)
斉藤は背中のテープをとろうとするが、どうにも手が届かない。
勢いをつけて何とか手を届かせようとするものの、ただノミが踊るようになるばかり。
(アレを一人で全部とるのはムリね……誰かにとってもらわなくちゃ)
浜高の誰かに頼んでとってもらうしかない――別所さんはそう割り切ってその場を去ろうとするが。
「あの――手伝いましょうか?」
結局、声をかけていた。

彼女にテープをとってもらい、斉藤は再び道着をまとう。
(いっぱいに引っぱられるとまだ少し痛むが……しかし、これなら5分ぐらいもつ!)
斉藤はついでにもう一つ、別所さんに頼む。
「テーピングをはずしたこと、みんなにはオフレコでお願いします」
申し訳なさそうにそんなことを言う斉藤に、思わずクスッと笑う別所さん。

「は、はあ……?いいですけど……どうしたんですか?」
「いえ……」

658 :マロン名無しさん :2009/01/05(月) 23:14:41 ID:???
目の細い人か…いや、その通りなんだけど。


659 :マロン名無しさん :2009/01/06(火) 06:27:49 ID:???
巧が頭なでてるシーンは、兄弟みたいだな
顔も似てるし

まあ実の兄も顔似てるんだが

660 :マロン名無しさん :2009/01/06(火) 11:09:08 ID:???
別所さんは巧以外名前も覚えてないな

661 :マロン名無しさん :2009/01/06(火) 13:52:26 ID:???
>>660
現実でもそんな物かもな
○○さん(好きな人)
○○さんの友達の背の大きい人
○○さんの友達の背の小さい人
○○さんの友達の(ry

662 :1/3 :2009/01/06(火) 20:58:33 ID:???
第179話 超強豪・千駄谷学園

ようやく皆のところへ戻ってきた斉藤。
と、桜子がその後方を通り過ぎていく別所さんの姿を目ざとく見つける。
「あんた、外で別所さん見てない?」「いや、気づかなかったけど…」
そのぶっきらぼうな斉藤の態度に、桜子は意味深な表情を浮かべるのだった。
「ふーん。やるねェ、斉藤のダンナも」「なんだそりゃ!」
桜子は何か誤解をしているようだが、斉藤が焦ったのは肩のテーピングのことである。
(ま、いいか。試合がはじまるまで、とぼけてりゃいいんだから。
 テーピングはずしたことがバレても、試合さえはじまっちまえばもう巻き直せねえからな)

二回戦の浜高と千駄谷学園のオーダーがそれぞれ発表される。その掲示の前に立つのは千駄谷の橘と鳶嶋。
「粉川ってのはやっぱり大将のままか。ちっ中堅だったら、オレがヤツの実力試してやったのに」
玉城を倒した男に対し、橘もやはり興味津々だったらしい。
「今回は“鳶嶋先輩”にゆずるってカンジかな」
大将の巧の名の下には、二つの「鳶嶋」の文字があった。

試合場に入った浜高。巧は自分の対戦相手を確認する。
「さーて、オレと当たるのは……鳶嶋かっ!ん、あ、ありゃ……?鳶嶋って二人いるじゃん」
そう、千駄谷の鳶嶋兄弟。巧と当たる佳隆というのは兄の方なのである。
世間で騒がれているのは弟の雅隆の方で、鳶嶋・橘の二年生コンビとして有名。
しかし、兄貴の方も強いらしく、春の大会の優勝メンバーの一人でもあった。

千駄谷サイドから巧を睨む鳶嶋兄。
なにしろ巧はあの玉城を破った男。どういうヤツか、皆が知りたがっているのだ。
(千駄谷学園は尚北のようにはいかんぜ、浜名湖!ウチは優勝するまで、どんな相手でも全力でたたきつぶす!)

663 :2/3 :2009/01/06(火) 20:59:16 ID:???
いよいよ始まる決勝トーナメント二回戦。予選から数えて全国で3500校以上が闘ったこの高校総体も、
残るは8校、4面とられたこの試合場の畳の上にいる40人が残るのみ。
決勝トーナメントというより、ベスト4進出をかけた準々決勝。
たった一つの栄冠を目指した生き残りゲームはまだまだ続く。


○先鋒戦 静岡 浜名湖・斉藤浩司VS東京 千駄谷学園・本田 勇

「なんだ、浜高ってのは、小さいヤツばかりだな」
初めて浜高のメンバーを正面から見た鳶嶋佳隆は、そんな感想を漏らす。
「一人、どでかいのがいて、あとの4人は中量級以下だそうっス」
雅隆の説明を受けた彼は小さく呟く。「よくこれたな……8強まで」

(斉藤、自分で先鋒に変えてくれっていってきたけど。何か考えがあるのか?)
斉藤が先鋒に出るのは初めてのこと。その態度を巧は訝る。

別所さんもスタッフとしての仕事をこなしながら試合を観ていた。
『テーピングをはずしたこと、みんなにはオフレコでお願いします』
そんな斉藤の言葉が彼女の頭の中に蘇る。
『もしかしてそれ……肩の動きが制限されてしまうから、それで……とっちゃったんですか?』
『そんなバカなことしませんよ。本当にもう治ってるからです』
斉藤はそう言っていたが、それならばなぜテーピングのことを秘密にしなくてはならないのか。

千駄谷学園を相手に怯むことなく攻めていく斉藤。だが、そこで巧は気づいてしまう。
(今、あいつの肩……テーピング巻いてあったか!?)
「おらあっ!」
本田の懐に飛び込んでの斉藤の小内掛け。本田はそれをかわそうと足を引くが、それは斉藤の狙い通りだった。
腿の位置を手で捕まえ、脚を伸ばして下から本田を担ぎ上げる!
「うりゃあああ!!」
本田の体が横に大きく回転し、勢いよく畳に落ちた。

「技あり――っ!!」

664 :3/3 :2009/01/06(火) 21:00:33 ID:???
(小内掛けから肩車!狙ってたんだ、すごい……!)
自身もテクニシャンである別所さんには斉藤の技量がよく分かった。
(でも、技をかける時、左肩を頭越しにあげた……大丈夫かしら……?)

超名門、千駄谷学園の先鋒から斉藤が技ありを取ったことで会場に大歓声が上がる。
優勝候補の尚北を破り、今度は千駄谷を苦しめるその戦いぶりは、
もはや浜名湖旋風といってよいほどのものであった。

斉藤はさらに十字固めを狙っていく。
「ここで決めてやる!」
しかしそこは相手も強豪。本田は下から斉藤に足をかけ、逆に十字固めに捕まえた。しかも――。
(ああっ!テーピングしてたほうの手!)
危険な状況に別所さんは息を呑む。
「いかん!斉藤はケガしてる肩のテーピングをとってるんだぞ!」
巧が声を上げ、そこで他の皆もその状況に気がつく。
「あっ!本当だ!」「何でっ!?」

必死で抵抗をする斉藤。そこには試合の勝ち負け以上のピンチが横たわっていた。
「うおおおっ!」

665 :マロン名無しさん :2009/01/07(水) 19:35:28 ID:???
必死で抵抗をする斉藤。そこには試合の勝ち負け以上のピンチが横たわっていた。
(-_-)<うおおおっ!

666 :マロン名無しさん :2009/01/07(水) 19:48:24 ID:???
怪我した肩を腕ひしぎって想像するだけで痛い…

667 :マロン名無しさん :2009/01/07(水) 20:47:54 ID:???
なんだ、兄貴と当たるのか。
ってことは来年弟と当たるフラグか。

668 :1/3 :2009/01/07(水) 20:56:24 ID:???
千駄谷学園・本田の十字固めはまだ完全ではない。斉藤の左腕が伸びきると完成する。
腕を組んで必死に耐える斉藤。その手が離れたら決まってしまう。


第180話 声援


(まだまだ、こっから外す手はある。素早くやらなきゃ命取りになるがな)
絶体絶命の危機にありながら、なお斉藤にはそれに対する算段があった。

ついに組んでいた斉藤の手が離れる。だが、それは斉藤自らの意思によるものだった。
腕が伸びきり十字固めが完成するまでのごくごくわずかなそのタイミング。
斉藤は自由になった左手で首にかかっていた本田の足を押し退け、十字固めを見事に外した。

今度は斉藤が上になって寝技で本田を攻める。しかし本田も即座に足で挟んで防ぐ。
ギリギリの攻防の末、ついに審判が「待て」をかけた。
(一瞬でもタイミングをまちがえたら、逆に十字固めがキマってた。うまくいったぜ)

(なんとか助かった)
ほっとする別所さん。試合はいまだ、技あり一つ分斉藤のリード。
「いくら千駄谷でも、寝技で斉藤をしとめるのはムリだったようだなっ!」
「さすが斉藤!」
杉たちは大絶賛するが、そもそもどうしてテーピングをとってしまったのかと龍子先生が問う。
「もっと手を動かせるようにとったんだ。あのテーピングをしてたら、手が上にいっぱい上げられないから」
巧の説明に皆も納得をする。しかし肩は大丈夫なのか。
本来ならば、治っているのかどうかギリギリのところ。こればかりは本人以外には判らない。
(斉藤……)

669 :2/3 :2009/01/07(水) 20:57:51 ID:???
ポイントリードをされている本田は果敢に斉藤を攻め立てる。
その大内刈りが斉藤をとらえ、彼は畳の上に倒れる。
だが、そのとき「ぐあっ……!」斉藤の肩に痛みが走った。
本田の大内刈りは有効。これなら技ありには及ばず逆転はしないが――、
「今、左肩から落ちなかったか?」「やべえ!」
ポイント以上に深刻なダメージが斉藤を襲いつつあった。

(少しひねったか……力を入れただけで痛むようになっちまった)
そこで斉藤は時計の表示に目をやる。


(あと一分!これくらいは、男だったらガマンできる時間だなっ!)


精神的な動揺はなかった。既に彼の覚悟は決まっていた。
残り時間1分。本田の片手背負いを斉藤はかわすが、さらに追撃で大内刈りがとんでくる。
息もつかせぬ連続攻撃。しかし斉藤はそれらを全て、ギリギリのところでこらえ続ける。

(がんばれ……がんばれ……)
斉藤の戦いを見守る別所さん。
本田の勝負をかけた大外刈りがくる。「ちいっ!」
斉藤の必死の姿に、ついに彼女は大声をあげた。


「がんばれ――っ!」


670 :3/3 :2009/01/07(水) 20:59:31 ID:???
その声に呼応したのかどうか、それは判らない。
斉藤は本田の渾身の大外刈りをかわし、ついにその猛攻をしのぎきった。

もう時間が無い。必死の形相で斉藤を捕まえにくる本田。
残り5秒。カウントダウンが始まる。
4、3、2、1!
鳴り響く試合終了を告げるブザー。


「待てっ!」
『ここで時間!浜名湖・斉藤、技ありのポイントを守りきりました!』


「勝った…よかった本当に……」
千駄谷学園を相手に殊勲の一勝。
しかし、別所さんの漏らしたその言葉には、それ以上の感慨があった。

自分の仕事を全うし終えた斉藤は、大きく息をつくのであった。
「ふ――ぅ!」

671 :マロン名無しさん :2009/01/07(水) 21:09:49 ID:???
別所さん…完全に巧のことは見限ったようだ

672 :マロン名無しさん :2009/01/07(水) 22:20:31 ID:???
別所さん心変わり早すぎわらた。

673 :マロン名無しさん :2009/01/08(木) 00:16:08 ID:???
熱しやすく冷めやすい人なんですね

674 :マロン名無しさん :2009/01/08(木) 02:28:28 ID:???
斉藤かっこよすぎ
別所さんは誰でもいいんだな

675 :マロン名無しさん :2009/01/08(木) 03:32:50 ID:???
別所さんは尻軽だなぁ
まぁ巧は全く脈がないから仕方ないけど

676 :1/3 :2009/01/08(木) 20:59:51 ID:???
麻「桜子先輩、石野クンの姿がさっきから見えないんですけど……」桜「えっ?」
保「さっきからここにいるけど」麻「あ、ホントだ」
麻「石野クン、先輩たち試合してんだから寝ちゃダメ」石「ん……」
石「あっ、いつのまに……いやあ、実は昨晩あんまし寝てないんですよね」
石「すっかり熟睡しちゃいました。なんだか4か月半ぐらい寝てたみたいな感じがしますよ」
保・桜「やだあ石野くんったらおもしろいコトゆうのね!」
麻「誰かが忘れてたわけじゃなかったんですね」

巧「あれ?そういえば西久保さんは?」西「オレならここにいるぞ」


第181話 一勝を守れ!


斉藤の試合を見届けた別所さん。そこで経過報告のコピーを試合に夢中で落としていたことに気がつく。
(私、どうしちゃったんだろう?ついさっきまで粉川さんに夢中だったくせに……)
知らず、頬を赤く染めている彼女は自分の心が分からなかった。
(でも、斉藤さんは無理してテーピング外してて心配だったんだもん。それだけよねそれだけよね)
「別所さーん、仕事して」

続く試合、浜高の次鋒には宮崎が出る。
(オレも斉藤と同じく、さっきの尚北戦じゃあみんなの足をひっぱっちまった。
 てめえがそこまで根性みせたんなら、オレだって黙ってらんねえ)
戻ってきた斉藤の肩を心配し、巧は医務室に行くことを勧めるが、斉藤自身は試合場に留まることを選んだ。

677 :2/3 :2009/01/08(木) 21:00:56 ID:???
○次鋒戦 静岡 浜名湖・宮崎 茂VS東京 千駄谷学園・南 元彦

軽量級の宮崎に対し、相手の南は軽重量級程度の体格。
スピード差があるとはいえ、千駄谷学園を相手にこの体格差は厳しいものがあった。
それでも臆することのない宮崎は相手が出てくるタイミングに合わせて一本背負いを仕掛ける。
しかし南はそれをこらえ、逆に裏投げで宮崎の体を畳の上から引っこ抜く。

「技あり――っ!」
『技ありです、南、宮崎の背負いを裏投げで見事に返しました――!』

やはり強すぎる千駄谷学園。
いくら宮崎の体重が軽いといえど、あれだけ低く入った背負いを返すのか。
ポイントを取られた以上、宮崎は攻めていくしかないが、その体重差は30キロ。
取り返すのは決して容易ではない。

捕まえられたら終り。
茂は小技を駆使して南の攻めをかわし続ける。
上に、下に、左に、右に、さらには後に回りこみ――その様は滑稽なほどだった。

「あはは、何だ?あそこは鬼ゴッコでもしてるのか?」
「ああでもしなきゃ、つかまっちまうんでしょうな」
誰に何を言われようとも必死の形相で闘い続ける宮崎。その奮闘ぶりにメンバーも立ち上がる。
「いけ――宮崎!」「まだ勝負はついてない!」
「動いて動いてぶったおれるまで動け――っ!」

678 :3/3 :2009/01/08(木) 21:02:06 ID:???
宮崎の小内掛け。だが懐に入ってきたところを南が捕まえる。
組手を取られ、そこに足払いが飛んでくる――そのとき!
南の足を宮崎はかわし、逆にその足を払い返す!

絡まったまま倒れる両者。

「な、なに!?今のどっちの技なの!?」
桜子が声をあげる。
審判の判定は「技あり」
そして得点表には――宮崎の側にポイントがついた。

『宮崎、技ありとり返した――っ!』
『こちらからは同時に倒れたように見えたんですがっ!?』
『“つばめ返し”ですね!南の出足払いを宮崎がギリギリでかわし、その足を払い返したんですねっ!』
「やったっ!」「茂――っ!」


「いっただろーがっ!まかせとけってよ!」


679 :マロン名無しさん :2009/01/08(木) 23:15:10 ID:???
石野w

680 :マロン名無しさん :2009/01/08(木) 23:16:38 ID:???
そんな自爆ネタを

681 :マロン名無しさん :2009/01/08(木) 23:25:28 ID:???
茂がかっこいい

石野は憐れ

682 :マロン名無しさん :2009/01/09(金) 00:16:20 ID:???
石野いなくても違和感なさすぎだ・・・

683 :マロン名無しさん :2009/01/09(金) 00:27:09 ID:???
つばめ返しって麻雀の技じゃなかったのか…

684 :マロン名無しさん :2009/01/09(金) 01:21:10 ID:???
せ・・・石野?

宮崎強すぎるな。全国トップクラスの高校の軽重量級相手に互角はすごい
しかしいつものパターンだと来週ポカする予感

685 :1/3 :2009/01/09(金) 21:00:00 ID:???
大接戦となった次鋒戦。一度は地力に勝ると見られた千駄谷・南が技ありを奪い優位に立ったが、
3分過ぎに宮崎が“つばめ返し”で技ありを取り返してイーブンとなる。
その後、互いに技は出るもののポイントには至らず、まもなく4分が過ぎようとしていた。
『ここでブザー。結局、次鋒戦は引き分け!引き分けです!』

依然、浜高の一勝リード。茂の健闘は結果的には引き分けだが、勝ちにも等しい引き分けだった。
「あ、あと10秒ありゃあ…か、勝てたんだがよ…」
体力を消耗しきり息を切らせながらも、いつもの強がりを言う茂だった。
「えっ、なーに?小さすぎて聞こえない」

「橘ァ!」「はいっ!」
千駄谷学園監督・小野寺が中堅・橘の名を呼ぶ。
そして彼は静かに一言、命じるのだった。
「1‐1(タイ)にしてこい」


第182話 千駄谷学園の逆襲


千駄谷学園の中堅は、今大会、尚北の玉城と並んで注目の選手とされる橘である。
身長186センチ、体重120キロ、胸囲125センチ、そしてすごいのは背筋力240キロ。
その恵まれた体格に、非凡な柔道センスを持ち合わせる怪物だった。

対する杉も決して臆してはいない。
「ヒボンだかクラムボンだか知らねえが!波に乗ってる者の力をあまく見るなよっ!」
「クラムボンってなんだっけ?」「クラムボンはカプカプ笑ったよ」(※宮沢賢治『やまなし』より)

686 :2/3 :2009/01/09(金) 21:00:59 ID:???
○中堅戦 静岡 浜名湖・杉 清修VS東京 千駄谷学園・橘 大樹

ここが一番の正念場になるだろう中堅戦。
浜高は今、波に乗っている。もしかしたら、という期待はある。
だが(こいつ……)巧は橘という男に何かを感じ取るのであった。

体格差は言うまでもなく圧倒的。杉は正面から組み合うのを避けようとするが、その襟を橘が捕まえる。
(速いっ!)思わず身を乗り出す巧。
そうこうするうちに完全に橘の組手になる。杉は何とか振り払って離れようとするものの――。
「なにやってんだ!逃げろ!」「頭がさがってるぞっ!」
「…………!」


「お、重い!動けん!」


杉がこれまでに経験したことがないほどの橘の怪力。
逃げる逃げないの以前に杉には動くことさえできなかった。
そして次の瞬間――「ぐあっ!」
竜巻にでも巻き上げられたかのように杉の体は吹き飛ばされ、畳へと叩きつけられた。

「杉――――っ!」
「一本!」「それまで!」

『きまった!千駄谷・橘!も〜〜のすごい払い腰!
 浜名湖・杉を空中で弧を描くように投げました。文句のつけようのない一本!』

文字通りに為すすべなく敗れた杉。あまりにも力量が違いすぎた相手。
橘の実力はひょっとしたら、玉城よりも上をいくかもしれなかった。

687 :3/3 :2009/01/09(金) 21:01:46 ID:???
中堅戦の結果によりスコアは1‐1のイーブン。
しかし、千駄谷の一勝が一本勝ちなのに対し浜名湖の一勝は優勢勝ちなので、
この時点で千駄谷学園がわずかながらリードをしていることになる。

「くそう、千駄谷め!」
闘志をみなぎらせて立ち上がるのは副将・三溝。

それに対するは千駄谷学園副将・鳶嶋雅隆。
「雅隆!」「はいっ!」
千駄谷の小野寺監督は、先ほどと同様、静かに命令を下した。


「決めてこい」
「はいっ!」


『さあ、副将戦です!千駄谷学園、副将は2年生コンビのもういっぽう、鳶嶋(弟)。
 対する浜名湖は、身長197センチ、体重125キロの巨漢・三溝!』

(出てきたな、鳶嶋!いったいどうゆう柔道をするヤツなんだ…!?)

688 :マロン名無しさん :2009/01/10(土) 02:02:45 ID:???
杉・・・やられ役乙

689 :マロン名無しさん :2009/01/10(土) 05:31:43 ID:???
鳶嶋が巧のライバルっぽいからその凄さを見せつけるためにミッタン負けそうな予感

690 :1/4 :2009/01/10(土) 20:58:51 ID:???
第183話 鳶嶋雅隆

(さっきの橘、この鳶嶋…千駄谷のこの二人はなんか今までのヤツとは違う…気をつけろよ、三溝……)
巧が本能的に感じ取ったその差異――それが果たしてどれほどのものなのか。
1‐1のまま勝負は残り二つ。どちらも退けない展開である。


○副将戦 静岡 浜名湖・三溝幸宏VS東京 千駄谷学園・鳶嶋雅隆

コキッと軽く手首を鳴らし、三溝に挑みかかってくる鳶嶋。
その動きは素早く、三溝は組手を取ることができず翻弄される。と――懐に飛び込まれた。
「うお!?」
担ぎ上げられる三溝。とっさに右手を床についてこらえようとするも、
「だあっ!」
鳶嶋はそこからさらに追い込んで三溝を体ごとひっくり返す。
「技あり!!」
(今のは…袖釣り込み腰!)

そのまま流れるような動作で寝技に持ち込む鳶嶋。
71キロそこそこの鳶嶋に、125キロの三溝があっさりと押さえ込まれてしまう。

「よーし、いいぞ雅隆!」「これでもらったっ!」
既に勝った気分の千駄谷サイド。
「やったな佳隆!おまえゆずりの袖釣り込みで、あのでかいのを投げたぜ!」「ああ」
弟の戦いぶりを見つめる佳隆は、喜びつつもわずかに汗を浮かべるのだった。

(強くなったな、雅隆。すでにおまえの実力は、このオレを超えてるかもしれん)

691 :2/4 :2009/01/10(土) 21:00:19 ID:???
「返せえ三溝――!ここで一本負けしたら、負けが決まってしまうんだぞっ!」
西久保の声が飛ぶ。
このまま三溝が一本負けをしてしまったら、相手は一本勝ち二つ!こちらは優勢勝ち一つ!
大将の巧がたとえ次に勝ったとして2‐2、しかし内容で負けてしまうのだ。

「くそ――っ!」
三溝が腕を伸ばして上になっている鳶嶋の帯をつかむ。
しかしもうすぐ20秒。あと5秒で技あり、合わせて一本が決まってしまう。
「帯をとられたぐらいじゃ返されん!いくら、あんたの力が強くてもなっ!」
そう言い切る鳶嶋。だが、三溝は怪我をしている左手でさらに鳶嶋のズボンの裾を捕まえた。
とたんに走る激痛。しかしそれでも構わずに三溝は力を込め――、
「うおおおお!!」
鳶嶋の体ごとひっくり返した。
「抑え込みとけたっ!」
時計は23秒。ギリギリで間に合うことができた。

早くも圧倒的なポイント差をつけられてしまった三溝。だが時間はまだある。
三溝は失点を取り返すべく攻めていく。
(負けてたまるか!大将の巧に望みをつなぐんだ!)
彼が考えたのは自分が勝つことではなく負けないこと。そこには巧に対する信頼があった。

だが――(この手は…!)鳶嶋は三溝の左手に気づいてしまった。
脱臼した小指を薬指に添えてテーピングで固定しているため、
鳶嶋の右袖をつかまえている指は親指から中指までの三本のみ。
自分の袖から三溝の左手をあっさりと引き剥がした鳶嶋は、そのまま必殺の袖釣り込み腰に入る。
「でやああっ!」
三溝の体が上下逆さまになり、直後、大きな音を響かせて畳に投げつけられた。

「一本!それまで――っ!」

『でました――っ!鳶嶋、袖釣り込み腰一本――っ!!
 三溝の巨体がまさに一回転!完璧な一本勝ちです!!』

692 :3/4 :2009/01/10(土) 21:01:40 ID:???
副将戦、決着。
この時点で千駄谷は一本勝ち二つ、浜名湖は優勢勝ち一つ。千駄谷学園のベスト4進出が決定した。
初出場校としては浜高は大健闘といえるが、ついに準々決勝で力尽きたのであった。
だが、試合そのものはまだ終わったわけではない。巧の大将戦が控えているのだ。

「まっ負けちゃったんですね……」
「いいの、みんながんばったんだから。春は予選負けだったのが、ベスト8までいけたんだから」
敗戦に涙ぐむ麻理を保奈美が元気付ける。「そうだね」と桜子も気を取り直す。
「おまけに、今からまだ試合しなくちゃいけないっつうヒサンなヤツいるし。しかたない、応援してやるか」


○大将戦 静岡 浜名湖・粉川 巧VS東京 千駄谷学園・鳶嶋佳隆

千駄谷の大将は副将の雅隆の実兄、鳶嶋佳隆。
「鳶嶋先輩ファイトオッ最後、決めてくださいっ!」
試合を終えたばかりの雅隆からの声が飛ぶ。
(さあ、粉川、見せてもらおうか。玉城を破ったというその実力を!)

まず仕掛けたのは佳隆。しかもその技は弟の雅隆と同じ袖釣り込み腰。「技ありー!」
『おおっと、いきなり片手からの袖釣り込み腰!弟である雅隆と同じ技で技ありを先取しました、鳶嶋兄の佳隆!』
その実況に対し、千駄谷の小野寺監督は心の中で呟く。
(兄が弟と同じ技を使ってるんじゃなくて、逆なんだがな……)

もともと雅隆の使う袖釣り込み腰は、兄の佳隆が長いことかけて体得したものを弟の雅隆に教えたもの。
この兄がいたからこそ、弟、雅隆の強さがあるのである。

693 :4/4 :2009/01/10(土) 21:02:27 ID:???
佳隆の軽い足技に振り回される巧。
その気の抜けたような戦いぶりには佳隆も失望を禁じえなかった。
「ちっ!これが本当に玉城を倒した男なのか!?ガッカリしたぜ、粉川!サッサと片付けてやる!」

再び袖釣り込みに入る佳隆。
だが――担ぎ上げられるその寸前、巧は前に飛び込んでその技をかわす。
そして着地直後、逆襲の一本背負い――!

「おおっ!」

佳隆の背が畳を打つ。「なっ!?」
彼が顔を上げたとき、目の前には「一本」を宣告する審判の姿が。

ほんの一技による決着。あまりにも予想外のその事態。
「に、兄さん!」
雅隆もまた、思わず身を乗り出して声をあげる。


そのとき雅隆は――陽炎のような闘気をまとう巧の姿を目の当たりにしたのであった。

694 :マロン名無しさん :2009/01/10(土) 23:39:59 ID:???
袖釣り込み腰か…マニアックな技だな

695 :マロン名無しさん :2009/01/11(日) 00:03:46 ID:???
袖釣りって背負い投げを逆回転させたような技だよね。
背負いメインの巧との対比ってことだろうけど、うまい設定だと思うわ。

696 :マロン名無しさん :2009/01/11(日) 03:08:30 ID:???
兄貴かませすぎるww

697 :1/3 :2009/01/11(日) 20:59:47 ID:???
第184話 みあげる彼方

『驚きました、浜名湖高校・粉川、一本です!
 千駄谷学園の選手があそこまで奇麗に投げられたのは、今大会はじめてではないでしょうか』
大将戦、巧は鳶嶋兄に一本勝ちをしたものの時すでに遅し。ベスト4進出は千駄谷に決まった後だった。

「並ぼうぜ。巧」
主将らしく杉が促し、試合後の整列をする。
彼らの健闘をたたえ、応援席からは温かな拍手が贈られるのであった。

そして、別所さんからも――。
(負けたけどいい試合だった。それにあの人たちには、まだ来年があるもん。来年こそ……)
と、そこで彼女は大学関係者の会話を耳にする。
高校チャンピオン玉城に千駄谷の主将・鳶嶋兄を破った巧を、奨学金をつけてでも呼ぼうというのだ。
(え、え――っ大学のスカウトォ?うそ、すごーいっ!)
この朗報を浜高の皆に伝えようとする彼女だったが、
「あっ、まだ2年だよコイツ。あせることないわい」「来年見てからだな」
ぬか喜びと分かり、盛大にすっこけるのであった。「別所さん仕事して……」

4面で行われていた準々決勝も、残すは最後の一試合。
静岡A代表の三工と埼玉代表・大宮二高の対戦である。

これまで先鋒戦から副将戦まで全て引き分け、0‐0のイーブン。
三工の大将・藤田と大宮二高の大将・高崎の一騎打ちである。

「いけ――っ!藤田ァ!」「たのむ、ベスト4に連れてってくれーっ!」
チームメイトたちの応援を受け、藤田は必殺の小内巻き込みを仕掛ける。
「一本、それまで!!」
これにより三工は初の全国ベスト4、3位確定を果たした。

698 :2/3 :2009/01/11(日) 21:00:46 ID:???
観戦をしていた石塚、平八郎の個人戦出場組。
藤田に勝てれば全国大会でも勝てる、と平八郎は明確になった目標に闘志を燃やす。
その様子を羨ましがる石塚。彼は今年三年生。これが最初で最後のインターハイなのだ。
(そうなんだ、石塚さんは三年生。最後の夏だし、がんばってほしいぜ)
ところが、その彼のすぐ横で石塚と袴田さんは昼食の話などしていた。
二人の仲睦まじい会話に居た堪れなくなった平八郎は、黙ってその場を去る。
(消えよ……充分ハッピーな青春じゃねえか。オレにくらべれば……)

試合が終了し、引き上げていく千駄谷学園の面々であったが、その顔に喜びの色は無い。
彼らにとってはベスト4ぐらい当然――ということもあるのだが、
それ以上に先ほどの試合、内容が良くなかったのが原因らしい。
なにしろ、主将の鳶嶋兄が負けたのだから。

と、そこに彼らを待っていたかのように、尚北の玉城がたたずんでいた。

(兄さん、玉城だ)
雅隆が兄に耳打ちをする。しかし、彼はあからさまに不機嫌になっていた。
「“兄さん”?おまえ、さっき試合の時も一回いったな」
「す、すみませんでした。鳶嶋先輩」
慌てて謝る雅隆だったが、佳隆は声を荒げてそんな弟を叱った。
「気がゆるんでるから、忘れるんだ!そんなこって、優勝できるか!」
雅隆を突き飛ばす佳隆。その剣幕に、他のメンバーも反応に困る。

そして――「クッ。クックック」彼らのそんな姿を玉城は笑うのであった。

小野寺監督に怒られ、去っていく千駄谷学園の面々。それを見届けてから玉城は思う。
(インターハイか……粉川に借りをつくったまま高校を引退しちまうとはな)

699 :3/3 :2009/01/11(日) 21:01:30 ID:???
その頃、巧は――体育館の外で空を見上げていた。

個人戦の開始は午後からなので、それまではやることがない。
ミッタンは医務室。やはり左手が痛いらしく、個人戦に出られるかどうかは微妙である。
「ベスト8かあ……」と、誰ともなしに茂が呟く。
それに「大したもんだ」と斉藤が返した。
「そう思わねえ?オレたちまだ全員2年なんだぜ」

他のチームはどこもレギュラーは3人以上3年生で、来年はそいつらがいなくなる。
しかし浜高メンバーはそのまま。するとどうなるか?
斉藤の言わんとしていることは分かりすぎるほど分かるが――。
「けっ、そんなこといって、その気にさせて、また練習量増やそうとかいいだすんだろ」
「その手にゃ乗らないわよ」
茂も杉も乗り気ではない様子であったが、斉藤は、それはそんなに夢でもないと考えていた。
(オレたちには巧がいるからな。できるさ、きっと)

「なあ、巧?」
斉藤は巧に声をかける。
「えっ、何?」
間の抜けた声で返す巧。またボーッと空を見上げていた彼であった。
「オレ、ボーッと考え事してると、すぐ上を見上げるくせがあるのかなあ」

と、そこに桜子たちが戻ってくる。
「あー、いたいたっ!さがしたんだから、もー。ミッタン個人戦出られるってさ。骨に異常はないって」
その良い報せを皆が喜ぶのであった。

インターハイ団体戦は、その後、準決勝で三工と天味が破れ、千駄谷と東名大藤沢で決勝を争った。
決勝は代表戦の末、東名大藤沢が優勝。3度目のインターハイ制覇を成し遂げたのであった。

700 :マロン名無しさん :2009/01/11(日) 21:09:03 ID:???
別所さんが何時の間にかギャグ要員にw

701 :マロン名無しさん :2009/01/12(月) 00:21:25 ID:???
別所さん仕事しねえw

702 :1/4 :2009/01/12(月) 21:00:46 ID:???
第185話 個人戦開始

「杉よ、斉藤よっ、団体戦はごくろうだった!後はオレたちにまかせておけっ!個人戦で天下を取るっ!」
午後からの個人戦を前にして気勢の上がる茂。
エントリーをしているのは重量級のミッタン、軽中量級の巧、軽量級の茂の三人。
まあ、巧はいつも通りのマイペースであったが。
午前中まで団体戦で「本当に今からやるの?」と緊張が解けてしまった様子の巧。
気合を入れなおすため、仲安を連れて練習用道場へ打ち込みをしにいくことに。

そしていよいよ体重別個人戦一回戦が開始。
地元代表の一番手として出てきたのは、軽中量級の石塚である。

同じ地元とはいえ浜高の選手ではないので三溝家のおねーさま方は応援をする気になれなかったが、
試合場に出てきた石塚の整ったビジュアルを見てその考えが一変する。
(まあ(ハァト)これはレア物!)
目がハートマークになった次女三女。妹たちのその様子に引き気味の長女。
そのとき、麻理の声が響き渡った。
「あ――っ!石塚さんだあーっ!袴田さん袴田さん!彼氏の出番ですよ!」
そんな大声で彼氏とか公言されては恥ずかしいことこの上なし。おまけに、
「なにい?」おねーさま方の目が怖いです。
試合場では石塚が速攻の大外で有効を先取。幸先の良いスタートである。

練習用道場に入った巧と仲安は、そこでとんでもない光景を目の当たりにしていた。
道場の一角で打ち込みをしているのは千駄谷学園の選手たち。
「みんな汗だくだ。これじゃウォーミングアップじゃない。稽古と変んないじゃないスか」
仲安のみならず、巧もその姿に平静ではいられなかった。
「50!」
鳶嶋が打ち込みの締めに相手を投げ飛ばす。
「さすが千駄谷だねえ。打ち込み4セットもやってんのにキレイに投げやがる」
壁際で見ていた選手の呟きに仲安は驚く。(えっ、50本をもう4回も!)
だが千駄谷の小野寺監督は、さらに選手たちに命じるのであった。
「よし!5セットめはじめっ!」

703 :2/4 :2009/01/12(月) 21:01:36 ID:???
「あ、あんた。粉川ってヒトだろ?」
先ほどの壁際にいた選手が気さくに話しかけてきた。
玉城と鳶嶋兄を倒したすでに巧は有名人になっていたのだ。
彼は神奈川県代表の長谷といい、軽量級でエントリーをしているらしい。

というところで千駄谷学園の練習が終了。
「よし!死んでた目が生き返ったな、個人戦いってこい!」
小野寺監督の檄を受け、気合が入る選手たち。
練習用道場の入り口ですれ違った巧と鳶嶋、二人は互いに激しい視線をぶつけ合うのだった。

千駄谷の選手たちが出て行ったことで安堵する長谷。ああいう息苦しいのは苦手らしい。
「知ってる?あいつら団体の決勝で負けたじゃん。その後すごかったんだぜ――」
なんでも決勝で敗れた彼らは、この道場で突然泣き出したらしい。
『泣けっ!おまえらは日本一の練習に耐えぬきながら日本一になれなかったんだ!悔しくて当然だ!』
そしてしばらくした後、急に監督が『三人打ち込み50本』と言うと、全員パッと泣き止んで始めたという。
そこまでいくと、さすがに怖いものがあった。

いいことを聞いた、と長谷に礼を言い、練習用道場を後にする巧。
長谷は巧のことを応援していると口で言いつつ、その内心は別のことを考えていた。
(あんたは階級が違うからな。もし軽量級だたとしたら、オレが優勝するのに一番ジャマなヤツになってたぜ)

巧が試合場に戻ると同時に、石塚の勝利の報を受ける。
最初の有効でそのまま優勢勝ち。この勢いを借り、皆で予選突破をしようと地元勢の意気が上がる。
次に試合が近いのは軽重量級の平八郎。皆もそちらの応援に移動をしようとするが、
その時ちょうど鳶嶋の試合が始まるところであった。
「おい巧、いくぞお!」「ちょっと待ってくれ!見たい試合が……」
ある、と言おうとしたところで――、
「りゃああっ!」
鳶嶋の袖釣り込み腰。一本。
「鳶嶋だ……」「おい、まだはじまったばかりじゃないのか?」

(強い……やっぱりこいつは何か違う……)

704 :3/4 :2009/01/12(月) 21:02:38 ID:???
「おう巧!今の見たか?」
話かけてきたのは西久保だった。
「しっかしとんでもねえ野郎だな。鳶嶋ってヤツは。オレの目から見ても、直すところなんて見つからんよ」
西久保をしてそこまで言わしめる鳶嶋の実力は、計り知れないものがあった。
「しかも、何の因果かオマエはヤツの兄貴を団体戦の時、ぶん投げてる。
 もし、ヤツとあたったら、それこそカタキとばかりに闘志燃やしてくるぜ。どうする?」
その西久保の問いに対し――巧は笑みを浮かべるのだった。
「フン。わかってる、ようだな」

個人戦一日目。石塚が優勢勝ちしたのを皮切りに、地元勢が活躍した。

軽重量級では暁泉・堀内平八郎が大外刈り・技ありで優勢勝ち!
同じように軽量級の宮崎も技ありとって優勢勝ち!
一回戦から一本勝ちして強さを見せつけたのは、団体戦3位の原動力となり、
中量級優勝候補に浮上してきた、三工の藤田恵!
「ちょっとまて!やつらといっしょにやってるワケじゃないぞ」
そして、もう一人は当然、粉川巧――1分7秒、鮮やかな背負い投げで、文句なしの一本勝ち!

「あれが玉城を破った粉川!」「さすがに一本勝ちしたな!」
「こうなってくると鳶嶋・弟の袖釣り込み腰か、粉川の背負いか!」
「軽中量級の優勝争い、おもしろくなってきましたな!」
騒ぐ周囲をよそに、鳶嶋は静かに巧を見つめていた。

705 :4/4 :2009/01/12(月) 21:03:09 ID:???
ところで、三溝はケガのせいもあってなかなか良いところが出せず、一回戦を引き分けてしまった。
「えっ?ちょっと変じゃない?なによ、なんで個人戦で引き分けがあるの?」
桜子の疑問もごもっとも。個人戦の予選はトーナメント方式ではないのである。
「予選は減点方式といって、3回試合して、一本負けすると−4点、判定負けで−3点ってひかれてって、
 合計−5点以上いっちゃうと予選落ちになるんです。
 引き分けでも2・5点マイナスですよ。つまりこの人はもう残り2・5点しかありません。〔三溝〕
 優勢勝ちでも1点マイナスされちゃうんです。で、この方とこちらとコレが、残り4点〔石塚・堀内・宮崎〕
 で、無キズの残り5点がこの二人。〔粉川・藤田〕
 で、明日の午前は、残りの二回戦、三回戦やって、生き残ったヒトが、やっと午後の決勝に進めるんですよ――っ!
 わかりました――っ?」
以上、実際に選手本人を引っぱりまわしての麻理の解説でした。
「わ、わかった、もーいいよマリちゃん」

個人戦は明日こそが本番。今日は帰ってゆっくりと休息。
巧は合宿所の玄関前で、夜空を見上げていた。

その後ろから保奈美が声をかける。
「明日の作戦とか考えてるの?巧クン」
「まあね」などと返事をするが、全然何も思いついてなどいなかった。
「千駄谷の鳶嶋っているじゃん。弟のほう」「うん、強いってね……」
勝てるよね、と保奈美に問われるものの、巧は「わからない」と返答。

「違うんだよ、あいつら……何か……ね」

それは巧が彼らを見てきてずっと感じていたことであり、
また千駄谷学園が名門校だからという話ではなかった。
「違うと思ったのは、鳶嶋弟と橘だけだ。何ていえばいいかわからないけど、とにかくあの二人は違う」
だが、巧は弱気になっているというわけではない。
「やるからには勝ちたい。特に鳶嶋とは本当に勝負したくなった。そういう相手なんだよ」

星空の下、「明日、がんばってね」と巧を励ます保奈美。
そしてその同じ空を、同時刻、鳶嶋もまた見上げていた。

706 :業務連絡 :2009/01/12(月) 21:04:24 ID:???
次回は一回休載して、単行本19巻のおまけを紹介します。

707 :マロン名無しさん :2009/01/12(月) 21:36:11 ID:???
長谷はあれで軽量級か、軽重量級ぐらいありそうだが

708 :マロン名無しさん :2009/01/12(月) 23:05:50 ID:???
眼中にない兄貴涙目すぎるw

709 :マロン名無しさん :2009/01/13(火) 01:55:54 ID:???
個人戦ミッタンは出場するなよ、怪我してるんだから

710 :マロン名無しさん :2009/01/13(火) 07:24:24 ID:???
>>707
軽重量級って平ちゃんとか玉城の階級だぞw

711 :マロン名無しさん :2009/01/13(火) 11:09:20 ID:???
あ、中量級かな?巧の階級の間違い

712 :マロン名無しさん :2009/01/13(火) 15:37:58 ID:???
重量級
軽・重量級
中量級
軽・中量級
軽量級

軽中量級のことだな

713 :マロン名無しさん :2009/01/13(火) 20:15:06 ID:???
軽・軽量級は?

714 :マロン名無しさん :2009/01/13(火) 20:35:40 ID:???
今はあるよ
(Wikipediaで調べてみな)

715 :1/4 :2009/01/13(火) 21:05:35 ID:???
○単行本第19巻 (表紙:鳶嶋雅隆 裏表紙:別所愛子)

・四コマその1

1.斉(山さん)「ハイ、こちら捜査一課」「なにい、殺し!?」

2.茂(ボギー)「金持ちのダンナの強盗殺人事件か」
  斉(山さん)「鑑識の結果、何か鈍器のようなモノでなぐられたのが死因だそうだ」

3.石(でんか)「鈍器か……鈍い器と書いて鈍器…」
  三(ゴリさん)「おいっ、みんなっ!」

4.三(ゴリさん)「これを見てくれっ!」(血まみれの花瓶)
  杉(ボス)「!」

5.杉(ボス)「それは花びんだっ!」
  斉(山さん)「鈍器をさがせどんきをっ!」
  三(ゴリさん)「そ、そうか!血がついてたんでつい…」
  石(でんか)「鈍い器っていったいどういう器なんだろう?」
  鈍器のイミも知らぬ彼らに事件を解決できるのか?カバー裏へつづく!

716 :2/4 :2009/01/13(火) 21:06:13 ID:???
・四コマその2

1.杉(ボス)「で、犯行のあった夜、被害者を最後に見たのが、お手伝いとおかかえ運転手」
       「そして被害者と最近つきあっていたのがバーのホステス、アケミ」

2.杉(ボス)「さて、ここまでの捜査で他に何かわかったことがあるか?」
  桜(シンコ)「ボス、今、気がついたのですがっ!」

3.桜(シンコ)「どうして金持ちが自宅で殺される時って、いつもいつもガウンを着てるんですかっ?」
        「日本人のくせに変ですよっ!」

4.「おおっ、確かにっ!」
  「そういえばホステスの名前もアケミだっ!」
  「ホステスってアケミ以外にいないの?」

5.「そんでもって金持ちの家で証言するヤツっていったらお手伝いさんか、
   運転手って相場がきまってるよなー!」
  「そーそ!」「他にパターンねえのかよ?」
  事件は迷宮入りになりそうであった……。

717 :3/4 :2009/01/13(火) 21:06:59 ID:???
○特別審査員をむかえた第19回 サンデーコミックス名物『絵筆をもってね!』

・今回は、超まじめな藤田和日郎先生と、ちょっとHな久米田康治先生がゲストとして登場!!
 選評/河合克敏 応募総数:2013点 入選:52点

 グランプリ:宮城県・NEWホンジャマカ〔巧・保奈美・龍子先生・他多数〕
 〈河合〉「これは細かい。大作っスね。根性でグランプリ!」
 〈藤田〉「龍子先生のアゴの下の男の人がイイすね〜。まじめそうで…。
 〈久米田〉「右下の小さな人が気になってしようがないです。誰だ、教えてくれ?
 〈河合〉「みんな、そんなトコばっか見るんだもんな!

 準グランプリ 藤田賞:北海道・かすがはるひ〔保奈美・桜子〕
 〈藤田〉「う〜ん惚れた。こんな瞳で見つめられて、魂を吸いとられない男がいるか?いや、いない!!」
 〈河合〉「藤田さんの男心の金銭をふるわせたようですね、コレは…」(藤「これって変?」とら「恋だろ恋!」)

 準グランプリ 久米田賞:栃木県・せつのき佳夢〔保奈美・桜子・麻理・袴田〕
 〈久米田〉「これはすばらしい。このまま柄トーンとして使いたいです」
 〈河合〉「おサイケな感じでうまいっスよね」

 準グランプリ 河合賞:山梨県・あんにゅい〔保奈美・桜子・麻理(2コマ)〕
       1.桜「ホナミ!何やってんの?」
         保「あ、うん。試合の必勝祈願にプロミスリングあんでるの」
       2.桜「え?プロレスリング?!」
         保 ピクッ  ※女の子はおまじないをマジでするんでチャカすと怒られる(実話)
 〈河合〉「今回、個人的に一番好きっス。わざわざ河合賞ってコトもねーか!」

718 :4/4 :2009/01/13(火) 21:07:34 ID:???
 topix:愛知県・ズームイン杉浦〔桜子(※ニセモノです。ビンボーマニアックスは載るためにはホント手段を選ばない!!)〕
     埼玉県・なかうね〔保奈美(5番近藤、『しり字』やります)〕
     神奈川県・AKI〔麻理(みかん星人、あらわる!!)〕

     東京都・GINchan〔西久保(あにき)〕
     東京都・中山克美〔桜子(西久保さんやめて)〕
     ※この二枚は、別々の人が描いてるケど、あきらかにつるんでない、こいつら…オイオイ西保久はねえだろう!!

     千葉県・HARU〔浜高メンバー〕
    〈藤田〉「かっこいいキャラクターづくりの手本とさせていただきます。シンプル・イズ・ベストだ」
    〈河合〉「ホントにカットに描いてんの、この人」
     とら「ツンプル イズ ベスト!」うしお「シンプルだろシンプル!」

     青森県・ゆーごん・M〔石塚・袴田(ちいさい袴田サン&大きい石塚クン)〕
    〈久米田〉「『ああん、さけちゃう!』なんていったら帯ギュのファン怒りますかね?」
    〈藤田・河合〉(イスから転げ落ちそうになる)

719 :マロン名無しさん :2009/01/13(火) 21:21:04 ID:???
どんきってあれだろ、東京にある深夜でも開いてるディスカウントショップ

720 :マロン名無しさん :2009/01/13(火) 22:27:09 ID:???
こいつら本当に捜査する気あんのかw

721 :マロン名無しさん :2009/01/14(水) 01:01:50 ID:???
何やってんだビンボーマニアックスwwwww

722 :マロン名無しさん :2009/01/14(水) 07:21:10 ID:???
藤田・久米田というW変態が来るとカオスだなw

723 :1/3 :2009/01/14(水) 21:02:37 ID:???
第186話 サバイバルゲーム

インターハイ大会三日目。午前中は個人戦予選の二回戦と三回戦が行われる。
予選はインターハイ独特の減点方式であり、ここで出場選手は三分の一以下になるまでふるい落とされるのである。

応援席には暁泉学園の面々が合流し、いよいよ大所帯になるものの、そこに袴田さんの姿が見えない。
明日はインターハイ女子の試合なので、県の代表で近くの高校で合同練習があり、彼女はそちらに参加しているのである。
麻理もそれに行っていて、午前中はずっと練習。つまり午後の決勝トーナメントにならなければ来られないのだ。
「そいつは大変だあ、石塚さん」と、ひょっこり現れた茂は小声で石塚に囁く。
「だってそうでしょ、石塚のダンナ。なにがなんでも決勝トーナメント残らなきゃならないじゃん。
 せっかく袴田さんがかけつけてきたら、もう終わってたじゃガッカリするでしょう?」
言ってることはその通りなのだが、いかにも意地が悪い。
その時、二階席から桜子が丸めたパンフレットを茂めがけて投擲。
「味方にいらんプレッシャー……かけてるんじゃないっ!!」
見事に後頭部に命中し、悪魔はそのまま沈黙した。

それはそれとして、石塚の二回戦目が始まる。その対戦相手は――、
「赤、岐阜代表・日置!!」
なにやらひどく地味な顔をした男だった。
(ん、日置?どこかで聞いたような……)

一方、女子代表練習会場では現在、乱取りの真っ最中。
組み合わせにあまった袴田さんは石塚の勝利を祈り、その後ろで麻理が重量級の代表をぶん投げたりしていた。

再び試合場。石塚は岐阜の日置を相手に有効を二つ取られ、判定負けを喫してしまった。
「どうしたんスか、石塚さん」「ぜんぜん技が出てなかったじゃん!!石塚さんらしくない」
心配して駆け寄る巧たち。石塚は技が出なかったのではなく出せなかったのである。
「強いよ、大垣商大付属の日置。さすがに去年2年生で、この階級2位になっただけある」
対戦中に石塚は相手の正体に気づいていた。

724 :2/3 :2009/01/14(水) 21:03:22 ID:???
戻っていく日置は、千駄谷の鳶嶋に敵意のこもった視線をぶつける。
だが、それも仕方のないこと。本来なら今年は優勝候補の筆頭であるはずが、
巧と鳶嶋、この二人の強力新人に話題をさらわれてしまっているのだ。
しかし、その実力は折り紙つき。軽中量級はこの三人の三つ巴の争いになりそうであった。

日置に敗れたことで石塚のポイントは−3。一回戦の優勢勝ち−1と合わせて計−4。
残りは1点。いよいよ後がなくなってしまった。
「まだ、大丈夫さ。完全に死んだワケじゃない。三回戦、一本勝ちすりゃあいいんだからね」
なんとしても決勝に残りたい石塚。彼はまだへこたれてはいなかった。

次の試合は軽重量級二回戦、暁泉学園エース・堀内平八郎の出番。
平八郎は内股で技ありを取り、そのまま優勢勝ちを決めた。
「やったっ!キャー、平八郎強ーい!」
「キャー!このヒトまただきつくう!」
永田の隣になってしまった桜子は災難としか言いようがなかったが。

続いて軽量級の宮崎。2分すぎに巴投げで一本勝ち!
重量級の三溝。大内刈り有効から横四方固めで一本勝ち!
「まー、やるじゃない、浜高も」
「ええ、ホント。お願いだから席かわって保奈美」
「あ、巧くんの出番だっ!」
桜子の要請を保奈美は聞こえないふり。
そして巧は背負い投げで連続の技あり、合わせ技一本。
一回戦に続き二回戦も一本勝ちしたため、三回戦なしで予選通過の権利を得た。

石塚は息を吐き、その精神を集中する。
(落ちつけ!自分はできると思わなくちゃ。オレは絶対に一本勝ちできる!オレはできるよな、袴田さん)
そして石塚の三回戦が始まった!

725 :3/3 :2009/01/14(水) 21:04:11 ID:???
例え勝っても優勢勝ちでは失格してしまう石塚は積極的に攻めていく。
だが、その体落しをかわされ、逆に足をとられて刈り倒されてしまう。判定は「有効!」
即座に寝技を狙って覆いかぶさってくる相手に対し、
石塚は下になった体勢から相手の足を自分の足で払い、体勢をそのままひっくり返す!
「せやっ!」
「抑え込み――っ!」
立ち技のセンスのみならず寝技にも長ける石塚。相手を見事に縦四方固めに捕らえた。
そのまま30秒が経過し、「一本!それまで!」主審の手が挙がる。
これで石塚の予選突破。決勝トーナメント進出が確定した。

彼にとってはこれが最後の大会。そういうのはやはり彼女に見てもらいたいもの。
これで袴田さんも間に合いそうでめでたしめでたし。
茂は自分の軽率な振る舞いを反省するが、結果オーライである。
(ふう、なんとかなったよ。袴田さん……)

その頃、女子の練習も終了。麻理は袴田さんと一緒に試合会場へと向かう。
麻理は石塚のことが気になるだろうと袴田さんに尋ねるが――、
「石塚くんのことなら大丈夫。絶対に残ってる。決勝トーナメントまでは」
彼女は凛としてそう言い切るのであった。
「わあ、信じちゃってますね?」
「てへへ」
少々照れる袴田さん。
「急ご、来留間さん。ちょっと暑いけど走っちゃおう」「ハイ!」

726 :マロン名無しさん :2009/01/14(水) 21:23:35 ID:???
・・・なんだこの青春は、羨ましいを通り越して妬ましいも通り越して恥ずかしい

727 :マロン名無しさん :2009/01/14(水) 22:41:38 ID:???
ちっ石塚め

728 :マロン名無しさん :2009/01/14(水) 22:47:01 ID:???
別に味方ではないよな・・・同地区なだけで・・・
彼女いるし・・・イケメンだし・・・うん、味方じゃないな。

729 :マロン名無しさん :2009/01/14(水) 23:31:40 ID:???
オカマキャラはオカマなだけで男なのにセクハラが許されるのはなぜなんだぜ

730 :マロン名無しさん :2009/01/15(木) 00:24:04 ID:???
いや、海老塚許してないじゃん。言えないだけで。

731 :1/2 :2009/01/15(木) 21:02:24 ID:nX5jaI6u
Q.別所さんは近ごろファンの間で
 “姫”というニックネームで呼ばれているらしいです。さてどうして?

1.男たちがみんな言うことをきくから。
2.気が多くて、好きな男の子がコロッと変るから。
3.仕事をしないから。


第187話 決勝トーナメント


インターハイ個人戦予選、三回戦までが終了。
巧と石塚はすでに決勝トーナメント進出を決めていたが、
軽重量級にエントリーしていた暁泉の堀内平八郎は三回戦で判定負けしてしまい、減点数−5で失格。
「ちくしょうっ!!決勝にいったら玉城と勝負できたかもしれないのに!」
そう、軽重量級の優勝候補は尚北の玉城。彼は危なげなく決勝進出をはたした。

重量級の三溝も三回戦で負けてしまい失格。相手は運悪く、強豪天味のナンバー2といわれる選手だった。
「やっぱり、片手ケガしてる状態で勝てるほど甘くはないってことか」
三溝のケガは、結局ギプスで固定しなくてはならないので、最後の試合が終わった直後、病院へ向かった。

I・H個人戦の決勝に残るのはそれほど難しい。しかし軽量級の宮崎ががんばった。
結果こそ引き分けに終わったが、三回戦までの減点は−3・5。予選通過である。

そして、ついに個人戦決勝トーナメントの組み合わせが発表。
「日置!組み合わせが出たぞ!おまえの一回戦の相手は、粉川巧だ!!」
玉城を倒した男の名に、日置本人より周囲が反応してどよめく。
大垣商大付属の監督は巧の投げ技のセンスを天下一品と評した上で、
「しかし、おまえにも天下一品の寝技がある!特に関節技は高校一の技術のはずだっ!」
そう日置を鼓舞する。予選まではその手の内を見せなかったのである。
「わかってます!最初から全開でとばしますよ!」
日置は静かに自信をみなぎらせるのであった。

732 :2/2 :2009/01/15(木) 21:03:27 ID:???
「それにしても、しょっぱなから石塚さんを負かした日置と当たるとはな」
「えっ。ヒオキって石塚さんを負かしてたの?」
「今ごろなに言ってんだオマエはっ!」
横に袴田さんがいるというのにデリカシー皆無な斉藤・桜子・杉の三人。
(そんなに負かした負かしたって言わないでよ……)
おまけに巧と日置の試合はいきなりの第一試合。クジ運があるんだかないんだか。

そこで誰かが巧に声をかける。振り向くとそこに立っていたのは、
「鳶嶋……!」
同じ軽中量級にエントリーしている千駄谷学園の鳶嶋だった。
「鳶嶋…?」「……くん。鳶嶋くん」
いきなりの接近に驚いて思わず呼び捨てにしまった巧、即座に訂正をする。

それにしてもどうして彼が突然やってきたのか。前置きなしに話し始める。
「日置の本当に得意なのは寝技なんだよ。知ってた?」

日置と石塚との試合は鳶嶋も観ていたが、そのときの日置は寝技で粘る気が無いようだった。
だから気になったのである。
「寝技が得意……なのに使わない?」
「ボクもよくわからない。ただ、用心だけはしといたほうがいいと思って」
鳶嶋の忠告に素直に頷く巧。
それを聞いていなければ、日置の寝技にはまったくの無警戒で試合に臨むところだった。

そしていよいよ、決勝トーナメント第一試合が開始される。


「赤・岐阜代表 日置友則! 白・静岡A代表 粉川 巧!」


733 :マロン名無しさん :2009/01/15(木) 23:22:43 ID:???
答えは123全部かな?

734 :1/4 :2009/01/16(金) 21:01:19 ID:???
第188話 寝技のスペシャリスト

日置と対峙する巧。鳶嶋の忠告が本当なら、彼の得意技は寝技のはず。
しかし、鳶嶋は敵である巧になぜ忠告などをしたのだろうか。

昨年のI・Hで2位だった男、日置。予選で石塚を破ったほどの強敵である。
「ひさびさのおっさん顔ね。むっ…おっさんタイプといえば……」
彼の高校生にしてはやや老けた顔に、桜子はあることに気付く。彼女の隣には暁泉の原田がいた。
「しまった!巧くんはおっさんタイプにはゲンが悪い!」
昨年秋の地区予選で、巧は原田に一本負けをしたことがあるのだ。

そして始まった決勝トーナメント一回戦。男子の試合はこれが最後のプログラム。
いわば高校柔道の夏の総決算。たった5人の日本一の座を目指して戦いの火蓋が切られた。


○岐阜代表 大垣商大付属・日置知則VS静岡A代表 浜名湖・粉川 巧

「雅隆!今、粉川と何を話していたんだ!」
鳶嶋兄の佳隆が弟に問う。
日置の寝技のことを巧に伝えたと聞き、佳隆は困惑するのであった。

正面から組み合う巧と日置。そして、先に仕掛けたのは日置の側。
(よし、奥エリとった!いくぞ粉川!)「せやあっ!!」
なんと、突然日置が跳んだ。
「あっ!あれは!?」


「跳び関節!」


735 :2/4 :2009/01/16(金) 21:02:18 ID:???
ジャンプをした日置は捕まえていた巧の腕に全体重を預けてぶら下がり、
同時にその首に足をかけ、巧を体ごとひっくり返す!
「ん!」
畳に落ちた巧。あわやそのまま十字固め完成か――というところで床を蹴って体を反転。
際どいところで危機を逃れた。
上になった巧は寝技で逆襲しようとするが、そこで審判の「待て」がかかる。
立ち技から寝技に引き込んだ時、その寝技がうまくいかないと、自動的に“待て”がかかってしまうのだ。

「ね、ちょっと!なに今の?あんなんプロレス技とちがう!?フランケンシュタイナーのよーな!」
桜子の問いに斉藤が答える。
「いや、あれは通称“跳び関節”といって、ああいう関節技のはいりかたもあるってことさ」
もちろん、高校生でやるのは珍しい。あのまま倒されるままになっていたら、十字固めがきまるところだった。
(やっぱりこいつは、こんな隠し玉を持ってやがったんだ。鳶嶋の忠告がなかったら、今の関節くらっていたかもな)

舌打ちをする鳶嶋兄。雅隆が余計な忠告をしなければ、強敵が消えてくれるところであったのに。
しかし鳶嶋は黙ったまま、静かに試合の行方を見守るのであった。

試合が再開し、今度は巧の組手になる。立ち技での勝負なら日置にも負けない。
だが――そこで先手を取ったのはまたも日置。「せやあ!!」
「このっ!こんな背負いでなにが“せやあっ”だっ!」
無理な体勢からの形にもなっていない背負いでは、当然、投げられるわけもない。
背負いを潰した巧はそのまま上になって捕まえようとするが――、
「離れろ、巧っ!上になったからって寝技で勝負すんなっ!」
斉藤の声が飛ぶ。だが、わずかに遅かった。

日置は自分の胴に回されてた巧の左腕をつかみ、脇をくぐるようにして巧から逃れる。
さらにそのまま左腕を極められ、巧はうつ伏せに潰される。
「なんとっ、また関節技をっ!」

736 :3/4 :2009/01/16(金) 21:03:34 ID:???
「ねえっ、桜子、あれキマってるのっ!?あぶないのっ!?」
「あっアタシに言われてもそのっ!」
「巧、そのまま前にはっていけっ!そんなに頑丈な技じゃない。ラクにはずせるぞっ!」
斉藤が指示を出すも、二階席からでは届かない。
「こんなことなら最初から下にいてやればよかった!」
寝技の時はやはり斉藤の力が必要。彼は急いで駆け出そうとする。

(フン、粘るじゃないか。関節そのものはやわらかいようだな)
左腕を極められながらも耐える巧。体ごと前方に回転して逃れようとする。
「フン!そうきたかっ!」
「ダメだ巧!そっちへいっちゃ思うツボだっ!」
斉藤の声が空しく響く。
巧の転がった先は日置にとっては次の技に移行する好位置。
日置は巧の左手を取り、背中からのしかかるようにして一瞬で後ろ袈裟固めにつなげる。
「抑え込みーっ!」

「待ってろ巧!今行くからな!」
走る斉藤と杉。(それにしても日置!敵ながら見事な寝技だぜ)
日置の技量は寝技巧者の斉藤をして感心させるものだった。

(どんなに暴れてもとれんよ。おまえがこのオレより寝技の練習を積んでいれば別だがな)
巧や鳶嶋にはセンスがある。投げ技ではかなわないことは日置自身も理解していた。
(そう、投げ技はセンスが要る。オレはそっちは半ばあきらめた。だが寝技なら頭と練習量でどこまでも強くなれるんだ!
 オレは自分を生かすベストの選択として寝技をとった。だからきさまらには負けんっ!)
自分の柔道を寝技一点に絞り込んだ日置の誇りがそこにはあった。

737 :4/4 :2009/01/16(金) 21:04:42 ID:???
15秒経過。もうどうしてよいか分からなくなった巧。
「巧先輩、暴れるのやめちゃったっ!」「こらーっ根性なし――っ!」
「そして保奈美先輩は立ち上がったあっ!」
(粉川!きさまっ!)歯軋りをする鳶嶋。


「巧くん負けるな――っ!がんばれ――っ!」


久々に出た、保奈美の「負けないでコール」。
保奈美の声は大観衆の中でも巧には聞き分けることができるのだ!
「どあ――っ!」
巧復活。だが、それでも抑え込みを返すまでにはならなかった。
「……ダメか」「でもヤル気取り戻しましたよ」

やはり暴れるだけではダメ。とにかく諦めずに考えるのが大事。
とりあえず足は自由に動くのだが、日置の首までは届かないし、蹴っ飛ばせば当然反則。
「はっ!そうだっ!」

25秒経過。
この時点で技ありのポイントがつく。

(まず日置の気をそらさなくちゃ…)
何か策を思いついたらしい巧は、後ろから日置の襟を軽く引っぱる。
「ムッ!?」
何事か、と振り向く日置。
その陰で――巧は動き始めていた。

738 :マロン名無しさん :2009/01/16(金) 21:30:41 ID:???
おっさん顔ってw
せめて老け顔にしとけよ

739 :マロン名無しさん :2009/01/16(金) 21:41:29 ID:???
いやだがおっさんだろう

740 :マロン名無しさん :2009/01/16(金) 22:12:13 ID:???
日置カッケェ。
ポジション的にも経歴的にも造形的にもカマセなのは間違いないけど、
こういう信念持った敵ってすごくいい。

741 :マロン名無しさん :2009/01/17(土) 02:05:02 ID:???
投げ技のセンスがない日置に立ち技だけで負けた石塚・・・

742 :マロン名無しさん :2009/01/17(土) 12:12:47 ID:???
確かにw
まあ「投げて失敗したらエライことになる」って
無意識にプレッシャーかけられてたと解釈するなら……。

743 :1/3 :2009/01/17(土) 21:08:32 ID:???
第189話 立ち技勝負!

残り5秒というこの土壇場で、巧は後ろ袈裟固めを外す方法を思いつく。
「うまくいくかどうか、わからねえが、やるしかねえっ!」
後ろから日置の襟を軽く引っぱる。その感触に思わず振り向いた日置。
そのために彼から見て左側が死角となる。
日置の脇に挟まれて封じられていた左手に、巧は自分の右足をのせ、
その脚力を利用して日置の腕を引き剥がす!
拘束が解けた左手を抜き、体をずらす、ずらす、ずらす――!
「ぬうぉりゃあああ!!」「抑え込み、解けっ!!」

表示は――29秒。
「間に合ったっ!」「ハラハラさせんなよも――!」

「コイツ!!後ろ袈裟のはずし方を知っていたのかっ!」
勝利を確信していた技を外されて動揺する日置。さらなる巧の追撃を警戒するが、
当の巧はそのままそこで立ち上がる。「待てっ!」

クイッとアゴ先で示して見せる巧。
(“立って勝負しろ”ってコトか?ヤロ――…)
巧のそのサインを日置は挑発として受け取った。

というところでようやく斉藤と杉が試合場の側までたどりつく。
「立ってる!おまけにまだ試合は続いてる!」
斉藤は慌てて石塚に状況の確認をする。
「いったいこれは!まさか巧のヤツ、自分で寝技はずしたんスか!?」
「はずしたんだよ、信じられないけど」「うそーっ!」
巧が寝技を苦手としているのは周知なため、驚かずにはいられない。
だが、25秒以上抑え込まれて「技あり」を取られてしまっている。残り時間で取り返せるか――。

744 :2/3 :2009/01/17(土) 21:09:09 ID:???
試合が再開してから果敢に攻めていく巧だが、惜しいところで全てかわされてしまう。
日置の組手がことのほか厳しい。すでに「技あり」を取っているので、守りに入っているのである。
しかも日置ほどの相手となると、よほど完全な形で入らないとかわされてしまい、ポイントを取ることさえできない。
「結局、このまま時間がきて優勢負けってパターンだな」
そんな横あいからの、正しくはあるが不躾な言葉。「なにをっ……!?」に杉も斉藤もカンに触るが、
(げっ、鳶嶋兄弟!)
会釈をする雅隆と、気にもしない佳隆。相手の格に逆に杉たちのほうが引いてしまった。

そして――巧が仕掛ける!
「あっ!」「いったっ!」
(しかし!また片手背負いだっ!)
巧が捕まえたのは日置の襟のみ。自由な手を畳についてこれを防御する日置。
(日置の手が先に着地したっ!またこれもかわされる!)

だが――背負いを止められかかってなお巧は諦めない。
逆立ち状態の日置の左腕を自分の手で払い、さらに体を浴びせて追い込む!
「うおおっ!」
支えを失った日置の体が、背中から音を立てて畳の上に落ちた。

「一本!」「おおしっ!」

「すごいっ!」「着地しようとした日置の手を払ってムリヤリ一本とっちまった!」
「日置もうまいこと背中から落ちてくれたぜ!あれじゃ言い訳できねえ!」
この勝利に大歓声が上がり、中量級の試合場の方でもそれが届いていた。
軽中量級の試合場を見つめていた藤田は心の中で呟く。

(勝てたか粉川。去年の2位に。ナマイキに)

745 :3/3 :2009/01/17(土) 21:10:30 ID:???
その試合の様子は軽量級の茂も注視していた。
「ふ――っ。勝ったか」
巧の勝利に安堵の息をつく茂。
(まったく、ヒヤヒヤするような試合ばっかしてんじゃねえよ)
こう見えて巧のことを心配していたのである。

椅子に腰を下ろす茂に、隣の席の男が声をかけてきた。
「すげー技だ。アンタ、あの粉川巧っての知ってんのか?」
「同じ学校だよ。それがどーかしたかよ?」
茂のその返答に振り向いたのは、練習場にいたあの長谷である。
「なに、粉川と同じ学校?アンタ軽量級の決勝トーナメントの選手?」「ああ」
「同じ学校で?二人もここまで残ってんの?」「そうだよ」
気さくな態度の長谷はポン、と膝を叩き、
「すっげーっ!なんだよ、強えじゃんあんたら!いやもう驚いちゃったねっ!」
などと称賛をするのだった。(な、なんだコイツ……)

日置に勝利した巧。彼の姿を見つめていた鳶嶋は確信する。
(たぶん粉川は決勝戦までくる。あとはこっちが勝ち残れば……ヤツと闘える!)

746 :マロン名無しさん :2009/01/17(土) 21:29:06 ID:???
え?後ろ袈裟の外し方って後ろで気をそらせるのがちゃんとした方法なの?

747 :マロン名無しさん :2009/01/18(日) 17:42:48 ID:???
いやいや、日置が言ってるのは足つかって挟まれてる腕を外すほうだろ。
気をそらすのはそのための前準備みたいなもんで。

748 :1/4 :2009/01/18(日) 21:04:26 ID:???
第190話 異端児・長谷達也

二階席からビデオカメラを回しているのは天味の偵察部隊。試合をしているのは鳶嶋雅隆。
彼はまだ二年生なので、今後の大会で当たる確率も高い。そのための情報収集である。

組手を取らせてもらえない鳶嶋は、片手で袖だけを掴んだ状態から仕掛けていく。
手をついてこらえようとした相手の足を捕まえ、そのまま体をひっくり返す!
「一本!それまで!」
「片手からでも袖釣り込みをかけやがった!」「あんなこともできるのか?」
鳶嶋の技量は超強豪高、天味の選手をして驚愕させるものだった。

(巧くん、今の一本すごかったなあ、まだ目に焼きついてる……)
巧の勇姿を思い返して浸りっぱなしの保奈美さん。その割には記憶がいいかげんな様子だが。
「トリップ中ジャマして申し訳ないが……」
彼女は桜子に現実に引き戻される。
「実はもうあっちで宮崎くんが試合しててねえ。応援中なんスよ、あたしら」

積極的に背負いを仕掛けていく宮崎だが、危うくそれを返されそうになる。
「にゃろう、さすがにI・Hだ、オレの背負いを返そうとするとはな」
強がる宮崎。彼は思い切りは良いのだが、ムリでも行こうとするので返し技をくらうことも多いのだ。
「しかし!コレならどうだ!」
巴投げ一閃。「おうっ!」勢いあまって相手の額が宮崎の頭に激突したが、とにかく一本を取った。
(い、勢いよすぎた……コイツすげえ石頭…)

「ほー巴投げ。なるほどねえ」
感心した様子の長谷。「さてと」彼は軽くジャンプをして「オレの番だな」準備完了。

石塚も宮崎の強さを称賛。身内を褒められ、巧も鼻が高い。
「軽量級のくせに団体戦のレギュラーがつとまった男っスからね。他といっしょにしてもらっちゃ困る」
そして、彼の奮戦ぶりには理由があるのだ。
「それに、きっと。三溝の分までがんばる気っスよ、あいつは」

749 :2/4 :2009/01/18(日) 21:05:01 ID:???
その頃、三溝は病院でレントゲンを撮っていた。
「早く試合場に戻らなくちゃな……それまで勝ち残ってろよ、茂。巧もな」

試合を終えて戻ってきた茂の前には次の試合に出る長谷がいた。「やるじゃん」
「まァ――」その瞬間、長谷がジャンプ。「な?」
跳び上がった彼の足の位置がなんと、宮崎の顔の高さにあった。
「よーし、オレもとばしていくかな」
開始前から常識はずれな身体能力を見せつける長谷である。
(な、なんだコイツ……)

開始の合図と同時に長谷は見慣れない構えをとる。
足を開き、膝を曲げ、重心を落とし、低く構える。
(さあこい柔道屋!)

とにかく組みに行こうとする東名大五高の荒木。
しかし長谷はそれを捕まえ、上から押しつぶすように抱え込む。
その体勢から長谷は荒木の脇に首を差し込み「ほいさっ!」体ごとひっくり返す!
「技ありっ!」
そしてそのまま流れるような動作で寝技につなげる。「抑え込み――ッ!」

今の技を引き込み返しかと杉は見るが、斉藤がそれを否定する。
「いや、違うぞ、あれは……確かアマレスの技だ。“パンケーキ”」
「アマレス?」「“パンケーキ”!?」
耳慣れない言葉に驚く杉と宮崎。


(ふん……ちょろいねえ、柔道なんて……)


750 :3/4 :2009/01/18(日) 21:05:38 ID:???
長谷がやっているのは柔道ではなく、アマレスだという。
「ホラ、今、左手をもちかえて、相手の足をかかえながら抑え込んでるだろ。アレはアマレスじゃ“エビ固め”ってやつだ」
足を抱えられているため、抑え込まれている方は踏ん張りがきかない。
長谷は道着をつかんでいるが、本来アマレスでは腕の力だけで足を抱える。
「ヤツがもし、アマレス出身だとしたら、スタミナとパワーは柔道の人間より上だぞ。そういう鍛えかたをしているからな」
妙に詳しい斉藤。彼の中学にはアマレス部があったのだという。
(アマレスだと?長谷とかいってたな、アイツ……)

(さてと、このままいったら勝つな。よーし、勝った時、なんか一発ハデなパフォーマンスを……)
終了ブザーが鳴り、抑え込み25秒、技あり合わせて一本。即座に立ち上がった長谷は――、

「よおっしゃ――っ!」
なんと、その場でジャンプし、後方宙返りを決めた。

こんなことはI・Hの歴史、いや柔道の歴史でもおそらく初めて。
前代未聞のパフォーマンスに会場中から大歓声が上がる。もちろん長谷本人は大目玉を食らったわけだが。

(アマレスの技とかつかいやがって、変なヤツだが……それでここまで通用してるってこたあ……
 それだけの実力を持ってるってこった。おそらくアマレスのほうでも、すげー強かったはずだ)
「…………気にいらねえ……」
宮崎は忌々しげに呟くのであった。

戻ってきた長谷はあくまで気さくな態度を取る。次に当たるのは目の前の宮崎なのだが。
「思ってもみなかったもんでね、あんたが出てくるとは」
「なにぃ?」
「あ、いや。じゃーな、お互いフェアにいこーぜ」
飄々と去っていく長谷に、とうとう宮崎の苛立ちがピークに達した。
「おいっ斉藤!あのアマレス技に対抗する手を教えろっ!」

751 :4/4 :2009/01/18(日) 21:06:36 ID:???
さて、決勝トーナメント一回戦、他のみんなはというと――。
石塚の相手は福岡代表、東名大五高の仲村。石塚は朽木倒しで有効を取り、リードを奪う。
残り時間ももうあまりない。このままなら勝てるかと思われたが、その時である。
「くそうっ!柔道王国・福岡の代表がっ!こんなとこで負けては、帰れん!」
仲村の必死の小外刈りに倒れる石塚。「キャ――ッ!」
だが、腹ばいのためにポイントは無し。「とられなかったあ〜〜」「腹ばいですね」
確かに良かったのだが、宮崎の試合と比べて女子たちの応援の熱がずいぶんと違うような気が。
石塚はよその学校の人間なのに。涙を流す宮崎だった。

そのとき、斉藤の声が飛んだ。
「いかん!締めにはいってるっ!」
仲村はうつ伏せの石塚を上から絞めていたのである。

石塚の目に時計の表示が目に入る。試合時間、残り十二秒。
(なんだ、あとちょっとだ。このまま耐えれば、勝てる……)
その彼の視界が少しずつ暗くなっていくことに、彼自身も気がついていなかった。

「それまで!」審判の手が上がる。
息を呑む袴田さん。石塚は絞め落とされ、意識を失っていた。
審判が気付けを行い、彼は息を吹き返す。
「立った……よかった」
絞め落とされてあまり長く意識を取り戻さないと危険なのである。
袴田さんは安堵し、涙をにじませるのだった。


軽中量級代表、石塚孝裕――決勝トーナメント一回戦、敗退――。


個人戦は各階級ベスト8まで絞り込まれ、次はついに準々決勝である。

「おい、またなんか忘れてないか」
※中量級一回戦 ○藤田恵(三方ヶ原工)〔3分19秒 合わせ技〕△仲宗根秀樹(沖縄尚北)

752 :マロン名無しさん :2009/01/18(日) 21:09:19 ID:???
中曽根…技ありを取られない男がすっかりかませ犬に。

753 :マロン名無しさん :2009/01/18(日) 21:27:42 ID:???
かませ続出w

754 :マロン名無しさん :2009/01/18(日) 22:02:42 ID:???
石塚くんはお漏らししなかったのかな?

755 :マロン名無しさん :2009/01/19(月) 18:12:44 ID:???
合わせ技一本だから技あり2つか、仲宗根ボロボロじゃねーかw

756 :1/4 :2009/01/19(月) 21:03:42 ID:???
第191話 対アマレス作戦

長谷のレスリング技に対抗するためには、まずレスリングの攻撃の基本を知らなければならない。
斉藤を講師として宮崎にアマレス対策の伝授を開始。

レスリングの攻撃パターンは大雑把にいって三つある。
@上からの攻撃 A下からの攻撃 B横からの攻撃

このうちのB横から攻めるというのは、正面から来る相手を回りこんでバックを取るというパターン。
これは柔道にもあるので、さほど気にすることではない。
問題なのは@上からの攻撃とA下からの攻撃で、これがアマレス独自の部分となるのだ。

杉を相手として斉藤が実地に技の形を見せる。
「まず上からおおいかぶさるように上半身をかためる。前につぶすように、体重を相手にのせる。
 下の相手はすごく疲れる。これを“がぶり”という」
ガブリ、と斉藤の手に噛みつく杉。冗談にしてもこれはない。
「その体勢から投げることできるだろ、斉藤?投げちゃえよ、こんなやつ」「よし」
「わ――っ、待てっ!ここは下がカタいからやめてっ!!」
長谷が一回戦で見せた“パンケーキ”という技も、このがぶりという体勢から移行してかけたものである。

「次は下からの攻撃。“タックル”だ」
これは形としては柔道でいう双手刈りと同じものなのだが。
「こいつも要注意だ。なにしろヤツら、足をとった後も、とまらずにドンドン突進してくる。
 オレたちと違って脚の運びがとまらないんだ。この威力は柔道の双手刈りなんか比べものにならないくらい違う」
タックルできたら、絶対に足をとらせてはいけないのだ。

「接近戦でのがぶり、離れてるときのタックル、この二つを封じればいい。
 つまり、キチンと柔道の組手で勝負することがアマレス技封じになる」
敵のペースで戦うのではなく、自分のペースで戦う。考えてみれば基本的なことである。

757 :2/4 :2009/01/19(月) 21:04:29 ID:???
そこで戻ってきたのは病院での治療を終えて戻ってきたミッタン。
茂のベスト8をまず彼は称賛する。彼の左手は手首までガチガチに固定されてしまっていたが、
脱臼というケガだけにこれは仕方がない。しばらくはお休みということになった。
「石塚さん負けちゃったって?気の毒にな」
ミッタンの言葉に、杉と茂はそのときの彼の様子を思い出す。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 回想シーン 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

さすがに今回ばかりは冷やかす気になれない杉と茂。石塚の様子を遠巻きに見つめる。
そこで現れたのは袴田さん。彼女は「おつかれさま」と石塚を労う。
「カッコ悪かったな、オレ。落ちて負けるなんて……」
己の負け様を自嘲する石塚だったが、袴田さんがその言葉を否定する。
「カッコ悪いとか、そんなこと言わないで!それよりも……すごく怖かった。あの時。ホントに心配したんだから…」
「ごめん……でも、“まいった”なんて、絶対できなかった」
石塚はここで、そのときの心情を吐露した。


「好きな女のコの見てる前じゃね」


その一言を聞いた袴田さんは、思わずその目を潤ませるのであった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 回想終了 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「“まいった”なんてできないよ。好きな女のコの見てる前じゃ。だってよっ!」
「か――っ!いっててよく恥ずかしくねーな!」
見苦しく嫉妬心をぶちまける杉と茂の姿にミッタンも呆れざるをえない。
でも、そういう少し照れるぐらいの台詞の方が、女のコは嬉しいのかもしれないが。
「そんなの知るかよ!」「女いるヤツはそれだけで絶対、同情なんぞしてやらん!」

758 :3/4 :2009/01/19(月) 21:05:43 ID:???
ストレッチをしていた長谷の前に通りかかったのは、
重量級の神奈川県代表・窪ノ内武志。東名大藤沢高の主将である。
団体優勝校のキャプテンに対し気さくに声をかける長谷。
藤沢の部員の嫌味をさらに嫌味で返してくる長谷に対し、窪ノ内は鷹揚にそれを受け止めるのであった。

藤沢の部員たちは長谷のことを嫌っていた。
県大会でも彼さえいなければ藤沢が全階級制覇をしていたのだ。
まして彼はアマレスから転向してまだ一年そこそこ。
そんなキャリアの彼に大きな顔をされては、愉快な気持ちでいられるわけもなかった。

しかし窪ノ内はそんな長谷を素直に賞賛する。
なにしろ、神奈川県勢でまだ生き残っているのは彼自身と長谷のたった二人だけなのだ。
長谷はやはりそちらの世界では有名だったらしく、藤沢のレスリング部もスカウトしたそうである。


「なにしろ少年レスリングで中2から卒業までの2年間は一度も負けたことがなかったらしい。
 天才少年だったんだとよ」


「……本気っスか、そりゃ」
「うむ。本気(ほんき)と書いて本気(マジ)でだ」

トーナメント二回戦。巧は三分過ぎに背負い投げで一本勝ち。
これで3位入賞確実。西久保の銅メダルと並んだ。
(さあ、次はそっちの出番だぜ。宮崎!)

759 :4/4 :2009/01/19(月) 21:07:07 ID:???
「赤、神奈川県代表、長谷!」「白、静岡県B代表、宮崎!」

(なんか、さっきスミッコでゴチャゴチャと対策を練ってたみたいだが……
 そんなにアマレスが底の浅いもんと思われちゃ困る)

「はじめっ!」
開始と同時に例の低く構えるクラウチングスタイルをとる長谷。
それに対して宮崎はごくオーソドックスな構え。
(さ――、上からか下からか、どっちだ!)

長谷の目標は、わずかに後ろに引いた宮崎の右足。
(いくら目を見て攻撃を読もうとしてもムダだぜ。視線は動かさず。これがタックルの鉄則!)

ノーモーションからいきなり宮崎の足をとりにいく長谷。
だが、その瞬間、宮崎はそれをかわして上から潰す。
斉藤直伝のタックル封じ、見事成功である。

だが――技を破られてなお、長谷は不敵な表情を浮かべるのであった。
(なるほど、スピードだったらオレ以上ってことか。やるねえ、宮崎くんよ)

760 :マロン名無しさん :2009/01/19(月) 21:26:57 ID:???
斉藤万能過ぎだろw
なんでアマレスの技にそんな詳しいんだよ

761 :マロン名無しさん :2009/01/20(火) 01:32:51 ID:???
レスリング部と掛け持ちしてたな、あの顔でw

762 :マロン名無しさん :2009/01/20(火) 01:48:43 ID:???
>>760
格闘技マニアなんだろ
なんでも柔道に取り入れようと技術書を読み漁ってるはず

763 :マロン名無しさん :2009/01/20(火) 19:52:37 ID:???
窪ノ内渋いな。ホンキと書いてマジとか真面目に言ってるのがまたいい。
団体戦じゃ当たらなかったんだろうけど、
重量級個人で橘と超高校級同士でガチンコバトルってことにならないか。

764 :1/2 :2009/01/20(火) 21:00:03 ID:???
第192話 長谷、本領発揮

長谷のタックルをかわした宮崎。斉藤のレスリング対策は見事にはまった。
あとは上からの攻撃、“がぶり”にきた時である。
“がぶり”とは上から覆いかぶさるようにして相手を固めるレスリング独特の組手なのだ。

(タックルをかわしたか、じゃあ……)
さっそく宮崎をがぶりにくる長谷。
しかし首を狙って伸ばしてくる手を茂は払いのける。
「そうだ宮崎!首をとらせなきゃ“がぶり”はできない!」
逆に良い組手をとった宮崎。そのまま長谷を背負いにかつぐ。
「せやああっ!!」
「技あり――っ!!」

組んですぐの背負い。相手の長谷はレスリングの出身だが、
柔道の組手でしっかり捕まえてしまえば意外にもろい相手だったのだ。

ミッタンが立ち上がって声援を送る。
「茂――っ!その調子だ、いけ――っ!!」
「三溝せんぱい見えませーん!」
その後ろで麻理がかわいそうなことになっていたりした。

765 :2/2 :2009/01/20(火) 21:00:57 ID:???
「技あり」を先行された長谷は、笑みを浮かべて立ち上がる。
レスリングの低い構えを止め、好きに捕まえろとでもいうように左手を前に突き出す。

(さあこいよ。組んでやろうって言ってんだよ)
(この野郎ォ……本当に気にくわねえヤツだぜ)

本当に真っ当な組手争いを行う長谷と宮崎。
長谷は宮崎に左袖を取らせておいて、その手で逆に袖をつかみ返す。
(見せてやるぜ!レスリングの投げ技をなっ!)
そして彼が仕掛けたのは「うっ!?」「あれは!?」なんと――!


「一本背負いだっ!」


とっさに宮崎は足をかけてこらえる。畳に倒され、判定は「有効!」

「野郎、一本背負いとは……柔道技もできたのか?」
想定外の技に戸惑う杉。しかし斉藤は気がつく。
「い、いや、一本背負いと言ってもあれは……」

766 :1/5 :2009/01/21(水) 21:01:01 ID:???
第193話 柔道VS.レスリング

なおも続く長谷と宮崎の熱戦。長谷は上からがぶりにいくと見せかけ、その懐にもぐりこむ。
「しまった!フェイント!」「うおおっ!」
相手を下から肩に担いでひっくり返す長谷。
判定は「技あり」。だが、この技はどう見ても――。

「なにいっ!?今度は肩車ァ!?」
驚愕する杉。これでポイントは逆転。開始直後の優勢が嘘のように宮崎は追い込まれてしまう。
「くそう!対策があまかった!」
斉藤は歯噛みをする。

「肩車は“飛行機投げ”といってアマレスにもある技!
 前の一本背負いもレスリング流の、巻きこんで投げるタイプ!
 長谷は柔道でも通用するレスリング技を使ってきやがった!」

亀になって寝技を防ごうとする宮崎だったが、グラウンドこそレスリングの真骨頂。
長谷はうつ伏せの宮崎の体を力ずくで引っこ抜くように返してしまう。
レスリングは柔道のようにキレイに投げられれば勝てる競技ではない。
どちらが先にフォールするかを競う競技だから、柔道の選手より寝技はみっちりと訓練をしている。

長谷の右腕が宮崎の脚を抱え込み、ついに“エビ固め”に入られてしまった。
「抑え込み――っ!」
「茂――っ!」叫ぶミッタン。その後ろで麻理がまたもかわいそうなことに。
必死に抵抗する宮崎だったが、のしかかる長谷はびくともしない。
(力まかせにやってもはずせんよ。逆にコイツは背骨を痛めるぜ)


(柔道なんていったってこんなもんだっ!格闘技やってる高校生は、てめえらだけじゃねえんだよっ!)


767 :2/5 :2009/01/21(水) 21:02:16 ID:???
10秒経過。斉藤が外す方法を考えるが、すぐには思い浮かばない。
そこで宮崎は覚悟を決めた。
(よーし、逃げ回るのはもうやめだっ!)
下になりながら長谷の襟に手を伸ばし、十字に交差するように捕まえ――、
「ぐあっ!!」
――絞め上げる!

レスリングには絞め技が無い。柔道を始めてから少しは訓練をしているかもしれないが、
それでも専門家であるこちら側に比べて経験は浅い。
(時間が来るのが先か、てめーが落ちるのが先か、だ!!)

この土壇場でとんでもない賭けに出た宮崎。
苦しさに耐えかねた長谷は思わず足を抱えていた左手を離してしまう。
その一瞬に脱出する宮崎。時間は21秒。判定は「有効」。
「時間はまだある!反撃だっ!」西久保の声が飛ぶ。

即座に朽木倒しを仕掛けた宮崎は有効を奪う。
「ちっ!ちくしょうっ!」「こい、おらあ――っ!」
残り時間一分半。ポイントは有効一つ差。

(調子にのるなっ!追いつくどころか、決定的に引き離してやる!)
長谷は力まかせに宮崎を振り回し、ついにがぶることに成功する。
(いくぞ、“パンケーキ”!!)

ところがその瞬間、宮崎は首を抱えられながら下半身だけ後ろに飛んだ。
全体重が技に入ろうとしていた長谷の首にかかり、そのまま前に潰される。
「くそっ!バカなっ!」

そしてついに――完全な柔道の組手になった。

768 :3/5 :2009/01/21(水) 21:03:36 ID:???
(ち、ちくしょおっ!柔道なんかに……柔道やってるヤツらなんかに負けてたまるかっ!)
必死で抵抗をする長谷。だが、その瞬間――宮崎の体が大きく沈む。「でっ!でた――っ!」

後方に倒れこみ、相手を引き込みつつその体を蹴り上げる――宮崎必殺の巴投げ!

「おおっ!」
長谷の背中は畳にはつかなかった。だが、その両脚の裏が音高く畳を叩いた。
判定は――、


「一本!それまでええっ!」


(ブリッジでこらえても一本になるんだよな。これだから柔道はよ……)
頭と足で体を支え、背部を畳につけない場合でも、
相当の勢いで相手を仰向けに倒せば一本として認められるのである。

落胆する長谷。その目の前で宮崎は「さてと……」
「いっち」「にの」「さん!」「はいっ!」

宮崎は――その場で後方宙返りを決めた。

それはまるで長谷に敬意を表するかのように。ただ、疲労困憊のために足元が危なっかしかったが。
「まーたやっとる!けしから――ん!」
当然のように役員席のお歴々は激怒。
(見たわ!今度はしっかりと!)
別所さんは感動していました。

厳重注意をしようとした審判だったが、宮崎はあっさり謝罪してその鉾先をかわす。
ともかく一礼し、これでベスト4進出が決定した。
試合場を後にする長谷の姿。それを見た宮崎は彼の後を追いかける。
「長谷に聞きてえことがあんだよ!」

769 :4/5 :2009/01/21(水) 21:04:54 ID:???
体育館の外で長谷を捕まえた茂は彼を問い質す。
本当はアマレスが専門であるはずの彼が、どうして柔道をやっているのか。
長谷の回答は至極あっさりとしたものだった。
「ウチの学校にレスリング部がねえからだよ」

本来ならばあちこちからスカウトを受けていた長谷。
だが彼は中学時代のレスリング部の友人と同じ学校に行きたいと望んだ。
レスリング部が無いのなら友人と一緒に作ってしまえば良い、そう軽く考えていたのである。
ところが――許可が下りなかった。
教師は最初から聞く耳を持とうとしなかった。
場所の問題、指導者の問題、理由だけはたくさん並べて、何もせず話を潰したのである。

「へえ、おまえらもかあ」
長谷の境遇に少し共感する茂。浜高も彼らの代で柔道部を作ったと聞いて長谷は驚く。
とはいえ、柔道の場合は周囲の理解が得られるという点で違う。
「でも、ウチの先生段もちだけど、剣道3段なんだよな。なぜか」「……マジ?」

ともかく、その後柔道部に誘われた長谷。
「入部してスグに試合に出たら、レスリング技を使っていきなり勝てた。
 それから後も勝てた。反則さえ気をつけてりゃ、大抵のヤツは倒せた。
 で、ちょっと気が変って、オレのレスリングと柔道とどっちが強いか、どこまでいけるか本気で試してみたんだよ」
そして彼はついに全国ベスト8にまで勝ち上がってきたわけである。
同じ階級で負けたのは茂が初めてだったのだ。

話を聞き終えた茂は長谷を睨みつける。「長谷……てめえ……」
「前田日明のリングスのファンだな?」「え゛っ?」
「異種格闘技戦が盛り上がってるから自分もやりたくなったな?」「いっ、いや、そんなそこまで大ゲサな……」
「そうだろ、ええっ!?この格闘技オタク!」
「格闘技通信とか買ってんじゃねえか!?」「いや、その…読んでます……」

770 :5/5 :2009/01/21(水) 21:05:52 ID:???
そして、I・H個人戦は、各階級ベスト4が出そろった。

・すでに準決勝進出を決めていた、粉川巧。
・二番目に重い階級、軽重量級では、沖縄尚北の玉城一史が順調に進出。
・中量級では、三方ヶ原工高の藤田恵が。
・巧と同じ軽中量級では、千駄谷学園の鳶嶋雅隆らがコマを進めていた。

「ねーねー、桜子先輩はバク転できる?」
何やら目をキラキラさせて麻理が尋ねる。
「えっ?やったことないからわかんないな」
「なんかできそうな気がしませんか?」「気はすっけどやっぱ練習しなきゃ……」
運動神経良い者同士の会話で、保奈美は蚊帳の外。
「麻理ちゃんならできるかもしれないけど、帰ったら練習しようね。
 特にアンタは興味がわくとスカートのまんまでもやりそうだから」
そう諭す桜子の隣で何やら麻理がゴソゴソと。
「いっせえの――……」
「そうそう、スカートかぼちゃにしてね」


「だからヤメロって言ってんだろっ!」


771 :業務連絡 :2009/01/21(水) 21:07:46 ID:???
次回は一回休載して、単行本20巻のおまけを紹介します。

772 :マロン名無しさん :2009/01/21(水) 21:58:37 ID:???
何か妙に柔道に拘ってた割には大して関係ない理由だな・・・

773 :マロン名無しさん :2009/01/21(水) 22:47:49 ID:???
長谷がこだわってるのはアマレスだろう。
柔道部にスカウトされたから柔道と自分のアマレスで勝負してたわけで。

仮に相撲部とかプロレス同好会とかに入ったとしても、
そのルールの中でアマレスの流儀を通すだろうさ。

774 :1/4 :2009/01/22(木) 20:58:45 ID:???
○単行本第20巻 (表紙:長谷達也 裏表紙:石塚孝裕・袴田今日子)

・四コマその1

1.先日、我が人生の中でも指折りの大転機をむかえてしまった。
  生まれて初めてヒコーキに乗ったのだ!
  担「ドコが大転機ですかっ!」

2.もう当日は見苦しいほどビビってたね。今、思うと。
  河「えーっ?ジャンボにのるんスかあ――っ?!」
  河「もっと新しい機体じゃないと、あっちこっち金属疲労してりぁらあぶないっスよーっ!」
  担「んなコトないですよ〜」

3.おまけに帰りなんて暴風雨圏にはいってゆれたゆれた。ヤダねえ。
  窓を見るとハネの上にグレムリンを見てしまいそー。
  担「河合さん、ジャンボはゆれないほうなんですよ。
    ボクがフィリピンいった時のたヒコーキなんて超ボロですごくこわかったですよ」

4.担「あんまりボロいもんだから、何もおこらずに無事、着陸した瞬間
    乗客みんな手をたたいて“ブラボー!”ってさけんだぐらいなんですから」
  河「逆にそんな目にあってまで、よく飛行機キライになんないね、あんた?」

775 :2/4 :2009/01/22(木) 20:59:18 ID:???
・四コマその2

1.河「よし!『水戸黄門』を四コマでやるぞっ!クジ引きで配役を決めるからなっ!」
  皆「え――っ、みとこーもん〜〜?なんか、どの役もやる気おきねーよ〜〜っ!」

2.桜「ちょっと――っ!アタシ助さんになっちゃったじゃないよ!」
  保「わたしがご老公さま?」
  杉「やっぱりムリがねえか?」(かげろうお銀)
  三「ちょうど7人で数は合うけどね」(格さん)
  斉「フフ、やっぱ弥七はオレしかいないね……」

3.巧「わ〜〜っうっかり八兵衛だ〜」
  茂「オレは柘植の飛猿……!なめとんのかっ!」
  皆「あははーあんたらがいちばんはまってるよっ!」
  河「おい、ちょっとまて!」

4.河「『つげのとびざる』って……誰だ?知らんぞ、そんなの」
  茂「もう6年も出てるのに、まだ、なじまれてない……」
  桜「ところでいつの間にか助さんって独身になっちゃってるよねー」
  杉「前は水戸に奥さんいたよね」
  保「女好きだからリコンさせられちゃったんじゃない?」

776 :3/4 :2009/01/22(木) 21:00:33 ID:???
○サッカーまんがの挑戦をうけた記念すべき第20回 サンデーコミックス名物『絵筆をもってね!』

・「俺フィー・光路郎」の村枝賢一先生が、特別審査員だよ!!
 選評/河合克敏 応募総数:1887点 入選:55点

 グランプリ:宮崎県・シベリアの女〔保奈美(似絵・劇画風の2枚)〕
 〈河合〉2枚とも『シベリアの女』の作品ですけど…ここまで描きますかね。うまいんですけどね…
 〈村枝〉似絵のほうに色をぬって、河合さんの部屋に貼っといていいスか?
 〈河合〉夜みたらこわいっスよ

 準グランプリ:茨城県・草枕の旅人〔斉藤の妹(出前一丁の看板娘)〕
 〈河合〉『出前一丁』うまいね。これにめんじて、斉藤の妹は『由佳里』に決定!!
 〈村枝〉25周年らしいスね。でもオレは、ガキの頃『ちびろく』が大好きだった!!

 村枝の別所さん“イカスっス”賞:大阪府・真雫 紺〔別所さんいっぱい〕
 〈村枝〉うまい。白くてカワイイ!!
 〈河合〉じつは村枝さんは、別所さんをとっても気に入ってくれているんスよ。
     オレもかなり巧いと思うな、このコ!

 topix:福岡県・森田しの〔帯ギュヒロインズ(バニーガール)〕
     岡山県・あるふぁるふぁ〔帯ギュヒロインズ(サンバカーニバル)〕
    〈村枝〉河合先生、20巻突破オメデトウございます。帯ギュのコミックスって、本棚に並べると、
        まるで色エンピツのようでイカス!!
    〈河合〉ありがとうございます。「あるふぁるふぁ」は、かわいい大バカ者。「しのさん」は、
        またも力のはいった作品で、ドハデなところがいい。

777 :4/4 :2009/01/22(木) 21:01:24 ID:???
     富山県・もとみ〔袴田さん(袴田悩殺)〕
     ※ヌードじゃなくてレオタード。しかも、全身がつぎ目のないタイプ。Hのコツがわかってるね。

     東京都・やぶりん〔保奈美・別所〕
     保「巧クンの彼女の座も、桜子の親友の座も、『内気な美人』役の座も、みーんな私のものなのっ
       もーちょっかいださないで――」
     ※そーだね。もっともっと保奈美がジタバタしたほうがおもしろかったかもしんないね。
      でも別所さんはひいちゃうんだ、これが…。

     神奈川県・カッパ大王〔茂・斉藤・長谷〕
     茂「斉藤、ハセのあの技は何だ?」斉「たしかプロレスの技だ。“ジャイアントスイング”」
    〈村枝〉サケ飲んで、これやられると、マジで吐きます。
    〈河合〉でも、新日の“馳浩”って、なんでパンツが黄色なのかねェ?

     神奈川県・ズームイン杉田〔桜子〕
     ※あら、今度はホンモノ?よくみると、けっこう違うね。(19巻『絵筆』参照)

     東京都・村枝賢一〔別所(別所愛子さん好いとーるっ!!)〕
    〈河合〉ホウ、このひとは某サッカーまんがを描いてる人に似とるねー。
        こらーっ、採用ハガキの中に、こっそりまぜるじゃないよ!!
    〈村枝〉は――、もー手のひらっスー!!

     愛知県・ビンボーマニアックス〔三溝三姉妹〕
     ○私がひそかに考えていた三溝三姉妹の名前「すっぴん」「べっぴん」「デラべっぴん」
     ※わかんない人は、コンビニの本棚をさがせ。

778 :マロン名無しさん :2009/01/22(木) 23:00:15 ID:???
デラべっぴんってあんた少年誌で何を…

779 :マロン名無しさん :2009/01/23(金) 04:41:59 ID:???
柘植の飛猿って誰?

780 :1/3 :2009/01/23(金) 21:00:04 ID:???
第194話 決勝進出!

ついに個人戦準決勝。ここまできたら出てくる相手は誰でもすごい実力者。余裕をかますヒマはない。
巧の相手、佐山は巧の得意技が背負い投げであることを喜ぶ。
「ヤツの得意が背負いなら、オレの得意は『すくい投げ』!背負いをかけてきたらそこを『すくい』で返してやる!」
彼にとって巧は相性の良い相手だったのだ。

「赤、静岡県A代表・粉川! 白、愛媛県代表・佐山!」
「でてきた――っ!」「勝って――巧く――ん!こんなところで負けたら保奈美ゆるさないっ!」
などと随分なセリフを吐く彼女だったが、もちろん本人ではありません。
わざわざポニーテールを解いてまで偽保奈美に扮する桜子さん。本人の方は全力でその発言を否定。
「ゆってないそんなこと――!」

試合場に立つ巧の視界に、一人の男の姿が入る。
「白、静岡A代表・藤田!」
中量級もこれから準決勝が始まるのである。
以前にもこのようなことがあった。隣り合わせた試合場で同時に始まり、どちらが先に相手を倒すか争ったのだ。
しかし、今度は舞台が違う。そのようなマネをしている余裕はどちらにも無さそうであった。

そして二人は――それぞれの相手を無視して畳の上で睨みあう。これにはさすがに審判も困惑。
「負けろバーカ!」「てめえだマヌケ!」
憎まれ口を叩いて離れる二人。本当に特級の仲の悪さである。

そして同時に試合開始。
玉城、橘、そして鳶嶋――他の有力選手たちの視線が集まる。

2分が経過。ここまで両試合場ともノーポイントで進んでいたが、中盤から後半に入る頃、ついに大きく試合が動く。
藤田の内股が炸裂し、技ありを奪取。そのまま抑え込みへと入った。
完全な横四方固めに入り、勝利を確信する藤田。その意識は巧の試合の方へと向けられる。

巧と相手の佐山の組手は右対左のケンカ四つ。組手が噛み合わず、攻めにくい状況である。
それを見た藤田は、今度こそ自分が先に勝てると内心で喜んだ。

781 :2/3 :2009/01/23(金) 21:01:02 ID:???
(こいつやるな……たれメのくせに…)
(さあ、背負いをかけられるもんならかけてみな!すくい投げで返してやるぜ!)
組手の相性の悪さばかりでなく実力もある佐山を相手に攻めあぐむ巧。
そこでついに――一本背負いを仕掛ける!
「きたっ!」
即座にすくい投げに入ろうとする佐山。
ところが、その瞬間に巧が反転。虚を突かれた佐山は易々と組手を取らせてしまう。
完全な組手になった巧は佐山を足技で崩し、今度こそ背負い一閃――佐山を畳に叩きつけた。

「一本!それまでェ!」
その宣告からわずかに遅れて、隣の試合場でも終了のブザーが鳴る。
「技あり!あわせて一本、それまで!」

畳に大の字のまま、佐山は自分の甘さを思い知らされていた。
(くそう、粉川のヤツ、こっちがすくい投げ狙ってるのを読んで、フェイントの背負いをかけたんだ!
 その時できた一瞬のスキをつかれた…裏の裏をかきやがって!)

試合そのものより藤田に対して勝ち誇る巧。悔しがる藤田。
(くそうっ!一秒負けたっ!)まがりなりにもこれは全国大会の準決勝なのだが。

続いては第二試合、鳶嶋の出番である。
巧はベンチにまで戻らず、残って試合を見る。さすがに鳶嶋の試合は気になるらしい。
「それにしても……背負いのフェイントを見せて、活路をつくるとは。おまえも頭を使うようになったもんだ」
斉藤のお褒めの言葉に巧はペラペラと説明をするが、どうもその態度が落ち着かない。
「藤田が先に勝ちそうだったから必死だったんだろ?」「そんなの関係ねーよ」
杉に図星を指されてばつの悪い巧であった。

(くそ〜〜粉川のヤツ。あんなの運だ、運にキマってる!)
藤田の方も勝ったというのに、ずいぶんと機嫌が悪かった。

782 :3/3 :2009/01/23(金) 21:02:03 ID:???
鳶嶋の相手は東名大五高の仲村。
組手を支配している鳶嶋は、仲村を簡単に赤畳にまで追い詰める。
「ああいう時って、どうして前にでていけないの?」
龍子先生の質問に斉藤が答える。
「不利な組手のまま前にでてけば、それこそ鳶嶋の投げ技のエジキになります」
完全に後がなくなる仲村。自分から場外に出たら反則になる。
無理に前に出ようとするところを狙いすまし――、
「だああ――っ!」
鳶嶋の袖釣り込み腰が炸裂した。「一本!それまで――っ!」

「いってた通りに投げられてるけど……相手のヤツ弱いの?」
「準決勝っスよ。弱いわけないでしょ……」

ちなみに相手の仲村は、決勝トーナメントの一回戦で石塚を相手に接戦で競り勝ったほどの男なのだ。
(世の中には本当に怖ろしいヤツっているもんだな。巧くんはこんなヤツと決勝やんなくちゃならないのか)
冷や汗を頬に伝わらせる石塚であった。

そして次は宮崎の出る、軽量級準決勝第2試合である。
相手は京都代表の外岡。ちなみに隣の軽重量級では玉城が試合中。

「あっ、先生と巧くんたちが大移動してる」
「ゲルマン民族か?なんかどこへいっても浜高ってお騒がせ集団だな」
まあそれはいいとして、応援団が軽量級の試合場へ到着。と、そこで巧と目が合ったのは長谷である。
ついさっきまで敵側に立っていた自分にまで気さくに話しかけてくる巧に、長谷は面食らうのであった。
(粉川巧か……変なヤツ)

783 :マロン名無しさん :2009/01/23(金) 21:36:31 ID:???
巧の実力が玉城に勝ったあたりから段違いになってきたな

784 :マロン名無しさん :2009/01/23(金) 22:46:26 ID:???
むしろようやく真価が公になったって気もする。
もともと一年春の時点で全国大会出場校のポイントゲッターが、
警察で濃い特訓積んで優秀な指導者もついたんだから、同階級ならぶっちぎりでもおかしくない。

県大会からここまで接戦って藤田戦、石塚戦、玉城戦の三つぐらいだろ。
石塚だけ落ちる気もするけど、互いに手の内知ってる同士だから、まあ……。

785 :マロン名無しさん :2009/01/24(土) 10:17:51 ID:???
なんか浜高の残りの連中がすこし置いてけぼりだ

786 :1/3 :2009/01/24(土) 21:00:51 ID:???
第195話 ツメの甘い男

「どうせここまで勝ち残れるとは思ってなかったぜ!返されてもいいから、攻めて攻めて攻めまくってやるっ!」
京都代表の外岡を相手に徹底的な攻勢をかけ、試合の主導権を握る宮崎。
その姿を長谷がどこか誇らしげに見つめる。
(宮崎よ、おまえはオレに土をつけたほどの男だ。優勝しなきゃ許さねえぞ!)

宮崎は得意の巴投げを仕掛けていく。だが、外岡はとっさに組手を外してこれを回避。
逆に寝技を仕掛けられそうになるものの、うつ伏せでそれをしのぎきった。
(フン、なかなかやるな)(いまの巴はあぶなかった)
両者の実力は伯仲。観戦していた長谷は大きく息を吐く。
「オレがしとめられたあの巴投げをかわすとはね。柔道の世界にも強いヤツがまだまだいるぜ」

その後の展開はまさに一進一退。互いによく技が出て、目まぐるしい攻防が続く。
宮崎が背負いで技ありを取ったかと思えば、すぐに外岡が大外刈りで取り返す。
二人の戦いぶりに他の観客も注目しだした。

その頃、隣の軽重量級では玉城が一本勝ちで決勝進出を決めていたが、特に周囲の反応は無し。
(ちぇっ、こっちは一本とったのにぜんぜん盛りあがらねえの。抑え込みじゃ地味だもんな)

残り時間30秒。いよいよ最後の一踏ん張り。宮崎は外岡に大内刈りを仕掛けていくが――、
「させるかっ!」
外岡はそれを小外掛けで迎撃。危うく返されそうになったそのとき、
「むんっ!」「えっ!?」
宮崎が外岡に足を絡め「だあ――っ!!」そのまま背中から落とした。

「あっ!」「あっ!」それを観ていた皆が絶句。

寝技に入ろうとしたそのとき、審判の「待て」がかかった。

787 :2/3 :2009/01/24(土) 21:02:16 ID:???
いったい何事が起きたのか理解できない宮崎をよそに、主審と副審二人が集まって協議。
同じく状況がわからない桜子と保奈美も袴田さんに解説を求める。
「その…今、宮崎くんがね、“河津掛け”をかけちゃったのよ」

主審の指が宮崎に向けられ、そして宣告。

「警告!」

「総合勝ち!それまで!赤!」

その瞬間、外岡の勝利と宮崎の敗退が決定した。

目が点になったままの宮崎だったが――気がつくと背後に冷たい目をした杉たちの姿が。


「宮崎くん?“河津掛け”が超ド級反則技なのしってたんだろね」


杉の言葉に困惑する宮崎。
「“河津掛け”?オ、オレは“河津落し”をとっさに掛けたつもりだったんだけど……」
彼はジャイアント馬場がよくやっていた技を真似したつもりだったようだが――それを聞いて杉が爆発。
「同じだよ、おんなじ!プロレスの“河津落し”は柔道じゃ“河津掛け”というんだ!」
“河津掛け”は相手が受身を取れず、危険な技であるため反則技の一つになっているのである。

保奈美も桜子も、一年生たちも、そのマヌケぶりに沈黙したまま冷たい視線を向けていた。

788 :3/3 :2009/01/24(土) 21:03:13 ID:???
決勝戦を控えた巧を皆が激励する中、茂は一人離れた場所でしょげかえっていた。
うずくまる彼の前に現れたのは別所さん。
彼女にまで自分のマヌケな姿を見られてしまったと、さらに落ち込む。

「みてましたよ」という彼女の台詞に、その先を聞くのを嫌がる茂。
しかしその後に続いた言葉は――「バク転」
別所さんが言っているのは、二回戦で長谷を倒した時の宙返りのことだったのだ。

「あっ、準決勝、私、じつは席を外していてみれなかったんですけど、残念でしたね。
 でも全国で三位ですもん、すごいですよ」
「みてなかったんスか?」
「ごめんなさい」
「いえいえい――え!」
自分の醜態を見られていなかったと知った茂は、一気に元気を取り戻す。
「そっか、3位っスもんね。不満いってたらバチあたりますよね」
女の子に励まされると、異様に立ち直りの早い男であった。

789 :マロン名無しさん :2009/01/24(土) 21:11:55 ID:???
プロレスじゃ反則じゃないのになんで柔道じゃ反則なんだ

790 :マロン名無しさん :2009/01/24(土) 21:26:35 ID:???
超人的な成長をしていく巧から遠いところへ行ってしまうような淋しさを感じていたから、
相変わらずなにかやらかす宮崎の姿に癒される

791 :マロン名無しさん :2009/01/24(土) 23:00:05 ID:???
そして意外と内心高校生らしい玉城君であった。
まあこの階級はどうせ玉城だろ、と言う雰囲気もあるんだろうw

792 :マロン名無しさん :2009/01/25(日) 16:06:40 ID:???
超ド級反則技バロスww

793 :1/3 :2009/01/25(日) 20:59:25 ID:???
第196話 選ばれし者

I・H個人戦、決勝のカードが決まった。

○軽量級     京都・外岡‐福岡・熊部
○軽中量級 東京・鳶嶋(弟)‐静岡・粉川
○中量級     熊本・北村‐静岡・藤田
○軽重量級    沖縄・玉城‐奈良・松木
○重量級   神奈川・窪ノ内‐東京・橘

準決勝では中量級の優勝候補、千駄谷の鳶嶋(兄)が破れるという波乱と、
軽量級で浜名湖・宮崎が反則負けするという珍事があった。
関「珍事ね……」藤「そんなんばっかだ浜高は……」

巧の決勝進出で皆が舞い上がる中、茂の姿が見えない。
例の一件の際には冷たい視線を向けたものだが、それも本気ではなかった。
どうあれ一生懸命やった結果であり、三位も取ったのだから隠れることはないのに。

そこで桜子が皆から離れて歩き出す。
斉藤にどこへ行くのか問われ、「そのへんをブラブラと」と適当な返事。
「宮崎いたら連れてきてくれよ。巧の試合がはじまる前に」「いたらね――」
気の無いようなことを言いつつ、彼女は角を曲がったところからダッシュ。
(ったく、しょーがないなあ。どこへいった宮崎!)
なんだかんだで情に厚い桜子だった。
が。
「いや――、今回は三位に終わっちゃいましたけどね。みててくださいよ、来年こそは……」
すぐそこで別所さんと和やかに談笑する茂の姿。桜子は思わず急ブレーキ。
「なにやっとんの、あんた?」「えっ?海老塚!?」
彼女の強烈な怒気を叩きつけられてたじたじの茂。
桜子は制裁とばかりに彼の行状を皆に大声で報告するのであった。
「ちょっとみんな聞いて聞いて――っ!宮崎、こんなところで別所さんナンパしてたんだぜーっ!」
「な、なに――!?」

794 :2/3 :2009/01/25(日) 21:00:59 ID:???
千駄谷学園から決勝に出場するのは鳶嶋と橘の二人。小野寺監督が檄を飛ばす。
佳隆も、巧が自分を負かした相手などとは気にせず、冷静に行けと弟に伝える。

並んで試合場へと向かう二人――だが、鳶嶋は自分の意外な気持ちを橘に話した。
「じつは不思議とあんまり粉川が憎いとかじゃないんだ」
巧が兄を投げて一本取った時も、頭に来たわけではなかった。
「ただ驚いた。こんなヤツがいたのかっていうか……」
彼は自分の中の感情をうまく言葉にすることが出来ない。そこで橘が一言。

「こいつはちょっと違うなって感じか?」

その表現に頷く鳶嶋。「やっぱりおまえはよくわかってるよ」
鳶嶋は隣を歩く橘に、きっと勝てると言い切る。
「先生や先輩たちのいない時、よくいってたもんな。“I・H優勝は通過点で、本当のオレの目標は”…」

“オリンピック金メダル”

「おまえも――“オレだってそうだ”っていってただろうが」

決勝戦を目の前にして、この二人の視線の先は、他とはあまりにも違っていた。

そして巧も決勝戦へと赴く。最後の激励役はもちろん彼女、保奈美である。
「ゆうべいってたね。鳶嶋って人は本当に勝負してみたくなった相手だって」
「うん、なんとか実現したなあ」
「よかったね」
よかったというかなんというか――。ともかく、締めの言葉はオーソドックスに。

「がんばって。応援してるから」
「うん」

795 :3/3 :2009/01/25(日) 21:02:21 ID:???
『さあ――!いよいよI・H個人戦決勝です!決勝は試合場をひとつにしぼって一試合ずつ行われます!』
『まずは軽量級の決勝戦から、今、はじまりました!』
軽量級決勝、白は福岡・東名大五高 熊部。対する赤の帯は京都・嵐山学園 外岡。
この試合の次が巧の軽中量級である。

外岡がポイント優勢のまま、残り一分。そして――鳶嶋と巧が準備を始める。
「それまで!」
『軽量級優勝は京都の外岡です!大きく拳を上げてガッツポーズ、本当にうれしそう!』


試合場へと踏み出していく、巧、そして鳶嶋の両者。


応援席では桜子が音頭をとり「いっせえのお……はいっ!」
「粉川、ファイト――!」
大応援団の声援が会場内に響き渡る。


『続いて軽中量級の決勝です!
 赤、東京代表・千駄谷学園二年、鳶嶋雅隆!
 白、静岡代表・浜名湖高校同じく二年、粉川 巧!
 二人とも二年生で、しかもここまで両者、ずっと一本勝ちで勝ち上がってきたことも共通しています。
 注目の一戦です!』

796 :マロン名無しさん :2009/01/25(日) 22:29:19 ID:???
もしかして茂はあれが反則じゃなかったら優勝したかもしれなかったの?

797 :マロン名無しさん :2009/01/25(日) 23:11:48 ID:???
実際それぐらい強くてもおかしくないよ。
千駄谷の次鋒と分けてる時点で実力は証明されてる。
ただ肝心なところでポカするから……。

798 :マロン名無しさん :2009/01/25(日) 23:19:23 ID:???
軽量級なのに団体の4試合で1勝2敗1分だからな。
個人戦で優勝争ってもおかしくないわさ。

799 :マロン名無しさん :2009/01/26(月) 00:20:19 ID:???
窪ノ内に聞き覚えが、と思ったら長谷と喋ってた人か

800 :マロン名無しさん :2009/01/26(月) 00:44:22 ID:???
何か杉だけあからさまに置いてかれだしてるような・・・

801 :マロン名無しさん :2009/01/26(月) 02:02:53 ID:???
だって杉って藤田・平ちゃんと同じ階級・・・

802 :マロン名無しさん :2009/01/26(月) 03:23:22 ID:???
藤田は杉と同じ中量級だが、平ちゃんは軽重量級。

中量級といえば、鳶嶋(兄)はかませ臭が漂うな。
現実では強者が敗れることを波乱というが、漫画の中では敗者=弱者だからな。


803 :マロン名無しさん :2009/01/26(月) 05:25:49 ID:???
静岡の中量級って他に誰居たっけ?
袴田(弟)?

804 :マロン名無しさん :2009/01/26(月) 12:46:40 ID:???
おっと、静一の大村を忘れないでもらおうか。
作中じゃインターハイ開会式を最後に忘れられたがな。

805 :マロン名無しさん :2009/01/26(月) 15:23:18 ID:???
いかん、名前言われても思い出せないぞ…そんなのいたっけ?

806 :マロン名無しさん :2009/01/26(月) 17:38:48 ID:???
団体戦では斉藤に「こいつは強え」と評され、
個人戦では杉も袴田弟も寄せつけず、
中学時代から藤田のライバル格で寝技なら藤田以上とさえ言われる、
静岡第一のキャプテン大村カワイソス。

807 :マロン名無しさん :2009/01/26(月) 20:43:39 ID:???
そこまで書かれててもまだ思い出せねーや

808 :マロン名無しさん :2009/01/26(月) 20:51:25 ID:???
たしか保奈実、桜子、マリを眩しそうに見てた人だっけ

809 :1/2 :2009/01/26(月) 21:01:41 ID:???
「いよいよ決勝っスね、日置さん」「ああ、やはりこの二人か」
因縁深き者たちの決戦を見つめる日置。
「おもしろくなってきたぜ!こうでなきゃな」
そして長谷。
「しかし、なんでオレだけコイツとこんなとこにいるの?」
「あーらごめんなさい。このへんの席もう満杯なのよ、宮崎くん」
茂は前回の罰として客席を追い出され、長谷の隣で立ち見。

(この試合の次がボクの中量級の決勝戦だ。その前に粉川の試合をここでみることになるとはな)
次に試合の控える藤田も、最も間近で試合を見届けることになった。


第197話 両雄ゆずらず


『さあ、はじまりました。軽中量級決勝戦!赤は東京代表・千駄谷学園二年の鳶……おーっと鳶嶋かついだ――っ!』
実況が選手の紹介を終える間もなく、いきなり仕掛けた鳶嶋。
袖釣り込み腰で完全に逆さになった巧をさらに体を預けて追い込む。
「でやあっ!」
巧の体が畳を打つ音。「有効――っ!」

開始わずか10秒で早くも鳶嶋がポイント先取。
片手からの袖釣り込みは途中で巧の体が離れたために「有効」で終わったものの、
つかんだままなら「技あり」以上のポイントがついてもおかしくはなかった。

さすがに千駄谷の鳶嶋。これは一方的な試合になるかもという周囲の声。
だが――玉城の力強い声がそれを否定する。
「バカいえ!粉川がこのままでいるかっ!粉川のあきらめの悪さは相当なもんだぜ、鳶嶋弟!」

810 :2/2 :2009/01/26(月) 21:02:44 ID:???
今度は真っ直ぐに組んでいく巧と鳶嶋。右対左のケンカ四つ。
巧は前に出ている鳶嶋の左足を刈り、そこから――左の一本背負い!
「今度は粉川が投げ――っ!しかし、これは崩れたか!?」
かわされそうになるそのとき、巧は鳶嶋の体の下にもぐりこみ、その足を捕まえる。
「逃がすかっ!鳶嶋っ!」
そして無理矢理にひっくり返す!

「有効――っ!」
『なんと!あっという間に“有効”取りかえしました、粉川!一瞬、背負いが崩れて失敗したかにみえましたがっ!
 すくい投げ気味に変化して、強引に鳶嶋をひっくり返しましたっ!』
わずか一分足らずの攻防で互いに有効一つずつ取り合うこの両者、ともに互角。

今度は巧が先手を取る。
背負いに行ったところを鳶嶋が耐える。が、そこで巧は鳶嶋の右足を抱え、さらに残った足を払う。
完全に宙に浮いた鳶嶋。だが、彼は空中で体をひねってうつ伏せに落ち、ポイントは無効。
だが、それで消沈する巧ではなかった。
『粉川、すぐさま立ち上がり、鳶嶋に向かっていくっ!今の技がノーポイントだったことも
 全然気にしていないかのうように元気です!典型的な闘士(ファイター)型の選手ですね、粉川は!』

巧の一本背負い――から変化して大内刈り!
これは場外に終わったが、巧の攻撃は休むということをしらない。

間断の無い攻めに自分から技が出せない鳶嶋。
こうなってくると、“指導”を受けることも――。
「その調子その調子――っ!」
「ガンガンいけえっ!」
「鳶嶋に“指導”プレゼントだっ!」
盛りあがる応援席。

だが。

この劣勢にありながら、鳶嶋には焦りの表情がまるで浮かんでいなかった。

811 :マロン名無しさん :2009/01/27(火) 03:06:35 ID:???
てすと

812 :マロン名無しさん :2009/01/27(火) 10:22:49 ID:???
玉城が「俺以外のやつに負けるのは許さん!」って言うジャンプのライバルみたいな立ち位置だ

813 :マロン名無しさん :2009/01/27(火) 14:53:10 ID:???
巧があっさり負けたら自分の立場がない、
とか小物っぽいこと考えてたら嫌だな。

814 :マロン名無しさん :2009/01/27(火) 17:31:20 ID:???
顔が正統派なせいか鳶嶋が強そうに感じないなぁ
ほら、兄が微妙だったしねー
イケメンで強かったのって石塚ぐらいか?

815 :1/2 :2009/01/27(火) 21:04:22 ID:???
第198話 その瞬間

体育館の前に停車したタクシーから降りる一人の女性。
関係者用の入り口でスタッフが彼女を止め、一般の入り口に誘導しようとするが――、
その口からは意外な言葉が。
「関係者です。この大会に出ている選手の父兄ですので」
そのとき湧き上がる喚声。モニターに映っているのは今まさに行われている軽中量級決勝戦。
それを目にした彼女は――その名を呟いた。


「巧」


そのまま関係者用の入り口から中へ入っていってしまう彼女。
「あっ、待って!選手の父兄の方もいちおう一般のひとなんですけど〜〜っ!」

互角の戦いが続く決勝戦であったが、ここでついに鳶嶋に“教育的指導”がつく。
自分から技を掛けないので消極的と取られたのである。
否が応でも技を掛けていかなくてはならなくなった鳶嶋。これで試合の流れが変わるか――。

先ほどの女性がついに試合場にたどりつく。
彼女はたまたま隣り合わせた山下と斉藤(メダリストの方)の二人に今の試合が何回戦かを尋ねた。
「何回戦も何も、これは決勝戦ですよ。軽中量級最後の試合」
気さくに答えてくれる斉藤。だが、それを聞いた彼女は怪訝な顔をする。
「あら、でもこれ、全国大会と聞いたのですけど」
「ええ、ですから、これに勝ったほうが日本一」
思わぬ言葉を耳にした彼女は斉藤を叩く。
「ま――っ、からかわないでくださいなっ!」
「いたいっ!本当ですってば!」
とはいえ信じられない彼女。「うちの巧がそんな大それたこと……」
だが、真剣に戦う巧の表情に、やがてそれを事実として受け止める。
「うちの巧が……?まさか……」

816 :2/2 :2009/01/27(火) 21:05:53 ID:???
今のところ巧の優勢。
ポイント差は無いが、このまま判定になれば充分に勝てるぐらいである。

(無事にすんで!巧くんに勝たせてあげて!)

祈る保奈美。それに呼応するかのように、巧はさらに鳶嶋を攻め立てる。
だが――そのとき、鳶嶋の組手が変わった。
「むっ!?」
それに気づいたのは鳶嶋兄、佳隆である。
「よし!」
鳶嶋の体勢は普通に見れば不完全そのものだが――彼の視点は違った。
(左袖の真ん中!ここさえしっかりつかめば…)

そしてついに鳶嶋が仕掛ける。
それはまるで一本背負いを裏返したかのような――片手からの袖釣り込み腰!

とっさに足をかけてこらえようとする巧。だが、「うおおっ!」
鳶嶋はその足ごと跳ね上げた。「ぐわっ!」

絶妙のボディコントロール。巧は為すすべもなく――。


背中から、畳の上へと落ちた。


817 :マロン名無しさん :2009/01/27(火) 21:08:34 ID:???
場外か

818 :マロン名無しさん :2009/01/28(水) 00:12:47 ID:???
ここでまさかのママン登場。
巧母でいいんだよね?この人。うちの巧っていってるし。

819 :マロン名無しさん :2009/01/28(水) 00:23:25 ID:???
前働いてるとかいってたな。
親出てきたし勝利フラグかね。っていうか連載終わりもあるか?

820 :マロン名無しさん :2009/01/28(水) 02:17:05 ID:???
次の大会でリベンジの流れだからもうちょっとだけ続くんじゃ

821 :マロン名無しさん :2009/01/28(水) 02:18:12 ID:???
今までの流れだとvs藤田もvs石塚もvs玉城もライバルには一度負けてからリベンジの流れ

822 :マロン名無しさん :2009/01/28(水) 03:07:58 ID:???
袖釣り込み腰って漫画で見るとどんなふうに投げるのかいまいちわからん
変なかっこうだから背中痛めそうな感じがする

823 :マロン名無しさん :2009/01/28(水) 04:58:04 ID:???
斜めから入る背負いってイメージしたらわかると思う

824 :マロン名無しさん :2009/01/28(水) 19:06:50 ID:???
次週、保奈美とママンのダブル負けないで巧クン!にご期待ください

825 :1/2 :2009/01/28(水) 21:14:08 ID:???
第199話 夏の終わり


「一本!それまでっ!」


高々と差し上げられる審判の手。誰もが息を呑んだその結末。
そして、大歓声が上がった。
『一本――ん!鳶嶋大逆転――ん!鮮やかすぎるほどうまく投げがきまりました。文句なしの一本ですっ!』

スロー再生される鳶嶋の袖釣り込み腰は、高校生のものとはとても思えないほど精妙を極めていた。
『前半は粉川に押されていたように見えた鳶嶋ですがっ!この一発を狙っていたのでしょうか!
 鳶嶋雅隆!見事一本勝ちで軽中量級のチャンピオンとなりました!』

「…またヤツだ!鳶嶋弟!」三溝がその名を繰り返す。
「団体の時はオレがやられて浜高の負けをきめられた!そして巧も個人戦のタイトルを……」
彼の言葉通り、浜高にとってはこのインターハイ、鳶嶋一人にやられたようなものだった。

「保奈美、巧くんのとこ、いってやりなよ」
桜子が気を使うが、当の保奈美は放心したまま。
「保奈美!」「えっ?」「いくよ、巧くんのとこへ!」
桜子は保奈美の手を取り、巧のもとへと行かせるのであった。

場内のどよめきがまだおさまらない中、続いて中量級の決勝戦が始まる。
巧はすれちがいざま――藤田と目を合わせることができなかった。

龍子先生の制止も聞かず、駆け出していく巧。と、そこで先生に声をかける女性が。
「あの……先生。倉田先生じゃありません?」
前回から登場していた彼女は、龍子先生と面識があった。

「巧くんのお母さん!」

826 :2/2 :2009/01/28(水) 21:14:49 ID:???
その頃、保奈美と桜子は巧の姿を見つける。
だが、バツの悪さに巧はその場から逃げ出してしまう。
「保奈美!追いかけなっ!」
桜子は背中を叩いて親友を送り出すのであった。

「ちっくしょおおお――!」
苛立ち紛れに立ち木に向かって跳び蹴りをする巧。
着地も何も考えず、受身すら取ることなくそのまま背中から地面に落ちる。

木漏れ日。

不意に巧に走る震え。彼の目の端には――。

巧は両腕で顔を覆った。

そのまま動かない彼の隣に保奈美はただ無言で座る。

「保奈美」
巧は自分の横にいる彼女に呼びかける。
「ちょっとまっててくれ。すぐ復活するから」
そして彼女も静かに了承するのであった。

その頃、試合場では中量級の決勝戦が佳境に入っていた。
残り一分を切り、未だに両者ともポイントは無し。このまま判定にもつれこむかどうかというところ。
「まだチャンスはあるっ!絶対にキメる!」
溢れる熱気。藤田の闘志がほとばしる。

しかし――そこはもう巧にとって、どこか遠い場所のように感じられるのであった。

827 :マロン名無しさん :2009/01/28(水) 21:50:51 ID:???
藤田のを見てやれよ・・・

と言いたいところだが県ライバル(藤田)と全国ライバル(鳶嶋)と言うことになるんだな、これは。玉城とはケリついちゃったし。

828 :マロン名無しさん :2009/01/28(水) 23:12:43 ID:???
鳶嶋はあくまでも同階級でのライバルで、恵は永遠のライバルとかいう関係だろう

829 :マロン名無しさん :2009/01/28(水) 23:31:00 ID:???
下の名前で呼ぶなw

830 :マロン名無しさん :2009/01/29(木) 03:21:26 ID:???
ライバル登場→敗れる→雪辱を果たす→新たなライバル登場
このサイクルを、藤田、玉城、鳶嶋とやっている感じ

831 :マロン名無しさん :2009/01/29(木) 10:56:33 ID:???
ママンはいったいなんのために登場してきたんだろう
来週あたり一エピソードあるかねぇ

832 :1/4 :2009/01/29(木) 20:59:58 ID:???
第200話 私がライバル

炸裂する藤田の小内巻き込み。審判の手が高々と差し上げられる。
『一本――ん!きまったあっ!静岡代表・藤田恵!中量級優勝――っ!』
場内は割れんばかりの大歓声。中学以来、二年ぶりの全国優勝。
これで藤田もインターハイチャンピオンの一人となった。
県の団体戦では巧と互角だったというのに、栄冠を手にしたのは藤田一人。
いかに腑に落ちずとも、それが結果であった。

と、巧の姿が見えないことに皆が気づく。負けたショックが大きかったかと杉が気にするが、
「まー大丈夫でしょ、保奈美がいってるから」
桜子のその一言で例のごとく、野次馬根性炸裂。
「なんだよ、また近藤と一緒?油断もスキもあったもんじゃないな」「いくか、のぞきに!」
杉ばかりではなく茂までもが反応し、それを桜子が止める。
「あんたらのぞかなくちゃいけない義務でもあるの?」
「これも一種の習慣なんだよ」
結局、ミッタンや一年生、応援に来てくれた他の学校の者たちも一緒になって行く事に。
「あいつらのって大っぴらな割に異常にオクテだからな」
「小学生並の進展度ですからね」「あら、そうなの?」
「本当のところはどうなのかしら?」「みんないくの?」
ゾロゾロと行列になって進む彼らを、桜子一人ではどうしようもなかった。
「は、袴田サンまで……」

「藤田のバカ……どうなったかな」
不意にそんな事を口にした巧は、その場で起き上がる。「いこう!」
「やっぱ、他のヤツらの試合みとかなくちゃ。いつか当たるヤツもいるかもしんねえし」
(だいぶ元気もどったみたい…よかった)
一安心の保奈美。だが、
(でも、もうちょっとゆっくりしたかったな…)
そんな本音もありました。
「え?なんかいった保奈美?」「う、ううん、別に…」

833 :2/4 :2009/01/29(木) 21:00:41 ID:???
戻ってきた巧たちを龍子先生が呼ぶ。その隣の人物に巧も保奈美も気がつく。
「か――さん!」「あっ……巧くんのお母さん!」
「あら、まあ!保奈美ちゃん?」
小学校卒業の際に引っ越していたので、保奈美とは久しぶりの対面となる。
「美人になったわね――大きくなったらキレイになると思ってたけど、まあ――」
それはそれとして、突然姿を現した母親に巧が抗議する。
「なっ!なんでここにいるんだよ!」
しかし彼女はそんな息子を一瞥し、


「なんでじゃないでしょ、おまえは――っ!」


持っていたハンドバッグで思い切り巧を殴りつけるのであった。

「どーして今日の試合のこと、母さんに教えなかったの!今朝、新聞でみてはじめてしったのよ!」
「だって今までも試合なんかみにこなかったし、仕事忙しいし!」
「全国大会だろ、今日のは!他の父兄の方はみなさん、みえられたでしょう、先生?」
頷く龍子先生。仕事が忙しいという巧母の職業は、看護婦さんなのだという。

「ところで今、スゲー痛かったぞ……なにはいってんだよ、そのバッグ?」
「あ――いけない!うっかり忘れて!巧の試合をみせてやろうと思ってたのに!」
その言葉で巧は気づく。
「父さんか……」
巧母がバッグから取り出したのは、亡くなった父親の遺影であった。

「ごめんなさいね、お父さん……」

834 :3/4 :2009/01/29(木) 21:01:34 ID:???
意外に渋い巧父。巧は母親似らしい。父親は消防士だったのだという。
会場に着いたときにはもう最後の試合だったので、見せてあげられなかったことを巧母は悔やむ。
「いいよ。負けちまったしな、あんな試合!」
「なにいってんの。二位だってすごいじゃない」
ふて腐れる巧を優しく諭す母。
「男だろ、いつまでもウジウジしてるとみっともないよ」
「ウジウジなんかしてねえよ!」
「してたじゃん」「してねえ!もうふっきれた!」


「だったら二位でも堂々としてなさい!男だろ!」


母は――決して優しいばかりではなかった。

と、そこで背中に杉がぶつかる。
「おっとあぶね!あっ巧!」「キャッ!」「急に立ちどまらないでくださいよっ!」
それがきっかけになり、巧は完全に吹っ切れる。
「あーっ!わかったよかーさん!堂々としてりゃいいんだろ、堂々と!」
この後の表彰式は父さんに見せてやれ、と言い捨てて身を翻す巧。
(こーやってきびしく育てたのね)
感心する龍子先生。
(相変わらず仲いい……)
少し羨ましい保奈美であった。

835 :4/4 :2009/01/29(木) 21:02:32 ID:???
三日間にわたって高校生たちの闘いが繰り広げられたインターハイ、男子の大会はこれにて閉幕。
個人戦、軽重量級は玉城一史が優勝。
そして重量級は、大本命の東名大藤沢の窪ノ内を破った千駄谷学園二年生、橘大樹に決まった。

優勝旗を受けとる鳶嶋。
彼が戻ろうと振り向いた時、二位の巧の姿がその目に映った。
巧は心の中で眼前に立つ男に告げる。
(鳶嶋……きさまがそれをもっていられるのは)


(一年間だけだ!)


すれ違いざま、鳶嶋は何かを感じ取る。

「軽中量級二位、浜名湖高校 粉川巧!」
二位の巧も表彰を受け、その首にはメダルがかけられる。
(ほら、あなた。巧よ、いい顔してるでしょ)
巧の母は息子の晴れ姿を亡き父の遺影に見せるのであった。

中量級を優勝した藤田は横に立つ鳶嶋を無言で眺める。
その鳶嶋が気にしていたのは、自分が負かした相手である巧。
(本当にあれが、さっきの粉川巧か?)
優勝者であるにもかかわらず、巧を見つめる鳶嶋の目は厳しく、その額には汗が浮かぶのであった。

「巧さんは二位、宮崎さんは三位、団体戦はベスト8か。終わったなあ、I・Hも……」
感慨深げに呟く仲安だったが、
「まだ麻理のが残ってるっ!袴田さんもねっ!」
麻理に後ろからボコボコにされるのであった。

836 :マロン名無しさん :2009/01/29(木) 21:32:41 ID:???
ええかあちゃんや

837 :マロン名無しさん :2009/01/29(木) 21:44:11 ID:???
恵→鳶嶋→←粉川 という構図か

838 :マロン名無しさん :2009/01/30(金) 00:11:40 ID:???
アッー!

839 :マロン名無しさん :2009/01/30(金) 08:08:41 ID:???
それよりも巧だろ
藤田のことを気にしながら新たなライバルに熱い視線を送るって、開会式の玉城のときとと同じ構図だ!


840 :マロン名無しさん :2009/01/30(金) 15:13:46 ID:???
490k超えてたね。新スレ立てに行ってきます。

841 :マロン名無しさん :2009/01/30(金) 15:27:46 ID:???
立ててきました。残り楽屋裏で。

帯をギュッとね!連載中 三本目
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1233296172/

842 :マロン名無しさん :2009/01/30(金) 15:50:19 ID:???
>>841


容量は全く気にしてなかったから
いきなり新スレ立っててビックリしたが納得した

843 :マロン名無しさん :2009/01/31(土) 05:18:19 ID:???
楽屋裏ですかな?

844 :マロン名無しさん :2009/01/31(土) 13:03:48 ID:???
ああ、容量で移項か!全く気付いてなかったぜ

845 :マロン名無しさん :2009/01/31(土) 22:14:44 ID:???
意外に容量食ったな
書き込みが丁寧だからか?

846 :マロン名無しさん :2009/02/01(日) 02:33:01 ID:???
レスが少ないのが原因だな

847 :マロン名無しさん :2009/02/04(水) 14:15:27 ID:???
とりあえず梅

848 :マロン名無しさん :2009/02/06(金) 23:14:04 ID:???


849 :マロン名無しさん :2009/02/07(土) 19:11:10 ID:???
梅ついでに質問
「サッカーはあるけどラグビーはない」のサッカーって俺フィーだっけ?
自信がなくて書き込めなかった

850 :マロン名無しさん :2009/02/07(土) 19:30:05 ID:???
ちょいと調べてみた。
クイズが載ってる単行本16巻を見ると、この回は平成4年17号。
俺フィーはWikiでは92年の3・4号からってなってる。
だから多分、俺フィーで正解。

851 :マロン名無しさん :2009/02/07(土) 21:20:26 ID:???
掲載時期を全く調べずにレスするけど
サッカー:俺フィー
バレー:健太
警察:パトレイバー
妖怪:うしとら
時代劇:虹色とうがらし
でおk?
忍者ってなんだっけ

852 :マロン名無しさん :2009/02/07(土) 21:36:07 ID:???
炎の忍者マン?

853 :マロン名無しさん :2009/02/07(土) 22:40:44 ID:???
>>850thx
サッカー以外は>>851と>>852のとおりだと自信があったが、
単行本がなく掲載時期がわからなかったもので、俺フィーが微妙だと思ったんだ

854 :マロン名無しさん :2009/02/07(土) 23:25:28 ID:???
>>851
全部名作だ

855 :マロン名無しさん :2009/02/08(日) 03:48:57 ID:???
ラグビー漫画もあったよね
モンキーやってた頃の漫画だっけ?

856 :マロン名無しさん :2009/02/08(日) 08:41:27 ID:???
ガンバの人が描いてたやつか、それともなかいまの描いてたやつかどっちだろう

857 :マロン名無しさん :2009/02/08(日) 19:09:10 ID:???
苺谷先輩ですね、わかります

858 :マロン名無しさん :2009/02/08(日) 21:34:36 ID:???
古いよw

859 :マロン名無しさん :2009/02/12(木) 12:33:03 ID:???


860 :マロン名無しさん :2009/02/13(金) 01:33:52 ID:GtBil4lF
まだ埋まってないのか

861 :マロン名無しさん :2009/02/13(金) 02:45:13 ID:???
なんかこっちならでは雑談ネタないかね

俺は正直このあたりの話は全然面白くなかったな
今でも読み返すとき福岡国際編は読み飛ばすことが多い

862 :マロン名無しさん :2009/02/13(金) 18:27:52 ID:???
チャーリーがちょっと報われたのはよかったけど、
他は麻里の天才っぷりをアピールしてるだけのシリーズだったからなあ。
ぶっちゃけると「どうせ勝つんだろ?」みたいな感覚で読んでたから全然ワクワクしなかった。

863 :マロン名無しさん :2009/02/13(金) 23:14:36 ID:???
そういえば安西の2回目の絵筆って何巻だっけ?

864 :マロン名無しさん :2009/02/16(月) 21:14:38 ID:???



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