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なんて素敵にジャパネスク連載中
1 :マロン名無しさん :2007/06/11(月) 21:00:30 ID:aUlqVxUu
昭和63年、花とゆめ20号にて「なんて素敵にジャパネスク」という漫画が掲載された。
この漫画について語ろうじゃないか。
本連載は、氷室冴子の集英社コバルト文庫シリーズを漫画化したもので、そちらを既読の方もいるだろうが、
漫画で初読の読者のために、ネタバレは遠慮頂きたい。また、小説対漫画の過剰な比較討論もスレ違いだ。

尚この漫画は、何をしても許されるお上の命で、概ね1日に1話ずつの速度で連載されるようだ。
時々、作者が吉野へ取材旅行のため休載になったり、変な時期に合併号になる事もあるが気にしないでくれ。

なお本日は「花とゆめ昭和63年20号」の発売日だ。


連載中スレの楽屋裏 第23幕http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1179930176/

※このスレは連載当時に戻ったつもりで進行しています。
あらすじが書き込まれた話から先の展開や、先の時代の出来事は知らない前提で参加してください。
初めて参加する方は必ず「連載中スレの楽屋裏」のテンプレに目を通してルールを把握してください。

2 :マロン名無しさん :2007/06/11(月) 21:03:54 ID:???
関連スレ
【新刊】 山内直実・ジャパネスク 6 【発売】http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/gcomic/1158902745/
氷室冴子 6http://love6.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1171978309/

連載中スレまとめサイト ttp://rensai.qp.land.to/
関連スレ一覧 ttp://rensai.qp.land.to/t/live

3 :粗筋中将1/4 :2007/06/11(月) 21:04:51 ID:???
今は昔、平安京の都には、瑠璃姫というたいそうぶっとんだ姫がおりました。
摂関家の流れを汲む名門藤原家の姫君でありながら、
16になっても婿の一人も決まっていません。
一生独身で過ごすのだと、求婚の誘いを片っ端から断っているのです。
13、14で結婚する姫君が多いなか、
どこか体に欠陥があるのでは、などと噂もされ始め、
父上の大納言さまもこれには大層頭を抱えておりました。
瑠璃姫のひとつ下の弟・融とともに、
昔の初恋を引きずってなかなか結婚に踏み込めないのではと心配しています。
融の幼なじみ高彬には、
「『結婚しない』じゃなくて『 結婚 で き な い 』になってしまうよ」
なんて憎まれ口をたたかれてしまいます。

4 :粗筋中将2/4 :2007/06/11(月) 21:06:21 ID:???
瑠璃姫には、幼い頃の初恋の君がおりました。
病がちの母上とともに、祖母のいる吉野里へくだった9つの頃、
そこで出会った、吉野君と呼ばれるとても美しい童でした。
わけあって吉野里に身を寄せている、大層高貴な方のご落胤で、
そのため、本名を誰も知らないということでしたが、
幼いふたりにそんなことは関係ありませんでした。
花摘み駆けっこかくれんぼ、遊び疲れるまで一日中遊んだのです。
ある日吉野君は言いました。
「やがてわたしが父上に認められ 都に呼ばれ 官位を授かることができたら
 お迎えに行ってもいいですか?」
約束に、菫の花をそっと手のひらに乗せてくれた、
接吻のなんたるかも知らなかったなんとも純情可憐を絵に描いたような初恋でした。
しかし、幸せは長くは続かず、母上を亡くし、祖母を亡くし、
幼い吉野君まで流行病で昇天してしまうのです。
悲しみにくれたまま父上のいる都に帰ってみれば、
父上は、母上が亡くなって一年しか経っていないというのに、もう新しい母上を邸に迎えていたのです。
(人間てなんてむなしい…ましてや男なんて薄情であてにならないもの
こんな悲しい思いをするなら結婚なんて一生しないんだから!!)
10歳にして人生を悟ってしまった瑠璃姫は、
いっそ尼になって吉野君の菩提でも弔おうかと考えるのでした。

5 :粗筋中将3/4 :2007/06/11(月) 21:07:45 ID:???
大納言の三条邸では、今宵管弦の宴が催されています。
十二単で着飾った瑠璃姫の前には、何やら見慣れぬ糸目の優男。
名を権少将を申すこの殿方、なぜか吉野君のことを語りだしたのです!
どうやら、権少将は吉野君の兄上らしい…
権少将の父上は前々帝の異母弟で身分も高く、吉野君が名を明かせなかった理由も頷けます。
急な話に興奮し、一度自室に戻る途中、瑠璃姫は、今夜の宴に琵琶奏者として参加していた高彬に会います。
高彬に、権少将と吉野君の関係を話したところ、
実は今夜の宴は、瑠璃と権少将を引き合わせるために設けられたものだということが明かされます。
吉野君のくだりも、大納言の父上と権少将で口裏を合わせ…
そうまでして結婚させたいのかと絶望する瑠璃姫に、親とはそういうものだと言う高彬。そして
「僕だって縁談くらいあるさ。兵部卿宮の二の姫はどうかって」
高彬の縁談に「あの、池に落ちては泣き転んでは泣いて瑠璃を呼んだ鼻タレが…」と驚きますが、
まずは父上に真相を聞かねばと、宴席に戻ります。
その道すがら、瑠璃姫は父上と母上の話し声を聞いてしまいます。
「吉野君の話をコロッと信じ込むあたり少々不憫ではあるがこれも親心だ
 今夜のうちに強行突破して既成事実を作ってしまえば―」
既成事実―――ッ!?

どうやら高彬の話は本当だったようです。
宴席に戻るのはやめ、融の部屋に身を寄せようと翻すと、権少将とばったり会ってしまいます!
寝室になだれこもうとする権少将をなんとか振り払い、融の部屋に駆け込むと、
そこにいたのは弟ではなく、高彬でした。
強行突破されそうになった、権少将から身を守ってくれ、小さい頃助けてやったのを忘れたのかと泣き付く瑠璃姫に、
高彬が意味深な一言を放ちます。
「忘れてるのは瑠璃さんのほうじゃないか」

6 :粗筋中将4/4 :2007/06/11(月) 21:10:30 ID:???
そこにやってきた、瑠璃姫を妻と呼ぶ権少将に向かい、高彬は毅然と言います。
「妙なことを言われます権少将殿。わたくしと瑠璃姫は
 行く末を固く契った振り分け髪の頃からの筒井筒の仲ですよ」
瑠璃姫自身も「行く末」という言葉に戸惑いを感じつつ、権少将をふり払うために開き直ります。
「そうよっほんとにほんとっ
 あたしと高彬は ぶ っ ち ぎ り の 仲なんだからっ!!」
どーだまいったかと権少将に虚勢を張る瑠璃姫と共に追い討ちをかけるように、
高彬が権少将の醜聞をちらつかせ、大納言に知られたくない権少将は立ち去りました。

とっさに「筒井筒の機転」を効かせてくれて助かったと礼を言う鈍感な瑠璃姫に高彬はそっぽを向いてしまいます。
そこでようやく瑠璃姫は思い出したのです。
吉野里から都に戻ってきた泣いてばかりの瑠璃姫に、
ずっと一緒にいるよ、と約束した幼い高彬のことを―

瑠璃姫の生涯独身宣言は、ぼくの官位が相応に進むまで待っていてくれるからだ、と勘違いし、
浮気な男が嫌いな瑠璃姫のために、兵部卿宮二の姫との縁談もとっくに断っていたと言う高彬。
確かに、この先変な男と無理やり結婚させられるよりははるかにマシかもしれない、と考えました。
(一応 右近少将だし 将来性もあるし
 何より上にバカがつくほどの真面目だから、浮気なんてしないだろうし…)
ニコリと瑠璃姫に向かって笑いかける高彬を見ていて、急にドキドキし始めてしまいます。
高彬との約束を覚えておくという約束に、手を出して、という高彬。
差し出した瑠璃姫の手のひらに、高彬はそっと接吻するのでした。
「こ、これだから男ってのは油断も隙も―…」
と言いつつも、思わず顔が笑っちゃうのを抑えることができない瑠璃姫なのでありました。

筒井筒 井筒にかけし まろが丈
   過ぎにけらしな 妹見ざるまに
(あなたに会わないうちにぼくはこんなに大人になりました 伊勢物語)

7 :粗筋中将 :2007/06/11(月) 21:12:50 ID:???
おまけ
落胤…正妻ではない人の子

8 :マロン名無しさん :2007/06/11(月) 22:28:25 ID:???
へえ。ジャパネスク漫画化したんだ。
ぶっちぎりの仲はいつ読んでも笑えるw

9 :マロン名無しさん :2007/06/11(月) 22:54:04 ID:???
なんか平安時代ってゴージャスでいいなwktk

10 :マロン名無しさん :2007/06/11(月) 22:56:05 ID:9gEUv4ip
色々と勉強になる漫画だな

11 :マロン名無しさん :2007/06/11(月) 23:05:39 ID:???
貴族男子は琵琶とか普通にたしなんでないといかんのか。ひぇー

12 :マロン名無しさん :2007/06/11(月) 23:05:51 ID:???
平安時代好きだから楽しみだ
でも父親が夜這いの手引きって凄いな

13 :マロン名無しさん :2007/06/11(月) 23:06:45 ID:???
これって小説原作なんだ。マンガだけでも十分分かりやすかった。

14 :マロン名無しさん :2007/06/11(月) 23:14:54 ID:???
16才で嫁き遅れ扱いでデフォルト見合いで夜這いか。凄いな。数えだから年齢勘定違うのかな。

15 :マロン名無しさん :2007/06/11(月) 23:17:03 ID:???
絵が可愛いね。
ぶっちぎりってナニしたってことだろう。宣言しちゃったんだw

16 :マロン名無しさん :2007/06/11(月) 23:24:18 ID:???
あー、ジャパネスク漫画にするんだw
原作も軽い雰囲気で骨子は太いので独特のタッチだけど、
絵柄はよく合ってるな。風俗考証がしっかりしてると
嬉しいけど、そこまでは望めないかな?

17 :マロン名無しさん :2007/06/11(月) 23:25:43 ID:???
>>12
嫁入り前の娘に変な噂立てられてしまったし、上級貴族として体面があるんだろう。
父君は高彬は候補の眼中になかったんだろうか?

高彬一途。璃姫ちょっと鈍感?吉野君一筋?
手に花とかちゅーとかラブいな。高彬超頑張れ。

18 :マロン名無しさん :2007/06/11(月) 23:29:35 ID:???
高彬、嫌味な奴かと思ったら一途な男じゃないか!
夜這い権少将に対する切り返しがかっこいいぞ
これからのラブコメ展開wktk

19 :マロン名無しさん :2007/06/11(月) 23:31:22 ID:???
とっさに高彬の将来性と地位と浮気度を図るあたり、瑠璃姫しっかりしてる。
10才で実の母と祖母と初恋の人を亡くしたら、しっかりもするかもな。

20 :マロン名無しさん :2007/06/11(月) 23:36:23 ID:???
高彬、しっかり恋敵の弱み握っているあたり、何気に策士だ。いいよいいよ。死んだ初恋の相手とは戦えないけどがんばれ。

21 :マロン名無しさん :2007/06/11(月) 23:42:32 ID:???
邸とか管弦の宴とか本当にゴージャス

22 :マロン名無しさん :2007/06/11(月) 23:46:29 ID:???
瑠璃姫もお転婆で深窓の姫君っぽくないが、一途で可愛いね。高彬とお似合い。
後妻との関係や政略結婚で瑠璃姫嫁に出したいなら瑠璃父はちょっとヒドス
今後の展開にwktk

23 :マロン名無しさん :2007/06/11(月) 23:51:26 ID:???
筒井筒の和歌、締めにピッタリ。
妹(いも)、我妹(わぎも)=愛しい女性
背の君=愛しい男性
妹背(いもせ)の仲=恋人同士

みたいな話を古典で習ったときはドキドキしたよ。

24 :マロン名無しさん :2007/06/11(月) 23:53:32 ID:???
官位の高低がさっぱりわからん。昔の古語辞典探してこよ。

25 :マロン名無しさん :2007/06/11(月) 23:53:37 ID:m+DSQOWz
>6 1巻の時、高彬は右近少将じゃないと思う。衛門佐(えもんのすけ)。


26 :マロン名無しさん :2007/06/11(月) 23:53:59 ID:???
ぶっちぎりの仲ワロス

27 :粗筋中将 :2007/06/11(月) 23:56:19 ID:???
誤植
>>6
×右近少将
○右大臣家の四男

失礼…

28 :マロン名無しさん :2007/06/12(火) 00:03:34 ID:???
瑠璃姫を守るために、官位が自分より上の権に噛みついたのね。男らしい高彬。

29 :マロン名無しさん :2007/06/12(火) 00:05:56 ID:???
官位はまだ低くても、家柄は右大臣の息子で出世頭よ。高彬は。
権少将って確か名うての女好き設定だったと思う。

30 :マロン名無しさん :2007/06/12(火) 00:13:48 ID:???
瑠璃姫に微妙に前髪があるとか、細かいこと言い出したらきりがないけど、山内さんの絵は好き。

31 :マロン名無しさん :2007/06/12(火) 00:30:12 ID:???
瑠璃姫が可愛いよな
今後も楽しみ
早くあの人に出てきて欲しい

32 :マロン名無しさん :2007/06/12(火) 03:05:14 ID:???
ひとつ年下設定のせいか、高彬の真面目さが可愛く見えてイイ!

33 :マロン名無しさん :2007/06/12(火) 09:42:14 ID:???
結婚は瑠璃姫の気持ち次第なんだからあっさり終わりそうな気がする

34 :マロン名無しさん :2007/06/12(火) 10:43:11 ID:???
この人が昔描いた「さ・ちぇんじ」も良かった。
登場人物みーんな重々しい衣装なのに、全体的に絵柄が軽く読みやすく好きだ。

35 :マロン名無しさん :2007/06/12(火) 11:58:56 ID:???
既成事実w
強行突破ww

お父ちゃんwww

36 :マロン名無しさん :2007/06/12(火) 21:28:08 ID:???
>>34
あのテンションの高さが好きだった

37 :マロン名無しさん :2007/06/12(火) 21:40:34 ID:???
原作にえらい忠実だね
この先、漫画オリジナル展開とかあったりするのかな
見たいような見たくないような

38 :粗筋中将1/3 :2007/06/12(火) 22:01:55 ID:???
「だからっ!!あたしは高彬とはケンカなんかしてないって言ってるでしょっ!?」
今日も三条邸に瑠璃姫のさけび声がこだまする。
外はじめじめと雨が降っていた。

父大納言と権少将による「既成事実事件」から2月。
幼なじみ高彬との結婚を考えるようになってから、
父上も大喜び、高彬自身も、弟融にかこつけてほけほけと嬉しそうに三条邸に顔を出していた。
なのに、10日前から高彬は突然来なくなったのである。
「将来有望な高彬殿が来なくなったのは瑠璃が愛想を尽かされたからだ、
 これ以上の良縁はないのだから、ここは頭を下げて丁重にもてなせ」という父上に、
ケンカの心当たりもない瑠璃姫は、なぜこちらが頭を下げなければならないのか
来ないなら来ないでもういい、結婚なんかしない、婚約なんか破棄してやる!!
と2月ほど前によく見た光景を繰り広げていた。

父大納言の心配も頷ける。
婚約解消どころか、まだ二人は正式な婚約をしていないのだ。

39 :粗筋中将2/3 :2007/06/12(火) 22:04:01 ID:???
一般的に、男がせっせとおんなに求愛のお歌を贈るのが当たり前なのだ。
そして女はほどよいとこで返歌をし、晴れて 婚 約 という話になるはず…
なのに、高彬はまだ恋文のひとつもくれてない。
「いくらあたしが都で評判のぶっとんだ姫だからって、大納言の姫君だぞ!
 それも摂関家の流れを汲む名門藤原氏のっ!!
 もっと大切に扱ってしかるべきなのよ」
憤慨している瑠璃姫のもとへ、お付きの女房・小萩が慌ててやってきた。
なんと、10日ぶりに高彬が訪れたというのだ。
それを聞いて色めく瑠璃姫だったが、どうやら浮かれた話ではないらしい。
高彬は、乗り付けた牛車から降りるやいなや、そばにいた融に
「まずいことになった。進退極まった」
と青い顔をして呟いたという。
結婚の申し込みに来たなら青ざめて進退極まったなどと言わない、
こんな雨の夜になにを相談に来たのだろう、と自室でやきもきしていると、
父大納言のもとへと呼ばれる。
そこには、父大納言と弟融、険しい顔の高彬が待っていた。
父の口から聞かされた言葉に瑠璃姫は耳を疑った。
「よいか瑠璃や。落ち着いて心して聞くのだぞ。
 今夜高彬殿と一夜を共にしてもらいたい」

あたしに初夜を向かえろって?!
「た た 高彬ッ!あんたは何てコトを父さまに 父さまに―」
あまりのことに、卒倒しそうになる瑠璃、顔を真っ赤にする高彬。
「そこいらの身分賤しい女じゃあるまいし、文もくれないでいきなり初夜だなんてあんまりよ
 バカにするにもほどがあるわっ!!父さまも父さまよ!自分の娘をなんだと思って―」
とまくしたてる瑠璃だが、どうやら事は重大らしい。
一度断ったはずの高彬と兵部卿宮二の姫の縁談が進んでいる、と。

40 :粗筋中将3/3 :2007/06/12(火) 22:05:04 ID:???
その昔、高彬のお祖母さまと兵部卿宮は許されぬ恋をしたが、ついに叶わなかった。
今は仏門に入り大尼君となったお祖母さまが、
孫の高彬と娘の二の姫をくっつけて、昔の恋の記念にしようとしているらしい。
高彬のお祖母さまは二の姫とも親しかったため、高彬の断りのあとも諦められず、
高彬名義で二の姫に歌や手紙を贈っていたというのだ。
それはつまり高彬が二の姫に正式に求婚しているということ。
1月前に二の姫から身に覚えのない文がきたため、このことが露見したらしい。
融にも、まして瑠璃にも相談できないでいるうちに、お祖母さまが病に倒れた。
昨夜「お祖母さまをあわれと思うなら…」と病の床で言われた高彬は、いよいよ進退極まった、ということだった。

そういうことなので、みすみす他家に取られるのを黙って見ているわけにはいかない、
今夜のうちに決めてしまおうと父大納言は語る
幸い高彬の実家右大臣家は、高彬は融のもとへ遊びにきていると思っている
一夜の契りをかわしたあと公表してしまえば、瑠璃を押しのけてまで二の姫との縁談は進められない
既成事実がモノをいう、先にやってしまった方が勝ちなのだ!!

いくら何でも急すぎる…求愛のお歌やまめやかなお手紙をいただいて
胸をときめかしたりする時間が…と踏み切れない瑠璃に
「そんな悠長なことを言っている時間はない、歌や手紙をもらうのも
 胸をときめかすのも、今宵高彬殿とやるコトをやってからでよろしい
 選ぶしかないのだ!
 今夜高彬殿と既成事実を作って結婚するか、高彬殿が二の姫と結婚してしまうのを黙ってみているか
 ふたつにひとつ!さあどうするのだ!!」

41 :マロン名無しさん :2007/06/12(火) 23:11:43 ID:???
やっぱりそう簡単に瑠璃と高彬がゴールインとはいかない訳ね

42 :マロン名無しさん :2007/06/12(火) 23:12:53 ID:???
昔の恋の記念ってw
ちょwお祖母さんw

43 :マロン名無しさん :2007/06/12(火) 23:13:52 ID:???
瑠璃パパまたしても
既成事実作戦www

44 :マロン名無しさん :2007/06/12(火) 23:15:59 ID:???
瑠璃は認めないだろうが彼女の性格は
えーいやったもん勝ち!みたいな竹を割ったような性格の大納言父似

45 :マロン名無しさん :2007/06/12(火) 23:17:21 ID:???
異性として高彬を意識し始めたばっかりなのに
すぐやることやれってキツいな
確かに情緒もへったくれもねー

46 :マロン名無しさん :2007/06/12(火) 23:19:20 ID:???
ケコーンはやっぱり家同士いろいろ大変だ〜

47 :マロン名無しさん :2007/06/12(火) 23:21:35 ID:???
二の姫は結構縁談に乗り気だったりすんだろうか。
てか、高彬が求愛してることになってんのか。恋文、祖母代筆でもバレないし差し支えないのか。

48 :マロン名無しさん :2007/06/12(火) 23:23:54 ID:???
え?今夜?初夜?mgd

49 :マロン名無しさん :2007/06/12(火) 23:26:17 ID:???
高彬……相談しろよ。わかった時点で。気持ちは判るが事態悪化したじゃん
こういうのは後々響くぞ

50 :マロン名無しさん :2007/06/12(火) 23:29:21 ID:???
二の姫どんな姫かなwktk

51 :マロン名無しさん :2007/06/12(火) 23:30:16 ID:???
許されない恋に終わったからって
孫の恋路を邪魔すんなあぁ

52 :マロン名無しさん :2007/06/12(火) 23:31:34 ID:???
2ヶ月おててちゅーから全く進展なかったわけね。瑠璃と高彬は。

53 :マロン名無しさん :2007/06/12(火) 23:36:30 ID:???
>>50
二の姫って顔出すのかな?名前だけなんじゃないの?


54 :マロン名無しさん :2007/06/12(火) 23:37:04 ID:???
いやーでもさ、高彬にしてみたら肝心な小さい頃の約束は忘れられてて、瑠璃は吉野君吉野君だったし、いっつも融と共に年下弟扱いだったし、瑠璃完全にツンツンガキ大将キャラだし、主導権握るには時間かかると思うさ
おばあさまのこと以外にも政治的にいろいろあるんでないの、とエスパー

55 :マロン名無しさん :2007/06/12(火) 23:48:20 ID:???
そして高彬と瑠璃は既成事実を達成しめでたく結ばれましたちゃんちゃん♪

とはいかないよな…瑠璃姫がどう出るか。

56 :マロン名無しさん :2007/06/12(火) 23:50:23 ID:???
高彬と融が入れ替わって、
融が二の姫と契っちゃえよ。

57 :マロン名無しさん :2007/06/12(火) 23:54:18 ID:???
>>44
言われてみれば確かにw
情にもろいところなんかも。

58 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 00:06:20 ID:???
>>53
名前だけかな。ちょっと期待。瑠璃に負けず、面白い子だといいな。

59 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 00:08:05 ID:???
>>56
それで高彬祖母の逆鱗に触れたら、
ますます高彬と瑠璃姫の結婚は
難しくなっちゃうよ

60 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 00:10:11 ID:???
変な話だけど十二単も直衣もナニするときに脱ぐの大変そうだ
姫は髪もストロング長くて重そうだ

61 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 00:30:02 ID:???
>>60
十二単は、一番下に着てる薄物以外は紐数本引けば案外あっさり脱げるらしい。
パンツみたいな下着はつけてないかも。
髪は枕元の髪箱という漆とからでんの豪華な箱に綺麗に入れて、そっと横になる。
姫君の髪を優しく扱うのも男性のマナー
おつきの人が事前に結構準備してくれそうだが。
弓・乗馬・蹴鞠・楽器・和歌・漢詩・舞
をたしなんでこそ、の貴族男子は超ハード

62 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 00:31:32 ID:???
>>56
それ何てざ・ちぇ(ry

63 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 00:41:20 ID:???
家族会議バロスwww
それにしても少女漫画なのにやるやるって、ちょっぴりオゲフィn(ry

実際にやらなくても、やったって公言すればいいんでないの?

64 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 00:50:56 ID:???
小萩キター
牛車から転げ落ち高彬…ヘタレ気味がなんともいえんわ

65 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 00:53:35 ID:???
>>63
だよねー召使いとかからバレちゃうのかな。祖母の目を誤魔化すのは厳しいとか?

66 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 01:00:36 ID:???
進退窮まったっていかにもクソ真面目な高彬
ストレスで生え際後退するよ?

67 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 01:06:48 ID:aoel917I
>47 当時は恋文の代筆がよくあったみたい。
貴族がみんな字や歌が上手かったわけじゃないから、代筆も結構あったらしい。
要は高彬の名前で恋文を出したって事が肝心。

68 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 01:07:13 ID:???
高彬の烏帽子と額の境界あたりから
二、三本つんつん出てる髪の毛が
なんかオバQみたいでカワユス

69 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 01:09:14 ID:???
>>67
ほほー。勉強になるね。親が勝手に嫁にしたい家に出すとかよくあったのかもgkbr

70 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 01:15:06 ID:???
>>69
gkbr・・・ゴキブリ(・・?)

71 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 01:17:22 ID:???
数えにしても、ケコーン前提に
しても、たかだか15歳16歳で
初体験は早くね?
童貞な俺への挑戦かああ

72 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 01:18:50 ID:???
高彬の人気に嫉妬

「進退窮まった」にはワロタ

73 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 01:20:03 ID:???
>>70
そう、やつは飛ぶんだよ!

じゃなくてガクブル

74 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 01:30:15 ID:???
豪華絢爛平安絵巻マンガと思ったら、
それを舞台にしたドタバタ恋愛コメディーなのね。面白すぎて腹いてーwww

75 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 01:37:12 ID:???
二の姫も瑠璃と同類のハチャメチャな姫で、
瑠璃と高彬を取り合う三角関係になると予想。

76 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 02:01:04 ID:aoel917I
>71 「源氏物語」では12で子どもを生む妃が出てくる。
   藤原道長の娘も12、3で帝と結婚してるし。
   寿命が短いのと子どもを早く作るため結婚年齢も早まったのかも。

77 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 07:10:07 ID:???
>76
12歳で!?マジ!?しかもこの頃って数え年だろうから、ひょっとすると10歳くらいで・・・って事も
ありうるんだよね?
歴史オンチだから、こういうマンガはすごくためになるよ。

でも最近ちょっとマンガで人気が出るとすぐにアニメにしたり、ドラマ化したりするのが嫌だ。
イメージが崩れてガカーリするんだよね。
そうならないように祈ろう・・・

78 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 07:37:43 ID:???
二の姫がどんなふうに描かれるか楽しみだ

そしてバカイチな大納言様バロス

79 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 08:05:40 ID:???
>>76
12歳の頃っつったら私、まだ生理さえ来てなかった・・・。
性に対する知識も皆無で、中学卒業する頃にやっと知ったくらいだよ。
この頃の姫の性教育ってやっぱり乳兄弟とか、おつきの人とかの仕事なんだろうか。
前に大奥で殿の初めてのお相手を、遊女上がりっぽい女の人がしてたのを見たけど時代が違うしなあ。

東宮様がどんなお顔に描かれるのかすごく楽しみじゃ。
高彬が思ってたより可愛かったんで、期待してる。

80 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 09:00:41 ID:???
>>79
東宮出るの?ちぇんじの時は、役職上帝がからんでたけど、
今回瑠璃は高彬と結婚するから、そういろいろうろうろしないだろうし、
宮中が絡むことは必要ないでしょw

81 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 09:17:32 ID:bzAY/4BC
>79 結婚してもすぐに男女の契りを交わさず、初潮を待ってから
  本当の結婚って感じだったみたいです。
  特に帝と結婚する姫君は男皇子を産むため、乳母から色々教育されたらしい。
  男皇子を産めば将来天皇の母になれるかもしれないし、一族も繁栄するから。

82 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 09:20:42 ID:bzAY/4BC
>79 帝や東宮、貴族の男子は元服する時添い伏しっていう
  男女の契りの手ほどきをする女性がつく事が多い。
  だいたい年上の女性で、そのまま妻の一人になるパターンが多い。

83 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 10:15:05 ID:???
マロンでかつてここまでためになるスレがあっただろうか、いやない

84 :79 :2007/06/13(水) 13:44:57 ID:???
すごい勉強になるわ。ありがとう。
そうか、初潮が来るのを待ってからか。どっちにしても、この時代って顔も分からない相手に嫁ぐのが
デフォだよね。
まだ顔を知ってる相手を手引きする父上は、愛がある方かもしれんなあ。

>80
東宮でないかな?アンケ悪かったら話が高彬とのドタバタだけで終わりそうな気もするね。
色んな殿方を巻き込んで、みんなで瑠璃を取り合ってほしいなあ。

85 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 15:05:08 ID:???
皆様小説のお話はご遠慮くだしゃりませ

86 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 20:07:39 ID:VB4He1Cr
最終回予想
瑠璃と高彬の子供が生まれて
「あたしたちのジャパネスクは始まったばかり…☆」

87 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 20:09:17 ID:sbTWkbH2
なんて素敵に北里マドンナ神

88 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 21:47:30 ID:???
>>71
貞明皇后は15歳で大正天皇とご成婚され、
昭和天皇をご出産されたのは16歳でいらっしゃったと記憶してます。

100年前の話です。

89 :粗筋中将1/4 :2007/06/13(水) 22:00:23 ID:???
三条邸は、夜にも関わらず大忙しであった。
感慨に更けているのは、この邸の主大納言。
「なんと言ってもやっとこぎつけた娘の初夜…いやいやいや、結婚の夜なのだからな」
かみ締めるように口にする大納言を尻目に、今夜の主役瑠璃姫は不機嫌だ。
(なぁーにがやっとこぎつけた よ。あたしの意志なんかハナっから無視してくれちゃってさ)
考える余地のない選択肢を与えられた不満を、弟と高彬にぶつけるのであった。
しかし、高彬も考えなく今夜にしたわけではない。
結婚したら、男は女のもとに3日続けて通わなければいけないため、結婚にはいい日を選びたい。
3日目には三日夜の餅を食べ合って、きちんと露顕もして…
しかし、今夜を逃すと、物忌みや方違えの日が続き、続けて瑠璃の元へ通える日がなくなってしまう。
だからこんな急な話になってしまった、それは瑠璃にもわかっている。
あまりにいきなりすぎるから頭にきているのだ。

ふつうはさ、結婚が決まるとその日のためにお道具類を新調してもらうのよ
日一日と 新しいお道具がふえていって
ああ 結婚するんだなあ… なんて…

なのにあたしは…
そう思うと泣けてしまう。うわぁ〜ん!!と大声を上げて突っ伏してしまった。

90 :粗筋中将2/4 :2007/06/13(水) 22:01:33 ID:???
泣き声に驚いて、駆け込む高彬
「ご心配なさいますな。女性はこういう時必ず泣くものと決まって―」
「何バカ言ってんのよ小萩っ!!そんなもんじゃないわっ!!」
フォローを入れた小萩にぴしゃりと言う瑠璃。
あまりにみじめだから泣いているのだと。
求婚のお歌どころか近況報告の手紙すら高彬からもらっていない
それどころか新婚のための調度品だって何ひとつない
螺鈿の鏡台や蒔絵の櫛箱や真新しい黒塗りの髪箱さえ…
こんなハゲちょろの使い古した髪箱で初夜を迎える姫なんて、都中捜したってあたしだけ…
おいおい泣く瑠璃に、驚き、高彬は言う

「なんだそんなことか
 調度類ならあとでいくらだって揃えられる、ぼくからだっていくつか届けさせるし…
「だからそういうことじゃない!!高彬の鈍感っっ!!」

結婚に至るまでの過程を大切にしたいのよ
大切に 大切に暖めて 整えて
すべては愛する人とのその日のために―――――

なのに男なんて ぜんっぜん 乙女のデリカシーがわかってない
と嘆く瑠璃が顔を上げた時、そこには単(つまり下着)姿の高彬しかいなかった―

気付けば部屋に二人っきりである。
改めて、顔を合わせ戸惑う二人。
いや、高彬の方が緊張しているのかもしれない
(考えてみれば、いくら大人ぶったところであたしより年下なのよね、高彬って)
そう思うと、ふと愛しく感じられ、もうちょっと近くにおいでと言ってみる。
しかし、やはりなんだかぎこちない。
物語に出てくる殿方というのはみんなそっちのほうの経験はたっぷりで
女はぼけっとしてても情緒たっぷりにコトは進むんだけど、
高彬はいまいち頼りない。いかにも「初心者」って感じだが、
「そっちの方は大丈夫?」なんていくら瑠璃でも聞けないのであった。

91 :粗筋中将3/4 :2007/06/13(水) 22:02:55 ID:???
沈黙を破ったのは瑠璃だった。
「よく降るわね」場を盛り上げようと情緒の世界に話を振ったつもりが
「うっとうしいくらいの雨だね」と返されてしまう。
「そうね!確かにうっとうしい雨だけど、こーゆー時こそそれを趣深い歌に託して
 女性の気持ちをほぐすのが オ ト ナ の情緒ってもんじゃないの?」
この一言に高彬もムッとなり、ここから先は売り言葉に買い言葉である。
あいにく自分は歌には自信がないし、かと言って代作者を使う心のこもらないこともしたくない、という高彬に
「後朝の歌はどうするのだ」と詰め寄る瑠璃。
今から後朝の歌を作りなさい、出来るまで安心して結婚なんかできやしないわと言う瑠璃に高彬は
「いやだよこんな…ごちそうも食べてないのにお礼状書くみたいなこと」と反撃する。
「ごちそう」の言葉に瑠璃は「女はごちそう?後朝の歌はその礼状だって!バカにしないでよねっ!!」
勢いに任せて、手近にあった髪箱を高彬に投げつける。
高彬が上手くよけた髪箱は、大きな音を立てて背後の几帳はことごとく倒れてしまった。

「…吉野君は、そんなこと決しておっしゃらなかったわ」
都に呼ばれて官位を授かったらお迎えに来ます、二人で幸せに暮らしましょうね って…
「高彬とは雲泥の差よね!」と言い放つ瑠璃。
「新婚初夜に妻になる人の口から他の男の話を聞くほど惨めなことはないね。
 それも相手が死んだ子供だなんて」
「くやしかったら気の利いたセリフのひとつでも言ってみなさいよ。いつまでも子供みたいにすねてないで。
 幸いあたしはまだ妻になってないし、この結婚考え直すのなら今のうちね高彬。
 あたしも年下との結婚は考え直したほうが…」
そういって振り返ってみた高彬の顔は、今までにないほど怖い表情だった。

「瑠璃さん。あなたは何かというと子供っぽい子供っぽいというけど、やめてくれないか。
 不愉快だ…!」


92 :粗筋中将4/4 :2007/06/13(水) 22:03:55 ID:???
険しい顔の高彬を見て、瑠璃も何もいえなくなる。
そこに、小萩が足音を荒立てて、高彬に声をかけて来た。
「ただいま右大臣家から至急の使いが参りました!右大臣家の北の方さまの御母君…
 大尼君さまがおかくれ遊ばされたと…!!」

お祖母さまが亡くなり、高彬は急遽右大臣家に戻ることになった。
帰る準備をしている間も、高彬は黙ったきり。
まだ怒っているのかと、不安になる瑠璃に高彬は静かに口を開いた。
「今は急なことでよく考えられないけど、ぼく達の間にはこれで5か月間の猶予が出来たわけだ。
 あなたの言う通り、いろいろと考え直してみるべきなのかもしれないね」
そしてゆっくり扉を閉めて高彬は大納言邸を後にしたのだった。
一人部屋に残された瑠璃は、高彬の言葉の意味に気付く。
高彬のばーさまが死んだってことは、孫の高彬は5か月の間喪に服さなければならない。
もちろんハデな行事にも出られず、男女の仲も慎まなければならない。
当然初夜はおあずけ、高彬ともつまりは結婚できないわけで…

人がせっかく結婚する気になったってゆーのに…
5か月の間 結婚できないって―――――――!?

93 :おまけ中将 :2007/06/13(水) 22:05:03 ID:???
露顕(ところあらわし)…昔の披露宴
三日夜の餅(みかよのもち)…結婚の三日後に餅を食べ合う儀式
後朝の歌(きぬぎぬのうた)…結婚した翌日の朝、男が女におくる歌。早い程良いとされていたモノ。

94 :マロン名無しさん :2007/06/13(水) 23:54:38 ID:???
びしばし専門用語が出てくるな…
なのに二人の会話はお子様そのもので面白いけど
やっぱりちょっと手ごわいな。

95 :マロン名無しさん :2007/06/14(木) 00:02:59 ID:Oc04S4oZ
瑠璃の気持ちも分かる。現代ならウエディングドレスも
プロポーズの言葉もなしって感じだし。
付き合いだしてらぶらぶな期間もほとんどないし、
いきなりなんてやっぱり嫌だ。

96 :マロン名無しさん :2007/06/14(木) 00:40:56 ID:???
人がせっかくセックスする気になったのに
5ヶ月の間 セックスできないって

という意味なんだよな考えると興奮する

97 :マロン名無しさん :2007/06/14(木) 03:50:27 ID:???
瑠璃……気持ちは分かるが他の異性と比較とか、男性のプライド潰しちゃだめよ。

高彬……女の子はムードが大事だよ。いきなり下着はいかんぜよ。

98 :マロン名無しさん :2007/06/14(木) 07:24:28 ID:???
小萩w

瑠璃の荒れっぷりがすさまじくて笑った
絵にしてみると改めてすごい姫だよ
そして高彬がんがれ

99 :マロン名無しさん :2007/06/14(木) 09:11:23 ID:???
瑠璃姫って案外乙女だなぁ
カワユス

100 :マロン名無しさん :2007/06/14(木) 09:53:23 ID:???
>>96
まあ置き換えればそういうことなんだろうけど、
初エッチを決意するには、覚悟も気合も必要なんだろうね。

101 :マロン名無しさん :2007/06/14(木) 11:53:20 ID:???
この人の漫画読むの初めてだったんだけど、すごい面白いわ。
このセリフってことは、高木杉と別れるかもしれないんだよね?
てか、こりゃ別れたでしょ。
でも、本命の吉里予君が死んでるから、やっぱり高彬しかいないと思うんだけど。
次回いきなり「数年後」だったらうけるwwwwww

あ〜、次の号まで二週間か〜
早く出してくれマジで

102 :マロン名無しさん :2007/06/14(木) 19:04:41 ID:???
高木杉w

103 :マロン名無しさん :2007/06/14(木) 19:31:35 ID:???
>>101
吉野の君や高彬の名前をなぜそのままレスしないの?
801板でもないのに…w

104 :マロン名無しさん :2007/06/14(木) 21:28:10 ID:sbOqiWlR
初夜まであと○○日〜?!

105 :粗筋中将1/4 :2007/06/14(木) 22:01:50 ID:???
「なにィー契ってない―――ッ?!」

夜更けに父大納言の声がこだまする三条邸。
「お…おまえは…寝間に入っている間何をしていたのだ!!
 寝殿にいてもすさまじい音が聞こえてくるので『さすが若い者は迫力が違う』と
 感心しておったのに…まだ…まだ高彬殿と契っていなかったとはっ!!!」
父の露骨な言葉に扇で顔を隠し赤面する瑠璃。
父大納言も、高彬が5か月夜歩きすら出来ない身になることを案じている。
その間に年が明け、瑠璃は17になってしまう。17で婿の決まらぬ姫が一体どこにいるというのか…

瑠璃も、反省しているのだ。いきなり初夜と言われた時は頭にきたが、
いざコトが流れてしまうと「もったいなかった」なんて思ったりしているし、
何よりいつも温厚な高彬なだけに怒ると迫力があった。
髪箱を投げつけたことも悪いと思っている。
まさかもう瑠璃のもとへ来ないなんてことはないだろうか…
喪が明けたら来てくれるだろうか…

106 :粗筋中将2/4 :2007/06/14(木) 22:02:46 ID:???
「なんですって!?高彬が二の姫と結婚!?」
弟・融の話はまさに寝耳に水だった。
融も今日、二の姫に求婚していた衛門大尉に聞いたばかりだという。
高彬と二の姫の結婚はお祖母さまが遺言に託し、二の姫側もこの縁談には乗り気だったため、
喪が明ける十月には話がまとまるのではという見解だった。
高彬がお祖母ちゃん子だったことも相俟って、ありえない話ではない…
情にほだされて、二の姫と結婚してしまうかもしれない!!
逃がした魚はとても大きい、と呆然としてしまう瑠璃なのであった。

夜になり、里下がりをしていた小萩が帰ってきた。
高彬が二の姫にあてた文を携えて…!
というのも、里下がり先で、高彬の実家右大臣家の文使いの若者を見かけたのだ。
高彬のことが何か聞けるかもしれないと声をかけたところ、この文が出てきたという。
小萩の出身万里小路付近には兵部卿宮の邸があることから、その若者を問い詰めたところ、
やはり文の相手は二の姫、文は全て直筆。
大尼君(高彬の祖母)がなくなって以来、頻繁に文のやり取りが行われており、
近々大尼君の遺品を届ける名目で二の姫を訪れるという計画まで立っているらしい。
噂は半月も前からあった。
知らなかったのは瑠璃と、ぼけーっと出仕していた融だけだったのだ。

夕されば 燃えこそわたる 夏虫の
       身にあまる思ひ 人や知るらむ
 (夕方になると一層光を増す蛍のように、耐え忍んでいても自ずから湧き出る熱い思いに身を焦がしているわたくしを
  貴女は知っているのでしょうか)
祖母が亡くなったばかりだというのに何度もこんな手紙を差し上げるのは
不謹慎なのですが思いは急かされて… 高彬

107 :粗筋中将3/4 :2007/06/14(木) 22:05:41 ID:???
なにが“身にあまる思ひ 人や知るらむ”よ
みみずののたくったよーな下手くそな字のくせに!!
服喪中にこんな歌を女に贈るなんて今にきっとバチがあたる!と毒付く瑠璃であった。

だいたいコトに至らなかったとはいえ、あの夜はお互いその気になっていたわけで、
単姿で二人っきりにもなった間柄なのに、この仕打ちはなんだ。瑠璃には文さえもくれないで、
やはり男なんて不誠実で誠実で信用できなくて、どーしようもない生き物だったんだわ!!
そうして瑠璃の決意は固まった。
「尼になってやる!!」
尼になって吉野君との初恋を胸に生涯を終えてやる、結婚したいなんて二度と思うもんか!
瑠璃の固い決意の前に焦る小萩であったが、何も今すぐというわけではないのでひとまず胸を撫で下ろした。

泣き寝入りなんて趣味じゃない、あたしが受けたこの屈辱を
倍にして高彬につっ返してやる!!
どーせ尼になるんだ。俗世の恥はかき捨てよ!何だってやってやるわ!!
そして小萩に、件の文使いと渡りをつけさせ、高彬の動向を探らせたのだった。

108 :粗筋中将4/4 :2007/06/14(木) 22:06:50 ID:???
それから二月、明日は七夕になろうというのに、高彬が動いたという連絡はない。
父大納言は、相変わらず高彬に文の一つでも贈り仲直りしろと説得するのだが、
瑠璃の決意は揺るがない。
その夜、小萩が、件の文使いから情報を得てきた。
高彬が今夜、「私的な」理由で兵部卿宮邸を訪れる。
今夜…!
「小萩っ今から腕の立つ家人を3、4人集めさせて!夜になったら網代車でここを発つから!」
「る…瑠璃さま まさか 兵部卿宮邸へ…」
そのまさかだった。小萩がなんとか止めようとするも、
「尼になると決めた身で恥も外聞もないわよ!さっさと用意させなさい!!」
と女主人の威厳を見せるのであった。

夜はとっぷり暮れ、瑠璃たちは兵部卿宮邸前にやってきた。
大納言の姫君ともあろうお方が夜盗のようなまねを…
なんとしても思い止めようとする小萩を囮に使い、門番の注意をそらせている間に、
瑠璃は、大納言の姫君は、ついに兵部卿宮邸へ忍び込む…!
手には何やら物騒なものを携えて…

あの日、高彬と契りを結ばなかったのが幸いしたわ。清い身のまま尼になれるもの。
待ってなさい高彬
目にもの見せてくれるからっ!!

109 :おまけ中将 :2007/06/14(木) 22:08:02 ID:???
この頃はお正月になるとみんな1つずつ年をとったので個人の誕生日は特に関係ないのヨ

110 :マロン名無しさん :2007/06/14(木) 22:11:48 ID:???
二の姫クルー?
尼になってやるからのくだりはやっぱ笑える
さすがは瑠璃さん

111 :マロン名無しさん :2007/06/14(木) 22:32:15 ID:???
展開知っててもwktk

112 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 00:07:51 ID:???
>さすが若い者は激しい

ちょw瑠璃パパwww

113 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 00:09:25 ID:???
瑠璃に振り回される忠臣小萩。
瑠璃、女主人の威厳示す方向間違ってるよ〜

114 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 00:11:00 ID:???
歌を交わすとか
京都三条に屋敷とか雅みやびな世界。
そこに瑠璃姫の強烈キャラ炸裂w
たまらんわ〜

115 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 00:13:55 ID:???
歌詠めるだけじゃだめで
字もきれいじゃないといかんのね。
男は辛いよ。
てか最初代筆で後から汚い自分の手書きは幻滅されそうな高彬。
純朴でいいけどw

116 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 00:15:20 ID:???
キレた瑠璃姫の行動力すげー
屋敷に閉じこもってて元気が有り余ってるな

117 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 00:17:44 ID:???
二の姫出そうだな
瑠璃とは正反対の大人しい典型的お姫様と予想

118 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 00:17:50 ID:???
ノリ的には元カレの結納に
ヒカリモノ持って乗り込む感じか?
やばいよやばいよ

119 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 00:19:09 ID:???
次号は昼ドラもまっつぁおな
二の姫対瑠璃姫の女の闘い
ドロドロ展開予想

120 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 00:20:29 ID:???
>小萩を囮にし

小萩……(つд`)
なんつー跳ねっ返りなんだ瑠璃は

121 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 00:21:51 ID:???
瑠璃は完全に高彬と二の姫に
嫉妬してるね

122 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 00:23:02 ID:???
すげー産業スパイも顔色なし
な手紙略奪

123 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 00:24:18 ID:???
平安貴族生活とか
思春期の女心とか勉強になりますね、先生。

124 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 00:25:42 ID:???
お祖母さんまたまた困った遺言を。
参るな。

125 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 00:27:10 ID:???
親(大納言)の心、子(瑠璃姫)知らず

孫(高彬)の心、祖母知らず

126 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 00:28:46 ID:???
力関係はやはり
瑠璃姫>>>>小萩、大納言父>超えられない壁>>>融、高彬

127 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 00:30:23 ID:???
なんか融とか高彬とかヘタレはいってんな〜頑張れ男共。
瑠璃姫が強烈すぎる?そうとも言う。合掌。

128 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 00:40:41 ID:???
密かに七夕なのね
何か伏線?

129 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 00:42:38 ID:???
ていうかマジに大納言の姫君がこんな…
どういう教育しとったのか瑠璃姫パパ

130 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 00:46:20 ID:???
>>129まあ幼い頃に吉野でのびのび育ってるし…ということにしとこうではないか。

131 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 00:52:08 ID:???
>>130
そうすると初恋の吉野君も瑠璃の中では美化されてるけど
死なずに成人してれば実はやっぱり田舎育ちの(ry

132 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 01:49:57 ID:???
>>131
折角美化した初恋の淡い思い出を壊さないでください

吉野君さえいじめていた瑠璃姫が目に浮かんじゃいます

133 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 01:51:42 ID:???
吉野君ってよしのきみって読みで合ってる?
つい吉野くんって読んじゃうんだが。クラスにいそうだ

134 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 01:58:40 ID:???
閣僚クラスの地位にあろうともお方が
深夜に高級住宅街の屋敷で年頃の娘に向かって
「なにぃまだセックスしてないだとーーー!!」
とか、屋敷中に響くレベルで怒鳴らないでください。地位に関わります。
執事も召使いもみんな起きちゃいます。娘の評判また落ちます。<<大納言殿

135 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 01:59:58 ID:???
よしののきみ

自分の脳内ではよっしー

136 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 02:01:40 ID:???
>>133
「よしののきみ」って振り仮名が。だいたい、名+の+称号だよね、昔って。

137 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 02:03:47 ID:???
今更だが5ヶ月も喪に服すのね
服すレベルもなんか徹底的

138 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 02:07:18 ID:???
源氏物語のイメージで
二の姫は兵部卿宮の娘ってことで
紫の上連想で藤の花っぽいイメージがあるなぁ。
正しい貴族の姫君が高彬に惚れたら、
瑠璃は結構ピンチかも。

139 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 02:11:05 ID:???
>>130
のびのびっていうか怪力?
髪箱投げるには結構重そうだぞ。
普段から20kぐらいある着物と髪引きずってりゃ力持ちにもなる??
フツーの姫は「あ、目眩が…」よろろっ
みたいな感じだろうが、どこを間違ったのか。

140 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 02:15:00 ID:???
リアルに細部まで忠実な時代考証で、
瑠璃姫が山内絵で、真ん中分けお歯黒おちょぼメイクに点々眉毛だったら嫌だ。と、ふと思った。
あさきゆめみしも現代顔で点々眉がたまにあるかなみたいな感じだったね。
山内絵のコミカルな可愛いさが、キャラにぴったり。

141 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 02:19:09 ID:???
>>136
名の部分は大体その人にちなむ歌や
草花や地名が元ネタ?
幼名もあるからややこしいな。
瑠璃って結構ゴージャスな名前だよね。

142 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 02:21:23 ID:???
>>133
>>135が正解だと思われ。
「○○君」を「○○くん」と呼ぶようになったのは近代からでは?(詳しく確認してないけど)
江戸時代でも同輩の男性同士では「○○殿」って呼び合う。
女性が男性を「くん」付けは、有り得ない時代(=男尊女卑)の筈、戦後までは。

明治時代ぐらいだと小説や映画などで、教師の立場にいる人が
助手を呼ぶ時に「○○くん」とあるかな〜という印象が。


143 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 02:44:21 ID:???
せんせえ。
るりさんはいつもぼくのあたまを
ぼうきれでこづきながらいじめます。
「やーいなきむしたかあきらー」
こづかれるとどうしてもなみだがでるし、こぶもできます。るりさんはたのしそうだけど、いたいです。
いじめられているのは、ぼくだけではありません。
こないだなんて、よしのくんに
「しょうらいあたしをむかえにくるってやくそくしなさいよ!」
ってきょうはくしていました。よしのくんは、なきながら、るりさんのいうとおりにせりふをよんだのですが、
「このあたしにぷれぜんともないの!」ってやっぱりこづかれていました。
さいきんよしのくんががっこうにこないのは、
るりさんのせいだとおもいます。
あ、るりさんがぼくととおるに石をぶつけようとしています。
こはぎせんせえたすけて。1ねんさくらぐみ たかあきら

144 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 11:20:21 ID:???
>>142
「〜くん」と呼ぶようになったのは
正確には江戸時代終盤からだね。

145 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 13:11:20 ID:???
まあ呼び名なんて気にしなくていいってw
どうせただの空気な思い出キャラで、もう出て来ないからww

146 :粗筋中将1/4 :2007/06/15(金) 22:00:08 ID:???
兵部卿宮邸内に忍び込んだ瑠璃は、二の姫のいるという東の対屋を目指していた。
と、ひとの声が聞こえたので、慌てて近くの部屋に飛び込んだ。
声の主はどうやらこの邸の女房たち。
話題は、邸の主である兵部卿宮二の姫と、その客人高彬。
話しぶりではどうやらやはり結婚話は本当のようだ。
「でもほら、あの高彬さまの筒井筒の恋人とかいう姫君はどうなさるおつもりかしら」
「ああ、大納言家の瑠璃姫との噂ね。そんな姫、問題になるわけないでしょう」
「何でも幼い頃に都を離れてお暮らしになっていたとかで、
 未だに鄙びたところのある変わった姫だっていうじゃないの」
「邸中を駆け回ったり、下々のように汚い言葉を遣ったり、
 脳の病だという噂もあるくらいよ」
「うちの姫さまを比べたりしてら、姫さまが気を悪くなさるわね」
「ほんと。いやあね鄙つ女なんて」
散々である。

女房たちの会話を歯をくいしばり脳内で毒づいていると、
隣の部屋から話声が聞こえてきた。
明かりを頼りに覗いてみると、なんとそこには高彬その人がいるではないか!

147 :粗筋中将2/4 :2007/06/15(金) 22:01:09 ID:???
「やはりこうしてお会いするのが一番ですね。手紙とは違いいろいろと伺えますし。
 これからも毎日こちらへ来させていただきたいものです」
「まあ。それではわたくし、高彬さまから文をいただく楽しみがなくなってしまいますわ。
 高彬さまからの文を毎日心待ちにしておりますのに」
「あまりからかわないで下さい。下手くそな歌をお見せするだけでも恥ずかしいのに」
「あら、わたくし誉めておりますのよ。
 これだけまめまめしく文をお書きになる殿方なんて、都中にふたりとおりませんわ。
 女性なら皆心を動かされてしまいましてよ。せいぜいお書き遊ばして」
「…そうでしょうか」

二人の会話を聞いていた瑠璃は怒り心頭、何しろ瑠璃には文のひとつもよこさなかったのに、
二の姫には毎日歌まで贈っていたのである。
時は熟した。瑠璃は手にしたものを握り締め、がらりとその戸を開けたのだ。

不意に背後の扉が開き、思わず警戒した高彬だが、
そこにはなんと鞘から抜いた刀を手に、瑠璃が立っているではないか!
どうしてここにと言いたいが、驚きで上手く言葉が出ない。
「ふたまたかけた高彬に思い知らせてやるためよ!」
と瑠璃は懐剣をその豊かな黒髪にあてる。とっさに瑠璃のその手を掴む
「高彬のあてつけに尼になってやるんだから!尼になって山に籠もって…女修験者になってあんたを呪い殺してやるのよっ!!」

「馬鹿っ!」

高彬は瑠璃を押さえつけた。手に刀はもうない。
「何てことするんだ瑠璃さん!二の姫に失礼だとは思わないの!?」
「思わないわよっ!!みんな…みんな高彬が悪いくせに―――っ!!」

この騒ぎを聞きつけ、二の姫の部屋に女房たちが駆けつけてきた。
瑠璃の姿を見られてはまずい。
「早くこの御簾の中へ…!」

148 :粗筋中将3/4 :2007/06/15(金) 22:02:12 ID:???
御簾の中へ招き入れられ、そこで初めて二の姫の姿を見た。
美人の聞こえは高かったけど、いかに貴族のお姫さまという感じで気品にみちた、
可憐で美しい姫がそこにいた。
瑠璃の姿を見てにっこりと笑いかけてくれる。
それに比べてあたしときたら…、夜盗そのものの大立ち回りをするなんて…!
(これじゃ高彬が二の姫に心移りしたってちっとも不思議じゃないわよ〜!)
深く自分の身を反省する瑠璃であった。

女房たちも去り、高彬も「早くこのお邸から出ないと―」と言うが、それを遮ったのは二の姫だった。
「それよりも、お勉強の成果を見ていただいたらどうかしら。せっかくこうして瑠璃さまがいらっしゃるのですもの」
それは、瑠璃に贈る恋歌のお勉強。
高彬は今夜二の姫に、お歌の作り方を教わりにきていたのだった。

二の姫は、高彬の祖母、大尼君を本当の祖母のように思っていたという。
大尼君が亡くなったときはとても悲しく、同じ孫同士のつもりでおくやみの歌を贈ったところ、
高彬からの返事はこうだった。
「実はわたくしの恋人が気難し屋で、良い歌ができないうちはつむじを曲げて結婚してくれそうにないのです。
 期間も5か月しかなく、ご迷惑とは思いますがよろしくご指導いただきたく云々―」
そこで二の姫が一日一首必ずお歌を作るように宿題を出したところ、毎日のようにきちんと歌が届くのだった。
その毎日届くお歌を、楽しく添削していたという。

つまりは、何もかも瑠璃の誤解だった!

「高彬さまとお幸せに」
艶やかに微笑む二の姫に、「ありがとう!」と笑顔で返し、瑠璃は兵部卿宮邸をあとにした。

149 :粗筋中将4/4 :2007/06/15(金) 22:04:27 ID:???
兵部卿宮邸からの帰り道、高彬に牛車で送ってもらっている。
高彬は、「結婚の夜」の瑠璃の涙に、よほど歌が欲しかったのだろうと反省し、今度こそ一般的な手順を踏もうと思ったと言う。
しかし歌が苦手だし、かといって後朝の歌のこともある。
そこで、服喪中を幸いに、年の近くて真情的な歌を作る二の姫に後朝の歌の指導を仰いだということだった。
大尼君の遺言、というのは噂だけであって、お祖母さまは遺言を遺す間もなく亡くなったのだという。
今日も大尼君のご遺品を届ける名目だが、本当は直接歌の指導をしてもらいたかったのだ。
「二の姫にも『そんなにまでして思いこまれる姫君はさぞかしすばらしい方なのでしょうね』なんて言われてたのに、
 いきなり現れたと思ったら懐剣をふりかざして騒ぐんだもの。ぼくの立場がないじゃないか。」
ほんと生霊かと思った、と高彬はため息をつく。
しかし、高彬も反省していたのだ。歌が上手くなるまでは手紙を書かないと決めていた。
瑠璃さんもいろいろと噂を聞くばかりで、事情もわからず不安だっただろう、と。
その高彬の姿に、後朝の歌をあらかじめ作れなんて言って悪かったと瑠璃もまた反省するのだった。

150 :粗筋中将4/4残り :2007/06/15(金) 22:05:27 ID:???
牛車がゆらぎ、三条邸に着いた。車から降り際、瑠璃は高彬に上目遣いでこう言った。
「またこうやって、夜のドライブしようよね?」そう言う瑠璃に、高彬は接吻で返すのだった――。

照れに照れた瑠璃だったが、「今ここで、後朝の歌みたいなの作ってよ」と高彬に言ってみる。
「だめ?」とまたも上目遣いの瑠璃に負ける高彬。今までの中でもいい出来だと思える歌を詠み出した。

筒井筒 契りのかなふ 今日なれば 媾ひ見し後は 絶えて惜しまん
(幼い頃からの思い出がかなう今日、一夜を共にした後はたとえ死んでも悔いはない)

「契りのかなふ今日」だの「媾(あ)ひ見し後」だの、直接的でロマンチックなムードなんてちっともないと思っているが、
高彬はにこにこと、会心の作を瑠璃に誉められるのを待っている。
「ま、『契りのかなふ今日』をめざして、もっと二の姫に教えてもらいなさいね高彬」しょんぼりする高彬に、
「そうねえ。『絶えて惜しまん』のあたりは男性的といえばいえなくもないわね」ぱあっと表情が明るくなった。
「そうだろ?瑠璃さん。やっぱり成長してるよね。ね!」
そんな姿を見て、年下も悪くないなぁなんて思う16歳の乙女心なのでした。

151 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 22:58:30 ID:LfSL76FH
二の姫、いい人だぁ。
瑠璃の行動力、発言にびっくり。
高彬と無事結婚できるのはまだ先になりそうな感じ。

152 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 23:07:41 ID:???
二の姫の女房達の陰口、怖えええ
ま、主人思いなんだろうが。
鄙びたってイナカモンってことか?

153 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 23:14:19 ID:???
二の姫キター
原作の中でも好きなキャラだから美人で嬉しい
瑠璃さんは相変わらず笑えるw

154 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 23:15:45 ID:???
瑠璃の一人相撲ですかそうですか。
刃物を目にして何気に肝が座っている二の姫キター
高彬はちと事情説明不足だ。歌指導の件はともかく、下手な歌でも、
事前に瑠璃に会えないけど想っているよとかおくっとけばいいのに。
他人から聞く説明ばかりでは瑠璃は不安になる一方。
やっぱ吉野君と比べられたのがこたえたのか?
しかし女扱いに長けた高彬では話が面白くなくなるか。

155 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 23:18:42 ID:???
>>151
ケコーンはまだまだまだまだ先そうだが
、とりあえずお手ちゅーからちゅーに進歩。

大尼君の遺言嘘でよかったな。

156 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 23:20:51 ID:???
瑠璃、本当に刀持ち込んだのか……相手を刺すではなく目の前で髪を下ろすだったのは予想外。で良かった。

157 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 23:23:11 ID:???
>牛車でドライブ

さぞゆったりしたドライブだろう。
普通に道を走ってるぐらいのスピードか?

158 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 23:38:51 ID:LfSL76FH
筒井筒 ゐづつにかけし まろがたけ 生ひにけらしな あひ見ざるまに
(きみとしばらく会わないうちに、ぼくは大人になりました)

何か高彬にぴったりのお歌。

159 :マロン名無しさん :2007/06/15(金) 23:39:00 ID:???
二の姫かわええ

160 :マロン名無しさん :2007/06/16(土) 00:11:04 ID:???
>>158
解説しよう!竹と丈(身長)が掛詞なのだ!!

…正直すまんかった

161 :マロン名無しさん :2007/06/16(土) 00:28:45 ID:???
二の姫は俺の嫁

162 :マロン名無しさん :2007/06/16(土) 00:35:51 ID:???
二の姫、恋愛経験豊富か深い恋愛してそう<恋歌指導

163 :マロン名無しさん :2007/06/16(土) 00:38:14 ID:???
なんだかんだ言いつつ、表現間違ってるけど瑠璃は高彬にぞっこんですね

164 :マロン名無しさん :2007/06/16(土) 00:42:04 ID:???
瑠璃…恋人には疲れるが妻として強い味方、戦友タイプ。気を使わなくて良い。

二の姫…恋人にも妻にもしたいが完璧すぎていつしか疲れるか、浮気されたら性格変わりそうなタイプ。

165 :マロン名無しさん :2007/06/16(土) 00:57:56 ID:???
>>157
ゆっくりな分、二人きりの濃密な時間があったわけですよ。

166 :マロン名無しさん :2007/06/16(土) 00:59:01 ID:???
女車に男が隠れてお忍びって王道だね

167 :マロン名無しさん :2007/06/16(土) 05:53:48 ID:???
これは高やんが悪い

168 :マロン名無しさん :2007/06/16(土) 10:40:40 ID:4IXnmbCv
高彬も意地になって手紙を送らなかったし、
瑠璃も瑠璃で噂を信じて高彬に聞かなかったんだよね〜。
現代だったら直接会って話せるけど、平安時代で服喪中だと
簡単に会えないし。誤解はあったけど、雨降って地固まるかな。

169 :マロン名無しさん :2007/06/16(土) 12:32:20 ID:???
二人とも何て不器用なと思ったけど、
よく考えてみれば十六歳と十四?十五?とかの
中高生カップルなんだよな。
しかし何て雅なマンガ。歌の情趣で一騒動かあ。

170 :マロン名無しさん :2007/06/16(土) 12:40:57 ID:???
高彬かっこいい!
と言いたいところだけど、なんじゃそりゃ。
前々から高彬の名前で文を出してて
喪中の現在もせっせと文通
お忍びで屋敷に潜り込んで真夜中の密会、なんて結婚したようなもんじゃん。
もしかして、高彬が超無責任男だという別れフラグ?

171 :マロン名無しさん :2007/06/16(土) 15:30:58 ID:???
絵に描いたようなバカップルめ

172 :マロン名無しさん :2007/06/16(土) 16:13:17 ID:???
>>170
それなんて光源氏

>>171
少女漫画ですから

173 :粗筋中将1/3 :2007/06/16(土) 22:00:28 ID:???
のっけから、顔が緩んでいるのは、大納言家の姫君、瑠璃姫である。
お付きの女房小萩に窘められても、どうしても顔が綻んでしまう。
なぜならば、今夜こそ瑠璃姫と高彬の初夜なのだから!!

大尼君の喪が明けてからの高彬は律儀にお歌もよこすようになった。
文才も歌才もない高彬が兵部卿宮二の姫からご指導を受けて、
毎日苦しみながら瑠璃のためにお歌を考えているのだ。それだけで感動してしまう。
みみずののたくったような字だって下手くそなお歌だって許せてしまうから不思議ってもんだ。
そんな時だった。高彬が春を詠み込んだお歌をくれたのは。

春立つと 風に聞けども 花の香を
    聞かぬ限りは あらじとぞ思ふ
(春が来たと噂には聞くけれど、まだ花が咲かず香りもしない。
 花の香りを嗅ぐまでは春が来たとは思いませんよ)

この歌には「裏の意味」がある。

【春が来たと噂には聞くけれど、
 恋しい人からの返事が来るまで、わたしは春が来たとは思わないことにします】

さすが二の姫に指導を仰いだだけある。完璧、とまではいかないが、
“絶えて惜しまん”の頃よりは情緒も備わってきたし…
そう思って瑠璃が返事くらい「してあげよう」とめずらしく筆を取った瑠璃のお歌が、
思わぬ誤解を引き起こしてしまう。

174 :粗筋中将2/3 :2007/06/16(土) 22:01:18 ID:???
心ざし あらば見ゆらむ わが宿の
        花の盛りの  春の宵夢
(花も匂わないとあなたは言うけどおあいにくさま。うちの庭の花は盛りと咲いていて、夜ともなると夢のようにきれいよ。
 花の香りもしないというのは、あなたのロマンを解さない心がけが悪いんじゃなくて?)
【求愛のお歌がもらえないですって?あなたさえその気になって見るのなら
 あたしのOKサインが見えそうなものなのに、おばかさんね☆】

裏のイミを深読みされて、高彬には「ようやく合格点がもらえた」、父大納言も「瑠璃がその気になった」と涙を流して大喜びされた。
こうなれば今さら「あれは筆がすべって書いたお歌で深いイミはなかったんです」とは言えない(恥ずかしくて)。
そうして結婚の話は決まったのである。
文やお歌もまめまめしく届き、調度品も新婚のために新品が揃えられている。
新たに広がる人妻の日々に思いを馳せ、
やっぱり今日は、特別な日になるのだと、感慨に更ける瑠璃であった。

亥の刻、高彬が雨の匂いをまといながらやって来た。
この後、一夜を契り、明け方そっと帰る段取りである。それが三夜続いて露顕となる。
「外は雨だよ、瑠璃さん。春雨とはいってもまだ冷たくって…」
部屋に訪れ、咳き込む高彬に瑠璃は
「どしたの高彬、風邪引いたの?温かい汁物でも持ってくる?」
「瑠璃さまっ!!せっかく高彬さまがムード作りに気を遣っておいでですのに 汁 物 だなんて…っ」
小萩に窘められる場面もありつつ、
風邪なんてひかないで、高彬が寝込んでしまったら心配であたしのほうが病気になってしまう、
今はあたしのことを看病すると言ってくれる高彬だけど、
若い公達の中では出世頭なんだから、この先出世してゆけば、瑠璃のことなんてどうでもよくなるのは覚悟している
としおらしく瑠璃は言ってみせた。それを受けて、
「そんなことないよ!いくら位を極めたって、ともに喜んでくれる人がいなくちゃ虚しいもの」
と、かわゆいことを言う高彬であった。

175 :粗筋中将3/3 :2007/06/16(土) 22:15:46 ID:???
そっと二人は倒れこむ。
その際瑠璃は近くにあった脇息に頭をぶつけてしまう。
だが、ここで声をあげてしまえばせっかくの雰囲気が台無しだ、年上なんだからガマンだ瑠璃!
…押し倒したものの、どうやら高彬は瑠璃の腰紐の位置がわからないらしく、もそもそ苦戦している。
上に乗っている高彬に、少し重いから体をずらしてくれる?とさりげなくフォローも入れつつ
「あわてなくていいからね」
と声をかける。
瑠璃の言葉に励まされた高彬。そう、それが腰紐だ、えいっと一気にほどいちゃうのだ!
きゃあああああっ!!
瑠璃ではない悲鳴が聞こえた。
邸の寝殿の方で何かあったようだ。
騒がしいが誰も呼びにこないので続きを…と思うも、騒ぎがひどくなる一方なので、
初夜は一時中断し、様子を見にいくことに決めた二人。
そこに、小萩がおそるおそるやって来て、二人に告げた。
「弟の融さまがたった今、太刀傷をおびてお帰り遊ばされたのです」

176 :マロン名無しさん :2007/06/16(土) 22:58:47 ID:???
とことん邪魔される運命だな、この二人は

177 :マロン名無しさん :2007/06/16(土) 23:33:35 ID:???
融空気嫁ww

178 :マロン名無しさん :2007/06/16(土) 23:41:00 ID:K5fU9YSE
高彬の、「いくら位を極めたって、ともに
喜んでくれる人がいなくちゃ虚しいもの」、可愛い、かっこいい!

179 :マロン名無しさん :2007/06/16(土) 23:59:04 ID:???
なんつー寸止めと焦りプレイ
とおる太刀傷どうしたああ

180 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 00:00:54 ID:???
押し倒されてベッドヘッドで頭ぶつけて痛かったけどムードのために我慢したことありませんか?
脇息は痛そうだ……

181 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 00:01:53 ID:???
腰紐をブラのホックと変換すると心理はわかりやすいな

182 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 00:03:00 ID:???
瑠璃姫、意外に包容力あるがな

183 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 00:11:38 ID:???
>心ざし あらば見ゆらむ わが宿の
>        花の盛りの  春の宵夢

せ、説明されて改めてじっくり読むと色っぽい歌に思えるな……
花の盛りの春の夢か。ハァハァ。
ってそれどころじゃなさそうだが……

184 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 00:32:15 ID:???
俺、こんな時代に生まれなくて良かった……。

185 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 00:44:31 ID:???
この時代でも上流貴族は全体の一割以下だよ
大部分は庶民

186 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 00:46:10 ID:???
方角悪いから方違え、とか物忌みですぐ休めるのは羨ましい
甲斐性ある男限定でも、一夫多妻はきつい

187 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 00:50:03 ID:???
>>180
破瓜そのものが人生で一番痛かった。それこそ我慢した。
出産はもっと痛いのか〜やれやれ

えらいすんまへん

188 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 00:52:14 ID:???
瑠璃の返歌は、私はすっかり食べごろよんという色っぺー誘い文になったわけねハアハア

189 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 00:57:53 ID:???
ちょっと外出するにも家人やお供が必要な、ある意味不自由な身分だからなあ。
貴族の姫一人で外出とかありえない世界だろう。
ますます瑠璃が二の姫んとこに乗り込んだのがいかに暴挙かという。

190 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 00:59:41 ID:???
私の部屋で、二人で朝まで甘い夢を見ましょうって感じ?

191 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 01:02:27 ID:???
太刀傷って斬られた?
どうしたどうした融。なんか陰謀か政治闘争?

192 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 01:09:20 ID:???
姫も14,5才で歌とか琴とか習字とか香道とかかなり素養がないとだめなんだよな〜
おつきの女房が助けたりもするから、いい女房がつけられるのは格がある家だろうしすぐ政略ケコーンだし。
いい家で才色兼備なら帝のハーレムに差し出される(入内 じゅだい)。宮中に上がれば跡継ぎ巡って権力闘争女の戦い。
超身分社会だな。

193 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 01:11:48 ID:???
>>192
そう考えると、瑠璃はたくさんの女性のひとりになれるタイプじゃないから、幼なじみで誠実な高彬を選んだのは賢い。
家の格も合ってるしね。

194 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 01:15:31 ID:???
まあ歌の素養は現代男性のデートコースや店チョイスみたいな物で、大事なのは誠意だろう。
高彬が下手でも頑張ってる姿に、瑠璃は感動してるし。

195 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 01:18:38 ID:???
しかし前のときは瑠璃のほうがムード出そうと、雨の話して
それに気付かなかった高彬にキレてたのに

今度は高彬が雨の話をしたら 汁 物 ですかw
しかも「わかんない」って逆ギレかよww

196 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 01:19:07 ID:???
当時は貴族子弟は物心ついたら歌やら何やらやらされるわけで、現代で英語や数学や物理を習って遊びでサッカーも野球もしてってのとそう変わらんよ。
それが普通かどうかの違い。

197 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 01:22:40 ID:???
着物が基本、紐と帯だけでつないでるもので、脱ぐだけならまあ楽なのと同じように、腰紐解けば結構楽に下着一枚に脱げるのかな。
衣装合わせや着付けや着物の素養もいるな。お付きの女房が手伝うんだろうが。

198 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 01:23:40 ID:???
今まであんまり興味なくて古文の時間は寝てたが、平安けっこう楽しいな

199 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 01:29:04 ID:???
>>195
瑠璃は鈍感だからね。
高彬的には、雨に濡れて冷たくなった体(あなたに今までつれなくされて冷え切った心)を、あなたがあたためてくださいって言いたかったよね。
まあ直に高彬の風邪の心配して汁物とか言うのが瑠璃なんじゃ。
気取らないけど思いやりがある。
素早く切り返す高彬に成長を感じた。

200 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 01:35:33 ID:???
親が自分と自分の恋人の交わしたラブレター内容まで知ってるってかなり嫌だな。
歌は見られてもいいように表向きの意味とは別に、裏の意味をこめるんだろうが。

201 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 01:42:54 ID:???
>197
十二単はあんなに複雑に見えても、腰紐一本でまとめている。
だから紐一本抜けば即下着。

202 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 01:53:03 ID:???
>>201
やっぱり?
超寸止めで焦らし展開なんだなこれは…高彬哀れ。

203 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 07:36:15 ID:???
あーん融くんが死んじゃったよー(ry

204 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 11:39:47 ID:UTkG0DKM
心ざし あらば見ゆらむ わが宿の
       花の盛りの  春の宵夢

色っぽいいいお歌だぁ。高彬が同僚にからかわれるだけある。


205 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 12:44:42 ID:???
瑠璃かわいいよ瑠璃

206 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 17:19:04 ID:???
>>201
つまり普段は豪華に見える上にいざというときに
超便利という優れモノなんだな

207 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 17:59:48 ID:???
そういえば、瑠璃と高彬の初夜て、
御帳台使ってなかったな。
なんでだろ?
ただ単に、書くのがめんどいとか?
でも、流石に院は御帳台使ってたな。


208 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 19:27:42 ID:???
>>207
院の初夜なんか出てきたっけ?

209 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 19:30:07 ID:???
>>206
着るのが大変でかなり重いけどね

210 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 19:31:03 ID:???
>>203
勝手に殺さないように。

211 :207 :2007/06/17(日) 20:00:18 ID:???
>>208

ただ単に寝台として御帳台を、使っていたかという事。

平安貴族は、寝台や御座所として御帳台を使っていたらしいが、
自分の記憶ではジャパネスクで御帳台を使っていたのは、
院しか覚えていない。
それとも他にもいたのかな。


212 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 20:10:53 ID:???
>>201

そういえば、かなり昔教育テレビで、ラサール石井の
日本史の番組で紫式部と清小納言の時に十二単は、
着るのは大変だけど脱ぐのはすぐて言っている時に、
アシスタントの女が「夜のお楽しみの為。」て言って、
ラサール石井が「子ども向け番組でそんな事言うな!」て
言っていたのを思い出した。

213 :粗筋中将1/3 :2007/06/17(日) 22:12:52 ID:???
「そうか…やはりまだコトは成就してなかったか…ああしかし惜しいことを…せっかくの機会が…」
二人の姿を見た父大納言はがっくりと肩を落とすが、それはこっちの台詞だと、瑠璃も言い返す。
「融が太刀傷を受けて大怪我をしたってゆーからびっくりして来て見れば、
 ほんのカスリ傷で本人はピンシャンしてるじゃない!!」
そう、融の傷は、腕にちょっと怪我をした舐めときゃ治る程度だったのである。
「カ…カスリ傷って…いきなり刀で斬りつけられたんだぞ!!
 熱くて痛くて…死ぬかと思ったんだから!!」
瑠璃は「死ななくっておあいにくさま」と取り合わず、初夜の続きに戻ろうとするが、
一方の高彬は融から話を聞きだしている。
都の真ん中で貴族に斬りかかるとは大胆な…
融から、その場所は六条だと聞いた高彬は、靫負庁に行くから車の用意を!と立ち上がった。
夜盗がいるとなると衛門督に報告しなければならない、それが左衛門佐としての高彬の役目なのだ。
京中の見廻りということになれば、検非違使の次官も兼ねているため出動しなければならない…
寂しげな顔をする瑠璃を見て、高彬はするり、と着ている衣を一枚差し出した。
結婚した日の朝に、互いの衣を交換するならわしがある。
「コトはなかったけど、その…気持ちはもう夫婦だから」
そして、邸をあとにする高彬。
女房も認める立派な姿に、ほんとにイイ殿方を捕まえた、われながらでかしたと気分が明るくなる瑠璃だった。
それにしてもふがいないのは弟の融。こんな夜に騒ぎをおこすなんて!
「いつまでも泣いてんじゃないわよボケナスッ!」
と一発お見舞いしておかないと気持ちがおさまらないのであった。

214 :粗筋中将2/3 :2007/06/17(日) 22:14:19 ID:???
瑠璃は不機嫌だった。
大納言の子息が斬られたという騒ぎに、都の治安を守る衛門府の佐である高彬が忙しいのはわかるが、
ここ半月顔を見せるどころか文もくれないのである。
しかし、高彬の当夜の迅速な行動は、確実に高彬の評価をあげた。
その証拠に、東宮直々に役目をもらっているのだという。
高彬の姉君が東宮妃でもあることから、夜盗に怯える東宮妃の警護にあたるため、
東宮一家が住まう梨壺の連日の宿直を命じられているということだった。
だから、高彬は瑠璃のもとへ来られない。
父大納言は、高彬の出世のチャンスの足をひっぱるのではない、と言うが、
瑠璃にとって大切なのは、東宮でも出世でもないのだ。

そんなある日、高彬がやっと瑠璃のもとへやってきた。
きゅうな訪問に驚きもするが、やっと続きができる…!と期待に胸を膨らます瑠璃だった。
しかし、その瑠璃の前には、恋しい新妻に会いに来た夫とは思えないむっすりした高彬。
不機嫌な原因は、融にあった。
六条あたりで斬りつけられたという他は相手の顔も覚えてないし、
斬られた場所も曖昧でなぜそんなところにいたのかと聞いても、知らないの一点張り。
絶対なにか隠してる、と高彬は主張するのだった。
融が本当のことを話してくれれば相手の人相や犯人が割り出せる、
そうでないと、梨壺の警備責任者に命じられた高彬はずっと御所に詰め続けなければならない。
表向きは、高彬の姉君であられる梨壺の女御が怯えているからだが、
実際怯えているのは、御齢19の東宮自身だというのだ。

215 :粗筋中将3/3 :2007/06/17(日) 22:15:11 ID:???
都も夜盗などで物騒にった上に、東宮の周りには別の問題があった。
父君の今上帝は病気になって長く、帝自身も東宮に譲位を考えているが、東宮のことをよく思わない一派もいる。
つい最近も、東宮の寝殿所の下から呪いの人形が出てきたりしたのだ。
夜盗も、東宮反対派による陰謀ではないかと、
明るく豪気で溌剌だった東宮はすっかり東宮はノイローゼのように悩んでいるのだった。
その東宮が、夜盗騒ぎが収まり高彬の梨壺警固の任を解かないかぎり、
瑠璃とは結婚することができない…

その言葉に愕然とする瑠璃。そして、融を締め上げて吐かせようとするのだが、
高彬が驚く言葉を口にする。
「融にはどこかに通う姫がいて、その行きか帰りに斬られたんだと思うよ」
本当のことを言えば当然相手の女性も世間に知れ渡るかもしれない。
あらぬ浮き名を流すよりは、斬られた場所が六条だと嘘をついたのではないか…

「あのうすら惚けたオクテの融にほんとに通う女性がいるってゆーのっ!?」
ショックを受ける瑠璃に、「無理に聞き出すような無粋なことはしないように」と釘をさす高彬。
東宮が落ち着くまで待つしかない、来れないのも仕事のせいであって、決して浮気じゃないと念を押す高彬に、
「心配せずにお仕事がんばってね。あたしも早く東宮さまが高彬を解放してくれるよう祈ってるから」
と笑顔で送りだした瑠璃であった。

しかし、大事な結婚の夜をぶち壊された瑠璃が大人しくしているはずはなかった。
自分の恋のためには高彬の協力さえしようとしない融がかえすがえすも腹立たしい。
無粋で結構。
首をしめてでもあらいざらい吐かせてやるっ!!
固い決意で融のもとへ向かう瑠璃であった。

216 :おまけ中将 :2007/06/17(日) 22:16:20 ID:???
靫負庁(ゆげいちょう)…今でいう警察署
衛門府(えもんふ)…今で言う警察官
衛門督(えもんのかみ)…今で言う警察官のトップ。左右各一人ずついた。
左衛門佐(さえもんのすけ)…警察官の上から2番目。
検非違使(けびいし)…昔の警察官
宿直(とのい)…夜間、貴人に近侍して警固すること。
東宮(とうぐう)…皇太子

217 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 22:22:13 ID:???
高彬かっこいいじゃん

瑠璃はあれだな、また夜更けのお出かけするな
融の相手確かめるために

218 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 23:26:59 ID:???
>気持ちは夫婦だから

もー高彬さんたらカコイイ
衣をシュッとする動作がなんとも

219 :マロン名無しさん :2007/06/17(日) 23:28:16 ID:???
融…抜き身で腕切りつけられたら、傷浅くても結構出血するだろうに

220 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 00:05:09 ID:???
当たり方によるね。こちらも供の者がいるし、
融自身も(何だか頼りないけど)素養として武道くらいはやってるだろうし。

221 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 00:16:55 ID:???
>217
全てはケコーンのためにw
お出かけっていうか超実力行使っていうか

222 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 00:18:11 ID:???
>うすらボケたオクテ

とおる、すげー言われよう。切られてげんこつくらって泣き面に瑠璃

223 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 00:20:50 ID:???
権謀術数渦巻く宮中、
そして
融の想い人は誰だ?

オラ、何だか楽しくなってきたぞ〜

224 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 00:23:41 ID:???
融は剣圧を腕で受けて防御創ができたんだよきっと。
かすり傷が大怪我ってことになるとは、どんだけ広いんだ三条屋敷は。

225 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 00:24:42 ID:???
高彬って結構偉かったんだ
右大臣の息子で姉は皇太子妃

226 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 00:37:34 ID:???
瑠璃の婚期どんどん遅れるなぁ
20代も見えてきて、いいかげん董が(ry

えwちょww瑠璃姫!?ちょ待#☆※ギャアアアア

227 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 00:51:06 ID:???
今更だが、小萩ってワンレンロングヘアだよね。現代でも違和感なし。やや斜め分けだし。

228 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 01:11:41 ID:???
今で言う警視総監のすぐ下で
国家第二位の要人の警護を司ってるのか。
中学生の年代で可愛い恋愛してるから忘れがちだけど、
立派なキャリア官僚→政治家なんだよね。瑠璃もお姫様だし。

229 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 01:22:13 ID:???
>>224
噂は当てにならないしコワい

230 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 01:26:17 ID:???
そのうち、瑠璃がピンクの頭巾で三つの掟を語ったり、桜吹雪の入れ墨をしたり、隠居の振りをして小萩に印籠を持たせたりしないか心配です><

全部江戸時代だがなっ

231 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 05:28:07 ID:???
貴族の素養に武道なんかあるの?
けまり位じゃね?
剣術が出て来たのはもっと後だし
武道が出来たのは明治時代だし

232 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 06:27:00 ID:???
次回、大暴れするであろう瑠璃に期待
原作で一番好きなあの人もそろそろ出てくるかな
wktk

233 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 08:56:18 ID:???
>>231
馬と弓はやるだろ

234 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 12:30:17 ID:LxjGZTUF
>231 高彬は武官だし、馬や弓、剣術もやってると思う。
   後々にかっこよく太刀を抜く場面があるので。
   融はどうか分からないけど。

235 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 12:32:37 ID:???
>>234ネタバレやめれ

236 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 12:42:30 ID:???
貴族の武道で相撲は、どうなんだろう?

前に宇田天皇が侍従をしていた時に在原業平と
相撲をとったて聞いた事があるけど、
イメージ的に、平安貴族が武道をしていたとは、思えないな。

相撲節で、ふんどし一丁で相撲をとる高彬と融て、
腐男子的には見てみたいな。


237 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 12:47:39 ID:???
瑠璃の方が強そう

238 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 15:27:38 ID:???
融の相手はガチホモ(ネタバレスマs

239 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 16:22:31 ID:???
>>228
そんなエリートでも現場に出て
徹夜しないといけないなんて大変だな

240 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 18:14:27 ID:???
>>237
確かに

241 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 18:25:54 ID:???
融って文官?

242 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 20:58:45 ID:???
>>241

融は、侍従だよ。

243 :粗筋中将1/3 :2007/06/18(月) 22:01:23 ID:???
「ね…姉さん?一体急に 何を…」
やって来たすごい剣幕の瑠璃姫にたじろぐ融。
「おまえがどこの姫のもとに通っていたかわからなきゃ、夜盗も捕まえようがないじゃないの!
 あたし達の新婚生活がかかってるんだからね!」
拳を今にも振り上げんとする瑠璃に、しかし融も負けていない。
「ぼくの恋する人がばれたら身の危険なんだ。この恋を隠し通すためなら何だってする。
 斬られた場所なんか絶対に言うもんか!」
高彬が梨壺の警備に命じられたのはとばっちりで気の毒だとは思う、と前置きしたうえで
「何だかんだ言ったって、結局好きな人と結婚するわけだろ?相手はともかくとして高彬は幸運だよ。
 少しくらい辛い思いをしたっていいじゃないか」
苦しい恋は人をエゴイストにするものだ、と言い、融は部屋を出て行った。
しかし、融は瑠璃を怒らせてしまった。
(あたしにタテつこうなんて、10年早いってことを思い知らせてやるっ!!)

それから4日後の夜、瑠璃はふたたびお忍びで目立たない牛車に乗っていた。
融付きの女房・右近を買収し、今夜融が車を出したという情報を得、尾行しているのだ。
その点の根回しの素早さはさすがである。
側に付いている小萩は、あのオクテの融の恋の相手に興味津々だが、
瑠璃にとっては姉思い友人思いで優しかった融をエゴイストにさせてしまった相手だ。
「身分賤しい財産目当ての年上の未亡人の性悪女に決まってるじゃないのっ!!」

244 :粗筋中将2/3 :2007/06/18(月) 22:02:41 ID:???
ぜったいよ、そうにちがいないわと嘆く瑠璃に、小萩が告げた。
融の車は堀川の方へ向かっている、と。
堀川といえば名家権門の邸がたちならんでいる。融の相手は身分の低いわけではなさそうだ。
しかし、融だって摂関家の流れを汲む大納言家の嫡男。将来性も有望だ。
その融と身分違いの姫なんて一体…
さらに続く小萩の言葉に瑠璃は耳を疑った
「融さまの車は二条の方に向かっております」
そんな…まさかとは思うが…
( 二条堀川邸の藤宮さま…!! )

二条堀川の藤宮(フジノミヤ)といえば前の帝の第八皇女。
生母が身分低い典侍であったため、皇族の中にいては何かと辛い思いをするだろう、と
今上のすすめで臣下の内大臣に降嫁したものの、
16歳で内大臣に先立たれたため、今は花の20歳の未亡人だ。
その美しさが、藤の花がこぼれているようだということから、藤宮と呼ばれている…
いくらもう皇族ではないとはいえ、年下の恋人がいるとなったらスキャンダルである。
だから、融は言っていたのか、「身の破滅」だと。

二条堀川邸の裏門前で止まった車から、融が降りた。
門の前を行ったり来たりし、門の中を覗いている。
たまりかねた瑠璃は、思わず牛車から飛び降り、融の下へ駆け寄った。
腕をぐいっと引っ張られ驚き振り向いた融はわが目を疑った。「姉さんっ!?」
邸近くの竹林に引っ張り込んだ瑠璃は、融に、通う姫は本当に藤宮なのか、ここの女房とかじゃなく、と問う。
その問いを融は否定しない。思い人は藤宮ただ一人、他の女なんか目に入らない…と。
去年の賀茂祭のときにふとしたはずみで藤宮の横顔を垣間見た融は、
その揩スけた美しい姿が忘れられなくなったというのだ。
今は一方的に懸想しているだけだけど、いつかは…

245 :粗筋中将3/3 :2007/06/18(月) 22:03:42 ID:???
「ちょっと待ってよ融、藤宮さまと恋人同士のはずじゃなかったの?」
「恋人同士?!とんでもないっ!僕なんて歌も手蹟も下手くそで恥ずかしくて文さえ差し上げられないくらいなのに
 恋人だなんて…」
「じゃあ ひょっとして… おまえの片思いってわけなの!?」

ぽっと頬を染めて頷く融に一気に瑠璃は脱力する。
こうして、邸のまわりを歩いていると、何かのはずみでまた藤宮の姿を見られるかもしれない…
偶然に期待してウロウロするくらいが融には精一杯なのだ。

しかしどうやら藤宮には、通う男がいるらしく、
なんとその男にカッとなり、つい「どこの者だ!」と怒鳴ってしまったのだという。
「そしたらあいつめ…!いきなりものも言わず斬りつけてきて……」
融を斬りつけたのは夜盗ではなかったのだ!
真相を話すわけにもいかなかったが、高彬が夜盗扱いしてくれたから、まぁいいや、助かった、とそのままにしておいた、
そういう融を「何が助かっただこのボケナスッ!!」と瑠璃は力の限り殴りつけた。

しかし確かに今更本当のことは言えない。夜盗だと報告した高彬のメンツもたたない。
やはり、夜盗騒ぎが収まるまでは、高彬との結婚がありえないのか…
ショックで立ち直れない瑠璃をよそに、融は叫ぶ
「姉さんあの車だよ!僕を斬った奴が乗ってたのは―」
ぎろりと一瞥し、斬るなり斬られるなり好きにしろ、と融を見捨てて牛車に戻る瑠璃であった。

恋に目が眩んだ弟は放っといて帰ろうとする瑠璃だったが、融の方を振り返ると、
例の車の前に立ちはだかり、車の持ち主となにやら口論をしている。
相手は、融より上背のある男で、明らかに相手の男が優勢である。
そのうちに、融ががくりと崩れ落ち、その場に倒れてしまった!
まさか、今の男に刺し殺された…!?

246 :おまけ中将 :2007/06/18(月) 22:04:33 ID:???
典侍(すけ)…ないしのすけ、とも読む。帝の秘書室の副室長という立場。尚侍(ないしのかみ)は室長
今上(きんじょう)…現在の帝。当今(とうぎん)ともいう。
手蹟(て)…お習字の文字のみ

247 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 23:02:31 ID:???
ろうたけた(洗練されていて上品な)美しさ?

248 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 23:04:10 ID:???
女房同士の情報ネットワーク、オソロシ
現代なら融はストーカー

249 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 23:08:50 ID:???
垣間見て一目惚れってまた王道パターンな。まさに高嶺の花だのう。

250 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 23:13:05 ID:???
>苦しい恋は人をエゴイストにする

瑠璃のことだな。あっさり弟見捨てて帰ろうとしてるしw

251 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 23:17:19 ID:???
尾行もさることながら、妙齢の姫は家族でも御簾越しに話すぐらい、顔を他人に見せないのが女のたしなみらしいから、
融も瑠璃見てびっくりだよね

252 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 23:21:47 ID:???
ためらわず牛車から飛び降りる瑠璃姫ってどうなの
瑠璃が男で融が女なら違和感ないぞ

253 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 23:22:53 ID:???
融もう死亡フラグ?早っ

254 :マロン名無しさん :2007/06/18(月) 23:24:33 ID:???
二の姫に藤宮に、美女どんどん出てくるな

255 :マロン名無しさん :2007/06/19(火) 01:23:42 ID:???
(´□`)融がああ

256 :マロン名無しさん :2007/06/19(火) 01:33:27 ID:???
瑠璃は牛車から飛び降りて竹林で密談して足袋が汚れないのか?
靴があるのか?

257 :マロン名無しさん :2007/06/19(火) 01:42:30 ID:???
融ヘタレすぐるwww

>>256
外出時は草履履いてるって国語便覧の平安風俗に書いてた。

258 :マロン名無しさん :2007/06/19(火) 04:27:34 ID:???
>>257
d
コミクスだと足まで描いてない?

259 :マロン名無しさん :2007/06/19(火) 04:28:35 ID:???
とおるの方が怪しい人間に間違われていそうだ。

260 :マロン名無しさん :2007/06/19(火) 06:11:58 ID:???
融ストーカー乙
瑠璃は男らしいよなー
そして藤宮さまに期待

261 :マロン名無しさん :2007/06/19(火) 07:20:45 ID:???
今度こそえーん融くんが死んじゃったよー

262 :マロン名無しさん :2007/06/19(火) 09:05:14 ID:???
>相手はともかくとして
ドサクサにまぎれて融ヒドス

263 :マロン名無しさん :2007/06/19(火) 14:43:44 ID:???
これは相手にしてみれば絡んでくる融の方が夜盗や暴漢に見えるだろう。
昔の夜なんて顔もろくに見えないだろうし
敵意むき出しでいきなり絡んでくるし

264 :マロン名無しさん :2007/06/19(火) 15:02:11 ID:???
切り捨て御免かコレ?

265 :マロン名無しさん :2007/06/19(火) 15:05:16 ID:???
>>262
完全に瑠璃の逆鱗に触れたな

266 :マロン名無しさん :2007/06/19(火) 15:11:20 ID:???
>>261
そんな死を待ち望むかのようなw

267 :マロン名無しさん :2007/06/19(火) 15:13:17 ID:???
融殺害犯を探して瑠璃が大捕物、結婚は数年延期だな

268 :マロン名無しさん :2007/06/19(火) 15:20:25 ID:???
犯人が見つかっても呪い人形に怯えてるヘタレ東宮が、高彬を警護の任から解いてくれんかも

どうして初登場男子キャラはみなこうダメダメなんだか

269 :マロン名無しさん :2007/06/19(火) 15:47:09 ID:???
>268
瑠璃が宮中に乗り込んで東宮に説教&高彬解放を直談判すればいいよ

270 :マロン名無しさん :2007/06/19(火) 15:52:09 ID:???
瑠璃脳内↓
高彬とケコーン>>>>>>融、帝位をめぐる政治闘争、父の立場その他

271 :マロン名無しさん :2007/06/19(火) 17:35:28 ID:???
>>269
瑠璃ならやりかねんw

272 :マロン名無しさん :2007/06/19(火) 21:09:14 ID:???
今の天皇家を見てるとその先祖がヘタレでもおかしく思えない

273 :粗筋中将1/3 :2007/06/19(火) 22:01:16 ID:???
倒れた融に慌てて瑠璃と小萩は駆け寄った。相手の男はもういない。
どうやら融は、当て身を受けて気絶しているだけだった。
心配したのもつかの間、瑠璃は、相手の男の車を追跡するよう、乗って来た牛車に命じた。
いくら融が抜けてるからっていきなり斬りつけられたり気絶させられたり、こうまでコケにされたんじゃ姉としては黙っていられない。
正体をつきとめて何がなんでも融に謝らせるのだ!!

しかし、やがて牛車は止まってしまう。どうやら、相手の車を見失ったようだ。
瑠璃は自ら降りて、少し歩いてみることにした。
このあたりは西洞院あたり…邸はここひとつきり。目の前にある邸に入ったのだろうか…
「ちょっと中を調べてくる」
瑠璃はなんと単身邸の門をくぐったのだった。
もしもこの邸内にさっきの男の車があれば、あの男はこの邸にいるということだ。
誰の邸かは知らないが、そんなものは後で調べればわかる…

はずだったのだが、車宿にあの男の車はない。どうやらあの男とは関係ないようだ。
そうと決まれば、どう見ても不法侵入の瑠璃は、大人しく帰るしかないのだった。
それにしてもこの邸、邸内はやたら手の込んだ造りをしている。
華美を抑えて作った大貴族の別宅という雰囲気だが、一体誰のお邸なのか…

274 :粗筋中将2/3 :2007/06/19(火) 22:02:07 ID:???
などと考え事をしているうちに、瑠璃はすっかり邸内で迷子になってしまった。
入り組んだ庭を進んでいるうちに、寝殿の前まで出てしまったのである。
木階の脇に座り込んでいる瑠璃をいきなり声が襲う
「誰だっそこにいるのはっ!!」
その声に、警備の侍たちがばらばらと現れた。
「入道さま、何か」
「うむ、人の気配がしたのだ」
これらやり取りを、瑠璃は咄嗟に潜りこんだ床下で聞いていた。
何人か寝殿前に残って見張っていろ、という言葉を残し、あとは床下から侍たちの足が見えるだけになった。
瑠璃は、なんとかここを出ようと、反対側を目指して膝を進めた。きれいな袿の裾もゲロゲロである。
床上では、何やら話し声が聞こえる。人がいるならばなおのこと見つからないうちに早く抜け出さねば…

「…衛門佐が…」

瑠璃は耳を疑った。この邸の中で、高彬の話をしている?

耳を済まして聞こえてきた内容は、こうである。
左衛門佐が夜盗狩などと言い出したため、京中検非違使だらけで我々も動き辛くなった。
しかしこれは、夜盗狩りと称してこちらの動きを封じるために東宮の画策したのかもしれない。
いや、実際夜盗騒ぎに一番怯えているのは東宮であり、その証拠に左衛門佐を梨壺に連日宿直までさせている。
将来有望な東宮の片腕であり、何か事あらば真っ先に動くはずの右大臣家の高彬を宮中に足止めしている以上案ずることはない。
右大臣家…何事につけても邪魔な奴らだが、
我らが正良親王がめでたく東宮におなり遊ばされた時こそ……!!

275 :粗筋中将3/3 :2007/06/19(火) 22:03:02 ID:???
つい盗み聞きしただけだったが、これはとってもアブナイ話だ。
正良(マサラ)親王と言えば、今の東宮の年の離れた、まだ5つか6つの弟宮である。
生母は左大臣家の姫君なので、正良親王の後見は左大臣家である。
しかし、今上帝が譲位し、東宮が次の帝になっても、次の東宮には、新帝の子がなるのが通例だ。
弟宮の正良親王が次の東宮になるには、
今東宮が亡くなるか何か不祥事を起こさない限り、万が一にもありえないのである。
しかし、その万が一が起こってしまった場合、後見人が左大臣と強い、正良親王が東宮に…

つまり、正良親王を東宮にするため、今の東宮を亡き者にしようとしているのだ!
高彬は言っていた、今の東宮を不満に思っている一派がある、呪いの人形も出てきたと…
この邸はきっと、その一派の本拠地なのだ。

瑠璃は青ざめた。まだ成就してないといえ、いずれ右大臣家の高彬の妻になる身である。
ここにいることが見つかれば、口封じに殺されてしまう!

もとはと言えば新婚初夜をおじゃんにした張本人、融のカタキを追ってきただけなのに…
早くこの場を立ち去らねばと床下を急ぐ瑠璃の前に、人影が現れた!
見張りの侍に見つかった!?
ゆらりと動いた人影が、抜刀したのが見えた。
こんなところで殺されてしまうのか…!
高彬の姿が思い浮かんだのを最後に、瑠璃の意識は遠のいたのであった―――――。

276 :マロン名無しさん :2007/06/19(火) 22:27:52 ID:???
ふええ〜帝位継承争い!?
なんかスパイ物みたいになっとるがな。
>裾ゲロゲロ
って正絹、しかも贅を尽くしたお着物はとってもとってもお高いのに…
融の次は瑠璃ですかそうですか。

277 :マロン名無しさん :2007/06/19(火) 22:51:08 ID:???
ついでに言えば当時の布は全て手織りだから、
十二単一人分ほど布使ってれば
気が遠くなるほどの手間がかかってるね。

278 :マロン名無しさん :2007/06/19(火) 23:47:17 ID:???
やんごとなき姫君が住居侵入に床下で盗聴
衣装重くて機動力低いだろうに

279 :マロン名無しさん :2007/06/19(火) 23:49:31 ID:???
見捨てて帰るのかと思いきや、それなりに弟思いの瑠璃
あっさり当て身で気絶とは、相手が凄腕なのか融がヘタレすぎるのか

280 :マロン名無しさん :2007/06/19(火) 23:51:42 ID:???
次号は入道に捕まった瑠璃を高彬が乱入して助ける王道展開…な訳ないよなあ。
正気に戻った瑠璃が全員返り討ちして独力脱出とみた

281 :マロン名無しさん :2007/06/19(火) 23:52:57 ID:???
盗み聞き内容だと東宮はチキンなのか賢いのかよくワカラナス

282 :マロン名無しさん :2007/06/20(水) 00:36:16 ID:???
小萩、聞かないにしても主人の不法侵入は止めろよ

283 :粗筋中将1/3 :2007/06/20(水) 22:08:34 ID:???
小萩に差し出された温かいお粥の感触に、瑠璃は目が覚めた。
しかし目の前にいるのは、小萩ではなく、見知らぬ女房たちだった。
なんと、ここは藤宮の二条堀川邸。
つまり、融を斬った男を追って変な邸の下に潜りこんだのに、
藤宮の二条堀川邸に戻って、しかも手厚い看病を受けていたのである。
さる御方から藤宮が預かっている「鷹男」という雑色が瑠璃をここに運んだということだった。

その時、衣擦れの音がして、部屋に現れたその人こそ、
藤の花がこぼれるように美しい、この邸の主、藤宮だった。
女房たちを下がらせ、二人きりになったところで、藤宮は切り出した。
「大納言家の瑠璃姫さま……ですわね?」

瑠璃の名は、牛飼童に聞いて知ったのだという。
大納言家の姫君ともあろう人が、なぜあの邸の床下などにいたのか…
その理由を問う藤宮の様子はどこか普通ではない。
まさか、東宮廃位の陰謀に関係しているのかという考えが頭を掠めるが、
黙っていても状況は好転しない。瑠璃は全部打ち明けることに決めた。
弟の融の懸想、斬りつけた相手を追ってあの邸に辿りついたこと、
決して盗み聞きする趣味などない…
「盗み聞き?瑠璃さま、まさか、あのお邸でのお話までお聞きになってしまったのでは…」
瑠璃の嘘をつけない表情を見て、藤宮はため息をついた。
このまま瑠璃を帰すわけにはいかない…
そう言い、藤宮は、ある人物を呼びつけた。

現れたのは、「鷹男」と呼ばれる雑色の男だった。
面食いの瑠璃も一瞬見とれてしまうほど端正な顔立ちをした…
二度にわたる融への仕打ちに加え、邸の下で瑠璃に刀を突きつけたのも鷹男だった。
そのことを、思いがけずも藤宮に謝られ戸惑う瑠璃だったが、ここで気になる質問をした。
「この鷹男という男、ただの雑色にも見えませんけど、どういう身分の者ですの?」

284 :粗筋中将2/3 :2007/06/20(水) 22:10:20 ID:???
瑠璃の度胸と好奇心に負けた鷹男は、このことは他言無用と前置きをして語りだした。
今の東宮が次の帝になることをよしとしない者たちのことを。

そもそも、今の東宮は、皇族出身の母を持ち、血筋はこよなく良いのだが、後見の権力財力は弱かった。
なのに東宮に立つことが出来たのは、右大臣家が姫君を妃に差し出すことにより、
全面的な援助をするようになったからだ。
しかし東宮位についてすぐ、帝と左大臣家の姫君の間に、第二皇子・正良親王が生まれたのである。

ところで、東宮がいずれ帝になった時には、母方の実家が帝の外祖父として勢力を一手に握ることが出来る。
左大臣の狙いはその外祖父の地位なのだ。
しかし、現在の東宮にこれと言った落ち度もないことから願い叶わず、
失意のあまり、左大臣は出家してしまったのだという。
あの邸で聞こえた声、「入道さま」と呼ばれた人物こそ、左大臣その人だった。

今は出家し、左大臣の座を息子に譲ってなお権力欲は強く、未だ正良親王の東宮擁立のために画策を巡らせているのだ。
東宮自身ももちろんそのことには気付いているが、
このことが表沙汰になれば、関係のない現左大臣や左大臣家に縁の者にまで累が及ぶ。
それによって政治や都の乱れることは、東宮の望むことではない
故に、東宮に直々に命じられた鷹男が、入道一派の陰謀の証拠固めに奔走しているということだった。
その拠点に、東宮と親しい藤宮の邸を提供してもらっているのだ、と。

285 :粗筋中将3/3 :2007/06/20(水) 22:11:12 ID:???
瑠璃の初夜がぶっつぶれたウラには、天下をも揺るがす大事件があったのだ。
融を斬ってしまったのは、入道の手の物と勘違いしてのことだったが、
高彬がそれを夜盗の仕業だと報告したために京中の見回りが厳しくなり、動き辛くなってしまった、
とおどけて言う鷹男に瑠璃はちょっとムッとしつつ、
お役目熱心な高彬も東宮直々に梨壺の宿直を命じられているのだ、と反論する。
しかし実は、高彬は、その仕事熱心さから夜盗狩りの先頭に立たれても鷹男が困るので、
梨壺の宿直という名目で御所に足止めさせているのだ、と鷹男が種明かしをした。
有能な高彬が夜盗の正体を見破っては困るのだ。
それは高彬の腕を高く評価してのことだが、瑠璃は、騙されている高彬が可哀想だと憤慨する。
こうなったら、この話を何もかもぶちまけて、高彬に入道の陰謀を暴いてもらおう。
(ここで高彬に活躍してもらわなきゃ、あたしのハラの虫がおさまらないわっ!!)

その瑠璃の心を読んだのか、鷹男が、他言無用、と釘をさす。
高彬にこの事を話すつもりなら、こちらにも考えがある、と凄む鷹男に瑠璃はひるむ。
正直者で真面目で融通が効かない高彬がこの陰謀を知れば、当然右大臣の耳にも入る、
そうすれば事を極秘に運ぶことは不可能になり、それは東宮の望むところではないのだ、と。

だが、入道一派が捕まるまで、瑠璃と高彬の新婚生活はありえないのだ。
高彬が御所を動けない以上、瑠璃までじっとしているのは嫌だ。
他言無用と引き換えに、ひとつ条件を出した。
「あたしにもこの仕事を手伝わせること!」
大納言家の姫君から出た言葉とは思えず、鷹男は驚き、これは鬼ごっことは違うと呆れるが、
手伝わせてくれないなら、誰にも言わず自分で調べる、
新婚生活がかかっているこの事件を一刻も早く解決したいのだ、と息巻く瑠璃に、ついに鷹男は根負けする。
(それにしても、左衛門佐も奇特な…このような姫を妻にとは…)
喜び、心の中で高彬に頑張るぞっと誓う瑠璃を横目に、ひとり鷹男は頭を痛めるのであった。

286 :マロン名無しさん :2007/06/20(水) 22:54:13 ID:???
藤宮様&新キャラ鷹男キター

287 :マロン名無しさん :2007/06/20(水) 23:17:12 ID:???
鷹男は美形の密偵ってとこかね

それにしても仕事を手伝わせろって瑠璃・・・
気持ちも分からなくないが、素人が勝手にかき回すのは
かえって事件解決を遅らせるだけだと思うんだが・・・
しかもお姫様なのに、そういうことしちゃっていいのか?

288 :マロン名無しさん :2007/06/20(水) 23:59:11 ID:???
新婚生活かかってっからな
瑠璃は巻き込まれ型ではなく首つっこみ型ヒロイン
高彬つくづく立場ないな
鷹男が瑠璃を気絶させて藤宮さまのとこまで引っ張ってきたんか

289 :マロン名無しさん :2007/06/21(木) 00:17:12 ID:???
小萩に心配かけどおし

290 :マロン名無しさん :2007/06/21(木) 00:19:24 ID:???
融の恋、あっけなく散ったな…
未亡人藤宮は二の姫とはまた違ったオトナの魅力だ

291 :マロン名無しさん :2007/06/21(木) 06:29:29 ID:???
おおっ、藤宮さま美しい!
そして鷹男キター!
やっぱかっこいいわ

292 :マロン名無しさん :2007/06/21(木) 13:45:38 ID:???
>ただの雑色にも見えない

鷹男さぞ内心慌てただろうな

293 :マロン名無しさん :2007/06/21(木) 15:32:09 ID:???
鷹男がやたら偉そうでムカつくんだが。
勘違いで人斬っといてその態度はなんなんだ、と。
どんな偉い任務だかしらんが瑠璃はこいつを役所に犯人として突出して良いと思う。

こいつの代わりはどうせいくらでも居るだろう。

294 :マロン名無しさん :2007/06/21(木) 18:35:14 ID:???
国家陰謀もいいが、
早く帰らないと誘拐だ何だと騒ぎになるだろ>瑠璃

295 :マロン名無しさん :2007/06/21(木) 18:40:35 ID:???
姫さまを返せと騒ぐ牛飼童カワユス

296 :粗筋中将1/3 :2007/06/21(木) 22:03:21 ID:???
「る、 る、 る、 瑠 璃 や っ!!」
三条邸をばたばたと駆けてきたのは、この邸の主、大納言である。
それもそのはず、先ほど藤宮から瑠璃に、珍しい絵が手に入ったので見せたい、とお迎えの牛車がやって来たのだ。
「前の帝の第八皇女であらせられた御方が、なぜこのようなうちの瑠璃と…あぁぁわからんっ」
と余りの出来事に、瑠璃の父はパニックになっていた。
いつから瑠璃は藤宮と親しくさせていただいているのか、と問う父に
「親しいとはいっても、折々の季節のお歌などを贈り合っているだけなの」
「お歌だと?字の汚いお前がっ!?もっとしっかり手習いをさせておくのだった!!ああああはずかしいっ」
興奮する父をよそに、瑠璃は少し気だるげである。
どうやら少し熱っぽい。誘いは断ろうかと呟いたが、父はそれを許さないのだった。

「よいか瑠璃、身を慎むのだぞ。わが邸でのように破天荒なことはくれぐれもしてはならぬぞ」
「姉さん!ぜったいぜったい!!ぼくのこと藤宮さまにアピールしておいてよね!」
父と弟の興奮とは正反対に、瑠璃はやはり具合が悪そうだ。
心配する小萩に見送られながら、ふらふらと瑠璃は三条邸を出発した。

牛車内では一転、「うまくいっちゃった♪」上機嫌の瑠璃がいた。
というのも、瑠璃が二条堀川邸に出向くことは、鷹男の立てた計画だったのだ。
あの、入道一派の陰謀を聞き、鷹男の作戦の一端を担う約束を取り付けた夜、鷹男は二つの提案した。
融には、藤宮が腑甲斐ない男は嫌いだと言っておくこと、
藤宮の好みがわかるほど瑠璃と仲が良いことを強調すること。
そうすれば、融は二条堀川邸付近をうろつくことはないだろうし、瑠璃が藤宮のもとへ出入りしても怪しまれなくなる。

297 :粗筋中将2/3 :2007/06/21(木) 22:04:34 ID:???
実際、上手く事が運んだのだ。
三条邸に戻った瑠璃は、あの後藤宮の邸に招じ入れられ、すっかり仲良くなったと報告した。
融も小萩も驚いていたが、融は「あの時の男」は藤宮の女房の恋人なんだと言う嘘をあっさり信じ、
邸のまわりをうろちょろするような腑甲斐ない殿方よりも、
たとえ下手でも真情のこもったお歌に心ひかれると言っていたという作り話にも
「ぼく…習字の練習をするっっ」と言うが早いか、さっそく行動に移したのである。
見事な伏線が功を奏し、瑠璃が今日藤宮のもとへ遊びにいくと言ってもだれも疑問に思わなかった。
そしてこれから、瑠璃は藤宮の邸で病気になる予定だった。
そうすれば、あとは何かと理由をつけて面会謝絶にすることが出来る。その間、瑠璃は自由に行動出来る、というわけだった。
つくづく、この作戦を立てた鷹男をすごいと感心するのだが、あの夜、鷹男はついに本名も身分も教えてくれなかった。ただ
「あなたの夫と似たような身分ですよ」
と微笑するのみだった。

二条堀川邸では、相変わらず美しい藤宮が瑠璃を待っていた。
鷹男が来るまで、珍しい絵巻物を見たり貝合わせをしていたが、
ふと鷹男の話になった。
藤宮は、勇敢な瑠璃が羨ましいと言い、臆病ゆえに鷹男の役に立てない自分を悲しんでいた。
このような危ない仕事は他の者にやらせればいい。
東宮にもそう忠告しているのに、鷹男は少しも聞いてくれない。
「鷹男の身にもしものことがあったら、わたくしきっと生きてはいられませんわ…」

「女同士、何の内緒話ですか」
突然現れた鷹男に、何故か瑠璃が赤くなってしまう。
「あなたのことを話していたのです。無茶はなりませんよ」
「大丈夫ですよ宮。そうご心配なさることない」
そう言って藤宮に微笑みかける鷹男を見て、瑠璃は絵巻物のカップルよりステキだと見惚れていた。
鷹男のように切れのいい頭と、美貌と、行動力、それに精神的にもオトナならば、
藤宮とも充分つり合う。きっと藤宮のためにふさわしい身分と手に入れるためにこの任務に熱心なのだ。
融と藤宮じゃ話にもならない、と思う瑠璃であった。

298 :粗筋中将3/3 :2007/06/21(木) 22:05:35 ID:???
鷹男は、瑠璃と二人っきりにしてくれるよう藤宮に願い出た。
渋る藤宮だったが、「これ以上あなたにご迷惑をかけたくない」と言う鷹男の願いを聞き入れる。
瑠璃と二人っきりになったあと、なぜ女というものはわがままなのだろうかと問いかける鷹男に
「それは藤宮さまが鷹男をお好きだからだわ」
と切り返す。
真っ赤になって否定する鷹男だったが、愛する人のために命を賭して働くのは立派だ、と瑠璃はうっとりと言ったのだった。

「入道のいる五条邸に入り込んでいただきたいのです」
本題に入り、鷹男は瑠璃にこう告げた。
五条邸は入道一派の拠点だが、床下で盗み聞きにも限界がある。
ちょうど今五条邸では、女房を一人捜しているという。
非常に危険な仕事だから無理強いはしないと言う鷹男に、
協力すると言った以上はどんなことがあっても手伝うと強い意志を見せる瑠璃。
その姿に感心しつつ、鷹男は瑠璃に五条邸内での仕事を言い渡す。

邸に来る客人に注意して欲しい。陰謀の加担者がどれほどいるのかを掴みたい。
邸に運ばれる珍しいものにも気をつけてくれ。唐渡りの毒薬などがあるかもしれない。

連中が、どういう手段で東宮廃位を画策しているのかまだわかっていない。
以前出てきた呪いの人形のような曖昧な方法で満足しているとは思えないのだ。
「確実な線を狙うとしたら、毒殺でしょう」

神妙に、しかし事も無げに言い放つ鷹男の姿と、その恐ろしい内容に
とんでもないことに足を突っ込んでしまったのではないかと不安を覚える瑠璃であった―――

299 :マロン名無しさん :2007/06/21(木) 22:31:32 ID:???
潜入操作に毒薬て。
ヘタすりゃ瑠璃も殺される。
いくらなんでもお姫様がそこまでできるもんなのか??

300 :マロン名無しさん :2007/06/21(木) 22:32:12 ID:???
いや今更びびるなよ瑠璃w
この事件の初っ端から命の危険感じてるんだからさー

301 :マロン名無しさん :2007/06/22(金) 00:28:26 ID:???
融はもう失恋確実だな。
下手に希望を与えない方が良かったんじゃ

302 :マロン名無しさん :2007/06/22(金) 06:17:54 ID:???
仮にも貴族のお姫さまなのに女房なんて勤まるのか?

303 :マロン名無しさん :2007/06/22(金) 13:12:20 ID:???
女房に必要なのは立ち居振る舞いと機転だから
庶民には無理でも行動力のある姫なら女房は出来るヨ
それにしても鷹男カコイイな
高彬が幼く頼りなく見える


304 :マロン名無しさん :2007/06/22(金) 14:04:36 ID:???
高彬と同じような身分ならそこそこいいとこのぼっちゃんだろうし
顔も頭もいいとなれば言うことないのに
瑠璃は眼中にナシか、もったいないw

出世したなあ、高彬。

305 :マロン名無しさん :2007/06/22(金) 14:54:00 ID:???
>わが屋敷でのように破天荒なことはくれぐれもしてはならぬぞ

もう遅いよパパン

306 :マロン名無しさん :2007/06/22(金) 16:37:11 ID:???
瑠璃パパが除籍されないか誰も心配してやらないところが・・w

307 :マロン名無しさん :2007/06/22(金) 18:16:42 ID:???
わが屋敷以上に破天荒だから無問題!

308 :粗筋中将1/3 :2007/06/22(金) 22:01:21 ID:???
春雨の 降るは涙か 桜花
  散るを惜しまぬ  人しなければ
(春雨が降っているのは、桜が散るのを惜しむわたしの涙なのだろうか 大伴黒主)

「んまあ、三条さんたら!やっぱり宮家にお仕えしてた人って違うのねえ
 宮家にお仕えしてるとおのずと風流めいてきちゃうのかしら。すごいわあ。ねえ三条さん?」
春の歌を思わず口ずさんていた瑠璃に、おしゃべり好きの女房少納言はまくしたてた。

ここは、入道の住まう五条邸である。
高彬からの求婚のお歌をもらったのは、まだ梅の花さえ咲かないかの頃だったのに、
今は桜も散り始め、うらうらぽかぽかとめっきり春の陽気になっていた。
「三条」と名を騙った瑠璃がここにスパイに入って10日になる。
宇治の山荘に引き籠もっている前々帝の従兄にあたる宮さまに仕えていた女房、ということになっていて、
鷹男がそこの古参の女房から紹介状を都合してきてくれたのだ。
万が一、三条(瑠璃)の身元を問い合わせるようなことがあっても、
宮さまは70に近く、まわりの女房もモーロクしているから大丈夫だと鷹男は言う。
しかし、なまじ“宮家の女房”なんて肩書きにしたものだから、好奇心旺盛な少納言の質問責めにあってしまっている。
つい先日も、鷹男からの文を読んでいるところを少納言に見つかってしまい、
誰からの文なのだ、とずい分と興味を持たれて困ったものだった。

鷹男からの文の内容は、瑠璃が五条邸に潜りこんでからの事後報告だった。
瑠璃が藤宮邸で熱を出して帰れなくなったという知らせを受けて、驚いた父が瑠璃を迎えにきたらしい。
しかし、藤宮が信奉している占術師が「病人は動かすことも面会させることもまかりならない」
と言うものだから、胡散臭い占術師だとは思いつつ、相手が藤宮だけに父は帰らざるを得なかったという―

309 :粗筋中将2/3 :2007/06/22(金) 22:02:18 ID:???
そのような文を見られてはさすがにまずいよなぁ、などと思い出しつつ黙っていると、
「三条さんて、ほんと口数が少ないのねぇ」と少納言が感心して言った。
新参の女房というものは、早く主人に気に入られたくて出すぎたことをするものなのに、三条はとても慎ましい、
入道もそういう女房が望ましいと誉めていた、と。
瑠璃としては、べらべら喋ってボロが出てはまずいから喋らないだけであり、
余計なことはするなと鷹男にクギをさされているから大人しいのだ。
そのことが入道の目に止まっているのも逆に心配ではあるが…

しかし、少納言も、年の近い女房仲間は三条しかおらず、話し相手が欲しいのだ。
この五条邸は別宅のせいか、女房はみな三十路四十路ばかり。
「若い女房は噂好きで好奇心が強いからうっとおしい」という入道の方針のようだ。
確かに、人に聞かれては憚るような密談をしているのだ。おしゃべりな女房がいてもらってはさぞ困るだろう。
しかも、侍もやたら警護に当たっているこの邸だ。
「あたしのカレも、通いにくいってぼやいてるからさ」
先日の瑠璃あての文の相手が、恋人だと勘違いしている少納言は、瑠璃を同志と思い語るのだった。

そこに、古参の女房、丹後が「客が来たから仕度をしろ」と言いに来た。
潜入して10日、とうとう入道が動き出したのだ…!

入道の客として現れた男は、なんだかあまりたいした身分の者ではなさそうだった。
そのわりに、若い瑠璃を目ざとく見つけ、ずいずいべたべたと触れてくる。
(スパイとしての任務がなけりゃしばき倒してやるのにっっ!!)
スケベじじいになされるがまま、ガマンにふるえる瑠璃だった。

310 :粗筋中将3/3 :2007/06/22(金) 22:03:19 ID:???
「おお善延、よう来たよう来た。思ってたより早かったではないか」
善延、と呼ばれた客人は、
「はっ、ことは入道さまの思惑通りに運んでおります。もちろん法珠寺のほうも…」
意味ありげに切り出すところを、側に控える瑠璃の姿を認めた入道はそれよりも…と別の話題を切り出した。
「これが例の女房の三条だ」
…まさかもう身元がバレたのか?
しかしそれは思い過ごしで、どうやら瑠璃の慎ましやかな働きぶりを、二人は既に話題にしていたのだ。
どうやら身元がバレたわけではなさそうだと胸を撫で下ろす瑠璃に、入道は善延を紹介した。
「三条、こちらは左馬頭殿じゃ。今はつまらぬ馬寮という役職に就いておるが、やがては帝のご信頼を得て確実に出世する者なのだ」
だから少しくらいは優しくしてやれ、と付け加え、入道は瑠璃に下がるよう命じた。
後でもう一人客人が来て酒宴になるからその準備をしておくように、と。
部屋を下がる直前、左馬頭が入道に何やら文を渡すところが瑠璃の目に端に映った。

入道の部屋から下がった瑠璃は考える。
あの入道が酒宴を開くという以上、何か大事なことが話し合われるに決まっている。
または陰謀成功の前祝いか、仲間の結束を強めるか…いずれにしても重大な集まりに違いない。
あの、左馬頭(サマノカミ)が取り出した書状のようなものも、きっと大切なものだ。
だいたい、左馬頭のようなスケベで才覚もなさそう従五位の下級官吏が、あの年でどうやったら帝の信頼を得て出世できるというのか。
左馬頭が口に出した法珠寺という名前も陰謀のネックなのかもしれない。
瑠璃自身、法珠寺の名に聞き覚えがあるが思い出せない。
しかし鷹男はいったい何をしているのだろう。
テキがやっと動き始めたっていうのに、邸に瑠璃を送り込んで以来、一度も顔を見せに来ない。
文を一回きり寄越しただけなんて、怠慢なのだ!と憤慨するのだった。
(こんな時こそ 来てくれたらいいのに…)

亥の刻になり、ようやく例の客人がやって来た。
これで、東宮廃位を企てる入道一派のもう一人の仲間がわかるのだ。

「おお、よう来たよう来た。待ちかねておったぞ」
入道に招かれ、邸に入ってきたその人物とは………

311 :マロン名無しさん :2007/06/22(金) 22:28:31 ID:???
「例の…」なんて怪しすぎ。瑠璃大丈夫か?
やっぱ目つけられてんじゃね?

312 :マロン名無しさん :2007/06/22(金) 23:10:22 ID:???
前髪分けた瑠璃カワユス

313 :マロン名無しさん :2007/06/23(土) 05:39:06 ID:???
「三条」はさすがに捻りが無さ杉のような……

314 :マロン名無しさん :2007/06/23(土) 11:27:55 ID:???
ああ、瑠璃の家は「三条邸」だっけ?

315 :マロン名無しさん :2007/06/23(土) 12:29:41 ID:???
三条にあるから三条邸なんだろね。

現在で言えば六本木在住のスパイが六本木って名乗るようなもんだ。

316 :マロン名無しさん :2007/06/23(土) 17:37:04 ID:???
もっとダイレクトだな。
三条邸ってネーミングからして大納言家が三条にある事は周知の事実なんだろうし。

国会議員が永田町男と名乗るようなもんじゃね?

317 :粗筋中将1/3 :2007/06/23(土) 22:03:10 ID:???
やって来た客人は、なんと僧侶だった。
左馬頭と同じような位の者だと思っていた瑠璃は少なからず驚いた。
(東宮を廃位に追い込むための陰謀に、どうやってぼーさんが関係してくるのかしら)
入道自らあの僧侶を迎え入れた所を見ると、かなりの重要人物だと思われるが、
そのあたりもしっかり探らねばならない、と、今夜の酒宴のお酌の役を自ら引き受ける瑠璃だった。
少納言に、わざわざ酔っ払いおやじの相手をするなんて物好きだと呆れられたが。

酒宴の席では、入道は「首尾は上々だ」と上機嫌である。
「明日は必ず観照があってくれるのだな」と僧侶に話しかけている。
観照…法珠寺と同じような関係で聞いたことがある…と考える瑠璃に、僧侶は話しかけた。
「三条と申したな。花も盛りという年頃か」
17だと答えると
「ふむ。しかし、盛りの花とていつかは散るもの。そう心得られるがよいぞ」
と手を合わせるのだった。
「観如殿!ここでそういう向きの話をされるのは…」
「ああ、僧籍にある身の常でな」
左馬頭にたしなめられ、頭を掻いたこの僧侶、どうやら観如というらしい。
「確かに散るは花の運命。かといって、何も知らずに散るのも哀れというもの」
そう言った入道は、余興だ、と言ってこう続けた。
「ひとつ いいものを見せてやろう」

318 :粗筋中将2/3 :2007/06/23(土) 22:04:21 ID:???
持ってこさせた蒔絵の文箱を入道が開けると、そこにはあの時の書状が入っていた。
しかし、入道が取り出したのは、その下にある巻紙だった。
見たいのはこっちじゃないと思う瑠璃だったが、巻紙に書かれてある内容に目が止まる。
一筆一筆、筆跡は違うお歌が書かれてある。座興でよくやる歌の連書か…
いや、違うこれは…
(入道一派の連判状…!?)

 春の日の ひかりを恃み 雪深き
    道なき道を  踏み分け往かむ
                右大弁
(春が来たら日ざしの暖かくなることを信じ、今は雪深く積る道なき道ではあるが踏み分けて行こう)

【新しい東宮のご威光を信じ、わたしは耐えがたきを耐え忍びがたきを忍んでいます】

瑠璃は、歌に込められたウラの意味に愕然とした。
表向きは春を待つ歌だが、
東宮は「春宮」とも書くし、“春の光”は東宮のことだ。
ここには十首の歌が書かれているが、全部春を待つ歌ばかり。
すべてが新東宮の御代を待つという歌だ。
(これは、正良親王の東宮擁立に加担している連中の連判状なんだわ…!!)

こうなったら何としてでもこの巻紙を手に入れなければならない。
そうすれば、入道の陰謀に与する者たちの名もわかるし、
何より証拠としてこれ以上のものはない。
幸い、入道はお酒が入り浮かれている。他のふたりも、お酒のために気が回らなくなっているようだ。
それなら…と、瑠璃はお酒を取りに行くと言い、席を外した。
いいとこの姫さまと思えない格好で、自室に走る瑠璃であった。

319 :粗筋中将3/3 :2007/06/23(土) 22:05:34 ID:???
部屋に戻った瑠璃は、あの巻紙に似せた十首の歌をしたためた紙を急いで用意する。
そして、厨に酒をどんどん運ぶように伝え、宴席に戻った。

大量に運ばれた酒に、入道も観如も酔い潰れ、眠っている。
酔っ払いになんとか耐えていた少納言も、左馬頭のスケベおやじぶりに辟易し、席を立ってしまった。
今がチャンスとばかりに、瑠璃は部屋にあった灯台を蹴り倒した!

「火事です!火事ですわっ!!誰かっ!!」
突然燃え出した部屋と瑠璃の非常の声に、入道たちはお酒の抜けない朦朧とした頭ながらも飛び起きた。
飛び込んで来た丹後たちに入道らを任せ、瑠璃は消火に回ると言い部屋に残る。
人がいなくなった後、瑠璃は急いでさっきの連判状を探しだす。
(これが燃えたら一大事だわ。…燃えていいのは、こっちの方なんだから―)
連判状と引き換えに懐から取り出したのは、先ほど部屋で作った巻紙だ。
こちらを火にくべ、あっと言う間に灰になったのを確かめた。

(証拠を手にした以上、こんなところで焼死するわけにはいかない!)
あとは、消火活動をするだけだが、ばしばしと消している間に、炎が御簾に飛び火した。
あっと言う間に燃え上がる、火の海になってしまった。
(な…何よこの火…どーやって消せってゆーのよ!!)
火の勢いは止まらない。さらに煙で周りが見えない。
げほげほと咳き込む瑠璃は、逃げ出すことが出来るのか!?

(焼け死ぬなんて絶対いやっ!!あたし高彬と…
 まだ接吻しかしてないんだから―――――っ!!)

320 :マロン名無しさん :2007/06/23(土) 22:20:50 ID:???
スパイ活動らしくなってきました、って
瑠璃無茶しすぎ!


321 :マロン名無しさん :2007/06/23(土) 22:21:48 ID:???
なんと漫画に描いたようなマッチポンプwww

322 :マロン名無しさん :2007/06/23(土) 22:30:17 ID:???
さあ、洒落にならなくなってまいりました

323 :マロン名無しさん :2007/06/24(日) 00:31:14 ID:???
紙と木で出来てる建築の上に
寝殿造は風通しいいし、燃えやすい布なんかも
たくさんあるからすぐ燃えるんだろうな。

324 :マロン名無しさん :2007/06/24(日) 00:46:57 ID:???
お父さんが知ったら泡吹いて倒れてしまうよ…。

325 :マロン名無しさん :2007/06/24(日) 04:42:15 ID:???
>散るのは花の運命

貞操の話ですか、それとも命の話ですか

326 :マロン名無しさん :2007/06/24(日) 04:44:33 ID:???
灯台蹴り倒すのが瑠璃らしい
無茶すぎるw
確かにまだ高彬とはちゅーだけだね
死んでも死にきれんね

327 :マロン名無しさん :2007/06/24(日) 05:30:38 ID:???
入道もぼーさんだぞ、瑠璃よ。

328 :マロン名無しさん :2007/06/24(日) 05:32:42 ID:???
左馬頭、おさわりバーじゃねーぞ腕まわしてくんな!この女の敵めが
後で瑠璃に蹴り倒されるに違いない

329 :マロン名無しさん :2007/06/24(日) 05:36:41 ID:???
確かにいいとこの姫様はおろか女房でも、裳裾託しあげて廊下を走りまわらんだろうな

330 :マロン名無しさん :2007/06/24(日) 12:14:29 ID:???
ここで鷹男が颯爽と救助にあらわれたりしないのか?

331 :マロン名無しさん :2007/06/24(日) 13:31:26 ID:???
そこまでやられちゃったら高彬の立場はどうなんの…

332 :マロン名無しさん :2007/06/24(日) 16:26:26 ID:???
高彬は鷹男と腕は五分五分くらいで顔が負けてるかな。
しかし高彬は一途で誠実そうだが鷹男はなんか黒いぞ。
第一、鷹男には藤宮様がいるし。

333 :粗筋中将1/3 :2007/06/25(月) 00:00:15 ID:???
ばんっと音を立て、侍たちが飛び込んで来た。
「火を消せ!几帳を倒すんだ!」「天井に火が移る前に御簾をたたっ切れ!!」
そう言う侍たちの手際は非常に良いものだった。
あっと言う間に鎮火され、瑠璃は、焼死体になることは免れたのだ。
(助かったのかぁ…)
へなへなと座り込んだ所に、入道たちが戻ってきた。
瑠璃の働きを、よくやった、無事で何よりと労っていると、左馬頭があることに気付く。
「入道さま…!あの歌の巻紙はっ!巻紙はどこにっ!?」
ぎょっとする入道に、瑠璃が、「紙だから、消そうとした時にはもうあっという間に燃えてしまった」と答えた。
消し炭となった巻紙のなれの果てを手に取り、入道は取り乱す。
「歌の連書が灰になってしまったっ!!歌の連書があぁっっ」
裏切りを防ぐために書かせておいた歌の連書がなくなれば、我らの結束も危うくなる、と三人はパニックになってしまった。
そこを鎮めたのは、古参の女房の丹後だった。
騒いでいると検非違使に見つかる、の一言に入道たちは大人しく部屋に戻るのだった。
その迫力と貫禄に感心していると、丹後は瑠璃に向かって言った。
「よくやってくれましたね三条。おまえはもうお下がり。
 今夜は大殿さまもお酔いですけど、朝には落ちつかれてお誉めの言葉がありますよ」
自分が起こしたボヤなのに、こう誉められるとどうも後ろめたいと思いつつ、部屋に下がる瑠璃だった。

自室で体中の煤を落とし、やっと人心地ついた瑠璃は、手に入れた書状を取り出した。
誰にも怪しまれなかったし、初のスパイ活動としては立派なものだと自画自賛しながら
改めて書状を開こうとした時、背後から声がした。
「恋文を読んでいるのですか?誰からの―」

334 :粗筋中将2/3 :2007/06/25(月) 00:01:26 ID:???
「わたしですよ、瑠璃姫」
鷹男だったのか―――――
安心してへたりこむ瑠璃。人騒がせな現れ方をした鷹男は、寝殿のほうが騒がしかったので、その間を縫って先程から潜んでいたという。
てっきりスケベ心を起こした左馬頭かと思った、と呟く瑠璃に、鷹男は驚いた。
左馬頭がここにいるのか?と念入りに問い、ショックを受ける鷹男。
右大弁という人も陰謀加担者だと聞いて、東宮に忠実な者だったのに…と落胆する鷹男だったが、
瑠璃はその手をぎゅっと握り締める。
「大丈夫よ鷹男!あたしの高彬や鷹男みたいに、東宮をお守りしようという人間だってちゃんといるのよ!
 裏切りような人達ばかりじゃないわ。そうでしょ?鷹男」
励ますように鷹男を見上げる瑠璃に、鷹男は心を持ち直す。
鷹男が元気を取り戻し喜ぶ瑠璃だったが、鷹男は瑠璃の袿の袖からのぞく腕が煤で汚れているのを見つけ、問い正す。
実は…と瑠璃は今夜の一連の働きぶりを鷹男に話した。

瑠璃の話を聞いた鷹男は、青ざめ怖い顔を瑠璃に向けた。
この連書じゃ全く証拠にならないのか?と不安になった瑠璃に、証拠としては充分すぎると返した。
じゃあ鷹男は何が気に入らないのか?
「あなたのことです。瑠璃姫」
こんな危険なことをして、もし入道たちに見咎められていたら…一歩間違って焼け死んでいたら…
鷹男に心配させないためにも、けしてこんな無茶なことをしてはならないと約束してくれ、と鷹男は迫る。
瑠璃にもしものことがあれば高彬に会わせる顔がない。
「ましてわたし自身も、辛い思いをしなくてはならなくなる…」

手を握り、真っ直ぐ瑠璃を見つめている鷹男に、瑠璃は思わずヨロメイた。
慌てて手を振りほどき、何も鷹男に責任を感じてもらわなくたって…と狼狽する。
(やだわ、あたしには高彬がいるのに…)

335 :粗筋中将3/3 :2007/06/25(月) 00:02:41 ID:???
何とか場の雰囲気を変えようと、瑠璃は新たな話題を振った。
観照を知っているか。今夜来た観如がやたら話しにあげていたのだが…
すると、鷹男はこう答えた。
「観照は、東宮が御信心なさっておられる高僧で、法珠寺は東宮が観照のために建立したものです」
観如はその観照の一番弟子なのだそうだ。
そこで瑠璃は思い出したことがあった。
「ひょっとしてその観照って有験の僧なんじゃ…」
瑠璃の記憶は正しかった。
どうりで法珠寺も観照も聞いたことがあると思ったら、
法珠寺の観照と言えば、有験の僧の中でも無類の神通力を持つ有名な僧だったのだ。

きっと観照も入道の陰謀に関わってるに違いないという瑠璃に、鷹男は、まさかあの観照に限ってと懐疑的だ。
しかし、瑠璃は主張を続ける。
観照ほどの有験の僧なら、祈祷で病気を治すように人を呪い殺すことだってできるだろう。
お金を積まれ、東宮を呪い殺す頼みを承知したのだ。
東宮に寺まで建ててもらった観照が裏切るなんて、鷹男が信じられないのも無理はない。
でもこれで入道達の陰謀がはっきりした。
「その観照というぼーさんを使って、東宮を呪い殺すつもりなのよ!!」

336 :おまけ中将 :2007/06/25(月) 00:03:51 ID:???
有験の僧(うげんのそう)…祈祷僧のこと。

337 :マロン名無しさん :2007/06/25(月) 00:22:17 ID:???
鷹男おいしいなー
瑠璃を心配しながら自然にくどいてるし。
それでて裏切り者のメンツにショック受けてるあたりかわいいし

瑠璃はもうちょい危機意識もったほうがよくないか?

338 :マロン名無しさん :2007/06/25(月) 00:52:29 ID:???
焼死体寸前とヨロメキの二つの危機だな

339 :マロン名無しさん :2007/06/25(月) 01:12:10 ID:???
鷹男は藤宮のことが好きなんじゃなかったの?
なんで瑠璃のこと口説いてんの?

340 :マロン名無しさん :2007/06/25(月) 01:26:03 ID:???
光源氏みたいなもんかも<鷹男
で、上手くいったら瑠璃は葵の上ポジで藤宮は六条御休所ポジ


341 :マロン名無しさん :2007/06/25(月) 01:46:26 ID:???
>>340
六条の御息所よりも藤壷の宮ポジじゃないか?>藤宮
性格とか鷹男との関係からして。

342 :マロン名無しさん :2007/06/25(月) 12:00:50 ID:???
助けに来たの侍かよ!
ヒーローが颯爽と登場すると思ってたorz

343 :マロン名無しさん :2007/06/25(月) 15:08:31 ID:???
そんなことになったら思わず抱きついてしがみついちゃいそうだから
別の意味で危険だw

344 :マロン名無しさん :2007/06/25(月) 20:34:53 ID:???
なぜか助けに来ちゃったすべてお見通しの高彬!
という展開をwktkで待っていた自分がいたらしい。
高彬はいまごろどこでなにを・・・

345 :マロン名無しさん :2007/06/25(月) 21:14:52 ID:???
呪殺って、陰謀として有効なのかなあ…
ハイリスクローリターンな気が。

346 :マロン名無しさん :2007/06/25(月) 21:23:26 ID:???
この時代的には

呪術ぅぅぅ(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブルガタガタブルガタガクガクガクガクガク

なのかもな

347 :粗筋中将1/3 :2007/06/25(月) 22:14:21 ID:???
「東宮を呪い殺す…か」
瑠璃の考えに、観照を調べてみる必要があるだろうと認識した鷹男は、他に気付いたことはないかと瑠璃に尋ねた。
左馬頭が持ってきた書状のことを思い出した。
何とか手に入れたいけど、2日続けてボヤ騒ぎを起こすわけにもいかないし…
呟く瑠璃に、鷹男はぎょっとし、怒鳴った。
「あたり前です!このように危険なことは2度としてはいけないっ!!」
鷹男の迫力に押された瑠璃は何も言えなくなった。ふーっとため息をついた鷹男はこう続ける。
書状のほうは鷹男でなんとかするから瑠璃はこれ以上何もしなくてよい、瑠璃のおかげでこうして証拠も情報も手に入ったし、
できることならこのまま瑠璃を安全な所へ連れて行きたいくらいだ、と。
もちろん入道に警戒されてしまうのでそれは出来ないことだが、もう決して危険はおかすな、と念を押す。
瑠璃にもしものことがあったら、この仕事に引き込んだ鷹男は自分のことを許せないだろう…。

鷹男の真剣な表情にまたしても瑠璃は戸惑い、
好奇心と、高彬に放っておかれた淋しさからこの仕事を自ら引き受けたのだから責任を感じなくても良いという。
瑠璃のような姫を妻にする高彬は羨ましいと思う鷹男に、
実はまだ「本当の妻」になったわけではない、と恥ずかしげに瑠璃は打ち明けた。
でも、心はしっかり妻だと言い張る瑠璃だが、鷹男はこう言った。
「それでは…私にもまだ機会があるというわけですね、瑠璃姫」

鷹男の言葉の意味に気付き、戸惑う瑠璃だが、今はそういう話をしている時じゃない、と逸らした。
確かに、と照れた鷹男は、続きはこの件が解決した後で…と部屋を去ったのだった。

鷹男がいなくなった後、改めて顔が赤くなってしまう瑠璃だった。
夫の知らないところで他の殿方にトキめいてしまって、よくないことだが、(とってもドラマチック…)と少しうっとりしてしまう。
とはいえ、高彬が好きなことは変わらない事実だし、
(鷹男とのビミョーな関係に少しくらいドキドキしたって、怒らないよね、高彬)

348 :粗筋中将2/3 :2007/06/25(月) 22:15:52 ID:???
翌日、瑠璃はお昼に目を覚ましたが、丹後にお説教されることもなく、まもなく入道のもとへ呼ばれた。
入道は、昨夜の働きを労ったあと、おもむろに、瑠璃を見込んで頼みがあると切り出した。

法珠寺の観照に内密に渡すものがあったのだが、昨日の騒ぎで弟子の観如に、うっかり預けるのを忘れてしまった。
人を介するのは不都合なのだが、三条(瑠璃)ならば安心だから、やってくれるな―

了解した瑠璃に手渡されたものは、昨日左馬頭が入道に渡していた書状だった。
やはりこれは、東宮廃位の陰謀に関する大事な書状だった!
なんてラッキー!法珠寺に行くふりをして、藤宮の邸に駆け込んでしまえばこっちのものだ。
「心して届けるのだぞ」と文箱に入れられた書状を受け取ったあと、瑠璃はほくそ笑んだ。
(誰が届けるもんか ばぁーか!)
このまま持ち逃げしようとうきうきしていると、入道が言った。
「おまえが無事法珠寺にいける様、侍を4、5人、供につけてやるからの」
なんと、それでは瑠璃の思惑は外れてしまう。んなもんはいらない、そう思う瑠璃をよそに、入道は手順を伝える。
寺の小坊主に預けたりせず、必ず観照に手渡しするのだ。
その際に“ご連絡しておいた者の使いで参りました”と言うのだ、決して入道の名は出すな…
それが入道の命だった。

349 :粗筋中将3/3 :2007/06/25(月) 22:17:21 ID:???
護衛と言うより見張りの侍を供につけて、瑠璃の乗った牛車は法珠寺に向かっていた。
侍から逃げ切れないと悟った瑠璃は、こうなれば書状の中味だけでも調べよう、と文箱を開けた。
この書状はきっと、陰謀の要だ。
入道が東宮の呪詛を依頼するために書いた文に違いない!

瑠璃の予想ははずれた。書状はどうやら、入道の筆蹟ではないようだ。
そういえば左馬頭の持ってきた書状だったわけだが、左馬頭の手蹟とも違う。
だが、殿方の文字だということは確かだ。それも若くて豪放な性格の、身分卑しからぬなかなかの人物らしい。
所々、左馬頭あたりが書きそうな品のない文字が混ざっているが、
それさえなければ見たことある手蹟なのに、と考えながら、漢文混じりの読みにくい書状を読み進めた。

そして瑠璃は気付いてしまった。

先に頼み参らせし祈祷の験なる兆 云々
 (以前から頼んでいた祈祷のききめが出てきた)
今上 いと篤しくなり給えばさらなるを頼み参らす 云々
 (おかげで帝の病気も悪くなってきたのでもっと祈祷をお願いする)
                    宗 平

この書状は、今上帝崩御を促す呪法を頼むためのものだ…!

そして、最後の署名、宗平は、
高彬や鷹男が命を賭して守っている、東宮の御名…!

(東宮さまがどうして父帝の呪詛なんかを頼むわけ!?)

350 :おまけ中将 :2007/06/25(月) 22:18:57 ID:???
文字を見ればその人のだいたいのトシや性格がわかるんである。
当時の文字は貴重な情報メディアだった。

351 :マロン名無しさん :2007/06/25(月) 22:45:15 ID:???
鷹男はきらーすまいるとくどきもんくをつかった!
瑠璃は20のダメージをうけた!
高彬へのおもいが10へった!

352 :マロン名無しさん :2007/06/25(月) 22:47:21 ID:???
みんな筆跡鑑定の達人?
なんか偽手紙っぽいな

353 :マロン名無しさん :2007/06/26(火) 00:18:14 ID:???
瑠璃って今見張り付けられて牛車に軟禁されてるみたいなもんだよね
かなりヤバくない?

354 :マロン名無しさん :2007/06/26(火) 01:12:49 ID:???
むねひらって言うんだ。へー

355 :マロン名無しさん :2007/06/26(火) 01:34:30 ID:???
>>351
瑠璃は筒井筒の呪文を唱えた
高彬への思いが5回復した

356 :マロン名無しさん :2007/06/26(火) 03:45:14 ID:???
>>355
半分だけなんだw

357 :マロン名無しさん :2007/06/26(火) 09:24:20 ID:???
仕事人間てこういうとき損するんだよなー
ふんばれ高彬!

358 :マロン名無しさん :2007/06/26(火) 09:48:31 ID:???
やばい、鷹男かっこいい…

事件解決後は高彬VS鷹男って展開に?

359 :マロン名無しさん :2007/06/26(火) 16:03:23 ID:???
俺はたかやんを応援するよ

360 :マロン名無しさん :2007/06/26(火) 17:40:59 ID:???
>>359
たかやん
ってどっち?

361 :マロン名無しさん :2007/06/26(火) 18:35:03 ID:???
てっきり鷹男は藤宮様が好きだと思ったのに…
高彬ピンチじゃん。敵はハンサムで大人で知的なかなりの強敵だぞー
しかも女の子はちょっと悪でブラックな感じの男が好きだからな。真面目は不利

362 :粗筋中将1/3 :2007/06/26(火) 22:23:52 ID:???
まさかこの書状、東宮が父帝の呪詛を依頼するものだとは…!
確かに今上が崩御すれば、当然今の東宮が次の帝に就く。
けれど、こんな謀反のようなことを企てているのがバレれば、東宮は廃位、大宰府かどっかに流されるのは明らかなのだ。
(帝になるのが待ちきれなかったのかもしれないけど、
 なんて東宮 バ カ なんだろう!
 高彬や鷹男の上に立つ方がこんなことなさるなんて信じられないっ!!)

ひとしきり頭の中で悪態をついた瑠璃だが、ふと冷静になった。

この東宮の書状の内容が世に広まれば、ラッキーなのは入道だ。
別に陰謀など企てなくとも、東宮の位は正良親王に転がり込んでくる。
では、なぜそんな大事な書状が、左馬頭から入道に渡されたのか…

(やだ。ひょっとして…、入道達の陰謀って、この事だったんだわ!)

そもそも東宮は、鷹男のような有能な部下を使い陰謀を暴こうとしているくらいだし、
高彬のことも簡単に丸め込んでしまえるくらいなのだ。父帝呪詛など考えるわけがない。
それに、大事な書状が東宮のもとから盗まれたのなら、昨夜鷹男がそれらしいことを話してくれたはずだ。
ならば、この書状は…
(きっと偽者なのよ…!)

所々筆が乱れているように見えるのは、東宮の筆蹟を真似たためで、
品のない文字の部分は偽造した人間の地が出たところなのだろう。たぶん左馬頭。

363 :粗筋中将2/3 :2007/06/26(火) 22:25:46 ID:???
書状のおかげでどんどん話しが見えてきた。
たぶん、入道はこの書状を東宮のものと偽って、観照に渡すつもりだったのだ。
瑠璃を東宮の使いに見立てて法珠寺に送りこみ、そこへ役人を踏み込ませる算段だったのだろう。
だから入道は決して自分の名前は出すなとクギを刺したのだ。
身元を隠した女が、東宮の寺ともいえる法珠寺で、有験の僧観照に、東宮の名の帝呪詛の依頼…
誰が見ても東宮が依頼したとしか思えない。

そうすれば、自然東宮は廃太子。
入道は少しも表に出ることはなく、正良親王を東宮にすることが出来るのだ。
これが、入道の企てた陰謀だったということだ。

どうすれば陰謀を止めることが出来るのか、と瑠璃は牛車を止めさせ考えた。
見張りの侍の手前、法珠寺に行くのは避けられないが、
瑠璃が、踏み込んできた役人に入道の使いの者だと、入道の陰謀を全部バラしてしまえばいいではないか!
名案が浮かんだ、入道っておバカさん、と喜んでいる瑠璃の元へ、牛車が止まったことを不審に思った侍が声を掛けた。
頭痛がする、と誤魔化した瑠璃だが、侍は、入道の邸へ戻ることはならない、法珠寺へ何がなんでも行かなければならないと言う。
「ご案じなさいますな。頭痛でお悩みになるのも、そう長いことではありますまい」
にやりと笑う侍に、瑠璃は悟る。
入道は、瑠璃を殺す気なのだ!

新しい女房を捜していたのもこの陰謀のためで、入道とつながりの少ない新参の女房が必要だったのだ。
入道と左馬頭が瑠璃のことを「例の女房」と話題にしていたのも、
観如の「花の盛りとていつかは散る」の言葉も…
すべては始めから仕組まれていたことだった!

364 :粗筋中将3/3 :2007/06/26(火) 22:27:06 ID:???
瑠璃を乗せた牛車は法珠寺に着いた。
出迎えた声は、昨日聞いた観如の声だ。三条(瑠璃)の名を出さず、「御使者殿」と呼びかける。
牛車の簾が揚げられ、瑠璃は覚悟を決めた。
車から降り、観如に付いて歩く途中、くるりと振り返り牛飼童に声をかけた。
「帰ったら、前左大臣大海入道さまにお伝えするのよ。
 三条は無事法珠寺に着きました、お預かりした書状は必ず観照さまにお渡ししますからご安心くださいって!」
青ざめて車を返す牛飼童子に「 大 海 入 道 さ ま に っ お伝えするのよ!!」と念を押すのも忘れない。
そして改めて振り返り、震える観如に向かい慇懃に挨拶をした。
「昨夜のお邸での不都合、前左大臣にして今は大海入道さまも大変気に病んでおりました。
 わたくし今日は大殿さまの御名代として書状一巻、観照さまに直接お渡しするようにと申しつけられてまいりました。
 よろしく観照さまにお取り次ぎくださいませ」
これだけ入道の名を印象付ければ、計画を変えざるをえないだろう。
みすみす入道の思い通りにはさせない瑠璃であった。

観如に案内されて通された部屋に、観照はまだいなかった。
急な用で出ているが、じき戻るからここで待っているよう瑠璃に告げた。
観如は席を立つ際、瑠璃に呟いた。
「軽き口は禍のもと。散り急ぐ花はにくきものと申します」
そして足音荒く、部屋を出ていった。
(あんまりしゃべると、さっさと殺しちゃうってこと…!? なんてオソロシイこという坊さんなんだ)

しかし、肝心の観照が出かけていていないというのも変な話だ。
瑠璃は近くにいた小坊主(ちんねんさん)に観照不在について問いかけた。
すると、観照は東宮の急な呼び出しに、先程宮中へ参内したという。
きっと鷹男のさしがねだ。
入道の陰謀に観照の名が出てきたから、東宮に知らせ、観照を取り調べるために参内させたに違いない。
だが、観照を取り調べる以上、鷹男は東宮の近くに控えているはずだから、鷹男を頼みには出来ない。
『散り急ぐ花はにくきもの…』
観如の言葉が浮かび、ぞっとする。
(こんなところで殺されてなるもんですか!自分の命くらい自分で守ってみせるんだからっ!!)

365 :マロン名無しさん :2007/06/26(火) 23:13:46 ID:???
瑠璃、たいした度胸だ、すげ〜
でも上手く逃げられるのか?

366 :マロン名無しさん :2007/06/27(水) 00:08:23 ID:???
ちんねんさんカワユス

367 :マロン名無しさん :2007/06/27(水) 01:54:32 ID:???
やっぱり花云々は命の話か。
入道、黒っ。坊さんコワっ。

368 :マロン名無しさん :2007/06/27(水) 08:04:00 ID:???
瑠璃逃げて超逃げてー

369 :マロン名無しさん :2007/06/27(水) 19:26:09 ID:???
今度こそ、高彬がかっこ良く助けに来るんだ!

370 :マロン名無しさん :2007/06/27(水) 20:54:24 ID:???
> 自分の命くらい自分で守ってみせるんだからっ!!

少女漫画の主人公らしからぬところが好きだな。
って原作アリだからかな?
この作者はオリジナルのストーリーででも漫画描いてたの?

371 :マロン名無しさん :2007/06/27(水) 21:55:55 ID:???
>>370
ごく初期の頃にオリジナルも描いた事がちょっとあったような…
でも、あまり面白くなくて作品タイトルは全然覚えていない。

氷室さんとのコラボは沢山ある>ざ・ちぇんじ、蕨ヶ丘など

372 :粗筋中将1/3 :2007/06/27(水) 22:00:10 ID:???
瑠璃が法珠寺にて観照を待っているあいだ、側に控えていた小坊主(ちんねんさん)が瑠璃に尋ねてきた。
使者殿(瑠璃)は東宮からの使いの者ではないのか、と。
「まあ。わたくしが東宮さまの御使者ですって?」
一拍置いたのち、わざとらしいくらい、瑠璃は強調して言った。
前左大臣にして今は大海の入道の使いであって、東宮からの使いではない、と。
小坊主によると、何日も前から東宮の秘密の使者が来ると観如に聞いていたのに、まさにその日に東宮から急な召集があったそうだ。
観如は、何かの間違いだと、参内する観照を止めようとする大騒ぎにまでなったという。
だから観如は慌てて部屋を去ったのだ。
まさか観照自身が東宮に呼び出されるなんて予想外だったろう。入道もこの話を聞いてあわてふためいているに違いない。
そう思うと、入道達のこれからの動きが見ものだわ、とい不敵に微笑む瑠璃だった。

そうこうしている内に、荒々しい馬の音が聞こえてきた。
小坊主は、おそらく時々やってくる観如の知り合いだろうと言う。
左馬頭ではないかと瑠璃は直感した。
観照が東宮に呼び出されたことで今回の計画が破綻したので、次の手を打ちに観如のところにやって来たに違いない。

瑠璃は小坊主を半ばおどして、観如の部屋の在り処を聞き出した。
観如と左馬頭の話をこっそり聞きだし、そしてさっさと逃げ出そうと考えたのだ。
体を軽くするために、十二単は脱ぎ捨てて、小袖袴姿になる。
きりりと髪を結って、あの夜のように、床下に潜りこむその姿はとても高彬には見せられないが、
これもすべて高彬との新婚生活のためなのだ。がんばるぞっと床下に潜む瑠璃だった。

373 :粗筋中将2/3 :2007/06/27(水) 22:01:32 ID:???
ぼそぼそと、頭の上で声が聞こえる。
この上だ!声の主は観如と左馬頭で間違いない!
どうやら二人は、この計画が漏れたのはあなたのせいだ、とお互いに罵りあっているようだ。
そもそも入道達は東宮を、観如は観照を除きたいがために手を組んだようだ。
このことがバレれば身の破滅なのに、なぜわざわざ自分の首を絞めるようなことをするものかと観如は言う。
ではいったいどこから情報が漏れたのか?
左馬頭曰く、東宮は今朝突然、左馬頭や右代弁など、この計画に加担した者達を召して
東宮妃公子女御のために楽を奏でるよう命じたという。
みなが青ざめて楽を奏していると、次に東宮は、歌が欲しい、みなで一首ずつ連書してはどうかと言い出した。
我等の陰謀がばれていないわけがない…!!

やがて、観照がやって来て東宮は別室に籠もったが、その間も楽をやめてはならぬと言い残した。
左馬頭だけはなんとかして抜け出して来たが、作戦の通り
靫負庁に「法珠寺に東宮からの使者が来ていて、よからぬことを考えているらしい」という内容の投げ文をするどころではなかったようだ。

一連の会話を聞いて、瑠璃はにんまりした。
自分の読みはマトを射ていたわけだ。危険を冒してまで連書を手に入れたかいがあった。
昨日鷹男にあの連書を渡せたことで、間一髪東宮は助かったのだ。
そうとわかれば長居は無用、さっさと逃げ出そうと動き出そうとする瑠璃に再び聞き捨てならぬ話が聞こえた。

374 :粗筋中将3/3 :2007/06/27(水) 22:03:14 ID:???
「しかし、東宮さまがすべてをご存じだったなどとはどうしても解せない」
だが、歌の連書は燃え、偽の書状はこちらの手の内にある。
その書状さえ始末してしまえば、陰謀の証拠は一切なくなる。そのためには…
「あの女房を殺そう」
(えっ!?あの女房って…あたしのこと―っ!?)
突然のことに驚く瑠璃に、二人は恐ろしい計画を続ける。
瑠璃を女盗賊の頭目に仕立て、法珠寺に伝わる金の弥勒菩薩像を狙って、
観如に東宮の使者だと偽って寺に入ったことがバレ、手向かってきたのでやむなく斬ったということに―
「それはよい!都では夜盗騒ぎもあった折、信憑性もある」
「では、斬ってもらえますかな、左馬頭殿。わたしは仮にも僧籍にある身。よもや殺生などと…」
(人殺しの計画を立てといて何が僧籍だ バカッ!!)

そこへ、小坊主が慌ててやって来た。
「御使者さまが姿を消してしまわれたのです!」
散らばった衣はせめて片付けておけばよかったと後悔する瑠璃だったが、頭上では、観如が小坊主(ちんねんさん)に告げていた。
あの女は東宮の御使者ではなく、盗賊だ、寺中をくまなく捜して捕らえるのだ、と。
ついに瑠璃の正体も怪しまれることとなった。
観如は、あの女は東宮の密使だったのかもしれぬ、と推測した。
瑠璃は夕べの宴席で観照の名を聞いている。巻紙の歌さえ見ている。名を覚え、東宮に知らせることくらいわけないだろう―

そして左馬頭は、決意した。
「わかった、あの女を斬ろう」

(絶体絶命だわ…!!)

門を固められている以上、この邸から逃げ出すのは無理だ。かと言ってこのままではきっと見つかり殺される。
どうやってここから逃げ出せばいいのか…!

375 :マロン名無しさん :2007/06/27(水) 22:13:14 ID:???
盗み聞きとかしてないでさっさと逃げなきゃ〜

376 :マロン名無しさん :2007/06/27(水) 22:28:09 ID:???
瑠璃逃げてー超逃げてー

377 :マロン名無しさん :2007/06/27(水) 22:31:25 ID:???
鷹男は何してるんだ?
助けに来いよ

378 :マロン名無しさん :2007/06/27(水) 22:49:31 ID:???
高彬!瑠璃を助けに来いよ!!

まじで、東宮の命令で寺に捜査隊が来て、その中には高彬がいて瑠璃救出。
ってわけにはいかないかな?


379 :マロン名無しさん :2007/06/27(水) 23:15:25 ID:dakFLxe5
ちんねんさん、高彬を呼んできて〜。
高彬って警護担当の衛門佐なんだからこういう時が出番だ!

380 :マロン名無しさん :2007/06/28(木) 01:04:41 ID:???
いや、高彬来るだろう。ここで鷹男が来ちゃったりしたら
そっちにフラグが立ってしまう。確実に高彬だな
そして瑠璃のとんでもない姿にビックリ

381 :マロン名無しさん :2007/06/28(木) 01:07:16 ID:???
そうなったら、二の姫邸侵入時の高彬の驚き再びだなw

382 :マロン名無しさん :2007/06/28(木) 08:04:37 ID:???
そのうち白髪が出てくるんじゃないか

383 :マロン名無しさん :2007/06/28(木) 08:14:27 ID:???
そのうちこの姫さんは超絶的な戦闘能力を持ちそうな気がする

384 :マロン名無しさん :2007/06/28(木) 10:31:36 ID:???
>>383
瑠璃はパルプンテをおぼえた

385 :マロン名無しさん :2007/06/28(木) 17:11:45 ID:???
>僧籍の癖に人殺し計画

なんつー的確な指摘

386 :マロン名無しさん :2007/06/28(木) 18:51:13 ID:???
流石に十二単では動けないね

387 :粗筋中将1/4 :2007/06/28(木) 22:00:24 ID:???
外はざわざわと騒がしく、早くも寺の者達が瑠璃を探し出しているようだ。
こうなれば、余計なことをせずさっさと逃げれば良かったと思う瑠璃だが、後の祭りである。
(だいたい東宮が悪いのよ!)
観照だけ呼び出せばいいものを、左馬頭や右大弁まで呼び出すもんだから、
妙な警戒心を持たれてあたしがこんな目に遭うのだと、八つ当たりする。
高彬はきっと、瑠璃がこんなに怖い思いをしているのに、なぁーんにも知らないで梨壺の警固をしているのだろう。
瑠璃が涙ぐんでいると、近くから捜査の声が聞こえた。床下まで捜せ、と。

冗談!!と瑠璃はざかざか床下を動き出す。
その時、ふにっと足下に妙な感触があった。おそるおそる見てみると…

「キャアアアアアッ!!」

猫の死骸に驚いて、思わず瑠璃は叫んでしまった。
叫び声を聞きつけて、人が集まる声がする。
こうなれば、ここから一番近い西門まで突っ走ってやるっ!!
意を決して瑠璃は床下から飛び出した。

「おっいたぞ、あそこだ!」「待てっ女!!」
わらわらとやって来る追っ手から必死に逃げながら、瑠璃は思うのだった。

(あたし もうぜったいこんなことはしないわっ
 鷹男に頼まれたってぜったいやらない。もうスリルとサスペンスなんかたくさんよ
 今度こそまともなふつーの姫になるんだから―――――っ!!)


388 :粗筋中将2/4 :2007/06/28(木) 22:01:39 ID:???
「待てっ!!」
瑠璃の行く手を塞いだのは、左馬頭だった。抜いた刀を手に瑠璃を睨んでいる。
覚悟しろ、と刀を向ける左馬頭に瑠璃は立ち向かう。
「あたしを殺したってムダよ、左馬頭。すでに東宮はおまえ達の陰謀のすべてをご存知なんだもの!」
どういうことだ、と瑠璃の胸倉を掴み詰め寄る左馬頭に瑠璃は続ける。
東宮はとっくに入道達の陰謀に気付いている、あたしの他にも入道の所に潜り込んでいる人間はたくさんいる―
「まさか…あの昼寝ばかりしているボンクラの東宮が…」愕然とする左馬頭だったが、
東宮は、悪いのは入道一人だと思っているので、あたしが「左馬頭は脅されて陰謀に協力していた」って言えば…
この瑠璃の提案に、「ほんとうかっそう東宮に取り成して下さるか!!」
左馬頭はゲンキンにも喜び掴んだ手を離す。
「もちろん   言うわけないだろっバカッ!!」

左馬頭を蹴り、体当たりし、腕に噛み付いて、瑠璃は左馬頭から逃げ出した。
左馬頭から奪った刀を振り回して、追う小姓たちの間をすり抜けて行く。
やっと西門が見えてきた!もう一息…

ヒュッ
瑠璃の顔すれすれに矢が飛んできた。放った主は、観如…!
「どうした女。もう逃げぬのか」
そう言い、追い詰められた瑠璃に弓を向ける。思わずきつく目を瞑ってしまう瑠璃。
だめだ、殺されるっ!!

ドッ…
「観如さまっ!?」「何者の仕業だ!観如さま!!」
目を開けた瑠璃は、そこに倒れている観如を見止める。
矢を射掛けられたのは瑠璃のほうなのに、どうして観如が倒れているのか…
そこに、荒々しくも力強い馬の音が聞こえた。
音のほうを振り返った瑠璃は、馬上の人物を認め、思わず叫ばずにはいられなかった。
「鷹男―――――っ!!」

389 :粗筋中将3/4 :2007/06/28(木) 22:02:56 ID:???
「姫っ!!」
馬上の鷹男は、瑠璃をふわりと抱き上げた。
「よかった!ご無事だったのですね、瑠璃姫…!」
その声に、瑠璃は張り詰めていたものが切れ、鷹男の胸にぎゅっとしがみつき、声を上げて泣き出した。
「もうやだっ!こんなこわいとこもうやだあ!
 鷹男と帰る!鷹男と一緒に帰るう―――っ!!」
胸の中で泣き止まない瑠璃をぎゅっと抱き寄せ、許してくれと鷹男は言った。

「早く解決したいばかりに観照殿を召したわたしが浅はかだったのです。
 観照を取り調べたところ、観照は今日わたしの使者が書状を持って法珠寺へ参るというではありませんか。
 覚えもないことから妙に胸騒ぎがして、あわてて梨壺を抜け出したのです。
 けれど本当に、間にあってよかった…!」

(え?観照を召して…わたしの使者って…え?え?)

390 :粗筋中将4/4 :2007/06/28(木) 22:04:34 ID:???
鷹男の言葉に瑠璃が戸惑っているところへ、左馬頭が僧侶、小姓を引き連れてやって来た。
馬上の鷹男に強気におどしをかける。
この法珠寺に馬で乱入するとは不埒な奴だ、東宮の建立された寺と知っての所業か…

「 痴 れ 者 ! 」

鷹男の一喝にみな一瞬にしてひるんだ。鷹男は続ける。

「左馬頭、わたしを見忘れたか!
 おまえふぜいにはそう何度も目通りを許しておらぬから知らぬも道理。だが、声くらいはわかろう」

そう言われた左馬頭ははっとし、その場に座り込み、うなだれるように頭を下げた。
次に鷹男は僧侶たちに告げた。

「徳の高い観照殿の弟子ながら情ない者どもだ。ものの善悪の区別もつかぬのか。
 度重なる法会で、わたしの顔を見覚えている者もおろう!」

あ…っ!と声を漏らした僧侶たちは、ばらばらと崩れるように膝をつき、こう言った。
「東宮…宗平親王さま…!!」

 え―――――っ!!

「う、うそっ!だってだって…東宮なんてひとっことも…」
あまりのことに、瑠璃はパニックになったが、鷹男は、苦笑いするのみだった。

その表情に瑠璃は全てを悟り、ふっと気が抜け、そのままかっくりと意識を失ってしまった。
遠のく意識の中、「姫?どうなさったんです、姫っ!!」と鷹男が心配する声が聞こえる。

(この鷹男が東宮その人だったなんて―――)

391 :マロン名無しさん :2007/06/28(木) 22:08:17 ID:???
              _
            / /|) 恋愛フラグは高彬じゃなかったんですか…
            | ̄|    東宮て…高彬敵わないよ高彬
           / /


392 :マロン名無しさん :2007/06/28(木) 22:09:04 ID:???
( ゚д゚)

(つд⊂)ゴシゴシ

(;゚д゚)

(つд⊂)ゴシゴシ
  _, ._
(;゚ Д゚)


工エエェェ(´д`)ェェエエ工

393 :マロン名無しさん :2007/06/28(木) 22:14:03 ID:???
なにこの暴れん坊東宮

394 :マロン名無しさん :2007/06/28(木) 22:58:44 ID:???
>>393
誰がウマいキャッチフレーズを言えとry

395 :マロン名無しさん :2007/06/28(木) 23:03:49 ID:???
頭が高い、控えおろう

396 :マロン名無しさん :2007/06/28(木) 23:39:02 ID:???
なんで漫画やアニメに出てくる天皇家の人物は美男美女ばかりなんだ
現実の天皇(ry

397 :マロン名無しさん :2007/06/29(金) 00:13:52 ID:???
>フツーの姫になる

無理でしょ。むしろ瑠璃は女御に(ry

……高彬が…

398 :マロン名無しさん :2007/06/29(金) 00:40:13 ID:???
高彬オワタ\(^O^)/


orz

399 :マロン名無しさん :2007/06/29(金) 01:03:00 ID:???
当て馬は高彬のほうだったのか…
あれだけ大騒ぎして…

400 :マロン名無しさん :2007/06/29(金) 02:08:06 ID:???
高彬、当て馬どころかこのまま出番を減らry

401 :マロン名無しさん :2007/06/29(金) 07:49:16 ID:???
高彬カワイソス

といいつつ、暴れん坊東宮にときめいてしまった
鷹男かっこいいよ鷹男

402 :マロン名無しさん :2007/06/29(金) 09:27:55 ID:???
……あぁ…高彬【追悼】

403 :マロン名無しさん :2007/06/29(金) 11:29:29 ID:???
【散りゆく花】高彬フラグに騙された人の数【当て馬】(456)λ.........

404 :マロン名無しさん :2007/06/29(金) 21:47:35 ID:???
もしかして高彬はくっついた2人にお仕えして見せ付けられ続けるのか?
カワイソス

405 :粗筋中将1/4 :2007/06/29(金) 22:00:46 ID:???
四月 三条邸―――
さわさわと風にそよぐ新緑を眺め、簀の子にころんと転がった瑠璃は、しみじみ思うのだった。
(平和だなぁ………)

あの法珠寺での騒ぎのあと、瑠璃はとりあえず藤宮の二条堀川邸に連れられた。
しかし、
「やだぁーっもうやだやだ〜ーっこんなコワイのもういい――っ!!家へ帰りたいよぉ――っ 帰るぅ―――っっ」
と取り乱す瑠璃は翌日には三条邸に帰って来たのだった。
帰ったあとも放心状態の瑠璃に、父も小萩も様子がおかしいと心配したようだが、
きっとまだ病が癒えていないのだ、と、藤宮邸で病になった設定がここでも功を奏し、詮索されずに済んでいた。

小萩が、そろそろ仕度をしないと、と瑠璃に声をかけた。
実は今日は、藤宮が瑠璃を見舞いに三条邸にやって来るのだ!
あの夜、瑠璃があまりに怯えて泣きじゃくっていたものだから、
よほど恐ろしい目にあったに違いないととても心配し、吉日の今日を選んでわざわざ来てくれことになった。
「瑠璃さま付きの女御として自慢できる唯一のことですわっ!なんて晴れがましいんでしょう!!」
と小萩は浮かれている。
小萩だけではない、父大納言も、前の帝の第八皇女さまが訪ね来るとなって、朝から仕度に大わらわだ。
融ともなると、舞い上がりすぎて、鼻血を出して寝込んでしまったくらいだ。
かくいう瑠璃も、久しぶりに藤宮に会えるこの日を、楽しみにしているのだ。

406 :粗筋中将2/4 :2007/06/29(金) 22:02:20 ID:???
「瑠璃さまを拝見して、わたくしやっと安心いたしましたわ」
相変わらず艶やかに微笑む藤宮が瑠璃の前にいた。
手紙だけでは心もとなく、心配していたと、藤宮は述べたあと、瑠璃に聞いた。
「東宮からはその後、何か?」
あれから、東宮の名を伏せた非公式な形での事後報告の文が何度か送られていた。
その文を見るにつけ、本当に大変な事件だったのだとつくづく瑠璃は思う。

鷹男がわざわざ偽りの姿で行動していたのは、この事件を極秘のうちに処理するつもりだったからだ。
しかし、思わぬ者の裏切りや、手の込んだ悪辣な陰謀、加えて、瑠璃を殺そうとしたことも許しがたく、
すべてを明らかにして、厳罰に処すことになった。

陰謀の筆頭であった大海入道は、すでに出家していることもあり、都を追われるというだけで済んだが、
入道の罪を知った正良親王は世をはかなみ、一人密かに出家した。
入道にとってはそのことの方が大打撲で、今や重病の床に臥しているらしい。
左馬頭始め陰謀加担者は、偽の書状に書かれた帝呪詛云々が謀反と同罪と見なされ、
ある者は隠岐へ、ある者は佐渡へ流されるのだという。
だから今、宮廷では、罪人の護送や流刑地の確認などの事務処理で大忙しなのだ。
…例によって高彬も。

407 :粗筋中将3/4 :2007/06/29(金) 22:03:27 ID:???
藤宮は言う。今、都ではいったい誰がこうまでして詳しく調べ、証拠となった書状を手に入れたのかと噂しているのだと。
「殿方であれば、たいそうな出世ですのにね。瑠璃さま」

「それなら鷹男が出世するといいんだわ!
 同じように危険をくぐり抜けて来たあたしにまで、こんな重大なことを隠しておくなんてあんまりですもの!!」
ぷいっと横を向く瑠璃だった。
瑠璃は怒っているのだ。確かに、気付かなかった自分も鈍くさい。
偽の書状の文字は、鷹男の手蹟を真似たものだったから、見たことがあるのは当然なのだが…
(けど、どこの世界に雑色にまで身をやつして駆け回る東宮がいるってゆーのよっ!!)
瑠璃の怒りを察し、藤宮はなだめようと声をかける。
藤宮も、危険なことはするなと何度も止めたのだが、
東宮は小さい頃から活発で、こうと決めたら決してひかない。強引で、困っているのだ、と。
藤宮は、東宮に甘いとため息をつく瑠璃に、藤宮は続けた。
早くに母を亡くした藤宮が頼る者のない宮廷での淋しい生活を送っていたところを、東宮だけが何かと花や文で慰めてくれたのだと。
兄とも弟とも思っている東宮の頼みに、とても嫌とは言えないのだった。

藤宮の気持ちもわからないではなかった。ただ、問題は鷹男の東宮だ。
藤宮が甘いのをいいことに、二条堀川邸を根城にし、
梨壺には、自分と背格好のよく似た帯刀を替え玉において、夜毎御所を駆け回っていたというからあきれてしまう。
瑠璃があんな危険なことに首を突っ込むハメになったのも、そもそもは東宮のお忍びが原因なのだ。
しかし、何も知らず偽の東宮を守っていた高彬もよく考えると情けない。

408 :粗筋中将4/4 :2007/06/29(金) 22:05:08 ID:???
ぶつぶつ考えている瑠璃に、藤宮はおもむろに話しかけた。
あえて鷹男と呼ぶが、その鷹男が瑠璃に頼みごとがあるというのだ。
それは、鷹男は今まで何度も瑠璃に文を贈っているのに、一向に返事がないと残念がっている、
せめて一度なりとも返事を…ともに命を賭して働いた者同士、情をかけてくれはしまいか、というものである。
鷹男の文は事件の報告書のようなものだと思っていた瑠璃に、藤宮は率直に言った。
「鷹男は姫がお好きなのですわ」

藤宮も、東宮の姉として妹として、正式な叔母としても、
勇敢で、行動力があって、優しい瑠璃ほど、東宮にふさわしい姫はいないと思っている。
身分からみても、瑠璃は何の不都合もない…
話の雲行きが怪しくなってきたのを感じ取り、瑠璃は言葉を遮った。
「あたし…もちろん鷹男のことは嫌いじゃありませんわ。少しはトキメイたりもしちゃったし…
 でも、あたしには高彬がいるんです!」
もしも鷹男が普通の貴族で独身で、高彬と競ってでもというのなら、鷹男の求婚を考えたかもしれない。
けれど、やはり鷹男は東宮なのだ。
今だって鷹男には、高彬の姉の公子姫がいるし、やがて即位すれば、さらに多くの姫が入内するだろう。
その中の一人になるのは嫌だ。
ただの衛門佐の高彬だが、妻は瑠璃ひとりだと言ってくれる、
そんな高彬が好きなのだ…

「それに…延び延びになってた……のが、今夜だし…」赤面しながら瑠璃は言った。
つられて赤くなる藤宮に、あまり長引くのもよくないということで、一回だけでも事実上の結婚をしておこう、と
今夜「その日」なのだと伝えた。

「だいたいですね藤宮さま、あんなお忍び好きな東宮とあたしみたいな姫がくっついたら、何をしでかすかわかりませんわ。
 あたしみたいな跳ねっかえりには、高彬くらいの人がちょーどいいんです!!」

きっぱり言う瑠璃は、今更鷹男が何を言おうと決心はぐらつかないようだった。

(今夜こそ高彬と………なんだからねっ!!)

409 :おまけ中将 :2007/06/29(金) 22:06:22 ID:???
帯刀(たちはき)…太刀を帯びて東宮を護衛する役人

410 :マロン名無しさん :2007/06/29(金) 22:08:43 ID:???
確かに瑠璃と鷹男じゃ高級が大変なことになりそうだわなw
高彬良かったねー

411 :マロン名無しさん :2007/06/29(金) 22:09:25 ID:???
鷹男…ほんとに東宮なのかよww
周りの人が大変だなー

そして藤宮さまと鷹男は単なる家族愛だったのね。
ついでに
>「鷹男の身にもしものことがあったら、わたくしきっと生きてはいられませんわ…」
っていうのは、東宮に傷でもつけたら立場的にやばいって意味もあったのかな?



412 :マロン名無しさん :2007/06/29(金) 22:20:35 ID:???
>>411
>東宮に傷でもつけたら立場的にやばいって意味もあったのかな?

「良き理解者で心打ち解ける人がいなくなる」って意味かなと自分はおもたよ。

違う人を護衛してた何も知らない高彬の絵がシュールww

413 :マロン名無しさん :2007/06/29(金) 23:19:47 ID:???
瑠璃様付き女房として「唯一」自慢できるってw小萩も苦労してるな。
瑠璃は結構自分をわかってるんだ。
鷹男相手じゃ臣下の苦労が二倍だよ。
瑠璃が大泣きしたとき結構かわいいと思った。

414 :マロン名無しさん :2007/06/29(金) 23:24:41 ID:???
東宮を袖にして高彬を選んだともなれば高彬も報われるのう
ただクソ真面目だから、東宮相手なら涙を呑んで身を引きます。とか馬鹿言い出しそうで心配

415 :マロン名無しさん :2007/06/29(金) 23:34:38 ID:???
鼻血ブーな融が呑気すぎるw

416 :マロン名無しさん :2007/06/29(金) 23:38:03 ID:???
殿方なら出世も思うままって…やっぱ高彬立場ねーわ
コケンに関わる

417 :マロン名無しさん :2007/06/30(土) 00:39:08 ID:???
たてわきと思ってた
貴人とは御簾越し対話だからこそ
ばれんのだな
追放より正良廃太子が大打撃な入道、
哀れな奴

418 :マロン名無しさん :2007/06/30(土) 00:41:26 ID:???
東宮クラスでも恋はまず文からなんだ。
東宮だからこそか。
権力に物言わされたらツラいが鷹男は
んな真似はしないと信じたい。

419 :マロン名無しさん :2007/06/30(土) 05:38:16 ID:???
> ただの衛門佐の高彬だが

ちょww
鷹男とラブラブじゃん、と思いながら読んだが瑠璃が現実的で良かったな高彬w
でも高彬は蚊帳の外ってかんじでやっぱりカワイソス。

420 :マロン名無しさん :2007/06/30(土) 15:58:10 ID:???
今夜もまた何か邪魔が入るに1000ゼニー

421 :マロン名無しさん :2007/06/30(土) 16:27:50 ID:???
高彬と華燭の典>>>>>国家をゆるがせる陰謀、東宮妃の地位

な瑠璃は何気にスゴス
まさか最終回までゴールインできないんだろうか

422 :マロン名無しさん :2007/06/30(土) 16:38:31 ID:???
この漫画、10数年以上前に終わってて再開されるなんて考えてなかったから、
漫画版の高彬と瑠璃姫は11巻でハッピーエンドを迎えたと納得してたので
連載再開は嬉しいけど複雑だったな…

いや、今更だけど

423 :マロン名無しさん :2007/06/30(土) 16:50:46 ID:???
>>422
>>1


424 :マロン名無しさん :2007/06/30(土) 18:20:41 ID:???
>>421
確かにw>国家を揺るがせる陰謀よりも目の前の初夜
でもそんな瑠璃姫が好きだ

425 :マロン名無しさん :2007/06/30(土) 18:39:05 ID:???
ウム、三度目の初夜だからな
三度目の正直か
二度あることは三度あるか

426 :マロン名無しさん :2007/06/30(土) 18:49:53 ID:???
二度あることは三度ある、に一票
鷹男がこのまま引き下がるとは思えないんだよなー
負けるなよ、高彬

でも私なら鷹男を選ぶ

427 :マロン名無しさん :2007/06/30(土) 18:50:37 ID:???
瑠璃パパンが「今度は遂げたかっ!」と飛び込んでくるに1ユーロ

428 :マロン名無しさん :2007/06/30(土) 19:45:53 ID:???
ちょ、パパンw
瑠璃のお父さんは、浮気性だったり娘の夜這いを手引きしたりと
割とどうしようもない人なのに(平安時代は普通なのかもしれないが)
何か憎めない人だわ

429 :粗筋中将1/3 :2007/06/30(土) 22:00:39 ID:???
瑠璃はイライラしていた。とても今夜初夜を迎える新妻とは思えない表情である。
しかし、肝心の夫が子の刻になってもまだやって来ないのだから、その気持ちはわかる。
藤宮も、気をきかせて夕方には帰ったというのに、
瑠璃だって、やっと迎えられる「今日」に、気分を盛り上げて迎えようと思っていたのに、
「こんなに遅くなられちゃどんな用があろうと許せるもんですか!あたしと用事とどちらが大切だってのよ、高彬のアホタレッ!!」
小萩相手に憂さを晴らしていた。

そこに、ようやく高彬が到着したと知らせが入る。
待たされた身としてはいくら謝られようがすぐには許せない、と思う瑠璃だが、部屋にやって来た高彬を見て、その考えは一転。
「どうしたの?そんなにやつれちゃって…まさか病気なのに無理して来たんじゃないでしょうね!?」
そう、久々に瑠璃の前に現れた高彬は、すっかり面やつれしていたのである。
ただ疲れてるだけだと瑠璃を安心させる高彬だが、
どうやら、入道事件の事後処理がすべて自分の元に回って来ていて、休む間がないようなのだ。
しかもそれは全て東宮直々の指図によるもので、他の者に任せるわけにはいかない。
今日も、仕事を終えて帰ろうとした所、東宮から書類の不備を叱られ、
同僚が気をきかせて代わってくれなけえれば、今もまだ書類をめくっていたのだろう、と高彬は言う。
「ぼく、東宮の御不興を蒙る覚えはないんだけど……」

すっかりしょげている高彬だが、心当たりがないのは当然だ。なぜならそれは
(単なる東宮のヤキモチですもの!)
青くなる瑠璃だが、とてもそんなことは言えない。
言えば、今回の事件に東宮と瑠璃が関わっていたことまで話さなければならない。
ただでさえ高彬は、今回の事件に自分が関われなかったことをひどく気にしていて、
東宮の信頼を得ていたと自負しているがゆえに、とても悔しがっていたのだ。
陰謀をつきとめたのが瑠璃と東宮本人だったなんて知れば、騙されて梨壺に足止めされてただけに高彬はショックを受けてしまうだろう。
だから、本当のことが話せない以上、瑠璃ができるのは、やさしくしてあげることくらいだろう。
「こっち、おいでよ。仕事のグチでも何でも聞いてあげる。ね?」
そう言った瑠璃は高彬の手を引き、御簾の中へと入っていった。

430 :粗筋中将2/3 :2007/06/30(土) 22:01:59 ID:???
瑠璃の優しい言葉に高彬は癒され、雰囲気はいよいよ盛り上がった。
融はこの前みたいなことがないよう部屋に閉じ込もり習字の練習をしているし、
父もやっとここまでこぎつけたのだから邪魔が入らないよう気を遣っている。
過去二度も初夜が流れているが今夜こそ大丈夫…
二人は目を閉じ、接吻を――

「るっ 瑠璃さまぁあ―――ッ!!」

一大事だ、とバタバタ小萩が駆けてくる声が聞こえる。
(どーしていつもいつも い っ つ も !! こーゆー展開になるんだっっ!!)
怒り心頭の瑠璃にもとに、小萩が息を切らせてやってきて、一大事だ、とにかくこれを見てくれと。
瑠璃の前に差し出されたのは、枝に結ばれた一通の文だった。
こんな夜に文を寄越すようなバカはどこの誰だ、これがいったいどうしたのかと切り捨てる瑠璃に小萩は蒼白になって言った。
「畏れ多くも東宮さまよりの御文ですのよっ!!」
その意外な差出人に、高彬も母屋から飛び出して来た。

 夢路だに きみに通へる ものならば
       うつつに見んと  思わざらまし
(夢であなたに会えるのならば、現実にあなたに会いたいと思いません
 けれど夢に見ることもできないので、こんなにもあなたへの思いが募ってしまいます)

おそらく鷹男は藤宮に今夜のことを聞いたのだろう。
だからといって、よりによってこんな夜にこんな歌を贈ってくるとは…
照れと怒りに震えていると、後ろから青ざめた高彬が、いったいどういうことなのだと聞いてきた。
瑠璃は、何かの間違いではと誤魔化すが、東宮の側に控えている高彬にそれは通用しなかった。
間違いなく東宮からの直筆で、しかも恋の歌といえば、求婚の意味にほかならない。

431 :粗筋中将3/3 :2007/06/30(土) 22:03:15 ID:???
「どうして東宮が瑠璃さんに 瑠璃さんに…」
真っ青になってうなだれる高彬に、こんな文は気にしなくて良いとなんとかとりなそうとする瑠璃だったが、
そこに父大納言まで息を切らせてやってきた。
「そういう問題ではないぞ瑠璃ッ!!これはわが大納言家の浮沈に関わることなのだぞ!」
父は決して大げさなことを言っているわけではなかった。
畏れ多くも次代の帝さまから求婚されたとなると、ことは個人の問題ではなくなるのだ。
正式に東宮から、瑠璃を妃にと申し込みがあれば、身分も充分つり合う瑠璃は断れるわけがない。
なぜ断れないのか、この文をムシして今夜高彬と結婚してしまえば東宮だってきっとあきらめる、と主張する瑠璃。
しかし、事実上まだ夫婦にはなっていないし、露顕もしていないから世間的にも知られていない。
東宮からこのようなお歌が来た以上、二人の結婚を認めるわけにはいかない、と言う父に高彬も同じ気持ちのようだ。
万一瑠璃が入内し皇子誕生ともなれば、苦労が増えるばかりだ、東宮の悪戯心であればいいが、
と頭を抱え、父大納言は自室に戻っていった。
思いがけず出た「入内」の言葉に、なぜそこまで話が大きくなるのかと驚いている瑠璃が振り返ると、
高彬は帰る仕度をしている。
事態がこうなった以上、下手をすれば東宮の想い人に通う不埒者と見られるから、帰るしかないのだ。
最後に、この歌の調子だと初めてではなさそうだが、東宮と文を交わしていたのか、と高彬は尋ねた。
高彬が心配するようなことは何もないが、東宮とは文を交わすどころか抱き合ったりもした仲だ。
何も答えられず、瑠璃は黙っているしかなかった。
「女の人って、知らないところで何をやってるかわかったもんじゃないね。よくわかったよ」
そう言いため息をついて、高彬は帰ってしまった。

三度目の初夜が流れてしまった。
しかも、高彬にあらぬ誤解までされて。
それもこれもみんな鷹男が悪いのだ。鷹男なんか知るもんか、と文をぐしゃっと握りつぶし、
こうなったら高彬に今までのことを全部話してやると決意する瑠璃だった。
はたして瑠璃は、高彬と初夜を迎えることが出来るのだろうか…

432 :おまけ中将 :2007/06/30(土) 22:04:17 ID:???
子の刻(ねのこく)…午前0時頃
入内(じゅだい)…「内」は内裏の意。皇后・中宮・女御となる女性が正式に宮中に入ること。

433 :マロン名無しさん :2007/06/30(土) 22:34:58 ID:???
やっぱりか…やっぱり流れちゃったか初夜…


434 :マロン名無しさん :2007/06/30(土) 22:35:43 ID:???
      _ _  ξ
    (´   `ヽ、     __       高彬…モウダメポ・・・
  ⊂,_と(    )⊃  (__()、;.o:。
                  ゚*・:.。


435 :マロン名無しさん :2007/06/30(土) 22:38:54 ID:???
おのれ東宮め・・・

436 :マロン名無しさん :2007/06/30(土) 22:42:20 ID:???
高彬かわいそすぎ
鷹男、大人気ないなあ

つーか、瑠璃が怒りに任せて後宮に殴り込みかけそうで怖い

437 :マロン名無しさん :2007/06/30(土) 22:57:40 ID:???
かわいそすぎて泣きそうなんですがー。

立場的に高彬は身をひくしかないじゃないか!
鷹男ひどいよ鷹男。

438 :マロン名無しさん :2007/06/30(土) 23:08:35 ID:???
こういうやり方って逆効果だと思うんだけどなあ。
瑠璃が腹立てて鷹男のこと嫌いになりそうなもんなのに。

439 :マロン名無しさん :2007/06/30(土) 23:50:23 ID:???
やっぱり帝王気質ってことですよ。欲しいものは意地でも手に入れる
でも瑠璃には効かないけどな。むしろ次の日の朝に文を送れば良かったのに

440 :マロン名無しさん :2007/07/01(日) 00:06:40 ID:???
______
|←後宮|
. ̄.|| ̄     オワタ┗(^o^ )┓三
  ||           ┏┗   三
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

441 :マロン名無しさん :2007/07/01(日) 00:14:46 ID:???
>>440
ちょwwそんな軽快にwwww

442 :マロン名無しさん :2007/07/01(日) 01:13:54 ID:???
鷹男って結構陰険だったんだ…高彬にパワハラとかこのタイミングで文とか。
藤宮様はあきらめさせるつもりで初夜のこと鷹男に言ったのかな。
高彬、おちこむだろーな全部聞いたら。

443 :マロン名無しさん :2007/07/01(日) 01:17:43 ID:???
女の人って知らないところで何をやってるかわかったもんじゃない

確かに知らないところでかなりいろいろやりました。でも高彬と結婚のためなんです。高彬の想像とは違うんです。
下着に近い姿で抱き合ったのは不可抗力です。

444 :マロン名無しさん :2007/07/01(日) 01:18:50 ID:???
高彬の男の器が、瑠璃への思いが、今、試される―待て次号!!

445 :マロン名無しさん :2007/07/01(日) 02:40:02 ID:???
鷹男は瑠璃の命の恩人でもあるんだよな……ちゅー寸止めとかまじですか。
小萩に事情全部話しとけば、
小萩が空気読んで、既成事実成立後に鷹男の文だったり…しないか。

446 :マロン名無しさん :2007/07/01(日) 02:41:21 ID:???
瑠璃、ここは藤宮様に頼るんだ!
ばしっと鷹男を振るんだ!

447 :マロン名無しさん :2007/07/01(日) 02:43:11 ID:???
朧月夜状態になりそうな瑠璃とか見たくねー

448 :マロン名無しさん :2007/07/01(日) 03:04:34 ID:???
でもこれで拒んだら瑠璃パパの首もとぶっしょ?

449 :マロン名無しさん :2007/07/01(日) 08:00:15 ID:???
いいんじゃない?あのパパンだもの。

450 :マロン名無しさん :2007/07/01(日) 12:41:29 ID:???
正直それは嫌だなー
しかし瑠璃がどんな突飛な行動を取るか期待

451 :マロン名無しさん :2007/07/01(日) 13:18:38 ID:???
家出か出家?<突飛な行動
瑠璃なら「ざ・ちぇんじ」の綺羅同様に魚取り女にでもなって生活できそうだ

452 :マロン名無しさん :2007/07/01(日) 14:05:45 ID:???
高彬と鷹男
二人で瑠璃争奪戦を繰り広げてほしい

453 :マロン名無しさん :2007/07/01(日) 14:21:24 ID:???
鷹男に心変わりしそうになっていたことを高彬に謝りたい。
高彬ガンガレ。

しかし高彬と鷹男って名前似すぎだな。
漢字だと違うけれども。

454 :マロン名無しさん :2007/07/01(日) 17:16:03 ID:???
>>451
家出か出家ぐらいじゃもう驚かないw

455 :マロン名無しさん :2007/07/01(日) 21:28:57 ID:???
> はたして瑠璃は、高彬と初夜を迎えることが出来るのだろうか…

    ∧_∧∩ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   ( ´∀`)/< 先生!出来たときが最終回だと思うんです!
 _ / /   /   \________________
\⊂ノ ̄ ̄ ̄ ̄\ 
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456 :粗筋中将1/5 :2007/07/01(日) 23:20:17 ID:???
「……つまり…今回の入道事件を解決したのは…瑠璃さんと、
 畏れ多くも東宮だった…と、言うわけなのか…?」
しどろもどろながらもまあそういうわけだという瑠璃の答えに、高彬はずーんと肩を落とす。
あれから数日、瑠璃は高彬に入道事件の真相を全て語ったわけだが、
高彬はいっそう、先日の文が東宮の浮気心で変人と噂の瑠璃にちょっかいを出したわけではないことを実感する。
「畏れ多くも東宮におかれては瑠璃さんは命の恩人。心惹かれるのは当たり前じゃないか」
とますます青ざめる高彬。
瑠璃としては、確かにイイ男だった鷹男に心も動いたりしたが、
すでに妃もいる鷹男よりは、妻は瑠璃一人だと言ってくれてる高彬の方がずっとずっと大切なのだ。
しかし、高彬はそれ以上に深刻に考えている。
もしも東宮が瑠璃に本気なのであれば、高彬はいずれ帝となる方と瑠璃を争うことになってしまうのだ…。

しかし瑠璃は、それはとてもロマンチックなことではないか、
権力者の魔手から逃れた愛し合うふたりは、都を離れ諸国をさすらう…
そうなればどこまでも高彬についていく、とうっとりするのだった。
能天気な瑠璃とは正反対に、高彬はいたって冷静かつ大真面目だ。
いずれ帝となる方に盾つくことは、本人はもちろんその累は親戚縁者にまで及び、
過去に遡っては官位を剥奪、未来に渡っては謀反人の烙印を押される、一門の失脚にも繋がる一大事なのだ。

457 :粗筋中将2/5 :2007/07/01(日) 23:21:22 ID:???
けっして大げさに言っているわけではなく、そのいい例が今回の事件で出家した正良親王と言える。
瑠璃は、「世を儚んで出家した」の言葉を信じていたが、
たった6歳の幼い親王が何をどう判断できるのか、だから瑠璃は世間知らずなのだと高彬に指摘されてしまう。
正良親王自身が何も知らなかったにせよ、入道が幼い親王を担ぎ出して謀反を企んだ以上、罪が親王にも及ぶのは必至なのだ。
だからこそ、出家という形を取り、親王としての地位も何もかも捨てることで、下々の言葉で言うところの、命乞いをしたのだという。
そのため、罪は減じられ、戒名も涼林院とし今は蟄居の身となっている。

正良親王は、東宮も可愛がっていた弟宮だったが、あのように陰謀が表沙汰になってしまえば庇うこともできなかった。
正良親王が落飾したという知らせを受けた時は、感極まって涙を流した東宮だが、
落飾した弟宮をこれで罰しなくて済むという安堵と、
幼い身で出家せねばならなかった弟宮の運命の厳しさに、心を引き裂かれる思いだったのだ。

瑠璃は鷹男の言葉を思い出していた。
『このことが表沙汰になれば、関係のない現左大臣や縁の者にまで累が及ぶでしょう。
 それによって政治や都の乱れることは、東宮の望まれるところではありません』
(その縁の者の中には、正良親王も含まれていたんだわ…)
だから、“鷹男”の名で雑色にまで身をやつして、隠密に動き回っていたのだ。
しかし…
「なにも泣くくらいなら、東宮の一喝でそれこそ有無をいわせず弟宮を助けちゃえばよかったのにね」

「甘いっ!!」
それが出来れば東宮とて苦しまない、と高彬は一蹴する。
国が平和に治まっているのは、帝の権威が磐石に守られているからであり、帝の権威に傷がつくと、国が乱れることにもなる。
帝の敵は国にとっての敵だから、たとえ血肉の情を断ち切ってでもその罪を許してはならない。
国を安らかに治めるためにも、貴族が身を挺してでも帝を守らねばならないのだ。
右大臣家の息子として、幼い頃からそう教育されてきた高彬は、強い意志を見せる。
それがあたりまえだと思ってきた。
なのに…

458 :粗筋中将3/5 :2007/07/01(日) 23:22:53 ID:???
「なのに、そのいずれ帝におなりになる方と、女を挟んで争うなんて…」
改めて板ばさみを感じ、がっくりうなだれる高彬に、瑠璃もロマンチックに二人で逃げようなんて軽薄だった、と訂正する。
「でもどうしてそう堅苦しく考えちゃうわけ?いくら相手が東宮だからって、たがが恋愛沙汰じゃないの」
事も無げにと言ってのける瑠璃に、高彬は絶句してしまう。
いいかい、よく聞いてくれ、と瑠璃に言い聞かせるように切り出した。
もし東宮から瑠璃に正式に申し入れがあれば、
高彬が身を引いて瑠璃をあきらめるか、東宮と相争うか…
取るべき道は一つしかない、と。
争った場合は、右大臣家に累が及ぶことも覚えてていて欲しい、とつけ加えた。
もちろん、女一人を争ったところで官位どうこうまで影響はないが、
昔気質の高彬の父は出仕を控えるようになるだろうし、兄たちも、宮廷では辛い立場に立たされることになる。
貴族達の束となって帝を守りその威光を高める立場の大臣家の者が、東宮に対立するのは許されないのだ。
高彬自身も、5年でも10年でも、東宮が瑠璃を忘れるまで謹慎して待つ覚悟が必要になる。
年頃の公達の中で一番の出世頭の高彬だが、その間は出仕も控えなければならない。

「瑠璃さんを取る限り、ぼくに将来はない」

高彬のあからさま過ぎる言葉に、次は瑠璃が言葉を失った。
しかし高彬も、瑠璃があまりに事の重大さを理解してくれないから、辛いのだ。
「情に溺れれば忠ならず、忠ならずとせば情をうしなう…そこのところを、察してください…!!」
そう言い残し、高彬は、はらはらと流れる涙を拭いながら走り去った。

部屋に残され、事の重大さを改めて知る瑠璃だったが、側に控えていた小萩の泣き声で我に返る。
自分にも内緒で瑠璃が悪人と立ち混じって乱闘していたなど、小萩には胸が潰れる心地だった。
それに加え、東宮の瑠璃への想いも本物で、そうなれば高彬との縁もこれまで…
そう思うと、瑠璃がとても気の毒で、泣かずにはいられない。
なんでこうなっちゃうのか―と泣きたいのは瑠璃の方だった。

それ以来、律義者の高彬は来なくなった。もちろん文すら寄越さない。
しかし、高彬の辛い立場を知り高彬の涙を見てしまった瑠璃はやりきれない日々を過ごしていた。

459 :粗筋中将4/5 :2007/07/01(日) 23:24:41 ID:???
そうつれづれに過ごすうちに、
長く病床にあった帝がついに譲位し、鷹男の東宮が新しい帝として即位することになった。
新帝の御世になり忙しいのか、鷹男からの文はぱったり来なくなった。
瑠璃の父も、大納言から内大臣に、
高彬は、衛門佐から近衛少将に出世し、右近少将と呼ばれる身となった。

鷹男が帝に即位した今、東宮時代のように軽々しく文などを贈ってくることもないだろう。
帝となったからには国務に精進し、瑠璃のことも忘れるだろうから、
これでこの問題も解決したも同然、きっと高彬も瑠璃の元へ来れるようになる、と
少しフクザツな乙女心を感じつつ、一安心だと小萩と共に安堵していた。

しかし、それもひと月ほどのことだった。
なんと、帝からの使者が直々に瑠璃のもとへやって来たのである!!
立場上、表向きは、帝の母宮・大皇の宮(タイオウノミヤ)が、絵合わせに招待したいという内容になっているが、含みがあるのは必須。
内大臣となった父が早く、慎んでお受けするよう瑠璃をせきたてる。
鷹男の勝手さに怒った瑠璃は、小萩にいいつけた。
「あたしは持病の瘧でふせってますからと、おまえ代返をお書き」
「お前はいつから瘧が持病になったのだっ!!えっ?瑠璃っ!!」
父もう涙目。
しかし、瑠璃とてそう易々と帝の御威光とやらに頭をさげたくはない。
大事な初夜をつぶされた相手の誘いに、のこのこと出向く瑠璃ではなかった。

460 :粗筋中将5/5 :2007/07/01(日) 23:26:13 ID:???
それ以来、宮中からの帝の使者は、三日と開けずにやって来た。
断り続けてはいるものの、さすがの持久戦に瑠璃もすったりしてしまう。
父もノイローゼ気味になってしまうし、小萩も情緒不安定ですぐに泣き出すようになった。
帝の使者の命婦もこの頃は痺れを切らせ、高飛車な態度に出始めた。
(あたしだって、このままじゃいつ理性のタガがぶっちぎれるか…)

「こうも無下にされましては、 帝 の 御 威 光 も地におちてしまいますわね」
とうとう瑠璃はキレた。
ある日の命婦の、父内大臣の立場の危険さえちらつかせた態度に、ついに瑠璃は腹をくくった。
小萩に、文を書く用意をさせた。

 瀬を早み 揖子のかじ絶え ゆく舟の
       泊まりはなどか  我知りぬべき
(川の流れが早いので櫂を失くしてしまった舟。その舟がどこに流れ着くかはわたしには見当もつきません)
【鷹男が権力を振り回しているが、あたしが流れつく先は、何があったって高彬のとこなんだから!】


「小萩、これを新右近少将に届けておいで」
瑠璃の言葉に、真っ青になる小萩。
命婦はそれが瑠璃の答えだと知り、わなわな震え、きっとそう帝に伝えると言い放ち帰って行った。

瑠璃のこの態度に、内大臣の父も、今度ばかりはただでは済まないとすっかりパニックだ。
確かにやり過ぎたと瑠璃自身も反省していたが、
鷹男のやり方を許せない気持ちも強いのだ。
権力を振りかざしたやり方に、鷹男への好意もすっかり冷めてしまった瑠璃。
この先も、何があっても自分だけは権力に屈せず最後まで闘ってやる…!

と、意気込んだのは良いものの、それ以来、鷹男の帝からの使者はぱったり来なくなってしまった…。

461 :おまけ中将 :2007/07/01(日) 23:27:21 ID:???
近衛少将(このえのしょうしょう)…帝の親衛隊の中隊長のようなもの。若い坊ちゃんたちの花形官職。オスカル
瘧(おこり)…熱が出たり下がったりする、マラリア性の熱病。昔の人がよく罹った。
命婦(みょうぶ)…中(ちゅうろう)の立場。位はだいたい五位くらい。
※大皇の宮のルビは作中のものを使用※

462 :マロン名無しさん :2007/07/01(日) 23:30:30 ID:???
意外に大人の事情をしっかりと把握している高彬に胸がきゅうん…

とトキめこうとした矢先、
高彬が泣きながら猛ダッシュで逃げていったように見えたんですがあれは幻でしょうか?

463 :マロン名無しさん :2007/07/01(日) 23:32:58 ID:???
あら、以外とあっさりと高彬に喋っちゃったんだな
瑠璃のことだから、
そのままどうにかして東宮の所に殴りこみにでも行くのかと思ってたよ


464 :マロン名無しさん :2007/07/01(日) 23:41:54 ID:???
ええ〜。
少女漫画王道の三角関係展開キタコレ!かと思えば…。
すごい現実的な展開だな。
鷹男、大人気ないwじゃすませらんないよ、これじゃ。

465 :マロン名無しさん :2007/07/01(日) 23:48:22 ID:???
>>461
オスカル・・・w
高彬って凄いエリートなんだなと改めて思った


466 :マロン名無しさん :2007/07/02(月) 00:06:22 ID:???
これって嵐の前の静けさってやつだよな<帝からの使者はぱったり来なくなってしまった

467 :マロン名無しさん :2007/07/02(月) 00:17:27 ID:???
さすがに東宮だと夜這いにはこないんだね

468 :マロン名無しさん :2007/07/02(月) 00:43:07 ID:???
権力をかさにきるなんて
鷹男なんか嫌いだー!!!

469 :マロン名無しさん :2007/07/02(月) 01:28:23 ID:???
男の、しかも好きな男の涙はつらいねぇ
あーあ。瑠璃のやつやっちゃったわ

470 :マロン名無しさん :2007/07/02(月) 01:29:45 ID:???
弟宮のことでは鷹男も悩んでたんだね
そこでなぜ瑠璃に関心がいくのかわからんが

471 :マロン名無しさん :2007/07/02(月) 01:31:02 ID:???
>>467
夜這いかけても瑠璃なら蹴り倒しそう
小萩も絶対手引きしない

472 :マロン名無しさん :2007/07/02(月) 01:32:27 ID:???
パパン、内大臣昇進おめでとさん
いつまで保つか不安だが。

473 :マロン名無しさん :2007/07/02(月) 04:36:54 ID:???
パパンの方が世を儚んで、出家でもしてしまいそうな展開だな
脳天気弟キャラの融はどうしているんだか…

474 :マロン名無しさん :2007/07/02(月) 08:10:33 ID:???
融も出世したのかな
仕事してるところイマイチ想像できないな

475 :マロン名無しさん :2007/07/02(月) 08:43:24 ID:???
もう入内しちゃえ、瑠璃。
高彬のことは青春の甘酸っぱい思い出にして
帝の後宮に入って女の栄耀栄華を極めちゃえばいいじゃん。
高彬は二の姫と結婚して四方丸く収まる。
…と、鷹男びいきの自分は思うわけで。

476 :粗筋中将1/4 :2007/07/02(月) 22:07:29 ID:???
瑠璃が鷹男の帝の使者を怒らせてから6日目。以来、鷹男からは何の音沙汰もなくなってしまった。
瑠璃の父は、「ついに帝の激鱗に触れてしまった」と言い寝込んでしまうし、女房の中には、早々と次の勤め口を捜す者まで出始めた。
三条邸は毎日うつうつたる状態になってしまった。

「いっそ尼寺へでも出家してしまおうかしら!!」
空気に耐えかねた瑠璃はそう言うが、何としてでもそれを止めたい小萩はもっと前向きになって帝に返事でも出したらどうだと持ちかける。
「何よ小萩!おまえまであたしにそんなこと言うの!?おまえ父さまに袖の下でもつかまされたんじゃないの?」
つい嫌味っぽく言ってしまったが、この言葉に小萩は号泣。
あまりの泣かれ方に、瑠璃も言葉のアヤだと謝ったが、小萩は、瑠璃に疑われるのも当然だと泣き続ける
「小萩は大臣さまからも、お側近くに仕えるわたくしが姫さまを甘やかすからこんなことになるのだ、
 帝に御文のひとつなりと書かせることもできない無能な女房だと、毎日のようにお叱りを受けている役立たずですもの」
なんと、父は最近瑠璃に小言を言わなくなったと思ったら小萩に当たっていたのだ。
(あのクソ親父…)
心の中で悪態をつきつつ、小萩には、心を許せる女房だからこそつい甘えてしまったのだ、とひたすら謝った。
そもそもこんなことになったのは瑠璃がわたしに黙って恐ろしい事件に首を突っ込んだからだ、
と、あの事件を未だ根に持つ小萩は、ここは瑠璃が折れて帝に文のひとつでも贈れば良いと言う。
しかし、瑠璃は東宮から帝になってからの帝の横暴が権力を振りかざしているのが気に入くわないのだ。
そんな人間に屈するのはぜったいいや!!と瑠璃の態度も頑なだった。

そんな時、寝殿の方が騒がしくなった。もしかして、帝の使者がやって来たのでは…?

477 :粗筋中将2/4 :2007/07/02(月) 22:09:11 ID:???
意外にも、やって来たのは高彬だった。
命婦に当てた文も、どさくさに紛れて渡せなかったこともあって、実に三月、高彬とは音信が途絶えていたが…
三月ぶりの高彬との再会となった。

瑠璃の前に現れた高彬は、少将の位にあがったためか、心なしか凛々しく立派に見えた。
久々の対面にお互い照れつつ、高彬はしばらく来れなかったことを詫びた。
瑠璃は、そんなことよりも、帝大事な高彬が、きっとずい分悩んだ上でこうして会いに来てくれたことに感動していた。
「高彬…高彬がこうして来てくれて…瑠璃は、嬉しいです」
思わず口にした台詞に、言いなれていない瑠璃は照れ、言われなれていない高彬も照れてしまった。

「ぼくが今日来たのには、わけがあるんだ」
高彬は口を開いた。瑠璃は、なあに?とその続きを待った。
話は、高彬の姉君のことだった。
高彬の二番目の姉君は、女御として後宮にあがっている。
その女御の住まう梨壺を、例の事件で高彬は警固していたわけだが、
御世が変わって、今は承香殿(ジョウキョウデン)に住まいを移し、承香殿の女御と名乗っている。
その承香殿の女御が、明後日の乞功奠に女楽を催すのだという。
しかし、筝の琴をうまく弾きこなす人が見当たらないのだが…
話が進むにつれ、言葉に詰まる高彬。話が見えた瑠璃は、その先を高彬の代わりになって言ってやった。
「つまり、あたしに筝の琴を宮中に弾きに来いってわけね。
 そしてそこには、なんと帝がいらっしゃるっていう寸法なんだ…!」

478 :粗筋中将3/4 :2007/07/02(月) 22:10:52 ID:???
図星を突かれる高彬に、御簾の中から出てきた瑠璃は、情けないと思わないのか、と続ける。
こんな使いをなぜ高彬にやらせるのか…こんなことは人の上にすることではないと瑠璃は言う。
「瑠璃さん、口を慎みなさい。畏れ多くも…」
「畏れ多くも帝におかれては、って言いたいんでしょ!高彬はいつもそればっかり!!
 何よ帝なんか…」
 パ ン !!
高彬の手が瑠璃の頬を打った。

「いくら瑠璃さんでも、帝に御無礼は許されないよ…!」

瑠璃はだまり、ぷいっと横を向いた。
高彬は、理性的に聞いてくれ、と前置きをして続けた。帝は瑠璃にとても執着していると。
一度なりと会いたい、なんとしてもといつも言っており、命婦が手ぶらで帰ると荒れていらいらしているようなのだ。
「へえ!だからこうして高彬が仲人役を買って出たわけ!ほんとに帝もいい部下をもったわよね。
 その調子で出世でもなんでもしなさいよっ」
「これは帝の命令なんだ!」
必ず瑠璃を動かせときつく言われただけであって、高彬が買ってでたわけではない。
ではなぜ高彬はここでこんなことをしているのだ。
「結局高彬はあたしより帝のほうが大事なのよっ!!あんたなんか帝と心中でもすりゃいいんだわ!」
瑠璃はとうとう声を上げて泣き始めた。
そんな瑠璃を見るのは高彬も辛いが、なおも瑠璃に言い含めようとする。
「帝だって、ぼくにこんな役目を仰せつけられるのはお辛いはずなんだ。
 けれどぼくなら瑠璃さんを説得できると…それくらい帝の御意向は…」
「もうわかったわよ!高彬は最愛の…筒井筒の姫だって相手が帝なら譲れちゃうのよ!それくらい帝が大事なんでしょ!?」

「…ぼくも…
 辛い立場なんだ、瑠璃さん…」


479 :粗筋中将4/4 :2007/07/02(月) 22:12:04 ID:???
重い沈黙が流れた後、瑠璃は意を決した。
その話は、今晩ゆっくり考え、返事を明日正式に届ける…静かに高彬にそう告げる。
高彬もほっとし、ありがとう、とその言葉を受け、立ち上がった。
部屋を出る際、改めて高彬は瑠璃に何か言おうとしたが、その続きを瑠璃は制する。
覚悟を決めるのだからあたしだってひとりになっていろいろと考えたい、
その一言に、高彬は何も言わずに帰って行った。
(ほんとに、覚悟を決めてやるんだからね、高彬…っ!!)

父はご機嫌だった。
瑠璃が前向きな返事をしたと聞き、これで肩の荷もおりると、寝込んでいたとは思えない喜びぶりである。
後宮にあがるのだから、せめて衣装だけでも揃えねばと張り切る父だったが、
明日のために心の準備をしたいと瑠璃が言うと、そうかそうかと頷き足取り軽やかに瑠璃の部屋から退出した。
側では、小萩が本当に承香殿の宴に出るのか、と疑っている。
先ほどの高彬とのやりとりを聞いていたが、小萩にしても、帝のやりかたはむごいと思っていたのだ。
「そうよ!あたしもこの展開にはもうガマンできないわ。だから小萩、今すぐ車の用意をさせなさい!
 陽が落ちたら闇にまぎれて京を抜けるわ」
突然のことに、小萩は事態が飲み込めない。

「太秦にある縁の尼寺に駆け込んで、一気に出家よっ!!」
「瑠璃さまっ!?」

480 :おまけ中将 :2007/07/02(月) 22:14:02 ID:???
乞功奠(きこうでん)…たなばたのお祭り
女楽(おんながく)…後宮の女性たちで管弦の演奏をすること。

481 :マロン名無しさん :2007/07/02(月) 22:16:46 ID:???
瑠璃が怒るのも高彬がたしなめるのも当然だよな。

小萩が意外とかわいいんですが。

482 :マロン名無しさん :2007/07/02(月) 22:22:21 ID:???
ちょっとなにこの萌えカップル

483 :マロン名無しさん :2007/07/02(月) 23:17:17 ID:???
やっぱり出家か!

484 :マロン名無しさん :2007/07/02(月) 23:20:01 ID:???
こんなおてんばな尼さんイヤだw

485 :マロン名無しさん :2007/07/02(月) 23:58:14 ID:???
ひどい旦那を蹴り飛ばして追い返してくれそうな尼さんだね

486 :マロン名無しさん :2007/07/03(火) 00:00:51 ID:???
小萩…自分も仲間に入れてもらえたらそれでよかったんかい
パパン八つ当たりはいかんぜよ
瑠璃、早まるな〜!!立場考えろや

487 :マロン名無しさん :2007/07/03(火) 00:01:53 ID:???
融は侍従なら出仕はしとるかね

488 :マロン名無しさん :2007/07/03(火) 00:04:00 ID:???
畏れ多くもって言われると
前の副将軍水戸(ry
を連想するわ。助さん高彬

489 :マロン名無しさん :2007/07/03(火) 00:52:13 ID:???
パパンにつける薬が欲しい

490 :マロン名無しさん :2007/07/03(火) 03:48:46 ID:???
だがこの作戦は既に連合本部に察知されていた

491 :マロン名無しさん :2007/07/03(火) 19:59:22 ID:???
尼寺に行く前に今度こそ…今度こそ高彬が駆けつけてきてくれる…きっと…!!
…と思いながらも無理っぽいよな〜。ジャパネスクだからな。

492 :マロン名無しさん :2007/07/03(火) 21:27:12 ID:???
高彬だって断腸の思いで言ってるんだし、家族のこともあるし
瑠璃は折れるべきだと思うんだよな。帝が不細工なおっさんならまだしも
鷹男なんだし、何もそんなに頑なにならなくても。もう出家すればいいよ

493 :マロン名無しさん :2007/07/03(火) 21:37:39 ID:???
でもここでしょんぼり「ごめんなさい」と謝らずに
出家してやると燃える瑠璃が憎めない自分がいたりする。

494 :マロン名無しさん :2007/07/03(火) 21:49:40 ID:???
うん、そんな瑠璃さんだから好きなんだ

495 :マロン名無しさん :2007/07/03(火) 22:24:35 ID:???
>494
高彬乙

496 :マロン名無しさん :2007/07/03(火) 22:28:00 ID:???
>>493
好きだけど、ちょっと小萩に同情してしまうw

497 :マロン名無しさん :2007/07/03(火) 22:29:26 ID:???
もうこんな生活イヤだー出家するーっ!!
と小萩が息巻けば違う展開が訪れそうな気がするw

498 :粗筋中将1/4 :2007/07/03(火) 22:34:18 ID:???
「うっ、ひっく、ぐすっ、うっうっ、、ひぃぃっく」
闇夜に走る牛車の中から、小萩の嗚咽が聞こえる。
出家する、と言った瑠璃が、本当に尼寺へ向かう牛車に乗り込んでしまい、小萩もどうしていいかわからず、泣けてくるのだ。
いま一度考え直してくれと小萩は懇願する。
帝のやり方には腹も立つだろうが、相手は帝なのだ、瑠璃が折れて筝の琴でもなんでも弾けばいい、
そうすれば高彬だって以前のようヨリを戻してくるだろう…
小萩の願い虚しく、瑠璃はただ鼻であしらうだけだった。
「あんな軟弱者こっちから願い下げよっ!なぁーにが“ぼくの気持ちも察してください”だ!!
 主上の命令なら自分の婚約者でさえ差し出してしまう男の気持ちなんてわかりたくもないわっ!!
 高彬の バ カ ッ !!」
一気にまくしたてる瑠璃にひるみつつも、やはり小萩は出家だけはやめさせたい。
一時の怒りに駆られて落飾してしまうよりも、前向きに考えて、後宮にあがり女の栄華を極めてはどうだ…
瑠璃も、それは少し考えたのだ。
しかし、帝の権力に屈したと思われるのは絶対に嫌だし、
後宮には高彬の姉の承香殿女御以外にも愛人がわんさと控えている。その中の愛人の一人になるのはまっぴらなのだ。
「そうかもしれませんわね、いずれ劣らぬ後宮の華の方々…とても瑠璃さまに勝目は…」
そういうイミじゃない、と小萩に言い、瑠璃は続けた。
高彬にあんな使いをさせるような、目的のために手段を選ばない人間に一生を任せれられるとは思わないし、
そんな男は瑠璃を手に入れてが最後、また別の姫に手を伸ばすに決まっている。
「なるほど。新しい姫に心移りされても、瑠璃さまに勝目はありませんものね」
「そーゆーイミじゃないってばっ!!」
とにかく、瑠璃は男に完璧に愛想を尽かしてしまったのだ。
これからは、尼になって男なんかに頼らず清く正しく生きていく!!そう高らかに宣言した。
「でも瑠璃さま。人生はこれから。心惹かれる殿方が現れたらどうなさいますの?
 尼になってからでは遅いんですのよ」
「…その時はその時、お金積んで還俗するまでよ!幸いうちはお金持ち!」
尼になってやるわっ絶対よっと吠える瑠璃に、もう何も言うまい、と思う小萩だった。

499 :粗筋中将2/4 :2007/07/03(火) 22:35:54 ID:???
桂川の近くにある青蓮華寺は、瑠璃の亡き母の乳姉妹である桂の尼君が庵主をやっていて、
父もその縁から何かと援助をしている、縁深い寺だった。
桂の尼君は、瑠璃を昔から実の娘のように可愛がってくれていたのだが、
(まさかその尼寺で出家することになろうとは思ってもみなかったわ)
到着した青蓮華寺で、小萩が取り次ぎを頼んでいるあいだに、瑠璃は考えていた。
やがてばたばたと、足音が牛車に向かってくるのが聞こえた。
「まあ大臣の姫さま。よくいらしてくださいましたわ!」
思いがけず、尼たちの歓迎を受けた瑠璃は戸惑った。
「きっと兵部卿宮家から御連絡がいったのですね」
「こんなに早くいらしてくださるなんて」
「さすがは宮家、御連絡の早いこと!ささ姫様、奥へ奥へ」
出家しにきた者に対してとは思えないもてなしようである。
尼たちの勢いに押されたまま、瑠璃は部屋へと通された。

部屋に通された瑠璃は、いつもと違う寺の様子に違和感を覚えていた。
いつもはひっそりとしている尼寺が、今夜はやたら騒々しいし、
いつもは南向きの手入れのいい客室に通されるのに、今夜はいかにもその場しのぎでしつらえたかのような部屋…
そういえば、尼たちは先ほど気になることを口にしていた。兵部卿宮家がどうのと。
何か瑠璃と関係があることなのだろうか?
そこに小萩が情報を仕入れて戻ってきた。
どうやら、瑠璃以外にも今夜もう一人、駆け込み出家を願い出る姫がいるのだそうだ。
その人の説得に当たったりなんなりで、寺中がどたばたしていたのだという。
しかし、まさかその姫というは…
「あの兵部卿宮の二の姫ですわ」
瑠璃の予感は当たった。

500 :粗筋中将3/4 :2007/07/03(火) 22:37:45 ID:???
兵部卿宮二の姫といえば本朝三美人の一人とも言われ、
歌や琴や書に秀で、非の打ち所のない可憐な深窓の令嬢だ。
瑠璃も、高彬の浮気疑惑以来何度か文のやり取りをしているが、その二の姫がなぜ出家など…。
寺の尼によると、今日の夕暮れ時に、供もつけずに一人でこちらへ駆け込んできたという。
『お願いでございます。どうかわたくしを尼にしてくださいませ。
 これ以上は耐えられませぬ。どうか、尼に…!』
そう言って気を失った二の姫が目を覚ますまでに、寺の者たちはあちこちに使いを出した。
近くに貴族の別邸が多いため、きっと近くの山荘の姫だとアタリを付け、兵部卿宮の二の姫で間違いないということが判明した。
すぐに気を取り戻した二の姫だが、
ただただ、尼にしてくれ、と泣き崩れるだけ姿に、尼たちもオロオロと見ているしかなかった。
今は山荘からの迎えの者が来ているが、あまりに二の姫が興奮しているから
とりあえず今夜はこの寺で預り、説得することにしたようだ、と小萩は話した。

なぜ二の姫が出家など…
御仏を信じての出家なら、そんな逃げるように駆け込んではこなかっただろう。
そこへ、桂の尼君が挨拶にやって来た。
桂の尼君によると、二の姫は気鬱ゆえの静養に、山荘に来ていたらしいが、
それに耐え切れずに、今日この寺へ駆け込んできて、ただ泣くばかりで詳しいことだ話してくれないようだ。
「それで瑠璃さま、いったい二の姫に何があったのでしょうか」
突然の質問に瑠璃は驚いた。
桂の尼君は、瑠璃がその真相を知っていて、二の姫のためにこちらに来たのだと思っていたようだ。
しかし、二の姫の事情とやらを聞きたいのは瑠璃のほうだ。
桂の尼君は拍子抜けした。
「それでは、あれはどういうことなのでしょう。
 二の姫は気を失われている時、しきりと瑠璃さまの御名前を呼んでらしたのですよ。
 申しわけない、どうしたらいいのか。でも恨めしい…と…」

501 :粗筋中将4/4 :2007/07/03(火) 22:39:00 ID:???
これはきっと二人の間に何かいさかいでもあったのだろうと思っていたところに瑠璃が来たので、
てっきり宮家から瑠璃に連絡が行ったものと思っていた、と桂の尼君は言う。
瑠璃には心当たりはないのだが、桂の尼君が二の姫に瑠璃の訪問を伝えると、
『これも御仏のお導きですわ。わたくしの醜い心を諌めようという御仏の思し召しなのです…』
それはたいそう穏やかに言ったという。

「じゃああたし二の姫に会ってみる」
瑠璃はすっと立ち上がった。桂の尼君は、ぜひそうしてくれと顔を輝かせた。
「あんなお美しい方が一時の激情に流されて落飾なさるなんてとんでもない。瑠璃さまからも説得なさってくださいませ」
桂の尼君に案内されるまま二の姫部屋に向かう途中瑠璃は考えていた。
うわ言にまで瑠璃の名前が出てくるんじゃ気になってしまう。
まして恨めしいなんて言われればなおさらである。
(あたしの事で悩んでいるなら、いくらでも力になろうじゃないの、
 同じ尼寺に駆け込んだのも、きっと何かの縁ってもんだわ…!!)

そして瑠璃は二の姫と再会した。

502 :おまけ中将 :2007/07/03(火) 22:40:15 ID:???
還俗(げんぞく)…この場合、尼さんをやめること。お金をたくさん払うとそういうことも出来る。

503 :マロン名無しさん :2007/07/03(火) 22:41:17 ID:???
小萩と瑠璃の掛け合いオモシロスwww

てか拗ねた瑠璃が出家するってエピソードのはずが
二の姫の話にコロッと変わってるw
すっかり出家を忘れて家に帰りそうだな。

504 :マロン名無しさん :2007/07/03(火) 23:05:12 ID:???
出家の前に何かあるだろと思っていたら…。
二の姫かー。
これからどうなるか期待。

505 :マロン名無しさん :2007/07/04(水) 01:05:08 ID:???
二の姫はなにが「申し訳ない、恨めしい」何だろ?
高彬に求婚でもされたのか?

506 :マロン名無しさん :2007/07/04(水) 01:09:55 ID:???
確かに瑠璃に勝ち目無いわw
男気なら敵なしだが

507 :マロン名無しさん :2007/07/04(水) 07:13:07 ID:???
逆じゃないか?
二の姫の方が高彬を好きになってしまったとかじゃないか
でも高彬が瑠璃を好きなことも、瑠璃の男気もよく知っているし、
それで「申し訳ない、恨めしい…」って

508 :マロン名無しさん :2007/07/04(水) 11:54:43 ID:???
入内するはずだったのに、
東宮が瑠璃に興味持ったから「そんなにイパーイいらね」と捨てられたとか。
何人くらい入内するもんなんだろ。

509 :マロン名無しさん :2007/07/04(水) 17:29:23 ID:???
派閥の数に応じて?
女房にもお手がつくことあるし。
中宮(1)女御(3〜4)尚侍(1)命婦などその他女房多数て感じ?
教えて詳しい人

510 :マロン名無しさん :2007/07/04(水) 20:25:12 ID:???
将軍さまだと月イチくらいでごろごろいるイメージだな。
勝手なイメージだけど。
この時代はどうなんだろね。

511 :粗筋中将1/3 :2007/07/04(水) 22:03:00 ID:???
(二の姫ってば、なんて面変わりしちゃったの!?)
一年ぶりに見た二の姫の姿を見て瑠璃は言葉を詰まらせた。
(一年前に会った時はあんなに穏やかで明るい感じだったのに、これじゃあまるで…)
瑠璃の姿を認めた二の姫だったが、ハラハラと泣き出してしまった。
オロオロする尼たちに、瑠璃は二の姫と二人で話がしたい、と願い出、ここは任せてくれと尼たちを部屋から出した。

瑠璃は二の姫に話しかけた。もう自分と二人っきりだから、気兼ねせず
何か辛いことがあるなら、同じ寺で出会ったのも何かの縁だから話してくれ、と。
しかし、首を振るばかりの二の姫に、瑠璃は言った。
「どなたかに苦しい片恋をしてるんじゃなくて?」

その瞬間、二の姫は真っ赤になりうつむいた。やっぱりね…と瑠璃は思う。
(この二の姫の変わりよう…明らかに恋の病って感じだもの)
やつれたというよりも、かえって陰影が増して艶っぽくなったと感じていたのだ。
瑠璃のことを恨んでいるというから、その相手は、瑠璃と関わりのある人なのか…
「その片恋の相手って…もしかして、新右近少将の高彬…?」
「高彬…さま? ? ?」
どうも違うようだ。
「それじゃあ、主上のほうなの?二の姫は帝のことが好きで…」
「まぁ そんな畏れ多い…!そのようなこと、軽々しくおっしゃってはいけませんわ、瑠璃さま」
やはり違うようだ。
では、なぜ出家などしようとしたのか。うわごとで名を呼んだり、何か瑠璃に関係があるんでしょう?と聞いたが、
瑠璃には何の関係もない、と二の姫は否定する。
「すべて…すべてはわたくしのせいですわ。瑠璃さまを恨めしく思うなど…
 もうわたくしにはどうしようもないのです。尼になるよりほかには、わたくしは…」

わああぁ、と二の姫はまたしても泣き崩れた。
その声を聞きつけて飛んできた尼たちに瑠璃は二の姫の部屋を追い出されてることになった。
間際に二の姫が瑠璃に尋ねた。最近瑠璃の周りで何か変わったことはないか、と。
怪し気な者が身辺をうろついたり、危険な目にあった覚えもなかったと答えると、二の姫は泣きながら瑠璃に言うのだった。
「どうか…くれぐれもお気をつけくださいませね、瑠璃さま。
 今のわたくしには、これしか申し上げられないのです。これしか…」

512 :粗筋中将2/3 :2007/07/04(水) 22:04:44 ID:???
小萩の控える部屋に戻った瑠璃は、二の姫の出家の理由はさぁーっぱりわからなかったと報告した。
二の姫が誰かに恋をしていることは確かなのだ。
しかし、普通の恋わずらいであそこまで憔悴するだろうか。
身分違いの恋だとしても、自慢の姫君に出家されるくらいなら親だって折れるだろう。
二の姫の出家に瑠璃が関係しているのもなぜなのか…
なぜ二の姫は瑠璃の身を案じていたのだろうか。
考えれば考えるほど、何がなんだかわからないと頭を抱える瑠璃だった。
きっともう疲れているのだろう、という小萩に、ふたりは今夜はもう休むことにした。

寝床に入っても、瑠璃はなかなか寝付けなかった。ふと小萩に聞いてしまった。
「あたしさ。ここに何しに来たんだっけ」
小萩は思わずくすくす笑ってしまい、確か出家ではなかったか、と答える。
そう、確かに出家するはずだったのだ。
なのに、二の姫の騒ぎがあって、今はのんびり寝ているなんて、肩すかしをくらった気分だった。
そんな瑠璃に、そう落ち込まず、明日にでも尼君に頼めばいいじゃないかと言う小萩。
小萩は、瑠璃の出家に反対だったのではないか。
しかし、これ以上瑠璃を止めはしない、と小萩も覚悟を決めていたのだ。

「でも、瑠璃さまが出家なさったら、きっと高彬さまは二の姫と御結婚なさるでしょうね」
小萩の言葉に瑠璃はハッとする。
でも、二の姫だって出家するではないか、と反論する瑠璃だが、
自慢の姫の出家を兵部卿宮が許すわけがない、
もともと高彬の実家の右大臣家だって二の姫の結婚に乗り気だったのだから、話はすんなり進むだろうことは瑠璃だって気付いている。
「もっとも瑠璃さまはこれから仏門に入るわけですから、俗世のことに後ろ髪を引かれることもございませんわね。
 尼ともなればその後ろ髪もありませんけど」

そのイジワルな言い方に瑠璃は顔を真っ赤にして震え、小萩に背を向け眠るしかなかった。
小萩の言う通りだ。しかもお家大事帝大事の高彬のこと、瑠璃が出家したら厄介事がなくなってせーせーしたと思うに違いない。
そう思うと腹が立ってくる。
(尼になったら毎日仏前で高彬の失脚を祈ってやるんだからね―――っ!!)
上掛けを頭からかぶり不貞寝する瑠璃に、小萩はくすくす笑うことを堪えられなかった。

513 :粗筋中将3/3 :2007/07/04(水) 22:06:34 ID:???
外は風が強くなっていた。
いつの間にか眠っていた瑠璃だが、ガサッという音に目を覚ます。
ガササッ
バキッ
これは、風の音ではない…
(誰かがこっちに歩いてくる!?)
瑠璃は思わず飛び起きて小萩を起こす。
しかし、寺の雑色が夜回りしているのだろう、と取り合ってくれない。
寺の雑色にしては、草を踏み分ける音が不規則だ。こんな不確かな歩き方はしないだろう。
こんな不確かな…、そう、まるで誰かを捜しているような…
『最近瑠璃さまのまわりで何か変わったことはございませんでした?
   怪しげな者や…    危険な目に  …  』

「小萩っ起きてよ小萩っ!怪しい者が近付いて来るのよっ小萩っ!!」
二の姫の言葉が恐ろしく思い出された。
青ざめ小萩を揺り起こそうとする瑠璃の目に、ガタン!という音と共に人影が映る。
そして次の瞬間には、瑠璃のいる部屋の戸は、音を立てて開けられた…!

514 :マロン名無しさん :2007/07/04(水) 22:17:26 ID:???
おいおい何だよ命を狙われてるのか?

515 :マロン名無しさん :2007/07/04(水) 22:54:21 ID:???
出家しようと三条邸を飛び出して来たことが、
その怪しい人間とやらの願ってもいない好機になっちゃったのか?!

516 :マロン名無しさん :2007/07/04(水) 23:36:24 ID:???
> 「あたしさ。ここに何しに来たんだっけ」

ほんとだよw
出家しにしたはずなのにそれどころか襲われそうになってるよ!

517 :マロン名無しさん :2007/07/04(水) 23:38:03 ID:???
嫉妬に震える意地っ張りな瑠璃かわいいよ瑠璃。
初恋より東宮よりしっかり高彬のこと好きになっちゃってるんだな。ホホエマシス。

518 :マロン名無しさん :2007/07/04(水) 23:57:24 ID:???
小萩知能犯だな。その調子で出家を断念させるんだ。
二の姫憂いの美女…

519 :マロン名無しさん :2007/07/05(木) 08:17:07 ID:???
しかし何でまた、瑠璃は命なんて狙われてるんだ。

520 :マロン名無しさん :2007/07/05(木) 08:21:39 ID:???
それこそ、入内するはずだったどこぞの姫の逆恨み?
その姫の兄ちゃんに二の姫が恋してるとか…

521 :マロン名無しさん :2007/07/05(木) 09:31:58 ID:???
じつは高彬が通ってきた…なんてことはないのか?

522 :マロン名無しさん :2007/07/05(木) 10:02:32 ID:???
唐突に二の姫の恋のお相手予想
1:帝ではない
2:高彬ではない
3:瑠璃に責は無いけど恨む=瑠璃のせいで叶わない?

この論点で行くと当てはまるのはただ1人。
瑠璃のわがままで出世が危うくなるパパだな。

523 :マロン名無しさん :2007/07/05(木) 10:57:47 ID:???
小萩いいキャラだなー

524 :マロン名無しさん :2007/07/05(木) 12:10:49 ID:???
>>522
なんでパパンww

>>521
高彬はきてほしいときにはなにも知らずに仕事中の可哀相キャラなんだから諦めな

525 :マロン名無しさん :2007/07/05(木) 12:17:15 ID:???
>>521
それだったら嬉しいけど、それはないんじゃないかな。
どうして瑠璃がここに居るとわかったか謎だし。

526 :マロン名無しさん :2007/07/05(木) 12:19:33 ID:???
>>522
融のことも思い出してあげてください

527 :マロン名無しさん :2007/07/05(木) 12:22:41 ID:???
そうだよなー
高彬はそういうキャラだよ。
後で「ええっ?!そんなことが!」と驚く、と。

528 :マロン名無しさん :2007/07/05(木) 12:26:03 ID:???
ヒーローのはずなのに…

529 :マロン名無しさん :2007/07/05(木) 12:36:58 ID:???
皆して高彬に期待しなさすぎw

530 :マロン名無しさん :2007/07/05(木) 16:24:31 ID:???
>>522
1たかおではない
2高彬ではない
3瑠璃(が性別間違えて生まれた)のせいでかなわない

というわけで瑠璃だね

531 :マロン名無しさん :2007/07/05(木) 19:41:54 ID:???
ちょw二の姫、それじゃ道誤り過ぎ
でも、前のちぇんじ!でも妖しの恋とかあったからな

532 :粗筋中将1/4 :2007/07/05(木) 22:41:39 ID:???
「瑠璃さんっ!!」

戸を開けて入ってきた人物に瑠璃は驚いた。

(高彬!?)

「瑠璃さんっ か…髪は!? 髪はっ!! 」

高彬は瑠璃を引き寄せ、瑠璃の髪をわしわしと引っ張った。何度も何度も引っ張った。
「い…痛いってば高彬!痛い…っ!!」
瑠璃の髪が、長さもそのままに変わらずあることを確認し、高彬はほっと息を吐いた。
そして、瑠璃を抱きしめ、はらはら泣いたのである。

「よかった…っ、まだ まだ髪をおろしてなくて… 間に合って…!」



三条邸を後にした高彬はその足で参内し、遅い時間に家に戻った。
すると、急ぎの文が小萩から届いていて、しかも瑠璃が出家するために太秦に向かったというではないか!
そのまま馬に乗って急ぎやって来たわけなのだが、

「ぼくは…馬を走らせながら、もう駄目かと思って…」

(それで 来てくれたの?
   こんな夜遅くに   馬をとばして…
  あたしのために…?)

533 :粗筋中将2/4 :2007/07/05(木) 22:43:00 ID:???
「どうして出家なんか考えるんだ瑠璃さん!いくらぼくが帝の御内意を受けて御使者に立ったからって…」
「あ…あたり前でしょ高彬!あんなことされれば誰だって…」
「それもみんな、瑠璃さんの入内を阻止しようと思ったからじゃないか…!」

(入内――――ッ!?)

そんな話が出ているのか、と目を丸くする瑠璃に、まだはっきりとした話ではないのだが…と前置きをして、高彬は教えてくれた。
これ以上瑠璃が帝の申し出を断れば、いずれは帝も入内を考えるようになるだろう。
それくらい帝は瑠璃に会いたがっている。
「そうなれば瑠璃さんは、ぼくにとってはもう手の届かない存在になってしまう」
だからこそ、せめて入内の話だけはないように、瑠璃を一度なりと帝に引き合わせようとしていたのだ。

「…高彬 ごめんなさい…!」
瑠璃は高彬に手を伸ばし、抱きついた。
「あたし 何にも知らなくって… 
 高彬だって、ほんとに辛かったのに、あたしは何も知ろうともしないであてつけに出家するなんて言って…」
ポロポロと涙を流し、高彬の胸に顔をうずめた。
「ごめんなさ…い…」

「…いいんだ、瑠璃さん」
瑠璃の髪を撫でながら、高彬も抱き寄せる。

「 間に合ったから、もう いいんだ 」


534 :粗筋中将3/4 :2007/07/05(木) 22:44:17 ID:???
オ、オホン、コホン

控えめな咳払いに高彬と瑠璃は我に返り、体を離した。小萩の存在をすっかり忘れていたのだ。
二人がふさいでいたため出るに出られずにいた小萩は、顔を真っ赤にして、出口に向かった。
部屋を出ようとする小萩を瑠璃は呼び止める。高彬に知らせてくれて、ありがとう、と。
「遅くなっても来てくださらないし、わたくしももうだめかとも思っておりましたけれど、よろしゅうございましたわ 姫さま」
そしてぺこりと頭を下げ、御簾を下ろし歩いて行った。
改めて、デキた女房を持ったものだ、あとで父に小萩のお手当てをあげるように言おう。
瑠璃が考えていると、高彬がおもむろに手を掴んだ。
「瑠璃さん、ぼくは…」

近付く高彬の姿に瑠璃は焦る。
「高彬待ってよ!そんな…やっぱ場所柄を考えないと…」
(何? ここは仮にも尼寺よっ やばいんじゃないの―――っ!?)
「場所なんかどうでもいいんだ。聞いてくれ」
(そうよ―っ こんなところで聞いたりしちゃ…)
「え?聞く…?」
高彬の表情は大真面目である。
「ぼくも悪かったんだ。いくら最悪の状態を避けるためでも、帝の御使者を引き受けるべきではなかったのに…」
(…なんだ、そのことか)
てっきり…かと、むにゃむにゃ思ってた瑠璃だが、聞いてるの?と高彬に叱られる。

「これで決心がついた。ぼくは、たとえどんなお咎めをうけることになっても瑠璃さんを妻にする!」

勅勘を蒙るのは覚悟のうえ、都人に忘れられるはかない身になってもかまわない。
静かな山荘で、帝の怒りが解けるまで、ふたりでひっそりと住もう、と高彬は強い意志で瑠璃に言った。
そんな高彬の覚悟に、瑠璃も黙ってはいられない。
「だめよ高彬!高彬がそういう気持ちでいてくれるならあたしもう意地なんか張らない。
 帝が会いたいって言うならいくらでも会ってやるわよ!高彬を失脚させたり累が及ぶようなことになんかさせるもんですか!」
その瑠璃の姿に、高彬は穏やかに微笑んだ。
「瑠璃さん…」
そして、瑠璃は高彬にそっと押し倒された。

535 :粗筋中将4/4 :2007/07/05(木) 22:47:43 ID:soLopnHB
突然のことに瑠璃は心臓が破裂しそうだ。
耳元で高彬は話す。
「いいんだ。無理してお会いしなくても いいんだよ」
本当は、高彬は帝に会わせるのが心配でもあったのだ。
帝の位に即位してから、華やかで美しく凛々しさを増し、自信に溢れている。
その姿を見れば、瑠璃の心も動くかもしれない、と不安だったのだ。
それを聞いてすでに多少動いてしまう瑠璃ではあったが、
「そんなことないわよ高彬」
現に、出家をやめさせようと飛んできてくれたのは高彬ではないか、と両の手で高彬の頬を包んだ。
その手を握り、にっこりと笑顔を見せる高彬。
(なんか、ちっとも変わらないのね、高彬。子供の頃とおんなじ笑顔)
つられて瑠璃も笑顔になる。
(でも、あの頃の高彬は前歯が欠けていて、よけいグズに見えたっけ)



536 :粗筋中将4/4残り :2007/07/05(木) 22:48:56 ID:???
瑠璃は子供の頃に思いを馳せていた。
融と三人で石蹴りをしていた頃。
順番を思わず抜かしてしまった瑠璃が、高彬がぼーっとしてるから悪いのだと
どんっと突いたら、よろめいた高彬は傍の池に落ちてしまう。
引き上げたのも瑠璃だが、手のかかる子だ、大丈夫かと聞くと、
欠けた歯を見せながらも、やっぱりにこぉっと笑顔を見せたのだった。

(そうだ。あれはあたしが欠けさせたんだっけ)
瑠璃は思い出していた。
(今はもう欠けてないとこを見ると、
 唐渡りの真珠の粉を練って固めたとかいうやたら高価な義歯をしているのかし…)
唇を奪われ、瑠璃の思考は止まった。

目の前には、瑠璃を見つめる高彬。
ふたりは、先ほどよりも深い接吻を―。

(うわ―――――っ)

こんなことなら、おとといにでも髪を洗っておいたのに、
衣にだって風情のある香を薫きしめて、他にだって、他にだって…
第一ここは尼寺じゃないの――

ああ、だけど

(これであたしも人妻だ―――――っ!!)

537 :マロン名無しさん :2007/07/05(木) 22:55:59 ID:???
まさか次回で最終回?!

538 :マロン名無しさん :2007/07/05(木) 22:57:25 ID:???
「瑠璃さんっ!!」 
って「マリさん!」に響きが似てね? と友人が言い出し
以後の高彬ボイスが脳内で全て神谷変換されてしまった事について。

539 :マロン名無しさん :2007/07/05(木) 22:59:02 ID:???
次回バレ。


やっぱりパパンが乱入してきて
欲情が限界に達した瑠璃が大激怒のすったもんだで終焉。

540 :マロン名無しさん :2007/07/05(木) 22:59:52 ID:???
小萩GJ!
しっかしおふたりさん、尼寺で罰当たりなことしちゃいけませんぜ

541 :マロン名無しさん :2007/07/05(木) 23:02:52 ID:???
高彬キタワァ━━━━━━(n‘∀‘)η━━━━━━ !!!!!
王道展開かもしれんが狂おしく萌えた。高彬GJ。赤面小萩かわいいよ小萩。

542 :マロン名無しさん :2007/07/05(木) 23:04:11 ID:???
>>538
そんな牛丼にめがなかったり、屁のツッパリはいらんですよな
高彬はイヤン

543 :マロン名無しさん :2007/07/05(木) 23:19:49 ID:???
二人とも―
ここ尼寺!尼寺!!

544 :マロン名無しさん :2007/07/05(木) 23:36:28 ID:???
尼さんたちがふすまの向こうに並んで耳を澄ませている
→ふすまごと倒れてなだれ込んでくる
と予想。

545 :マロン名無しさん :2007/07/06(金) 00:13:56 ID:???
でかしたぞ小萩!
やっぱり昔から瑠璃はガキ大しょry
長かったなあ。ついに瑠璃も大人になるのね

546 :マロン名無しさん :2007/07/06(金) 00:37:08 ID:???
>>544
すげーありそうw
ここは二の姫卒倒かなんかとみた

547 :マロン名無しさん :2007/07/06(金) 00:38:17 ID:???
高彬が…まともなヒーローになってるw
歯欠けカワユス

548 :マロン名無しさん :2007/07/06(金) 00:53:21 ID:cLwXxgfd
高彬、やっぱり来てくれたんだね〜。
良かった、良かった。
内大臣さま、小萩の給料増やして下さいっ!

549 :マロン名無しさん :2007/07/06(金) 01:02:23 ID:???
4度目にしてついに!

でもお約束の邪魔がはいるのチョット期待してたりする。
高彬スマン

550 :マロン名無しさん :2007/07/06(金) 01:15:27 ID:???
>(これであたしも人妻だ―――――っ!!)

まだ接吻なのに、この思考回路!w
うーん。いかにも少女漫画的展開でええなぁ〜(*´ー`)

551 :マロン名無しさん :2007/07/06(金) 01:15:40 ID:???
次で最終回と予想

552 :マロン名無しさん :2007/07/06(金) 01:47:21 ID:???
>>550
いや、しっかり押し倒してるし大人キスだぜよ

553 :マロン名無しさん :2007/07/06(金) 01:52:18 ID:???
>大人キス
ニキビのなさそうな肌をしてる幼いイメージの高彬と大人キスのギャップに(*´д`)

554 :マロン名無しさん :2007/07/06(金) 09:56:30 ID:???
高彬GJ
お前はよくやった

555 :マロン名無しさん :2007/07/06(金) 12:05:51 ID:???
うはあ…キスシーンすごい萌える。
瑠璃姫、いい女房持ったなあ。

556 :マロン名無しさん :2007/07/06(金) 18:08:11 ID:???
良かった高彬ちゃんと来た。
でもこのまますんなりとは行かないんだろうなぁ…。

557 :粗筋中将1/4 :2007/07/06(金) 22:07:28 ID:???
(ああ、物語ではこういう時、固くつむったまぶたの裏が緋色に変わるっていうけど、
 ほんとに真っ赤だわ
 ほんとに、何か燃えてるみたいで、真っ赤で…)

(燃えてるっ!?)

瞑っていた目を瑠璃はぱっちり開いた。
格子越しに外を見ると、間違いなくどこかが燃えていた。
驚いて瑠璃は高彬のことも忘れて跳ね起きた。
「高彬起きて!火事よ!!」
突然跳ね飛ばされて頭を打った高彬は、不満げに、別にここはなんともないじゃないかと呟く。
ここではない、もっと遠く…
その証拠に、空が赤くなっている。

「…ほんとだ。どうやら京中の方角らしいな。どこだろう」
高彬も、赤く見える空を見つめて考えていた。
火事に気付いた小萩が瑠璃の元へやってきた。寺の者も心配で起き出しているという。
それほど、かなり火の勢いが強いようだった。この太秦からもはっきりと見えるのだ。
瑠璃が高彬に肩を抱かれて眺めているところに、尼僧が震えて立っていた。殿方を尼寺に連れ込んでいることがバレてしまった。
「安心して、あたしの夫になる人だから身元は確かよ!」
尼僧にきっぱりといい放ったのは逆効果になってしまったが、
正確には夫になる ハ ズ だったのだ。この火事にあのまま気付かなければ…

558 :粗筋中将2/4 :2007/07/06(金) 22:08:48 ID:???
火事の騒ぎに、二の姫の姿が見えた。慌ててどこかに走って向かおうとする姿を…
瑠璃が気付いて駆け寄った時、二の姫は倒れ込んでいた。
「…姫!二の姫!!」
近付いた瑠璃の腕に抱き止められた二の姫は、火事が…と言った。
火事は京の方で、この寺は大丈夫だ、と安心させる瑠璃だった。
「いいえ!わたくしが案じているのは瑠璃さまのお邸なのです!!」
思いがけない言葉だった。
「燃えているのは三条のお邸ではありませんの!?瑠璃さまの…瑠璃さまのお邸では…!
 京から早馬は…知らせはありませんの?誰か…早く知らせを…!!」
すっかり取り乱している二の姫の姿を見た高彬が、くるりと踵をかえした。
「京の方の様子を見てくる!馬で来ているからすぐ戻るよ。瑠璃さんは心配しなくていい。きっと大丈夫だから!」
いつもはぼんやりしているようでも、こういう時は頼もしいのだ。
急ぎ走り去る高彬の後姿を見て、なんだか惚れ直してしまう瑠璃であった。

二の姫は相変わらず震えている。
三条邸が火事ではないか、瑠璃の身に何かあるのではないかと、怯えているようにも見えるほどだ。
なぜ二の姫は瑠璃の邸が燃えていると思っているのだろう。なぜ瑠璃の身に何かが起きると確信しているのだろう…
心配する小萩に、自分自身にも言い聞かせるように瑠璃は呟いた。
「大丈夫よね小萩、高彬が大丈夫って言ったんだもの、大丈夫よね」
そう言う瑠璃が、一番不安に思っているように、小萩には見えた。

559 :粗筋中将3/4 :2007/07/06(金) 22:10:24 ID:???
それから早いうちに、高彬が戻ってきた。
瑠璃の部屋に入ってきた高彬の表情で、瑠璃はわかってしまった。
「…うちが、燃えているのね」
早く戻れたのは、このあたりの山荘に向けて、京のそれぞれの本邸から早馬がいくつも出されていたからだという。
「そして瑠璃さん、心を落ち着けて聞いてほしい」
高彬の口調にただならぬ事態を瑠璃は察した。

「内大臣さまが、焼けた梁の下敷きになられたらしい」

この言葉に衝撃を受けたのは小萩のほうだった。
生きているかはわからない。母上は無事だそうだが、
「融は行方不明だという―――」

瑠璃は言葉を失い、高彬にしがみつくのがやっとだった。
高彬はそれでも、大丈夫だ、と声をかけた。
融のことを教えてくれた者は、瑠璃も行方不明だと言っている―
「だってあの子は尼寺になんて行かないわ!行きゃしないじゃない…!!」
涙を流ししがみつく瑠璃に、高彬はもうかける言葉が見つからなかった。

「そんな…瑠璃さまだけのはずでしたのに…
 大臣さまや融さままで このような…」
意識を取り戻した二の姫が、几帳から顔を出して言った。
瑠璃ひとりとはどういうことだ、と高彬は二の姫に詰め寄る。

「わたくしにはお話することができないのです。すべては…
 すべては鬼の仕業ですもの… 恐ろしい… 鬼の… 」

あとはうち震え、泣くばかりの二の姫だった。
そこに、高彬が先ほど頼んでおいた、右大臣家からの使いの者が到着した。

560 :粗筋中将4/4 :2007/07/06(金) 22:11:44 ID:???
「右近少将さまに申し上げます。三条の内大臣のお邸すべて焼失いたしました」
御簾の向こうで、高彬の使いは淡々と情報を伝えた。
内大臣と息子の融、娘の瑠璃が行方不明で、北の方は無事だが、煙で目を痛めたということを。
次々に告げられる恐ろしい内容に体が震える瑠璃を、高彬はしっかりと抱き締める。
そしてもうひとつ、不審な点があると言う。
この火事は放火ではないかともっぱらの噂であり、
唯一焼け残った門柱に、呪詛状と思われる札が打ちつけられていた…。
なぜうちが呪詛されるのだと、瑠璃の動悸は激しくなる。
それで、その札には何と書いてあったのか、その問いに、
焼け残ったところではよくはわからないが…使いの者は、言い辛そうに、告げた。


「“瑠璃姫 怨”と読めると―――」


(あたしのせいで 父さまや融が死んだなんて…うそ…)
気を強く持たせていた瑠璃だったが、ここに来てついに切れ、意識を失ってしまった。
意識のなくなった瑠璃を、高彬はしっかり抱きとめている。
使いは高彬に、宮中から急ぎ参内のあったことを付け加えた。
気を取り戻した小萩に、高彬は言う。
何者かが瑠璃の命を狙っているとわかった以上、このままにするわけにはいかない。
幸い瑠璃は、この尼寺に来ていたから助かったんだ。

「これも仏の思し召し。瑠璃さんにはしばらく死んでもらう」
そう言った高彬は瑠璃を抱いたまま立ち上がった。

561 :マロン名無しさん :2007/07/06(金) 23:09:11 ID:???
なにやらホラーじみてきたんですが(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル

淡い恋の物語じゃなかったのかよ!

562 :マロン名無しさん :2007/07/06(金) 23:25:24 ID:???
えっ…これ本当にジャパネスク…?
何か違うどっかの漫画だよね?
そうだよね、そうだと言ってくれよ!
何この鬱展開…orz

563 :マロン名無しさん :2007/07/06(金) 23:27:18 ID:???
チッスひとつにドキがムネムネしていた前回の自分は今いずこ?
火を放つって並みの恨みじゃない気がするんですが。

564 :マロン名無しさん :2007/07/06(金) 23:49:41 ID:???
瑠璃と高彬が燃えて、自分も萌えていたら、本当に燃えとるがな。
なんだこの怒涛の展開は――!!
怨みって、入道の残党?二の姫犯人知っとるんか?

565 :マロン名無しさん :2007/07/06(金) 23:49:42 ID:???
と、融?!融―!!!

566 :マロン名無しさん :2007/07/06(金) 23:51:05 ID:???
あーんパパンが、融が、お屋敷がああ
°・(ノД`)・°・

567 :マロン名無しさん :2007/07/06(金) 23:53:34 ID:???
全焼……布と木の寝殿造はよく燃えちゃったんだね…orz

568 :マロン名無しさん :2007/07/06(金) 23:55:38 ID:???
家燃やされて大事な夜を邪魔されて、何だけども、度々命助かった瑠璃は強運だね。主人公だし。
瑠璃様だけのはずって二の姫さりげなく酷いな。

569 :マロン名無しさん :2007/07/06(金) 23:56:39 ID:???
と言うかお家が焼けて、パパンも死んじゃったら
瑠璃は路頭に迷うしかないんじゃ…

570 :マロン名無しさん :2007/07/07(土) 00:00:09 ID:???
没落貴族……いや、瑠璃だけならたくましく生きていけそう。高彬もいるし。

571 :マロン名無しさん :2007/07/07(土) 00:25:39 ID:???
鷹男は何してたんだ。
あれだけ権力にものを言わせて執着していた女の家ぐらい、
常時見張ってろよ!!


…と理不尽だと知りながら思った。

572 :マロン名無しさん :2007/07/07(土) 01:15:17 ID:???
二の姫の「瑠璃さまだけのはずだった」ってなに?
二の姫が呪ったの?
やっぱり高彬に横恋慕?
こえー(((((((( ;゚Д゚)))))))

573 :マロン名無しさん :2007/07/07(土) 02:44:43 ID:???
瑠璃だけなんて怖いこと言ってるのに
泣いてすまされる二の姫ってどうなのよ……

574 :マロン名無しさん :2007/07/07(土) 08:48:21 ID:???
ラブシーンしてる高彬よりテキパキ対応してる高彬のがカコイイ!


575 :マロン名無しさん :2007/07/07(土) 10:18:33 ID:???
うん格好良い…。
こんな展開じゃなかったら素直に喜べるのに(ノД`)・°。

576 :マロン名無しさん :2007/07/07(土) 18:24:21 ID:???
死んでもらうって尼寺にしばらく隠しておくってことかな。
突然の鬱展開についていけてない自分w

577 :粗筋中将1/4 :2007/07/08(日) 00:31:15 ID:???
高彬は、瑠璃をそっと横に寝かせ、頬を伝う涙を拭いた。
瑠璃をどうするつもりなのか。死んでもらうというのはいったい―
高彬の考えはこうだった。この火事は、瑠璃の命を狙ったもの。
その瑠璃がまだ生きているとわかれば、犯人はまた瑠璃を狙うかもしれない。
だから、世間の噂通り、瑠璃は三条邸で焼け死んだということにしておくのだ。
「桂の尼君も、瑠璃さんがこちらの尼寺に来ていたことは忘れなさい。二の姫や他の尼君にもそのように…!」
そう言い渡すと、桂の尼君は神妙に従った。
小萩に、瑠璃の乗ってきた車はどこかの別荘に帰し、目立たない別の車を用意するよう命じた。
今なら火事のどさくさにまぎれ、人目に目立つことなく、瑠璃を安全な場所へ移せるだろう。
先ほどの使者には、京へと使いを出させ、瑠璃を再び抱き上げた高彬は小萩と共に車に乗り込んだ。

牛車の中で、小萩は高彬に恐る恐る尋ねた。瑠璃をどこに連れていくのか、と。
内大臣家に縁のある別荘などでは危険だし、高彬の家もまた犯人に狙われているのかもしれない。
しかし、車は京に向かっている様なのだ。
「瑠璃さんは、二条堀川の藤宮さまのお邸にかくまっていただく」
予想外の高彬の返答に、小萩は飛び上がった。なぜ、わざわざ危険な京中になど―。
「だからかえって安全なんだよ小萩。木は森へ隠せというじゃないか」
なまじ山荘に隠してしまったら、高彬がつきっきりで瑠璃を守ることも出来ない。
しかし、それでも不安が消えない小萩に、高彬はぴしゃりと言った。
「ぼくにはぼくの考えがある。いいからこれ以上ごちゃごちゃ言わずに黙ってなさい!」
小萩はもう、黙って高彬に従う以外なかった。

578 :粗筋中将2/4 :2007/07/08(日) 00:33:31 ID:???
「風はもう秋の気配ですわ瑠璃さま、こちらへいらしてお庭の風情でもご覧になっては…」
バリンッ!!ずずずず…ごっくん
「小萩、おかありっ」
そう言ってぱっと椀を差し出す瑠璃を見て、小萩はため息をつく。
ここは二条堀川の藤宮の邸。あの火事からまだ10日しか経っていないのに、瑠璃はほんっとに元気だと嫌味を言う小萩だった。
「ふん!何が10日しか よ!すでに10日 も 経っちゃってるのよ、10日もっ!!
 その間あたしはこの邸から一歩も出られないんじゃ、エネルギーがたまっちゃって、元気にもなるわよ!」
そうしてばくばくとご飯を食べ続ける瑠璃だったが、
あの火事で焼け死んだことになってるため、あちこち歩き回ることが出来ないのはちゃんとわかっているのだ。
しかし、それでもイライラしてしまう瑠璃に、小萩が火に油を注ぐ。
「内大臣家のみなさまもご無事だったのですから、何もそうイライラなさらなくても―」
無事だからよけいアタマにくるのだ!と瑠璃は机を拳で叩く。
「今回のことで、わが家の腰の抜けた男どもには つ く づ く !!あいそがつきたわっ!!いいや つききったっ!!」
ぎりぎり歯をかみ締め怒りをあらわにする瑠璃だった。

あの火事で、融が行方不明だと聞いて瑠璃は泣くほど心配したのに、
本人は、例によって藤宮の邸のまわりを徘徊していてちゃっかり難を逃れていたのだ。
三条邸炎上に気付き急ぎ取って返したものの、あまりの勢いにどっひぇーっと腰を抜かし、三日三晩意識を失っていたという。
付いていた者が気をきかせて縁の賤屋に融を運び込んだものの、
意識が戻るまではと連絡を入れなかったため、4日間融は行方不明になっていただけだった。
おまけに呪詛状のことや、放火だということも聞いて、今も腰が抜けたまま寝込んでるという。
「あんな情けない奴のために涙まで流したかと思うと、くやしいやら腹立たしいやらであたしは…っ!!」
瑠璃の剣幕におされ苦笑いして聞いている小萩に、八つ当たりのように瑠璃は睨み返し、
「情けないといえば、父さまだってそうよ!」
と、梁の下敷きになったと聞いていた内大臣について言及した。

579 :粗筋中将3/4 :2007/07/08(日) 00:34:44 ID:???
実は、ほんとに下敷きになったのは父ではなく、古参の女房の周防だったのだ。
父はあの火事の時、浮気相手の周防のところに居たという。
けれど、「そっちの方」に忙しくて、出火に気付いた時はすでに回りは火の海だった。
そこへ、焼け落ちた梁が落ちてきて、周防がとっさに父をかばったため、大ヤケドを負ったとはいえ助かった。

母は、火事に気付いたのは早かったのだが、燃えている邸の中を果敢にも父を助け出そうとし、煙ですっかり目を痛めてしまった。
逃げようと思えば逃げれたはずなのだ。なのに、父が浮気相手のところにいるとも知らず―

「そりゃ…父さまだってあの火事で大ヤケドをしたわよ。でも、
 父さまが浮気なんかしてなかったら周防だって助かっていたし、母上だって目を痛められたりしなかったはずだわ…!!」
そして、融も父も、ふたりとも生きているから何とかして放火の犯人を捜し出してほしいのに、
父は僧侶を集めて加持祈祷の神だのみばかりだし、融はあいかわらず腰を抜かしたままなのだ。
人を使って情報収集をすることも犯人捜索の陣頭指揮をすることもしない、それが瑠璃には歯がゆかった。
「ああっもうっ!!あたしが死んだことにさえならなかったらさっさと犯人捜しに動き出すものを…!!」
バンバン机を叩き、怒鳴ったらお腹が空いた、と小萩にまたしてもおかわりを求める瑠璃だった。
「姫さまっここのところ毎日毎日牛のように食べているばかりではありませんかっ!」
 ブタになったらどーするんだ、胃拡張にもなるぞと泣きながら空の櫃を見せる小萩に、瑠璃は静かに言った。
「これからのために体力をつけとく必要があるからよ」

高彬には内緒だと、小萩に考えていることを言った。
もう少しほとぼりが冷めたら、犯人捜しに乗り出すつもりだ、と。
父のように他力本願では犯人はつかまったりしない。幸い自分は死んだことになっている…
瑠璃の考えを知り、高彬が八方手を尽くしているのだからと必死に止める小萩だった。
「だから高彬には内緒だって言ってるでしょ。あたしがこの手で犯人をつかまえてやるんじゃないの!
 小萩!おまえもそのつもりで…」
「そうはいかないよ瑠璃さん」

580 :更新遅くなってすみません中将4/4 :2007/07/08(日) 00:36:00 ID:???
知らぬ間に高彬がやって来ていた。話を聞かれてしまったのだ。
「相変わらず元気そうで何よりだけど、それだけは絶対にさせないからね」
瑠璃の側に腰を下ろした高彬は静かに言った。
瑠璃のことだからいつかはそう言い出すだろうとは思っていたが、今度ばかりはおとなしくしてもらう、と高彬は続ける。
捜すと言ったところで、瑠璃一人で一体何が出来るのだ、と。
瑠璃が考えるような情報収集ならば高彬が検非違使を指揮してすでに捜しており、瑠璃一人で行動するより余程効率的だ。
「他にどうやって捜すつもりなのか、いい方法があったら教えてもらいたいよ瑠璃さん」
嫌味な言い方に瑠璃はむっとし、反撃する。
たとえば自分がおとりになって、犯人をおびきだすのだ、瑠璃の命が狙いなら、犯人はのこのこ殺しに出るに決まっている。
犯人が出てくるまでは、九条の邸や縁の寺に身を隠して…
「そしてまた火をかけられて、今度は九条の邸が燃え、縁の寺も尼さんもろとも焼け落ちるというわけだ」
高彬の言葉に、瑠璃はもう返す言葉を持っていなかった。

そう、高彬の言う通りなのだ。瑠璃が10日の間もおとなしくしていたのは、それが充分にわかっていたからだ。
あの火事で、狙われたのは瑠璃ひとりなのに、逃げ遅れた多くの者が巻き込まれ焼け死んだ。
瑠璃がおとりになれば確かに犯人はつかまるだろうが、瑠璃に関わった人たちまでが同じ危険にさらされるだろう。
犯人は、瑠璃一人を殺すためなら、他の人たちが何人犠牲になろうとなんとも思わない鬼のような奴なのだ。

『すべては… すべては鬼の仕業なのですわ 』

二の姫の言葉が思い出された。
この事件には、鬼が関わっているのかもしれない。

(人の心さえ失った、恐ろしい鬼が…)

581 :マロン名無しさん :2007/07/08(日) 01:07:02 ID:???
高彬カコイイよ高彬

瑠璃はやっぱり瑠璃だし
融wwもパパンも無事でよかったねーw


582 :マロン名無しさん :2007/07/08(日) 07:12:39 ID:???
ちょww融wwww

583 :マロン名無しさん :2007/07/08(日) 09:55:38 ID:???
高彬、どんどんかっこよくなってくなー
>そしてまた火をかけられて〜
とか、普段おっとりしてそうなのに、時々ピシッと厳しいこと言うのが
出来る男って感じだ

それに比べて融wwまだ藤宮さま追っかけてたのかww

584 :マロン名無しさん :2007/07/08(日) 15:46:28 ID:???
この瑠璃姫が屋敷に火をかけられてまで本気で命を狙われるってことがいまいち結びつかない。
なんか実は秘密を持って生まれてきてるとか?
実は満月の夜になると腹に殺し屋の名前が浮かび上がってくる・・・とか。

585 :粗筋中将1/4 :2007/07/08(日) 23:04:17 ID:???
すっかり勢いを無くしてしまった瑠璃に、高彬は、おとなしくじっとしていてくれ、と念を押す。
「そのかわり、犯人はきっとぼくが見つけ出して極刑につけてみせる!いいね、瑠璃さん」
そう言う高彬が今の瑠璃の頼りだった。

「それに、これは帝の御意志でもあられるんだ」
思いがけない言葉に瑠璃は驚き顔を上げた。
先日高彬は帝に、亡き入道、前左大臣に縁の者をもう一度洗い直すよう、内々に言い渡したという。
東宮廃位の陰謀の主導者であった入道は、正良親王の落飾と、鷹男の即位のショックが重なり、
御世代わりの三日後に、太宰府の地で死んでしまった。
それを受けて、入道に関わるものが、瑠璃を恨んで三条邸にに火をかけても不思議ではない、
むしろかえって納得がいくくらいだった。鷹男はそれを心配していたのだ。
「ぼくは今回のことで、恐れ多くも帝の御叡智にはほとほと感心しているんだ」
その大げさな感情に、帝に限らず誰だって入道関係の怨恨は思いつく、という瑠璃に高彬は続けた。
鷹男の帝は高彬にだけ、話したことがあった。
『実は、あの事件が解決した後も、このようなことになるのではないかと懸念していたのだ。
 だからこそ是非一度、瑠璃姫とは忌憚なく話し合い、できればその身をお守りしたいとも思い後宮へ参るよう勧めていたのだが…』

586 :粗筋中将2/4 :2007/07/08(日) 23:05:30 ID:???
つまり、鷹男の帝がさんざんしつこくねちねちと瑠璃に言い寄っていたのは、そのためだったのだ。
それを知り、やはり鷹男はすごいと見直す気持ちと、なんとなく残念な、というかしゃくにさわるっていうか
フクザツな気持ちを抱える瑠璃だった。
しかし、鷹男もそうなら始めから、それこそ忌憚なく言ってくれればよかったのだ。
そうなればこんな面倒なことにはならなかったのではないか、と言う瑠璃だったが、そういうわけにもいかない事情がある。
鷹男は、帝という立場上、当て推量だけで動くことは出来ないのだ。
もし帝が入道に縁の者が復讐をするかもしれないと洩らせば、それは貴族の顔を潰すことになる。
復讐を考えるような入道の手の者がまだ残っていることは、事件の処理に当たった者の手落ちがあったということだ。
即位して間もない身で、これからの政治を補佐する重臣達の面子を潰すような言動は、推測と言えど避けねばならない。
だから鷹男の帝は、艶な噂にまぎれ、あのような回りくどい方法で瑠璃と連絡を取ろうとしていたのだった。
「なのに…ぼくはその深いお考えにも気付かず、下賤な嫉妬をしてしまうなんて…
 あまりの申し訳なさに 涙がこぼれて…」
と、肩を震わせ高彬は泣き出すのだった。
(勝手に涙でも何でもこぼしてろ。ばかっ)

ところで、今日高彬が瑠璃のもとへ来たのは、後宮にあがる日が決まったからだった。
「4日後って…ずい分と急なのね、高彬」
これでも遅いくらいだ、と高彬は言う。
表向きは、承香殿の女御を、藤宮が訪ねるという名目で、そのお付きの女房として入り込むわけだが、
陰陽で日を占わせたり、段取りを打ち合わせたりで、こんなに手間がかかってしまったと少し怒っているようだ。
「瑠璃さんの身の安全を考えれば、承香殿の女御の女房としてすぐにでも後宮に押し込めたかったくらいだ…!」
高彬は、あの夜、命を狙われたのが瑠璃と知るや、すぐにこのことを判断して、二条堀川邸に瑠璃を移したのだ。
藤宮なら、いつ宮中に参内してもおかしくない立場だし、二条堀川邸は大内裏にも近い。
参内する時も、必要以上に人目につく心配がないから…と。
(あの状況でとっさにそこまでの判断を下し行動した高彬って、ほんとにすごいって思う。その有能ぶりに、惚れ直しちゃったくらいよ)
でも…

587 :マロン名無しさん :2007/07/08(日) 23:06:32 ID:WOh4fqZ0
入道の縁の者っていう線は?
謀反を暴いたのが瑠璃って事がバレて逆恨みとか。

588 :粗筋中将3/4 :2007/07/08(日) 23:07:16 ID:???
「あたし、やっぱり後宮になんか行きたくない」
わがままは言うな、とたしなめる高彬に瑠璃は続ける。入道の残党なら、帝のことも狙うだろう、後宮だって安全とは限らない…
しかし、謀反とは時間も金もかかるもの。そして帝の側にはそうやすやすと近づけるものではないのだ。
だから逆恨みに瑠璃の命が狙われたのではないか、帝の側の後宮が一番安全なのだから―
そう説き伏せる高彬に、なおも瑠璃はいやだ、と答える。
「どうしてそう意地を張るんだ!わがままもいいかげんにしないと、ぼくも怒るよ瑠璃さん!」
「安全だから…安全だから後宮には行きたくないのよ…!!」
意地を張っているわけではない、と瑠璃は涙をこぼした。
瑠璃は、父や融は無事を確認出来た今でこそ腰抜けだふがいないと罵ってはいるが、
もしあのまま焼け死んでいたら、申し訳なくてとても生きてはいけなかった。
母が目を痛めたのも、周防が焼け死んだのも、小萩と仲の良かった女房仲間が焼け死んだのも、すべては自分のせいだと思っている。
なのに、自分だけ安全な後宮にいて、高彬や鷹男の帝に守られていろというのか、
そんなのは、みんなに対してひどすぎる。

「あたしは…だからごはんをいっぱい食べて、力をつけて、犯人を捜し出して敵を取ってやるのよ!
 犯人をつかまえて…みんなに…
 謝らせてやるんだ…っ!!」

言い終わるが早いか瑠璃はぼろぼろと泣き崩れた。
泣き伏せる瑠璃を、高彬はふわりと抱き寄せた。瑠璃の気持ちは高彬にだってわからないわけじゃない。だけど…
「敵を取ることと、犯罪人を捕まえることは違うんだ」

589 :粗筋中将4/4 :2007/07/08(日) 23:08:30 ID:???
高彬の冷静な一言に、瑠璃は黙った。
胸の中で涙が収まったのを高彬は確認すると、もう一度瑠璃に確認した。
「わかるね、瑠璃さん。ぼくの言うとおりに後宮にあがってくれるね」
「…そうね、高彬」
高彬はほっとした。きっと、高彬の言っていることの方が正しいのだ。

「二の姫からは、何か聞けた?高彬」
顔を上げて、頼んでいたことを瑠璃は聞いた。
「それが伺って拍子抜けしたよ。鬼の夢を見たというんだ」
ひと月程前、瑠璃が鬼に食われた夢を見たという。何かよくないことの前兆かと思ったが、
二の姫が瑠璃をよく思っていないのでそんな夢を見たのだ、と思われても困るので、言えずにいたのだと。
自分の心の中に人を恨む気持ちがあるのではないかと、ずいぶん悩んだそうだが、
はかなげでなよやかな姫なので、こういうこともあるのだろう、と言い、
瑠璃に、後宮にあがる4日間、おとなしくしているように、と念を押した高彬は帰っていった。

瑠璃は、筆を取っていた。
(高彬は、尼寺での二の姫をよく見てないから、夢の話なんかで納得しちゃうのよ)
書き上げた文を、二の姫のところに届けさせるようにと渡した。
(二の姫はきと犯人について何かを知っている。
 だって、夢の中の鬼が二の姫の憔悴の原因であるわけがないもの!)
後宮に入るのは4日後、そうなれば、犯人を捜すどころか、自由に動くこともできなくなる。
もうぐずぐずしてはいられない。

(何としても二の姫から本当のことを聞き出さなければ…!)

590 :マロン名無しさん :2007/07/08(日) 23:30:39 ID:???
泣き崩れる瑠璃かわええ。しかしおとなしくしてる気はないんだなw
てか高彬泣くなwww

591 :マロン名無しさん :2007/07/09(月) 01:48:57 ID:???
高彬カッコヨス
でもまた瑠璃が走り回って置いてけぼりにされてあとで泣くんだろうなw

592 :マロン名無しさん :2007/07/09(月) 12:38:43 ID:???
感動して泣いている高彬には悪いけれど、
瑠璃にちょっかいかけていたのは深い考えあってのことかもしれないが、
高彬の仕事量が増えたのは鷹男の個人的やっかみだと思うw

593 :マロン名無しさん :2007/07/09(月) 14:04:39 ID:???
深い考えなんて建て前なのに高彬は言いくるめられてるとかw

594 :マロン名無しさん :2007/07/09(月) 16:06:43 ID:???
あれ?周防は結局死んだの?
火傷したけど生き延びたんじゃなかったの?

595 :マロン名無しさん :2007/07/09(月) 16:07:58 ID:???
ごめん今の無し

596 :マロン名無しさん :2007/07/09(月) 21:45:29 ID:???
そうだよな。
融やパパンは無事だったけど犠牲になった人達沢山いるんだよな。
瑠璃応援するよ。
高彬には可哀想だけどナーw

597 :マロン名無しさん :2007/07/09(月) 21:45:33 ID:???
それにしても
何人巻き添えになろうがお構いなしな恐ろしい放火犯と二の姫の接点ってなんなんだろ?
部屋の中で過ごす普通のお姫さまは女房ネットワーク経由しないと情報収集できないはずだけど

598 :マロン名無しさん :2007/07/09(月) 21:49:08 ID:???
実は帝が、家をなくした瑠璃が諦めて入内するように放火したとか。

なんて思ったが呪詛状まで使ってたら本気だよな。

599 :マロン名無しさん :2007/07/09(月) 22:00:47 ID:???
瑠璃!
スリルとサスペンスなんてもうしない、ふつうのまともな姫になる、
って>>387で誓ったの覚えてるか?

600 :マロン名無しさん :2007/07/09(月) 22:14:13 ID:???
>597
実は二の姫の身内が係わっているとか?
でもそれだと恋の焦燥は関係ないよな
身内と共犯関係にある貴族の誰かが相手とかかな

601 :粗筋中将1/3 :2007/07/09(月) 22:19:30 ID:???
あわれとも 言わざらむ人の 恋しきに
     身を尽くしても 忍ばむとかや
(苦しさに耐えきれずに死んでしまっても、かわいそうとさえ言ってくれない情知らずの人を恋するあまり、
 己が身を滅ぼしてもなお、その方を隠し通そうというのですか)

誓いてし 言は明かさで ただ問えば
      否とや諾とや 答えてもかな
(恋する人に、決して口外しないと誓ったのなら、その誓いを口にせずともよいのです
 ただわたしの問いに、イエスかノーで答えて欲しいだけなのです)

あたしの気持ちを察してくださるなら、亥の刻に車を寄越してください
                                瑠璃


二の姫は、三条邸に火をかけた者が誰なのか知っている。知っていて黙っている。

(それは二の姫が、その犯人に恋をしているからに違いない…!)

二の姫の恋する人が、友人である瑠璃の命を狙っているが、二の姫はそれを瑠璃に言うわけにはいかない。
言えばその恋しい人がつかまってしまうから。
恋と友情に挟まれた二の姫は、どんなに悩み、苦しんだことだろう。
二の姫がああまでやつれたのも、出家を考えたのも、そう考えれば全てが腑に落ちる。

二の姫が悪いわけではない。悪いのは、あそこまで二の姫をおいつめた男の方だ。
瑠璃は賭けていた。
(二の姫はきっと、あの歌を見て、あたしに打ち明けてくれる…あたしはそっちに賭けるわ…!)


602 :粗筋中将2/3 :2007/07/09(月) 22:21:07 ID:???
夜になり、小萩が、二の姫からの文を持ってきた。
『心を決めました。すべてお指図通りに』
二の姫の邸に行く!と立ち上がった瑠璃を小萩は青くなって止めた。
高彬の命令で、車はすべて差し止められているし、門の警備も固い。とても抜け出せる状態ではないのだが、
だから、小萩の助けが必要なのだ、と瑠璃は頼んだ。
護衛の気を逸らせて何とか外に出してくれ、二の姫に会って話をしたいだけなのだ、それさえすめば後宮にも上がるから…
なおも渋る小萩に、瑠璃は懇願した。
「周防や小太夫、中君も…みんなみんな焼け死んだわ。それも、あたしのせいで。
 だからこそ、あたしはこの手で犯人を見つけ出したいのよ…!どうしてわかってくれないの?
 小萩だって、中君とは仲良しだったじゃない、敵を取りたくはないの!?」
瑠璃のこの言葉に、小萩も気持ちが固まった。
「…では、亥の刻少し前、警備のものにお酒をふるまいましょう。その中に、お薬を…」
亥の刻、門前で眠る警固の姿があった。

「…そうですわ。すべては瑠璃さまの思っていらっしゃる通りなのです…」
兵部卿宮邸の二の姫の部屋に通された瑠璃は、二の姫が取り乱すものと構えていたから、拍子抜けしてしまった。
瑠璃の考えたとおりだった。二の姫は、瑠璃に伝えなければと何度も思ったが出来なかった。
「もしあの方が、下級の役人などに引き立てられでもしたら…そう思うと、あまりにあの方がおいたわしくて…」
涙ぐみ、言葉を詰まらせる二の姫に、瑠璃は引き続き、その相手は誰かと尋ねた。
しかしこの先は、首を横に振るばかりだった。
“心を決めた”と言うわりに進展しない二の姫の話に痺れを切らし、庇いたい気持ちはわかるが、と詰め寄る瑠璃だったが、
放火までし、多くの人を殺すなど、情を知る人のすることではない、今さら庇えるとは思わない、という二の姫。
「あの方は、やはり鬼だったのですわ…恐ろしい…鬼だったのですわ…!」
埒が明かない二の姫に、瑠璃は、その鬼の正体は誰なのか、と再び尋ねた。
意外にも、二の姫は「知らない、わからない」だった。

「あの方は、僧侶です、それも、行きずりの…どこの寺の縁とも知れぬ…僧侶なのですわ…!」

603 :マロン名無しさん :2007/07/09(月) 22:21:41 ID:???
…何か高彬将来ストレスでハゲそうだな。
ストレスの原因は言わずがもな。

604 :粗筋中将3/3 :2007/07/09(月) 22:22:14 ID:???
泣き止まない二の姫に代わり、その先は、二の姫の女房の浪路(ナミジ)が続けた。
あれは、今からひと月ほど前のこと…
宮家のみなは、石山詣でに近江に来ていた。
とは言っても、他の貴族達と違わず、物見遊山を兼ねてのことで、その日は、琵琶の湖に舟を浮かべて舟遊びをすることになった。
「まあ、浪路。水面があんなにきらきらとして、なんと美しいのでしょう」
二の姫は、心弾み、供が揃っていないうちから、その日乗る舟へと足取り軽く歩いて行こうとした。
その時だった。

木陰から琵琶の湖を望む、美しい僧侶が立っていたのだ。

「その青年僧に気付き、わたくしが姫さまをお隠し申しあげた時はもう遅かったのでございます。
 姫さまのお心には、すっかりその僧の姿が焼きついてしまわれた…」
それほどまでに、美しい僧侶だった、と浪路は告げた。

話はこれだけで終わらず、その日の夜、浪路が燈台に油を足すため外に出たところ、
宮家の籠もる御堂の裏を、誰かが歌を呟きながら歩く気配を感じたのだ。

『―――鬼ともなりて 焼き滅ぼさむ…   』

歌の恐ろしい内容にぎくりとし、声のする方向を覗いた浪路は、
そこに、昼間の美しい青年僧がいるのを見た。

すっかり慌てた浪路は、すぐに二の姫のもとへ戻り、このことを伝えた。
浪路は、二の姫を諌めるつもりだった。
あの僧にすっかり心を奪われた二の姫は、夜も眠れることができないほど悩んでおり、それがとても気の毒に映ったのだ。
「あの僧は怪僧…悪僧のたぐいですわ!もうお忘れください。お気をしっかりと持ち直してくださいまし、姫さま…!」
「浪路…おまえ、あの方を見たの?」
「そうですわ姫さま!御堂の裏で、申しあげたような恐ろしい歌を…姫さま? 姫さまっ!!」

けれど二の姫は、その僧のあとを追いにふらりと出て行ったのである…

605 :マロン名無しさん :2007/07/09(月) 22:29:29 ID:???
こんなところで「以下次号」とは殺生な!!

606 :マロン名無しさん :2007/07/09(月) 22:29:38 ID:???
二の姫はハゲフェチだったのか……。

>>599
瑠璃の半分はスリルとショックとサスペンスで出来ています

607 :マロン名無しさん :2007/07/09(月) 22:30:47 ID:???
なんかいきなり坊さんでて
これは恐ろしい・・・

>>606
半分ですむならまだいいが・・・

608 :マロン名無しさん :2007/07/09(月) 22:45:59 ID:???
二の姫の恋の相手は超美形の坊さん。
って、そりゃまたすごい意外な展開だ。
そんでもって回想が何か怪談っぽいよ。
呪詛状付の放火といい、今までのジャパネスクと雰囲気が違うな。

609 :マロン名無しさん :2007/07/09(月) 23:55:43 ID:???
何故だろう。いくら美形とは言え、
坊さんであの格好をされているだけでこう、何と言うか…

610 :マロン名無しさん :2007/07/10(火) 00:00:52 ID:???
アッー

611 :マロン名無しさん :2007/07/10(火) 01:12:15 ID:???
高彬の生え際がまた後た(ry

612 :マロン名無しさん :2007/07/10(火) 01:33:39 ID:???
まさか坊さんは未来からきたたかあきry

613 :マロン名無しさん :2007/07/10(火) 08:12:29 ID:???
そんな未来みとめられぬぅぅ!

614 :マロン名無しさん :2007/07/10(火) 08:43:55 ID:???
     / ̄ ̄ ̄`ヽ、
    /         ヽ
   /  \,, ,,/    |  行きずりの僧侶…
   | (●) (●)|||  |  
   |  / ̄⌒ ̄ヽ U.|   ・・・・・・・・ゴクリ。
   |  | .l~ ̄~ヽ |   |
   |U ヽ  ̄~ ̄ ノ   |
   |    ̄ ̄ ̄    |


615 :マロン名無しさん :2007/07/10(火) 11:17:01 ID:???
614の3本の毛は高彬の前髪になったんだな

616 :マロン名無しさん :2007/07/10(火) 15:05:11 ID:???
ナミジ、けしかけてるとしか思えん

617 :マロン名無しさん :2007/07/10(火) 19:13:54 ID:???
よけいにわからなくなったぞ
なんで坊主が瑠璃を呪うんだ

618 :マロン名無しさん :2007/07/10(火) 20:32:34 ID:???
こないだの事件で舞台になってた寺の(中途半端に)偉い人いたじゃん。
あれの血縁とかじゃね?

619 :マロン名無しさん :2007/07/10(火) 20:47:09 ID:???
瑠璃は仏像蹴倒したりしてそう


620 :マロン名無しさん :2007/07/10(火) 21:08:49 ID:???
>>619
そ れ だ !

621 :粗筋中将1/4 :2007/07/10(火) 22:26:06 ID:???
二の姫が青年僧を追って追いかけるなど、まさかそんなことを、と浪路は思ったが、
翌日が兵部卿宮家の帰京の日だったことが、そのような大胆な振舞いをさせたのだろうと今は納得していた。
瑠璃のようなはねっかえりならばともかく、
姫君の鑑とも言える二の姫が男の後を追うとは、それほどまでにその僧のことが…
瑠璃が考えていた時、二の姫が口を開いた。
「あのまま 死んでもいいと思いましたの。あの方をもう一度、ひと目なりとも見ることができるのならば
 それを恋の形見に死んでもいいと… そう思いましたの…」

二の姫はその時、淡路のとめる声も耳に入らず、ただひたすらその僧の姿を捜し求めたのだという。
そして、どこをどう歩いたものか、気がつくと、御堂の影で誰かと話をしているその人を見つけていた。
月明かりも頼りなかったから、はっきりとは見えなかったが、その誰かとは、若い女だった。
なぜあの人の側にいるのだろう、あの人と何を話しているのだろう。
嫉妬にかられていると、僧の声が二の姫に聞こえた。

「 大臣の姫、瑠璃姫は、 わたしが殺す  」


なぜあの僧の口から瑠璃の名が…そして、なぜ瑠璃を殺すなどと…
二の姫が驚きと恐怖に立ちすくんでいた。

「あ。 荷葉が… 」

女が口に出した言葉に、二の姫ははっとし、踵を返し逃げようとした。
しかし、二の姫の姿を見止めた僧の方が一足早く、逃げる二の姫の手を取り、引き寄せた。

622 :粗筋中将2/4 :2007/07/10(火) 22:27:07 ID:???
「荷葉の香はあなたでしたか、兵部卿宮の姫君」
「わ…わたくしは、何も…」
墓穴を掘った二の姫に、僧は続けた。
「どうやら、わたし達の話を聞かれてしまったらしい。困りましたね。
 忘れていただきたいのだが・・・忘れてくださいますか 姫」
二の姫はそれを拒んだ。忘れることなど出来ない。瑠璃を殺そうというならば、そのことをすぐにでも父宮に告げようと。
「…そう、姫はわたしを、役人に売ろうとおっしゃるのですね」
自分は、貴族の後継者も持たない一介の僧侶の身、捕えられれば死罪も免れないだろう。
それを承知で、姫は死ねというのか…
「わたくしが死んでしまえば、二度と会うことは出来なくなるのですよ。
 こんなふうに 抱き合うことも …」
そして、僧は二の姫を抱きしめた。
突然のことに顔を赤くし俯く二の姫だが、僧はその頬を持ち上げ、ゆっくり顔を近づけた。
「それでも姫は 忘れてはくださらないと…?」

僧の唇が、二の姫の唇を塞いだ。
長い接吻の終わりに、僧は再びこう告げたのである。
「忘れてくださいますね 姫…」
その時、二の姫の魂はすっかりその僧に奪われてしまっていた―――

「あれは…鬼でございました 人の心を狂わせる…
    妖しく 美しい 鬼でございましたわ…! 」

623 :粗筋中将3/4 :2007/07/10(火) 22:29:15 ID:???
どうしても話すことが出来なかった、許してくれと謝り泣く二の姫のもとを後にした瑠璃は、
小萩の待っていた車で藤宮邸に帰る途中、考えていた。
二の姫は、やはり犯人を知っていた。そして、狂おしいまでに恋をしていた…
恋と友情の板挟みにあい、悩み苦しんでノイローゼ気味になった二の姫は、あの夜発作的に尼寺へ駆け込んでいたらしい。
瑠璃さえいなければ、自分はこんなに悩むこともないのに、とついには瑠璃まで恨むに至ってしまったのだという。
三条邸に日を放ったことであの鬼も気が済んだだろう、だから決して口外しないでくれと涙ながら懇願していた。
まだ、あの鬼に魅せられていると自身も言う二の姫は、
今さら庇うつもりはないと言いつつ、最後にはやはり庇っていた。

あの箱入り娘の二の姫をあそこまで捕えてしまうとは、いったいどんな僧侶なのだろうか。
口外させないためとはいえ、「わたしを役人に売る」だの「死ねば二度と会えなくなる」だの、
坊さんが色仕掛けで口封じするなんて…
(やだ、まさに 口 封 じ ってわけじゃない)
などと顔を赤らめぶつぶつ考えていたら、声をかけられ、小萩の存在を思い出した。
兵部卿宮邸から戻ってきたのに一向に二の姫の話を聞かせてくれない瑠璃に二の姫は怒っていた。
「よろしいんですのよ瑠璃さま。入道事件の時だって小萩は の け も の だったものですから」
嫌味を吐いて、ぷいっと横を向いてしまった小萩に瑠璃は困ってしまった。
小萩は瑠璃に忠実な分、隠し事をされるのが一番嫌いなようだ。
忠実といえば、二の姫の女房の浪路もだが、
浪路も、二の姫のために、石山寺の僧侶たちに、あの美僧について聞きまわったらしい。
しかしわかったことは、石山寺の僧侶ではない、というだけで、身元はわからないままだった。

624 :粗筋中将4/4 :2007/07/10(火) 22:30:41 ID:???
残る手掛かりは、もうひとりの女。
二の姫が衣に薫きしめていた香の種類を言い当てたところをみると、並みの女じゃないと瑠璃は踏んでいた。
“荷葉(かよう)”といえば、幾種類もの香を調合した合わせ香。
かすかに薫るその香を言い当てるくらいだから、たしなみも教養も備えた、かなり身分の高い女と思って間違いはない。
きっと、石山詣でに来てた貴族のお付きの女房というところだろうが、
きっとふたりは亡き入道の縁の者で、いつか復讐するための機会を狙っているのかもしれない。
都では人目に立つから、参詣で賑わう石山寺をわざわざ密談の場に選んだのではないか…

そう考えた瑠璃は、小萩に命じた。
「おまえ明日の朝京を発って、近江へ行って!」
急な命に状況が飲み込めず戸惑う小萩に、瑠璃は説き伏せた。
二の姫が石山詣でに行った際、瑠璃を殺すと話す女の声を聞いた、その正体を掴みたい。
たぶん貴族に仕える身だろうから、石山詣での参詣帳に、その詣でた貴族の名が記録してあるだろう、
その参詣帳を調べてきて欲しいのだ。
急げば近江まで片道1日、往復で2日…瑠璃が後宮に上がるまでには戻れるだろうか。
けれど、女の身元さえわかれば、あとは後宮に上がってから打つ手を考えればいいのだ。
「やってみますわ瑠璃さま!中君さん達のためにも…!」
小萩の言葉に、瑠璃は感謝した。こんなことは他の人には頼めない。
このままその僧侶を野放しにはさせない。
自分の手でつかまえてみせる…!と強く誓う瑠璃を乗せ、牛車は夜の闇を進んでいた。

625 :マロン名無しさん :2007/07/10(火) 22:45:05 ID:???
( ゚д゚)

( ゚д゚ )ますますミステリアスな展開に・・・

626 :マロン名無しさん :2007/07/10(火) 22:51:29 ID:???
口付けで口封じかあ

免疫ないってコワイ

627 :マロン名無しさん :2007/07/10(火) 23:03:15 ID:???
この人の描くキスシーンは良い。
展開は…謎が謎を呼んで、もう自分じゃわからん!

628 :マロン名無しさん :2007/07/10(火) 23:05:55 ID:???
一体どんだけ美形の坊さんなんだよ
何故かんじんの顔が出ないままなんだ―

629 :マロン名無しさん :2007/07/11(水) 00:34:43 ID:???
三条邸放火犯は美形の坊さんってことか
でも相談してた相手の女は誰を狙って何やらかすんだ?
こえーよー

630 :マロン名無しさん :2007/07/11(水) 00:57:08 ID:???
腹違いの兄弟とか<坊さん

631 :マロン名無しさん :2007/07/11(水) 08:05:21 ID:???
おのれ坊主め…俺の二の姫を!

632 :マロン名無しさん :2007/07/11(水) 08:46:45 ID:???
色仕掛けに人殺し…なんて坊主だ('A`)

633 :マロン名無しさん :2007/07/11(水) 08:51:44 ID:???
もはや坊主じゃなくて美形のハゲだな

634 :マロン名無しさん :2007/07/11(水) 14:27:08 ID:???
>>630
瑠璃と双子で世間体を憚って寺に入れたのかも@坊さん
でも、それだったら男の子を残して瑠璃の方を尼寺に入れるかw

635 :マロン名無しさん :2007/07/11(水) 16:20:19 ID:???
>>634
超絶美形なんだからそれは無いよw>双子
あ、ゴメン瑠璃。

636 :マロン名無しさん :2007/07/11(水) 16:45:34 ID:???
融の双子の片割れかも。
あ、美形なんだからそれはn(ry

637 :マロン名無しさん :2007/07/11(水) 19:01:32 ID:???
やっぱり入道の隠し子?
もの凄い美人の女房に手を出したんなら美形になる?

638 :マロン名無しさん :2007/07/11(水) 20:32:04 ID:???
少女マンガだからキスだけで終わったように書いてたけど、実際は……。

639 :マロン名無しさん :2007/07/11(水) 20:47:35 ID:???
口付け場面見た時は、そのまま最後まで…
…かと思ってた。

640 :粗筋中将1/4 :2007/07/11(水) 22:20:16 ID:???
瑠璃たちを乗せた牛車が止まった。
二条堀川邸まではまだ早いのではと不思議がる小萩だったが、なんと瑠璃が牛車から降りた!
「三条邸の近くよ。焼け跡くらいこの目でしっかり見ておきたいじゃない」
藤宮邸に戻る前に寄ってくれと事前に頼んでおいたのだ。
焼死した者達の怨霊や悪鬼がいるかもしれないからやめてくれという小萩を振り切り、
すぐに戻る、と、ひとり松明を持って三条邸跡に歩いていく瑠璃だった。

そこには何もなかった。火事の生生しい痕跡だけが、月明かりに浮かんでいた。
(人っ子ひとり 通らないのね…)
焼け果てたかつての邸に、瑠璃はかつての華やかかりし頃の三条邸を思い出す。
いつもなら、遊び好きの父が開く宴に、たくさんの公達が集まって賑やいでいたのに、
今は、火事の穢れを嫌って、三条邸のあたりを避けているのだ。
闇が広がるばかりである。
瑠璃は、焼け残った柱を力の限り叩いた。
(あたしは…『瑠璃姫 怨』なんて呪詛状を貼った奴を許さない。
 周防や中君…他の名前も知らないみんなの命を奪った奴を許すもんですか!)
絶対に自分の手で犯人を捕まえ、みんなの敵を取ってやると、改めて強く思う瑠璃だった。
焼け跡を涙の浮かぶ瞳にしっかり焼き付け、涙をぐいっと拭い、瑠璃は帰ろうとした。

その時、物音と共に、人の気配がした。
「そこにいるのは誰なのっ!?」
恐ろしくなった瑠璃は、気配のする方向に言う。
そして、黒い影が、瑠璃の前に現れた。

641 :粗筋中将2/4 :2007/07/11(水) 22:21:23 ID:???
(僧…侶!?)

現れたのは、墨染めの衣を身にまとった僧だった。それも、美しい顔をした――

忌みや穢れのあった場所で手を合わせるのは僧侶のならい、
とはいえ、ただならぬ雰囲気を感じ取った瑠璃に、僧侶は口を開いた。

「瑠璃姫…ですね」

「お前が…三条邸に火をかけたのね…!!」
間違いないと確信し、僧侶に言うと、肯定の言葉が返ってきた。
「あの夜は、風が強かった。
 焔は風に煽られ 桜吹雪のように火の粉が舞って…その様はあたかも
 大修法会のように神々しく、美しかった…」
そのせいで多くの人が死んだというのに、この僧は何を言うのだ。
「姫は、護摩を焚く本当の意味を知っていますか?」
僧の話の展開が飲み込めない瑠璃に、続けた。
「あれは知慧の火で、迷いの薪を焼いてしまう意味があるのです。
 だからわたしは どうしてもあなたを焼き殺さねばならなかった」
瑠璃は驚くしかなかった。
「なのにあなたは生きていたのですね。
 どうしてあの時 この三条邸もろとも焼け死んではくれなかったのか…。
 こうしてあなたが生きている以上、わたしはまたあなたを殺さなければならない」

642 :粗筋中将3/4 :2007/07/11(水) 22:22:44 ID:???
なぜ瑠璃を殺さなければならないのか…瑠璃は僧に尋ねた。入道の前左大臣家を断絶させたからか?
「でも、悪いのは入道のほうじゃない!おまえと荷葉の女がいくら入道の縁者でも、そんなのは逆恨みよ!」
「荷葉の女…?」
その言葉に、僧侶は二の姫がすべて話してしまったことを悟った。
瑠璃は開き直り、今頃右近少将が荷葉の女の身元について調べているはずだ、とハッタリをかける。
右近少将はとても有能だから、おまえもすぐに捕まってしまうだろう、と一気にまくしたてた。
僧は、それは困った、と答えた。
「では、荷葉の女にも 死んでもらわなければならない」

荷葉の女は、仲間ではなかったのか…
「うそよ!だめっ!あの女を殺しちゃだめ!右近少将はまだ何も知らないわっ!!」
慌てて訂正し、荷葉の女を殺してはならない、と繰り返す瑠璃だったが、
僧のぴくりとも動かぬ表情に、この男には何を言っても通じないと悟り、松明を投げつけ、元来た道を走って逃げた。
(あの男は、本当に鬼なんだ…このままじゃ殺されてしまう…!!)

幾分か走ったが、牛車の姿は一向に見えない。逃げるつもりが、通りからどんどん離れているようだ。
振り返ると、僧侶が今にも追いつきそうな距離で後をつけている。
瑠璃は、懐に忍ばせている刀をにぎりしめた。
くるりと振り返り、僧侶を睨みつけ、抜いた刀を目指す相手に突きつけた。
「妖鬼退散!天にかわって成敗っ!!」

刀はしかし、僧侶の左袖をかすめただけに終わってしまった。
形成は逆転し、腕を取られ、刀も叩き落とされた。
あっと言うが早いか、次に瑠璃は僧侶の腕の中にあった。
「…っ!は…離…せっ…!!」
腕の中でもがく瑠璃だったが、僧侶は構わずかすられた袖を見た。
これくらいの報いは受けなければならないのかもしれない、と呟いて。

643 :粗筋中将4/4 :2007/07/11(水) 22:23:51 ID:???
「そうよっ!!おまえのせいで何人もの人が死んだんだもの、それくらいの傷じゃすまされないわっ!!
 ここでおまえに殺されるのはくやしいけど、どうせ殺すなら名乗ってから殺しなさいよっ!! さあ名乗れっ!!」
瑠璃の言葉に、僧侶は憂いを帯びた表情で、抱く腕に力を込めた。
「あなたはわたしを見忘れている。そして…思い出しもしないのですね。わたしは一日も忘れたことはなかったのに…
 忘却は 悲しい罪です 」
(…見忘れ…て…?)

「いつかわたしが都に呼ばれ 官位を授かることができたら
 お迎えに行ってもいいですか?」

わたしは愛する人と幸せになりたい…ひっそりと 穏やかに暮らしたいのです

『お迎えにいっても… 瑠璃姫… 』

幼い頃の記憶が、瑠璃の脳裏に甦った。

「吉野君!?」

次の瞬間瑠璃は首を絞められていた。
「――世 みな牢固ならず 水沫泡焔のごとし…!」
目の前の男は、瑠璃に語りかける。
「あの日々は儚く 見果てぬ夢のように輝いていましたね…」
「…吉野君…なの…?」

「瑠璃姫 お覚悟…!」

首にかけられた手は、その力を増した。
遠のく意識の中、瑠璃は幼い吉野君の顔を思い出していた。

(…どうして…?吉野君なら どうしてあたしの命を どうして…!?)

644 :マロン名無しさん :2007/07/11(水) 22:32:47 ID:???
まじで吉野君?
グレすぎじゃないか。


645 :マロン名無しさん :2007/07/11(水) 22:35:51 ID:???
エエェ(´Д`)ェエエ
ま じ で か

646 :マロン名無しさん :2007/07/11(水) 22:37:50 ID:???
ちょ

647 :マロン名無しさん :2007/07/11(水) 22:37:51 ID:???
幼なじみの初恋の相手がなぜ敵に???
てか、吉野君って死んじゃったんじゃなかったの?

648 :マロン名無しさん :2007/07/11(水) 22:38:49 ID:???
屋敷の焼跡を一人で見に行くなんて現代人でもできねーよ。
瑠璃姫さすがだな……
と驚いているどころじゃなかった―!!

649 :マロン名無しさん :2007/07/11(水) 22:40:41 ID:???
> 「吉野君!?」

それはこっちの台詞だ!
淡い初恋話がまさか再登場するなんてポカーン

650 :マロン名無しさん :2007/07/11(水) 22:41:44 ID:???
∧_∧
( ´・ω・)  高彬はまた蚊帳の外ですか・・・?
( つ旦O  
と_)_) 旦 旦 旦 旦 旦 旦 旦


651 :マロン名無しさん :2007/07/11(水) 22:43:43 ID:???
ちょ、瑠璃かつて無い大ピンチ。

652 :マロン名無しさん :2007/07/11(水) 22:53:04 ID:???
>644
別人だよなあ?
だってあの可愛いプロポーズをした子が二の姫にあの口封じを?信じられん。
なんで坊さんになってるのかもわからないし。

653 :マロン名無しさん :2007/07/11(水) 22:55:47 ID:???
吉野君!?
ビケーーーーー!!!

654 :マロン名無しさん :2007/07/11(水) 22:58:31 ID:???
もし本当に吉野君でも、坊主になってたらもう結婚できんじゃないか

655 :マロン名無しさん :2007/07/11(水) 23:04:11 ID:???
瑠璃が尼寺来たとき叫んでたみたいに金積んで還俗でしょ
よしののきみは誰かのご落胤らしいし

656 :マロン名無しさん :2007/07/11(水) 23:09:28 ID:???
>>650
全くだ。また高彬が空気?ヒーロー復活まで待たせてください
一杯もらうね

旦⊂

657 :マロン名無しさん :2007/07/11(水) 23:10:19 ID:???
それ以前に人でなしだぞ。

658 :657 :2007/07/11(水) 23:13:19 ID:???
上のは>654-655へのレスね。
高彬が人でなしみたいじゃないかorz

659 :マロン名無しさん :2007/07/11(水) 23:53:27 ID:???
高彬は超いいやつだよ!
リアルなら、いい人すぎて
「あなたとは友(ry」
と言われがちなキャラだが

吉野君、鷹男に負けないインパクト
美形だらけだな…

660 :マロン名無しさん :2007/07/12(木) 00:00:36 ID:???
禿げたから自暴自棄になってしまったのだな

661 :マロン名無しさん :2007/07/12(木) 00:16:11 ID:???
いや、憎みすぎて禿げたという可能性も。
しかしつい吉野くんって読んじまう。

662 :マロン名無しさん :2007/07/12(木) 01:30:13 ID:???
ストレスは髪にやさしくないよね

よしのくん
よっしー
よしりん

何でもいいよ

663 :マロン名無しさん :2007/07/12(木) 19:03:58 ID:???
ピカチュウ

664 :マロン名無しさん :2007/07/12(木) 22:05:16 ID:???
ここに高彬が助けにくる!ってことはないのかね

665 :マロン名無しさん :2007/07/12(木) 22:29:21 ID:???
期待はし過ぎない方が、喜びは大きい。

666 :マロン名無しさん :2007/07/12(木) 22:32:54 ID:???
>>663
一瞬誤爆かと思った。
半日考えて意味がわかりました。

667 :マロン名無しさん :2007/07/12(木) 22:41:14 ID:lAIhOAIb
業務連絡

誰か楽屋裏にいって仕事をしてくれないか
自分の携帯じゃ無理なんで

668 :粗筋中将1/5 :2007/07/12(木) 23:00:12 ID:???
目を覚ますとそこには小萩がいた。
意識を取り戻した瑠璃に、ひしっと抱きついた小萩は、帰りが遅い瑠璃を、供の者と一緒に捜しに来たのだと言った。
すると、焼け跡で一人倒れている瑠璃を発見し、鬼にでも喰われ、死んでしまったのではないかと心配していたのだ。
では…あれは夢だったのか?吉野君も、瑠璃の首にかけられた手も…
焼け跡に跳梁する悪霊たちが見せた夢だったのか?
しかし、瑠璃は気付く。自身の手が、見覚えのない、伽羅の数珠を握っていることを。
(夢なんかじゃない 本当にあたしはあの男の手で殺されるところだったんだ!!)
おそらく、小萩たちが瑠璃を捜しに来たので、止めを刺せず逃げたのだ。
夢ではないという証拠を瑠璃の手に残し――
(でも…どうしてあの男が吉野君…!?)

小萩が、一刻も早く邸に戻ろう、と瑠璃を立ち上がらせた。
「まあ、姫さま。お首のあたりが真っ赤ですわ」
小萩の言葉に、多分虫にさされたのだろうと誤魔化しつつも、思わず首を押さえる瑠璃だった。

669 :粗筋中将2/5 :2007/07/12(木) 23:01:14 ID:???
あの頃 瑠璃はまだ9つかそれくらいで、
今はもう亡くなっている本当の母が病床についていたため、吉野にすむ祖母のもとに預けられていた。
そこで出会ったのが吉野君だったのだが、本当の名前は知らず、吉野で会ったから吉野君と呼んでいた。
祖母の話では、吉野君は都の名のある貴族の子供らしいのだが、母君の身分が低いため世間的に名乗ることもできず、
本妻の迫害にもあったりしたため、母君とともに縁の坊さんを頼って吉野の里に逃れてきたらしい。

――それでもあたし達は
    毎日 幸せで 楽しくて…

 子供だったけど、結婚の約束までしたんだわ―――

なのに吉野君は流行病であっさり昇天してしまった。やがて母も祖母も亡くなり、瑠璃は泣く泣く京の三条邸に帰ったのだ。

(でもあたしは、吉野君を忘れたりはしなかった。高彬と結婚することになったって
 吉野でのあの日々は、忘れることができないくらいに美しい思い出なんだもの…!)

瑠璃は、帰り道の車の中で思う。
それなのに、なぜその吉野君が瑠璃の前に現れたのだ。吉野君なら、なぜ瑠璃を殺そうとするのだ。
あの僧は、吉野君なんかではない、そう否定したい瑠璃だったが、あの言葉がそれを許さなかった。

『いつか都に呼ばれ 官位を授かることができたら…
 お迎えにあがってもいいですか 瑠璃姫…』

瑠璃と吉野君しか誰知ることはない、幼い日の求愛の言葉…

すっかり青ざめる瑠璃に、小萩は心配して声をかける。まるで、物の怪に憑かれたような顔をしている、と。
「…物の怪じゃないわ。鬼に会ったのよ。美しい鬼に…」
そう言って沈み込む瑠璃を、小萩は不思議そうな顔で見るしかなかった。

670 :粗筋中将3/5 :2007/07/12(木) 23:02:33 ID:???
いまだ門番の眠る二条堀川邸に、瑠璃たちは無事帰ってきた。
邸を抜け出したことはきっと誰にも気付かれていないだろう、とほっと言う小萩だったが、
瑠璃は、自分のことはもういいから、今すぐ休めと伝えた。
明日の朝、陽がのぼったら、瑠璃への挨拶などいいから一刻も早く近江へ行けと。
小萩も、強い使命感を抱いて部屋から退出した。

あの男は確かに荷葉の女に死んでもらうと言っていた。
瑠璃がよけいな事を言ったばかりに、荷葉の女までが命を狙われるはめになってしまったのだ。
荷葉の女の命を何としてでも守らなければならない!
それに、あの男が吉野君なら、これ以上人を殺めさせたくはないと思う瑠璃だった。
荷葉の女には、そのためにも生きてもらわなくては。あの男が本当に吉野君なのか確かめるためにも。
そうして瑠璃はため息を尽く。
(どうしたらいいんだろう…)

子供の頃のことだから、吉野君の顔はもうはっきりと覚えていなかった。
ただ、母君そっくりの女顔だったことは記憶にある。


「あのね 瑠璃はさ、いつも男の子みたいだってゆわれるの。
 だから大きくなったら白拍子になるんだ」
「白拍子に?」
「うん。でも吉野君はかあいいから、五節の舞姫になるといいね」
「そして瑠璃姫と舞を舞うのですか?」
「そうよ。こうやって手をつないで踊るの!
 きっと似合うね 吉野君はかあいいもん」


瑠璃は、幼い頃のやり取りを思い出している。
今思えばめちゃくちゃなことを言っていたが、それくらい吉野君はきれいな顔をしていたのだ。
あの男と同じくらい、美しい顔を…
そう思い至って、瑠璃はぞくりとした。
しかし、あれが吉野君であるはずがない。吉野君は死んだはずなのだから…!

671 :粗筋中将4/5 :2007/07/12(木) 23:04:05 ID:???
あの日、母が亡くなってすっかり気弱になった祖母の側をなんとか離れ、瑠璃は久々に吉野君のところへ遊びに行った。
いつものように、遊んでたもれと呼びかけると、ぬっと寺の僧が現れた。
「あれは…もう、おらぬ…。死んでしもうたのじゃ、流行病で…死んでしもうたのじゃ…!!」
涙を押し殺しそう言われたが、瑠璃は信じることができなかった。
「瑠璃ちゃま」
吉野君の母が瑠璃を呼んだ。儚げな立ち姿でそこにいた。「ほんとうに…もう、あの子はいないのです」
母は目から溢れる涙を拭おうともせず瑠璃に言った。
「いつか…あの子との別れの日が来ることは知っていたのに それがあの子の運命なのだと…
 けれどあの子が悲しくて…あの子に申し訳なくて…
 辛い思いをさせ、侘しい暮らしをさせたうえに、守ってやることもできなかった…」
瑠璃は子供ながらに、吉野君の母を慰めた。
「吉野君はきっと浄土で菩薩さまになるもの。頭がすごくいかったから、きっと文殊菩薩さまになるんだよ!」
だから泣いちゃだめだ、と幼い手で母の袖を引っ張った。しかし、吉野君の母は、涙を止めずに首を振る。

「あの子は修羅へ行ったのです。劫火燃えさかる地獄よりもまだ恐ろしい、
 修羅の世界に行ったのですもの…!!」

泣き崩れる吉野君の母のこの時の言葉は、子供心にも恐ろしかった。

しかし、母君は吉野君が「死んだ」とは言わなかった。
死に顔を見たわけでもないが、その日のうちに荼毘に付したというのを信じていただけだ。

では、あの男は本当に吉野君で…
(吉野君は生きていたの…!?)


“吉野君は 名のある貴族の子で 母親の身分が低いために 世間に認められることもなく 吉野で育った…”


もし、吉野君の父があの大海入道…前左大臣だとしたら…。入道の身分を考えれば話のつじつまも合う。
吉野君が、亡き父の敵を討ろうとして瑠璃を狙っているのだとすれば…
(あたしと吉野君は敵同士になっちゃったの…!?)

672 :粗筋中将5/5 :2007/07/12(木) 23:05:13 ID:???
おまけ中将

白拍子(しらびょうし)…男のかっこうをして踊る女のヒト。遊女でもあったりする。
五節の舞姫(ごせちのまいひめ)…11月にある五節の祭りで舞う 女 の 子 たち。

673 :マロン名無しさん :2007/07/12(木) 23:22:59 ID:???
てかアザがつくほど本気で首絞められたのか(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル

674 :マロン名無しさん :2007/07/12(木) 23:26:43 ID:???
…吉野君に一体何があったんだ…

男装の幼女瑠璃と女装幼児吉野君を想像してワロタ
そして回想にさえ出ない高彬orz

675 :マロン名無しさん :2007/07/12(木) 23:30:44 ID:???
高彬は読者の心の中だけにいつまでもいます

676 :マロン名無しさん :2007/07/12(木) 23:41:41 ID:???
>>675
そんな力石みたいな……

677 :マロン名無しさん :2007/07/12(木) 23:41:43 ID:???
伽羅の数珠って相当高価だよね
金に不自由しない立場なのは確かそうだ。
やっぱり入道の隠し子?でも何でぼーさんになってんだろ?


678 :マロン名無しさん :2007/07/12(木) 23:44:27 ID:???
考えたら女と見紛う美形の坊さんってかなり怖いな
なぜ瑠璃をそれほど憎むんだ
入道は庇うほど良き父だったとは、とてもじゃないが思えん

679 :マロン名無しさん :2007/07/12(木) 23:46:25 ID:???
瑠璃って、斬り殺されそうになったり焼け死にそうになったり忙しいと思ったら
今度は絞殺寸前!
次は溺死?

680 :マロン名無しさん :2007/07/12(木) 23:48:15 ID:???
流行病って嘘の定番だな

まあ当時は予防接種とか殺菌とかないからあっという間に死ぬことはあっただろうが

681 :マロン名無しさん :2007/07/12(木) 23:50:25 ID:???
>>677
だよな。
脇腹の子を、正腹の子の妨げにならないよう出家させるってパターンはどっかで見たんだが…

682 :マロン名無しさん :2007/07/12(木) 23:55:28 ID:???
一休さん

683 :マロン名無しさん :2007/07/13(金) 01:43:32 ID:???
>>680
言われてみればそうだ>定番
死んだってのを間に受けてたよ

いやーでも生きててよかった…のか?

684 :マロン名無しさん :2007/07/13(金) 02:35:58 ID:???
首締めて放置って怖えー。
ちっさい頃の瑠璃と吉野君のやり取りが、
可愛らしいだけに尚更。

685 :マロン名無しさん :2007/07/13(金) 03:36:20 ID:???
ここで発想の転換

高彬の異母兄弟

686 :マロン名無しさん :2007/07/13(金) 08:11:54 ID:???
そんな事実でもないかぎり、
この先高彬がずーっと蚊帳の外になりそうです。

687 :マロン名無しさん :2007/07/13(金) 08:19:07 ID:???
>>682
あの人も帝の御落胤だったらしいからなあ。
時々母上様とお付きの女房みたいな人が物陰から一休さんの姿見て
「ヨヨヨ」って泣き崩れてたけど、当時はそんな事情があったとは知らなんだ。

688 :マロン名無しさん :2007/07/13(金) 09:01:22 ID:???
しんえもんさん=瑠璃

689 :マロン名無しさん :2007/07/13(金) 09:57:05 ID:???
どっちかっていうと、
瑠璃はさよちゃんでしんえもんさんは高彬じゃあるまいか

690 :マロン名無しさん :2007/07/13(金) 11:01:05 ID:???
アゴがわれた高彬イヤスwww

691 :マロン名無しさん :2007/07/13(金) 11:05:32 ID:???
二条堀川邸の警備薄すぎ

692 :マロン名無しさん :2007/07/13(金) 15:27:59 ID:???
ケツアゴ高彬。

693 :マロン名無しさん :2007/07/13(金) 16:47:31 ID:???
入道の血縁者でFA。
流行り病云々の嘘は、寺の後継ぎかなんかの関係で無理矢理引き離された。

694 :マロン名無しさん :2007/07/13(金) 16:51:16 ID:???
瑠璃の推理は当たるしな。

695 :マロン名無しさん :2007/07/13(金) 17:42:12 ID:???
よかった。
母親似でほんとによかった。

696 :粗筋中将1/4 :2007/07/13(金) 22:04:07 ID:???
瑠璃は、あの僧に握らされた数珠を手にした。
しかし、もともと悪いのは、鷹男の帝を陥れるために、陰謀を画策した大海入道の方ではないか。
きっと吉野君は入道にあることないこと吹き込まれたのだろう。本当に悪いのは鷹男や瑠璃で、自分ではないと。
そうでなければいくら親の敵とはいえ、あの吉野君が人を殺めたりするわけがない。
瑠璃は、吉野君の誤解を解かなければと決意した。
もう一度吉野君に会い、誤解を解いて、焼け死んだ者達の菩提を弔ってもらい、一生罪を償ってもらおう、と。
(そうでなきゃ…死んでいった者だって吉野君だって…救われないもの)
瑠璃は涙が流れる顔を覆った。
このことは、高彬にも、鷹男の帝にも言わず自分一人の胸にしまうと瑠璃は決めた。
(だからお願い、吉野君。これ以上罪を重ねたりしないで…!!)
握りしめた数珠に願いを込める瑠璃だった。

「そちらのお仕度は整って?」
「わたしの唐衣が見つからないわ、撫子の刺繍のやつよ。ゆうべ徹夜で仕上げたのに!」
「まあいや、誰よ御簾を巻き上げたのは。外から丸見えじゃないの」
二条堀川邸は、朝からばたばたわいわいがやがや大忙しである。
今日はとうとう、藤宮参内の日。なのに…
(小萩ってば、どうしちゃったのよ―――っ)
あの翌朝、早々に近江へ向かった小萩だが、3日経っても戻って来ないことに瑠璃は焦り、袿にくるまり隠れるように自室でじっとしていた。
「まあ瑠璃さま、まだそのような所にいらしたのですか?」
御簾を捲くられ、女房の一人に見つかってしまった。
「宮さまはもうお仕度を始められていらっしゃるのですよ。ささ!失礼のないようにあなたさまもお仕度を!」
そして、パンパンと手を叩くと女房連中がわらわらと瑠璃の元へ来、
抵抗する間も言い訳を考える間もなく、よってたかってざぱぱぱぱぱっと瑠璃の仕度を整えた。

697 :粗筋中将2/4 :2007/07/13(金) 22:06:22 ID:???
「まあ、よくお似合いですこと、瑠璃さま」
あっと言う間に十二単で着飾った瑠璃が出来上がった。
藤宮へ挨拶に参ろうと、女房に連れ添って行く途中、外ではざわざわと賑やかだ。
瑠璃が、今日はずい分と殿方の声が聞こえると言うと、
「帝から、中将さま他、高彬の少将さまが遣わされておいでなのですわ。やはり藤宮さまの御参内ともなりますと…ねえ?」
と、ちょっと自慢げな答えが返ってきた。
ここまでおおげさに出迎えられるのでは、仮病なんて使えない…と万事休すな瑠璃だった。

「あら瑠璃さま、きれいにお仕度なさいましたのね。お可愛らしいわ」
美しい藤宮に微笑まれ、瑠璃は照れた。藤宮も、十二単姿が艶やかだ。
おそらく藤宮も、それに従う女房たちも朝から仕度に大騒ぎだったのだろうと考えると、
自分のために藤宮たちを動かしてしまうことが、瑠璃はとても申し訳なく思えた。
しかし藤宮は、瑠璃を狙っているのが入道の残党なのだから、帝や自分が守るのは当然だと思っている。
瑠璃としては、その残党に会って話がしたいと思っているから困ったものだ。
(ああ、せめてあと一日参内が延びないかしら。小萩が戻ってきて荷葉の女の正体がわかれば、なんとか出来るのに…)
「ほんとうに遅いですわね、瑠璃さま」
考えていることと藤宮の言動が一致し、瑠璃は驚いた。
「出車の時刻が遅れているのですわ。何という不手際でしょう」
小萩のことを藤宮が知る由もなかったのでほっとしたが、改めて瑠璃は、小萩の帰りを待たずにいられなかった。
荷葉の女と吉野君を繋ぐ糸をなんとしてでも調べたい―─
その時、女房がやって来て、高彬が瑠璃を呼んでいることを伝えた。

698 :粗筋中将3/4 :2007/07/13(金) 22:07:44 ID:???
「今日の参内は延期―――っ!?」
困り顔の高彬が瑠璃に伝えた内容だった。
今陰陽の阿部氏に吉日を占わせているが、次の参内はいつになるかわからない、ということも。
すっかり困っている高彬をよそに、瑠璃は、その間に小萩と策を練られると、思いがけない幸運に顔が緩んでいた。
それを見かねた高彬が、ずい分と嬉しそうではないか、と嫌味を言う。
「これだけの人数が動く参内に日時の変更があるのは重大事なんだよ、わかってるの?」
と諌められて、反省する瑠璃だったが、次の言葉に浮かれた気分は吹き飛んだ。
「承香殿の女御の女房が頓死してただけでも頭が痛いっていうのに」
つまり、宮中で女房がぽっくり逝ってしまったということだ。

今朝方、脇息にもたれたまま、外傷もなく死んでいるところが発見されたのだという。
最近その女房は沈みがちだったことからどこか悪くしていたのかもしれないが、おそらく心臓発作だろうという見立てだった。
女房が死んでいた部屋が承香殿の西面に当たるため、登華殿に入る藤宮は穢れにぶつかることになり、延期が決定された。
瑠璃は恐る恐る聞いた。
「高彬、その女房って…身元は確かなの?」
「失礼だな瑠璃さん。うちに勤めてる女房はみんな身元の確かな者たちばかりだ」
まして、承香殿の女御付きの女房ともなれば、祖父母に至るまではっきりしている。
死んだ女房は「越前」と呼ばれており、前越前守の娘だという。越前と言えば、上国で、高彬の父とも親しい。
怪しいところなどひとつもないそうだ。
「越前って…確か近江の近くよね、湖のある…」
「そうだね。そういえば石山詣にも行ったらしいよ。女御も、何かと忙しい時期だっただけに、
 休暇の願いを出されて困ったと漏らされてたっけ」
せっかく石山寺に詣でたのにこんなことになってしまうなんて、なんだか気の毒だ、という高彬の声はもう瑠璃の耳に届かない。

越前が荷葉の女だった。
瑠璃も、小萩も間に合わなかった。荷葉の女は殺されてしまった。
(それも、最も安全だと思われていた鷹男のいる後宮で―――!!)

699 :粗筋中将4/4 :2007/07/13(金) 22:09:06 ID:???
瑠璃のすっかり青ざめた顔に、高彬は、こんな話をして申し訳ないと詫びた。
「まあ瑠璃さんにとっては今日の参内が延期になってよかったのかもしれないな。ずい分としぶっていたから」
「そんなことないわ…、一刻も早く後宮に上がりたいくらいよ…!」
(事態がこうなった以上…!)

小萩は、夜も遅くになって帰ってきた。
途中、車の車輪が壊れてしまい、半日帰りが延びてしまったことを詫び、石山寺からの参詣帳の写しを瑠璃に渡した。
間違いはなかった。そこに確かに記されていた。
“前越前守 源厚盛の女”
越前は、紛れもなく荷葉の女だった…!

瑠璃は、荷葉の女を守れなかったが、あの男が言っていたことがすべて事実だと言うことがわかってしまった。
名を騙った違う人間なのではなく、
あの男が本当に吉野君だとわかってしまった―――!

こうなれば、もう後にはひけないと思う瑠璃だった。
例え親の敵でも、逆怨みで多くの人を焼き殺すような、荷葉の女までも殺してしまうような吉野君を、放っておくことはできない。
(鬼となってしまった吉野君を、あたしは絶対に許さない…!!)

700 :おまけ中将 :2007/07/13(金) 22:10:28 ID:???
上国(じょうこく)…地方長官(守(カミ))の担当する国は大・上・中・下の4等級に分かれていた。
         上国の越前は上から二番目。もちろん、長官の身入りもよかった。

701 :マロン名無しさん :2007/07/13(金) 22:36:50 ID:???
ひぃぃぃー
後宮にいたのに殺されたのか!
吉野君どうやって入り込んだんだ?

702 :マロン名無しさん :2007/07/14(土) 00:04:03 ID:???
瑠璃をめぐっての三つ巴になるのかとも思ったが
それだけはなさそうだな。

703 :マロン名無しさん :2007/07/14(土) 00:20:06 ID:???
初恋の人を敵と覚悟するって切ないな

正装瑠璃カワユス
ざぱぱぱ女房たちワロス

704 :マロン名無しさん :2007/07/14(土) 00:38:47 ID:???
高彬出てきて嬉しいよ
でもまた高彬ほっといて瑠璃だけで突っ走る気満々だ

705 :マロン名無しさん :2007/07/14(土) 02:24:05 ID:???
>701 女装とかw

706 :マロン名無しさん :2007/07/14(土) 08:09:11 ID:???
ざぱぱぱワロス
しかし吉野君、後宮にコネありって…鷹男めっさ危ないじゃん

707 :粗筋中将1/4 :2007/07/14(土) 17:31:21 ID:???
「…九条。九条…?」
瑠璃ははっとし、返事をした。目の前には相変わらず艶やかに微笑む藤宮。
「この半月というもの、いろいろあってずい分と楽しゅうございましたわね、と申し上げたのですわ。
 もっとも瑠璃さま…いえ、九条には、つまらなかったようですけど」
ここは後宮、藤宮のあがる登華殿で、九条、というのは、ここでの瑠璃の呼び名だった。
ゆったりと話しかける藤宮に、瑠璃は嫌味のひとつでも言ってみたくなって
「そうでもありませんわ藤宮さま。わたくしも 藤 宮 さ ま と 同 じ く ら い 毎日が楽しくて仕方ありませんもの!」
棘のある言い方に、藤宮はバツが悪そうに顔を扇で隠した。

生粋の宮中育ちの藤宮と違い、瑠璃にとってこの半月は地獄のように忙しかった。
だいたいにして、藤宮が参内する理由もからして大仰だった。
先々帝から譲られた大和絵の屏風を、たっての願いで承香殿の女御に譲ることになったのだけれど、
その屏風に書き散らされた和歌が、名筆の誉れの高い先々帝自らによる畏れ多い品ゆえ藤宮自ら渡しにあがることになり、
今回の参内がセッティングされたのだ。
一方女御側では、ありがたくも美しい屏風なので後宮うち揃って鑑賞会を兼ねた歌合せをしたい、と言い藤宮を後宮に留め、
藤宮も帝の声掛りでさらにそのお礼として宴を催し…
おかげでこの半月というもの、
(後宮は宴の大安売りよ!)
瑠璃は思い出して腹が立っていた。
藤宮付きの女房として後宮にあがったものだから、当然全ての宴に引っ張り出されていた。
衣装をとっかえひっかえするだけでも大変なのに、
とっさに歌を詠みかけられた時にそなえ、無難な歌をいくつもカンペに用意しておかなければならない。
慣れない後宮で瑠璃はヒステリー寸前で、何度ぶっち切れるかと思ったかしれなかった。

708 :粗筋中将2/4 :2007/07/14(土) 17:33:38 ID:???
「そういえば藤宮さまってば、ほんっといとも優雅に後宮での生活をエンジョイしていらしたものねえ。
 まるでわたくしを ダ シ に、後宮へ遊びにいらしたみたい」
かなりストレスが溜まっている瑠璃は、イジワルに言ってみた。藤宮は図星のようで、またしても扇に隠れてしまった。
(少しは藤宮さまもお困りになるとよろしいんだわ)
藤宮も、フォローのつもりかこう返してきた。
「わたくしがこうして参内したのは、九条を無事後宮へお入れするためでしたのよ。
 ここでの生活が楽しかったとは申せ、二条堀川のお邸も心配でしたし…主のいない邸って何かと乱れますでしょう?」
「では、あす退出することになってお嬉しいでしょう?」
にっこり笑う瑠璃の皮肉に気付き、藤宮は困るしかなかった。

とはいえ、瑠璃もこの宴続きの毎日は、皆が瑠璃を慰めるために用意したものだとわかってはいた。
だから半月もの間おとなしく宮中をうろつくこともしなかったのだ。
しかし明日で藤宮は後宮を退出する。そうなれば瑠璃は承香殿の女御の女房部屋の一つに入ることになるから、
越前の女房のことなどを、他の女房たちから聞きだすことが出来る。
鷹男の帝にもいろいろと話を…
(そう、問題は鷹男の帝だったわ)
瑠璃は、後宮に上がれば、鷹男から何かと話を聞けると思っていたのに、未だ鷹男は瑠璃に会ってはくれなかった。
承香殿の女御の歌合せの時など、御帳台に収まって顔を出してくれるはずもなく、
瑠璃の歌合せの相方の女房が詠んだ歌をいたく気に入ったと言葉をかけたくせに、瑠璃のことは完全に無視していた。
(いったい誰の身を案じてあたしがここにいると思ってんのよ。鷹男のばかっ!!)
ぶつぶつと思い出している瑠璃の姿に、藤宮は何か気にかかることでもあるのか、と声をかけた。
「先ほどからいらいらなさってるご様子でしょう。それほど宴続きの毎日がお嫌だったのかと…」
「…いえ、藤宮さまが退出なさればこのお祭り騒ぎも終わるからもういいんです」
瑠璃の言葉に藤宮はちょっとキズついたが、本当のことなので何も返せなかった。
「あたしが気にしているのは、もっと、他の…」
そう顔を暗くする瑠璃に、藤宮は、瑠璃を怨むものがいても、この後宮までは追って来れないと安心させる気持ちで言った。
そうだといいのだが…

709 :粗筋中将3/4 :2007/07/14(土) 17:35:37 ID:???
そうこうしているうちに、女房がやってきて、藤宮に告げた。
「ただいま帝がおなり遊ばします。明日退出なさるため、お言葉があります」

やがて藤宮の部屋にやって来た帝は、一番の上の席に座した。
(なんか ほんと 高彬の言ってたとーり、鷹男ってばカッコよくなってるなー)
後宮に上がって以来初めて顔を合わせる鷹男に、瑠璃は思う。
しかし、お互い顔の見える位置にいながらも、やはり瑠璃のことはまるっきり無視して話は進んでいた。
ひとり不貞腐れ、わざわざ無理して後宮にあがったことをぶつぶつ後悔していた瑠璃に、突然声がかかる。
「瑠璃姫」
「あ?」
「どうしたのです瑠璃姫、ぼんやりとしてあなたらしくもない」
いつの間にやら目の前の至近距離に、にこにことご機嫌な鷹男が座っていた。
不意を突かれた瑠璃があたりを見回すと、部屋には瑠璃と鷹男と藤宮の3人きりになっていた。
ゆっくりと話をするため、あとの者は藤宮が下がらせていたのだ。

「わたしの恋のかけひきは、まんざらでもなかったようですね、瑠璃姫」
鷹男曰く、今まで鷹男が瑠璃を避けていたのは、鷹男に会いたいという瑠璃の気持ちを募らせるためだったという。
「先刻わたしを見た瑠璃姫はいうにいわれぬ嬉しそうな顔をなさった。
 ということは、わたしに会えて嬉しいのでしょう、瑠璃姫」
そう言って片目を瞑ってみせるのだった。
そんな鷹男にすっかり脱力し、瑠璃は思わず口にした。
「…いいわね鷹男って。毎日が平和そうで…!」
「鷹男?」
オウム返しな鷹男に瑠璃はハッとする。
(しまった!この人ってば、畏れ多くも「 帝 」だったんだっけ――っ!!)
慌てる瑠璃に、鷹男は顔を綻ばせ、やっといつもの瑠璃姫らしくなった、あなたに堅苦しいのは似合わない、と笑いかけた。
鷹男と呼んでもいいのか、と問う瑠璃に答えた。
「それ以外、姫はわたしの名前を知らないでしょう?」
思わず顔を赤らめてしまう瑠璃だった。

710 :粗筋中将4/4 :2007/07/14(土) 17:36:43 ID:???
鷹男は、宮中での瑠璃が何かと憂鬱そうにしていたから心配していた、と続けた。
歌合せの時も何度もため息をついては筆を置き、また持ち直すといった様子が、
歌が出来ないのではないか、満座の中で恥をかくのではないかと気が気ではなかったと言う。
無視していたわけではなく、しっかりと鷹男は瑠璃を見ていたのだ。
「あの時は、こんな歌を考えてる時じゃないのにって、それでタメ息ついてたわけで、何も歌のせいじゃないわ」
「しかし、できた歌はなかなかのもので―――」
「だから今は歌の話をしてるんじゃないのッ!」
いつまでも本題に入れないのに痺れをきらし、瑠璃は単刀直入に聞いた。
入道の残党捜索について、何か進展はなかったのかと。
鷹男は大らかに言った。後宮にいる限り、瑠璃の身は必ず守るから心配はいらない。
「あたしは、自分の身ぐらい自分で守れるわ!
 あたしが心配してるのは、鷹男の帝本人のことよ!」
そして瑠璃は続ける。最近鷹男のまわりで不審なことはなかったか、と。
瑠璃を狙ったのが入道の残党だとしたら、次に狙われるのは、当然鷹男だと、瑠璃は考えていたのだ。

吉野君が親の敵として瑠璃一人を殺すつもりなら、わざわざ宮中にいる女房・荷葉の女を仲間にする必要はなかった。
荷葉の女「越前」は、入道との繋がりは全くなかったと言っていい。
と言うことは、越前もまた、吉野君の美貌に惑わされ、利用されたのだろう。
そして越前の早い死は、吉野君が人の手を介さず、自ら手を下したと考えられる。
吉野君はいとも簡単に後宮への出入りが出来ることを示しているのだ。
(越前が後宮で死んだ以上、吉野君の真の狙いは帝の命だと見て間違いはない…!!)

鷹男が再三後宮へ上がるように勧めたのは、入道の残党の報復を心配したからだということは、
「あたしの身を心配する以上、きっと鷹男の身辺にも何かあったんじゃないかと思ったの」
ほんとうに何もなかったのか、と瑠璃は鷹男に詰め寄った。

711 :マロン名無しさん :2007/07/14(土) 23:29:46 ID:???
ああ、鷹男好きだが君ががんばると高彬が不憫で泣けてくるよ

712 :マロン名無しさん :2007/07/15(日) 00:16:54 ID:???
格式だらけの窮屈な宮中生活は瑠璃には無理だね
入内しなくて正解
でも鷹男は、瑠璃にさんざか避けられた仕返しかと思うとちょっと可愛い

高彬はどこで何を……

713 :マロン名無しさん :2007/07/15(日) 00:24:27 ID:???
宴の大安売りや〜

こんなフレーズが将来流行る気がする

714 :マロン名無しさん :2007/07/15(日) 02:59:20 ID:???
扇で顔を隠す藤宮さま可愛い。

715 :マロン名無しさん :2007/07/15(日) 17:35:53 ID:???
鷹男、事情を知らないとはいえのんきすぎ。
でも確かに格好よいな。

716 :粗筋中将1/4 :2007/07/15(日) 22:16:20 ID:???
鷹男はくすっと笑い、言った。「だからわたしは瑠璃姫が好きなのです」
ノーテンキな態度に、瑠璃はカッとなった。
「好きとか嫌いとか!今はそんな話してる時じゃないでしょ!?」
瑠璃が後宮にあがったのも、自分の命が惜しいわけじゃない。鷹男が狙われていると思うからだ。
いつ吉野君が後宮に現れるかと、瑠璃は毎日神経を張り詰めて生活していたというのに、
鷹男と言えばいとも優雅に宴三昧の日々を送っているから、瑠璃もいい加減頭に来るというものだ。
顔を真っ赤にしてぷいっと横を向く瑠璃に鷹男は再び言った。
「困りましたね。信じてはいただけませんか?ほんとうにわたしは瑠璃姫が大好きなのですよ。
 特にその、勘の良いところが…ね」
片目を瞑り笑いかける鷹男だった。

鷹男は話始めた。即位してすぐのこと、鷹男の母宮…今は国母となった大皇の宮の寝室の枕元に、ある朝
「新帝怨参候(しんていうらみまいらせそうろう)」と書かれた呪詛状が、小刀で突き刺されて置かれていたという。
鷹男を狙う残党がいるのだ、とすぐに思い当たったということだった。
しかし、帝の立場の鷹男が、いくら母宮のためとはいえ動揺すれば、宮中、ひいては都が乱れるもととなる。
また、入道とは違った勢力がその混乱に乗じてよからぬことを企てるかもしれない。
御世が変わったばかりの時に、このことを表沙汰にして要らぬ動揺を起こしたくなかったために、
藤宮はおろか誰にも話すことは出来なかったのだ。
改めて、瑠璃と藤宮にこのことはくれぐれも口外しないように、と念を押した。
「でなければ、わざわざ瑠璃姫に回りくどい方法で後宮に来ていただいた意味がなくなりますからね」
にこっと鷹男は微笑みかけた。
何度も使者を追い返されても、しつこく参内を勧めていたのは、至極当然のことだったのだ。
「ごめんなさいねあたしってば、そんなことも知らないで、イロイロと駄々こねちゃって…」
瑠璃は鷹男の思慮の深さを思い、改めて反省するのだった。
「いいのですよ。あの焼き打ちは恐ろしい出来事だったが、そのおかげで瑠璃姫は参内してくださった」
後宮にいるかぎり、安全だ、と言ってくれる鷹男を瑠璃は頼もしく思う。


717 :粗筋中将2/4 :2007/07/15(日) 22:17:36 ID:SssAhotj
瑠璃を参内させる名目で藤宮とも久々に会え、無事な姿を確認できて鷹男は安心もしていた。
藤宮もあの事件に関わっていたのだから、藤宮の身も案じていた、と言う鷹男に藤宮は嬉しそうだった。
ところで、その鷹男の母宮の寝所へ入った犯人については、未だなにもわかっていないのだった。
この話について語る時は、鷹男も暗い表情を隠せなかった。
鷹男の母・大皇の宮、今は光徳院となった先帝と一緒に、院の御所に住んでいる。
しかし、その警固の厳しい院の御所に易々入り込み、
寝ている大皇の宮をいくらでも傷つけることが出来たのに、枕元に小刀を突き刺して帰ったということは、
狙いは新帝である鷹男ひとりだという犯人の意思表示だと見ている。
何の形跡も残さずどうして寝室にまで入り込むことが出来たのか…
大皇の宮にも孝雄は、なるべく安全な後宮へ来るように勧め、近々それが叶うのだが、
「帝という位にあっては、このような生ぬるい方法でしか、大皇の宮をお守りする術がないのです」
そう言って鷹男は顔を曇らせた。

(あ、駄目)
瑠璃は、鷹男の見たことのない表情に心が動いた。
(こんな鷹男見てたら、犯人が吉野君だってしゃべっちゃうよ―――っ!!)
たぶん、院の御所には吉野君を手引きした女房がいた筈だ。二の姫や、越前のように、その美貌に惑わされた者が…。
すでに多くの人を殺めている吉野君は、次は帝の命まで狙うつもりなのか?
瑠璃にはもう吉野君を止められないのか…

知らず瑠璃は泣いていた。
その様子に気付き近付いた鷹男の手を取り、涙の流れる頬を上げて瑠璃は言った。
「あたしが守るわ…!高尾の命、あたしが守ってみせる。絶対に殺させたりしないから…!」

718 :粗筋中将3/4 :2007/07/15(日) 22:20:33 ID:???
「あなたがわたしを守ってくれるのですか?それではあべこべですね」
思わず微笑みが漏れる鷹男だった。
鷹男とて、このままおとなしくしているわけではなかった。
三条邸の焼き打ちを、入道事件の残党を調べる機会だとし、今高彬に調べさせているところだという。
「少将には個人的な引っかかりもありますが、あの人の有能さは頼りになりますからね」
“個人的な引っかかり”に顔をひきつらせている瑠璃の手を、いつの間にか鷹男はしっかり握っていた。
「それにしても瑠璃姫がそこまでわたしの身を案じていてくれたとは嬉しい。即位してからの密かな悩みも消えてゆくようです。
 少しは期待してもいいのですか?」
じっと見つめてくる鷹男に、瑠璃の顔は真っ赤になった。
(どーして鷹男ってばこーゆー時にこんなことが言えるのよ―――っ!!)
ばっとその手を解いた瑠璃に、鷹男は残念そうだった。

「そっ…それよりも、高彬のほうの調べは進んでるのっ!?」慌てて変えた話題に、鷹男は真剣な表情に戻り、答えた。
命じてから間もないが、先頃の承香殿女御付きの女房の不審な死を遂げたが、時が時だけにそれについても調べさせているという。
きっと高彬は、帝の命令には絶対で有能な高彬はきっと吉野君のことを突き止めるだろう。瑠璃は直感した。
(でも、だめよ。吉野君をつかまえちゃだめ!
 もう一度…もう一度だけ、あたしは話をするんだもの!)
吉野君が帝の命を狙うには、きっとそれなりの理由があるはずだ。
瑠璃が、吉野君の父入道の敵だとしても、心を尽くして説得すれば、わかってくれるに違いない。
もしそれでも吉野君がわかってくれなかったその時は…
(あたしがこの手で吉野君を朝廷に引き渡す。高彬の手で捕えてもらう…!)

さわさわと衣擦れの音がして、部屋の外から声がかかった。
「お待ちかねの者、参りました」
その言葉に鷹男は表情を変え、こう答える。「そう。どこに」
「清涼殿の庭先に」
「では、こちらへ」
次は、藤宮へ話しかけるように、続ける。
「藤宮も 明日は退出。一度目通りさせておこうと思っていた。登華殿の昇殿、許す。参らせよ」
かしこまりました、と返事があり、衣擦れの音は再び遠くに去っていった。

719 :粗筋中将4/4 :2007/07/15(日) 22:21:36 ID:???
(び… びっくりした―――っ)
なんじゃ今のやりとりは、と瑠璃は緊張を解き、鷹男に言う。
「なんか…すっかり帝、なのね、鷹男って…」
瑠璃の言葉に表情を戻し、鷹男は微笑んだ。
「まさか後宮で、『あの時』のように振舞えませんからね。けれど、わたしの姫への心は変わっていませんよ」
お茶目に片目を瞑る鷹男に、瑠璃は赤面するしかなかった。

次に鷹男に話しかけたのは藤宮だった。
「お待ちかねの者とは、もしや正良親王…いえ、涼林院の…?」
鷹男の表情が険しく変わったことにハッとし、藤宮はその先を慎んだ。
「なあに?涼林院さまがいらっしゃるの?」
瑠璃は鷹男に聞いたが、鷹男は沈んだ表情で瑠璃に答える。
逆臣と関わった身ゆえ、鷹男の弟宮とはいえ再び宮中にあがることは出来ない。
しかし鷹男は、幼くして仏門に入った涼林院(弟宮)の近況を知りたく、時々、涼林院に仕える者を参内させているのだという。
「内々に御様子を知るくらいは…帝の意をもって許されるでしょう」
鷹男と共に、瑠璃も、今は大原寺あたりの寺にいる、まだたった6歳の涼林院を思い浮かべていた。

その時、部屋の外がどよめいた。驚いている瑠璃に、
「何でもありませんよ、九条。あれが参内した時はいつもこうなのです」
帝の表情をした鷹男は答える。その切り替えの早さにさすがと思いつつ、一体どんな人がくるのかと興味も沸いた。

やがて廂の向こうから現れた人物に、瑠璃は驚きのあまり、手元の扇を取り落とした。


( 吉 野 君 …!? )

720 :マロン名無しさん :2007/07/15(日) 23:29:14 ID:dxmsrKFO
吉野君、宮中に登場?!

721 :マロン名無しさん :2007/07/15(日) 23:35:11 ID:???
吉野君白昼どうどうと宮中に参内?!
いかんワクワクしてきた。

722 :マロン名無しさん :2007/07/16(月) 00:08:07 ID:???
鷹男はやっぱりイイ男だし
吉野君は御所に現われちゃうし
役者が揃って盛り上がってきたわぁ〜

誰か足りない?気のせいよね

723 :マロン名無しさん :2007/07/16(月) 00:13:30 ID:???
「個人的なひっかかり」に負けずに高彬は地道に捜査活動してます…λ……

どさくさにまぎれて口説いてる鷹男www
やはりよっしーは入道の縁者?

724 :マロン名無しさん :2007/07/16(月) 01:06:14 ID:???
高彬…また蚊帳の外でテラカワイソス(´;ω;`)ブワッ

725 :マロン名無しさん :2007/07/16(月) 01:13:57 ID:???
出番がないことでここまで存在感を発揮するヒーローがいただろうか。

726 :マロン名無しさん :2007/07/16(月) 01:25:28 ID:???
自分も殺されかけたのに、ときめいた相手(しかも権力者)に
「あたしが守る!」と言う、瑠璃は男前だな。

727 :マロン名無しさん :2007/07/16(月) 01:54:24 ID:???
> 後宮にいるかぎり、安全だ、と言ってくれる鷹男を瑠璃は頼もしく思う。

ΩΩ Ω< た、高彬を忘れないでくれーーー

728 :マロン名無しさん :2007/07/16(月) 02:01:31 ID:???
涼林院=正良親王に仕えてる者、で吉野君が来たってことは、
入道が正良親王を息子に託したってことか。

729 :マロン名無しさん :2007/07/16(月) 02:04:24 ID:???
728追記
正良親王は入道にとっては孫なんだよな。娘の子供で…
ってことは、息子に孫を託したってことか。

730 :マロン名無しさん :2007/07/16(月) 06:21:51 ID:???
>>723>>728
えー?
正良親王の下に入道の縁者を置くなんて事を朝廷が見過ごす訳なくね?
また謀反考えても構わないよって言ってるようなもんじゃん。

731 :マロン名無しさん :2007/07/16(月) 09:36:52 ID:???
再三後宮に呼んでたのは安全のためだったのか。
じゃあ火事があったと聞いて肝を潰したろうな。

732 :マロン名無しさん :2007/07/16(月) 10:39:29 ID:???
>>730
いや、ひょっとしたら鷹男は吉野君が入道の縁って知らないのかもしれないぞ。
あの陰謀考えて、いざという時まで吉野君を隠してたとか…

733 :マロン名無しさん :2007/07/16(月) 12:25:01 ID:???
私は、とある事実に今、気付いてしまったのだ。

高彬は特に存在しなくてもよかったのではないか、ということにーー。

734 :マロン名無しさん :2007/07/16(月) 15:25:39 ID:???
>>733
だめだめえ気付いちゃw

高彬は瑠璃のガソリン。
高彬との結婚があるから瑠璃は一生懸命無茶するんだよ。
瑠璃がおとなしく家にいちゃ物語にならん。
実は地味に誰より重要な役なのさ。

735 :マロン名無しさん :2007/07/16(月) 15:56:51 ID:???
総合すると、物語としては必要なポジションだが表舞台に居る必要は無いということか。

736 :マロン名無しさん :2007/07/16(月) 16:13:30 ID:???
少年漫画のヒロインみたいな

737 :マロン名無しさん :2007/07/16(月) 18:25:06 ID:???
今回の高彬は小さく1コマだったな
ストーリー上はそれ位の存在価値?

738 :粗筋中将1/4 :2007/07/16(月) 22:08:21 ID:???
(どうして…どうして吉野君が後宮に…!?)

瑠璃の驚きとは対照的に、吉野君は淡々と鷹男の帝と言葉を交わしている。
「いかがか、北の大原あたり」
「相変わらず…読経三昧でございます」
鷹男は、顔を曇らせた。
「あれは、まだ字がよくわからぬだろうに。きちんと誦しておられるだろうか…
 おまえが よく導いていますか」
「わたくしは、そのような任にはありません。数ならぬ身なれば」
「大師慈源の高弟でありながら、何を言われる。よろしく、導くよう…」
「御言葉、胸に。
 大原のあたりも、心を強く持たれましょう。ここしばらくお風邪を召されているようで、
 お心細くも、弱くもあられるようですから」
「…病を得たか。おかわいそうに…」

一体、吉野君は…瑠璃は一連のやりとりをじっと見ていた。

「承香殿のあたりで、穢れがあった。女御が心細がられて… 読経なりと参るよう。
 今日はここに すべて あるように…」

一礼し、吉野君は退出した。これから承香殿に読経に行くのだった。
瑠璃の方は一度も見なかった。

739 :粗筋中将2/4 :2007/07/16(月) 22:11:50 ID:???
「何と言う美しい僧なのでしょう…」
藤宮がほぉーっとため息をつき、瑠璃は我に返った。藤宮は、あの者は誰だと尋ねる。
「慈源阿闍梨の高弟にして学僧、唯恵と申す律師ですよ」
(ゆいけい…!?)
あの若さで律師とはすばらしい、と言う藤宮に、鷹男は、自分が階を上げさせたのだ、と答えた。
「あの者は、かの入道事件の折、弟宮を出家させた者なのですよ」
吉野君が正良親王を…瑠璃が驚いている横で、藤宮と鷹男の話は続いている。
「けれど、あれほどの美しさを墨染めで隠すというのは、何かもったいないような思いがいたしますわ」
「そうですね。あれも、昔はそうでもなかったのですが、ここ1、2年の間に美しさに凄味を増したというか…
 女房たちは“冴え氷る君”などと呼び合って、あれが参内すると大騒ぎをしていますよ。
 その時ばかりはわたしも、切ない思いをしているのです」
胸を押さえため息をつく鷹男に、藤宮はまあ、と答える。
「でも、“冴え氷る君”とは不吉な例えですのね。あの妖しいまでの美しさには、確かにそのような感じがいたしますけれど…」
「いや、いくら言い寄っても決してなびいてはくれないという意味のようですよ。もっとも僧侶の身で簡単になびかれても困りますが…」
「ま」
二人は優雅に笑いあっている。
瑠璃はそんな二人に、(扇でカオ隠して笑ってるバアイじゃないのよ!)とヤキモキしていた。
入道の子供かもしれない吉野君…唯恵が、宮中にあんなに堂々と出入りしているとは…
一人黙り込む瑠璃に、鷹男は声をかける。
「どうしました九条。唯恵の美しさに見とれ、声も出ないのですか?」
瑠璃は思い切って聞いた。あの唯恵という僧はいつからこの宮中に上がっているのかと。
すると、鷹男は扇をパチンと閉じた。それを合図に、控えていた者達はみな退出する。
再び部屋には3人のみとなった。

唯恵は、鷹男の父光徳院が在位中から宮中に参内していた。
慈源にも大層目をかけられていたようで、参内する際よく供に連れていたという。
鷹男自身は親しいわけではないが、信頼している僧だった。何しろ、弟宮を出家させ救った者だったから。
しかし瑠璃は、弟宮を救ったのは、唯恵が入道に縁の者だからではないのかと疑問をぶつけた。


740 :粗筋中将3/4@ :2007/07/16(月) 22:15:16 ID:???
鷹男は、その推理力はさすが瑠璃だと誉めた。確かに、そう考えられないこともない。
しかし、唯恵は、その時まで弟宮に会ったこともなかったはずなのだ。
なぜなら、弟宮を宮中から脱出させ出家させるように命じたのは、鷹男自身だったのだから。
入道の陰謀が明らかになれば、親王の身といえど流刑は免れない。しかし、鷹男の一存で法を曲げ救うこともまたできない。
「せめて、幼い身で京を払われることのないよう、すぐに落飾させることが、わたしにできるすべてでした」
そして、鷹男は、その日のことを語りだした。

その日、弟宮を出家させる案を伝えるために、鷹男は、見舞いと称し病床の父のもとを訪れた。
病のための修法に参内していた慈源阿闍梨の供の僧侶の中に唯恵の姿を見たのはその時だった。
唯恵のことはその美しさゆえ、以前から見知っていた。
言葉を交わしたことはないが、いつも阿闍梨の後ろに、うつむきがちに控えていたことを覚えていた。
弟宮の落飾は一刻を争っていた。
この機を逃せば、弟宮を宮中から脱出させることも困難になる。そうなれば二度と弟宮を助ける機会は…
鷹男は決意し、唯恵にだけ聞こえる声で囁いた。
「大事がある。正良を落飾させよ。すべては帝のご内意である。内々に」
唯恵の表情は一瞬揺れ、先帝の方を振り返った。御簾の中で、先帝がうなずく姿が見える。
そして、唯恵は静かに応えた。
「御仏の 導きのままに…」

741 :粗筋中将3/4A :2007/07/16(月) 22:18:21 ID:8bXGXtpI
そして唯恵は、その夜のうちに弟宮を宮中から連れ出し、無事出家を遂げさせることができた。
鷹男の口からとは言え内々のことで、万が一誰かに見咎められていたら、親王をかどわかした罪に問われることもあるのに、
その危険を顧みず弟宮を落飾させた唯恵に、鷹男が信頼を寄せるのも当然のことだった。

(ああ、もうっ 鷹男ってば何てのんきなこと言ってんのよっ!!)
吉野君は、入道の子供かもしれないのだ。頼まれなくても、正良親王は助け出されていただろう。
一人危険を感じ、言葉を失くしている瑠璃の姿を鷹男は喜んでいるようだ。
「しかし、嬉しいものですね。瑠璃姫があの唯恵に心を動かされないばかりか、わたしのために疑ってまでくれていたとは」
突然の鷹男の笑顔に、瑠璃はまたしても赤面して戸惑う羽目になった。
「あれが参内すると私の影も薄くなってしまうのだが、瑠璃姫ただひとりのお気持ちで、わたしの口惜しさも紛れてしまいますよ」
しかし、今度ばかりは鷹男の口説き文句も瑠璃には届かなかった。
急に黙り込んだ瑠璃を、鷹男は不思議な顔で見つめていた。

742 :粗筋中将4/4 :2007/07/16(月) 22:20:53 ID:???
夜になり、瑠璃はひとり、部屋で燈台の明かりを見つめていた。
(まさか鷹男のこんな近くに吉野君がいたなんて…!!)
鷹男の信頼を得て吉野君はいつでも帝の命を狙える立場にいる。今は機が熟すのを待っているだけだろう。
しかし、吉野君のことを鷹男に話せない以上、危険が迫っていること言うわけにはいかない…
瑠璃は、何としてももう一度吉野君に会わなければならない、と改めて決意していた。
(会って、話をして、鷹男の命も吉野君も、ふたりとも救い出してみせるわ…!!)

読経の声が、瑠璃の部屋にも聞こえてくる。
吉野君は、昼間鷹男のもとにいた瑠璃を見ても顔色ひとつ変えなかったように、
今も、自分が殺した女のために、顔色ひとつ変えずに経を誦しているのだ。
(なんで、そんな鬼のためにあたしは一生懸命になってるんだろう)
瑠璃は泣けてきた。
しばらく膝を抱えて泣いていたが、ぐいっと涙を拭き、立ち上がった。
(こんなとこで悶々としてるよりは、読経の様子でも探りに行ったほうがマシってものよね!)
近くに行けば、控えている女房からも何かを聞けるかもしれないし、と、部屋を出、承香殿へと向かった。

承香殿へと向かう庭を瑠璃は歩いていた。
「どこへ 行くのですか…」
ビクリとした。
(吉野君…!!)
振り返ると、植え込みの向こうにいる吉野君が、まっすぐに瑠璃を見ていた。
美しくも冷たい表情のまま、無言で瑠璃に近付いてくる。瑠璃は立ちすくんで動けない。
吉野君の手が、瑠璃に向かって伸びた。

「あたし を 殺す… の…?」

743 :おまけ中将 :2007/07/16(月) 22:22:11 ID:???
北の大原あたり(きたのだいげんあたり)…遠まわしに正良親王のことを言っている。
阿闍梨(あじゃり)…お坊さんの先生にあたる偉い僧侶。
律師(りっし)…五位相当の僧官。偉い。

744 :マロン名無しさん :2007/07/16(月) 22:36:02 ID:???
>ここ1、2年の間に美しさに凄味を増したというか…

1、2年の間に吉野君に何が!?

745 :マロン名無しさん :2007/07/16(月) 22:47:30 ID:???
役者勢ぞろいでついにクライマックスってかんじだな。
しかし誰か忘れているような…


と思ったが気のせいだな。

746 :マロン名無しさん :2007/07/16(月) 22:51:12 ID:???
>>745
高彬は、もはやネタなのですか......(つД`)・゚・。

747 :マロン名無しさん :2007/07/16(月) 22:52:49 ID:???
ヒーローをネタ要員に格下げしないで°・(ノД`)・°・
ま、今度も瑠璃たちだけで解決しそうだけどさいじいじ
と、言いつつも帝な鷹男カッコヨス
吉野君こと唯恵はなんか背景ありそうだな。
こないだも結局瑠璃は殺せなかったので次も大丈夫と予想

748 :マロン名無しさん :2007/07/16(月) 22:56:43 ID:???
我々がネタにするしない以前に
瑠璃が高彬のタの字も思い出していない件

749 :マロン名無しさん :2007/07/16(月) 23:48:54 ID:???
高彬!今だ!瑠璃を助けに颯爽と現れるんだ!!婚約者のピンチだぞ!!!1!

いや、我々はひょっとしたら大どんでん返しをくらうのかもしれない。
高彬は実は当て馬で最後に瑠璃がくっつくのは吉野君or鷹男だという…

750 :マロン名無しさん :2007/07/16(月) 23:59:21 ID:???
イイ男=鷹男
色男・色悪=吉野君
善い人=高彬

751 :マロン名無しさん :2007/07/17(火) 00:01:58 ID:???
ヤダヤダ!
〃〃∩ _,,_
 ⊂⌒( `Д´)
  `ヽ_つ⊂ノ

ヤダ!!
   _,,_
〃〃(`Д´∩
  ⊂   (
   ヽ∩ つ

高彬とくっつかなきゃやだもん!!!・・・
〃〃∩ _,,_
 ⊂⌒(つД´)
  `ヽ_ノ⊂ノ

    ヒック‥グスン
   ∩
 ⊂⌒( _,,_)
  `ヽ_つ⊂ノ

zzz…
   ∩
 ⊂⌒( _,,_)
  `ヽ_つ⊂ノ


752 :マロン名無しさん :2007/07/17(火) 00:10:15 ID:t8/gJIYW
瑠璃の出家を止めるために尼寺へ来たみたいに、
高彬はいざという時現れるよ!
有能な人だから、吉野君の事何かつかんでそう。

753 :マロン名無しさん :2007/07/17(火) 02:13:34 ID:???
ちゅ〜して婚約してるんだから高彬は吉野君と対等、いや、優位だ
鷹男は権力と共闘経験がある

いや凄いレースですね


みんな、融やパパンを忘れてるだろ

754 :マロン名無しさん :2007/07/17(火) 03:02:12 ID:???
パタリロ40巻の話かと思った

755 :マロン名無しさん :2007/07/17(火) 08:43:06 ID:???
冴え氷る君って不吉な例えなのか。
でも稀代の悪美僧に自分を持ってくるかw>氷室冴子

756 :マロン名無しさん :2007/07/17(火) 09:09:12 ID:???
>>755
うわ、言われて初めて気づいたw
確かに原作者の名前だw

757 :マロン名無しさん :2007/07/17(火) 10:47:52 ID:???
ここで空気読まない有能っぷりで
「犯人は唯恵ってやつです。しょっ引いちゃいましょう」
とかいって彬が戻ってきます

758 :マロン名無しさん :2007/07/17(火) 11:29:11 ID:???
>>751
寝るなw

>>757
高彬の登場なら嬉しいが、その空気読まなさっぷりはちょっとイヤスwww

759 :マロン名無しさん :2007/07/17(火) 11:48:11 ID:???
てか彬てwそこで区切るなw
名前だけはいつまでも忘れないであげて…

760 :マロン名無しさん :2007/07/17(火) 19:00:47 ID:???
PCで見てたときは759の意味わかんなかったけど携帯で見てわかった。
757は高彬って書いてるんだけど高の字を旧字つかったから
機種によって消えてたんだな。

ということで高彬の名前まで忘れられてたわけじゃないよ<759

761 :759 :2007/07/17(火) 19:51:31 ID:???
おーほんとだ、PCで見たらちゃんと高彬が帰ってきてる。
次第にこうして皆の心の中からも消えていくのかと思ってしまった。

762 :マロン名無しさん :2007/07/17(火) 20:18:41 ID:???
おまいら高彬を何だと思ってるんだw
ていうか誰か瑠璃の心配をしろw

まあ殺しても死なないだろうが

763 :マロン名無しさん :2007/07/17(火) 21:38:13 ID:???
だってな〜
瑠璃は絶対死なないだろうけど高彬は簡単にフェイドアウトしそうだし

764 :マロン名無しさん :2007/07/17(火) 21:44:10 ID:???
        _, ,_  そんなリアルなこと言っちゃいけません
     ( ゜д゜)      
      ⊂彡☆))Д´) >>763


765 :粗筋中将1/5 :2007/07/17(火) 22:12:06 ID:???
「あたしを殺すの?」瑠璃の問いに吉野君はこう答えた。
「瑠璃姫は死にました」
静かな声だった。
「あの夜、瑠璃姫は、わたしの手の中で死んだのです。
 少しずつ、息がか細く絶え絶えになり、遠い日の美しい物語がやがて薄れていくように、瑠璃姫は少しずつ死んでいった…」
「あたし…生きてるわ。生きて、こうして目の前にいるじゃない…!吉野君の前にいるじゃないっ!!」
肩を揺さぶる瑠璃に、吉野君は目を閉じた。
「…昔、わたしのことを、そう呼んでくれた少女がいました。
 都の、名のある貴族の姫君だったのですが、姫にありがちな気位の高さもなく、野育ちの里娘のように、暖かで、勇ましい…
 優しい心根の、まっすぐな眼をした姫でした」

今は遠い、幼い日々を思い出していた。

766 :粗筋中将2/5 :2007/07/17(火) 22:13:57 ID:???
  ―――ある日、野犬に襲われた時も、その小さな姫はわたしを庇ってくれました。
    泣きながら 怖いのを我慢しながら 必死に石を投げ続け とうとうその野犬を追い払ってくれました。
       『よかったね吉野君、噛まれなくてよかったね よかった……』

「…だって、吉野君はきれいだったから
 あたしと違ってきれいだったから、噛まれて傷でも残ったりしたら大変だと思って…」
瑠璃は今にも泣いてしまいそうだった。
吉野君は続けた。
「その姫はわたしに、五節の舞姫になればいいとも言っていました。
 世の中の決まりも道理も知らないからこそ、あの姫はどこまでも純粋だった…」


      春は桜の中 夏は藤花の下 秋の野萩 冬の白雪…


   『遊んでたぁーもれっ。瑠璃だよーっ』『吉野君ーっこっちこっちーっ』
   『お祖母さまが事や習字をあんまりやれやれってうるさいから、抜け出してきちゃった』
   『あのね、瑠璃はね、吉野君がいっちばん好きだよ。父さまよりも母さまよりも、いっちばん好き…』


「吉野の四季がめぐる中、わたし達はとても幸せだった。
 いつかその姫を得て、静かに暮らしたいと― 美しい吉野で、一生幸福に暮らしたいと
 それだけが、わたしの望む総てだった…」

遠い吉野を見ているようだった。

767 :粗筋中将3/5 :2007/07/17(火) 22:15:28 ID:???
「だって…吉野君の母君が言ったもの…吉野君は死んだって言ってたもの…!!」
(昔の話を持ち出したってあたしは騙されない!今の吉野君は鬼じゃない!人を平気で殺めるような鬼じゃない…!!)
瑠璃は涙が止まらなかった。

「母君は、いずれわたしがこのような鬼に成り果てることを予見しておられたのです。
 だから、わたしが死んだものと思い切りたかったのでしょう」

吉野君は話した。
ある日、父が吉野君に会いたがっているからと、京から使いが来た。その時から、歯車は狂い始めたのだと―

「父君にはお会い出来ないものと思いずっと諦めていたのに、わたしはやはり父君にお目にかかりたかった」
その一心から、母や僧都の反対を裏切り、夜を縫ってまで京へ出立してしまった。
会ってはならない父に会うために…

吉野君の母の言葉が思い出された。あの子は修羅へ行ったのだ、劫火燃えさかる恐ろしい修羅へ―

「どうして…?どうしてそんなこと言うの?吉野君は鬼じゃない!鬼のくせに
 どうしてそんな澄んだ目であたしを見るの…!?」
涙は止まらず、瑠璃は言う。吉野君の表情は変わらない。
「…人を愛し親しむ時、人の目は青いと『晋書』にはあります。けれどあなたの眼は赤い。赤い眼は…」
「人を憎む時の眼よ…!」

「あたしは鬼を憎むわ!何人もの関係ない人を焼き殺して、荷葉の女まで平気で殺せる鬼を憎んでるんだもの!!
 憎んで、憎んで… … 
 
 …ここから逃げて…!! 」 

768 :粗筋中将4/5 :2007/07/17(火) 22:17:40 ID:???
吉野君の腕の中に飛び込んだ。胸に顔を埋め、吉野君を説得する。
いずれ有能な高彬が吉野君のことを突き止めてしまう。
けれど今なら、まだ“唯恵”のことを誰も疑っていない。だから逃げて、と。吉野かどこかに逃げて…
そして、殺した人の菩提を一生弔って欲しい、と訴えた。
「これ以上あたしは吉野君を怨みたくないから…吉野君には生きて… 生きていて ほしいから…っ!!」

吉野君は、確かに、三条邸に火をかけたことで捜索の手も厳しくなっていることは感じていた。
胸の中で泣きじゃくる瑠璃見ながら言った。
「あなたはいつもわたしの運命を握っている。いつか、あなたはわたしを滅ぼすかもしれない…」

なぜ吉野君はこんなにも落ち着いているのか。入道の縁者が捜索されているという今…
「わたしは、前左大臣に縁の者ではありません。むしろ、誰よりも憎んでいる者かもしれない…」
瑠璃に衝撃の言葉だった。

「昔、わたしはひとりの姫のために、ふさわしい身分が欲しかった…
 そのためにも父君にお会いして、わが子と認めていただきたかったのです。
 それが、その姫とともにひっそりと、穏やかに吉野で暮らしたかったわたしの、野心といえば野心でした」

その野心ゆえ、父に会わせてくれるという前左大臣の誘いに乗ってしまった。
「すべては8年前に始まっていたのです。東宮であった宗平親王…今の帝が重病に伏された時から…」
なぜここに鷹男の帝の名が出てくるのか、瑠璃の問いには触れずに吉野君は続けた。

769 :粗筋中将4/5続き :2007/07/17(火) 22:19:11 ID:???
前左大臣の手引きで、父に会うことが出来た。父も会いたがっていた、という前左大臣の言葉を信じ、喜びと不安を胸に―
しかし父は、このような子は知らぬと、吉野君を見ても表情ひとつ変えずに、そう言っただけだった。
わずかでも、心の片隅に残っていればいいという幼い吉野君の小さな夢は無残にも打ち砕かれてしまった。

「忘却は罪です。忘れ去られたものは、絶望の淵へと追いやられてしまう…」
それからその8年間をどう生きてきたのか、決して知り得ないだろう、と瑠璃に言う。
その8年間を支え続けたのは、あの遠い吉野の日々だった。あの姫との思い出があったからこそ、生きてこれた…
「だが今はその姫も死にました。幼い正良親王を落飾へと追いやり、
 やがて新帝のもとへ入内すると聞いたとき、わたしの中の姫は死んだのです。
 わたしはついに、望むものはひとつも得られなかった。父君の愛も、約束した遠い日の姫も、何ひとつ…」



770 :粗筋中将5/5 :2007/07/17(火) 22:20:29 ID:???
だから三条邸に火をかけたのか?
瑠璃の入内を聞いたから、瑠璃が帝のものになるくらいなら死んだ方がいいと瑠璃を殺そうとしたのか?
そうであって欲しいか、と問われ、そんなのは口実だ、と返す。
「8年前の鷹男の病気が何だって言うのよ!吉野君は何かつまらない…ほんの些細なことで鷹男の帝を怨んでいるだけよ!吉野君は…」
最後まで言わせず、吉野君は瑠璃を抱きしめた。
「…そうです。わたしは、そのつまらぬ怨みのために新帝を狙っているのです。
 この、容姿という、わたしが持つ唯一の武器を利用して、後宮の女を仲間に引き入れ帝の身辺を探らせ…
 総てを持っている帝に一矢報いようとしている…」
そのために、邪魔になったからといって仲間だった女も毒殺するのだと言った。
瑠璃は、鷹男の帝を殺させるつもりはなかった。鷹男はきっと吉野君から守ってみせる。そして…
「そして、吉野君も助けるわ…!!きっとあたしが、鬼から人間に戻してみせる…!」
吉野君は無駄だと言う。血塗られた手から、その血を洗い流すことはもうできない、と。
「じゃあ、高彬に言ってもいいの?帝の命を狙っているのは吉野君…唯恵なんだって!!」
「お好きにどうぞ」
瑠璃はカッとなった。高彬に話せるはずがないことを吉野君はわかっているのだ。
けれど、瑠璃はこのままだと話してしまう。鷹男や高彬に、総てをしゃべってしまう―
(だから今逃げてほしいのに―――!!)

泣いて俯く瑠璃の顔を、吉野君はついと上げた。
「何かに、強く愛着するのはよくないことですね。
 いつかわたしは、あなたにとどめを刺さなかった事を、後悔するかもしれません…」
そして吉野君は瑠璃に背を向け歩き出した。
「待って!本当は何者なの?吉野君って…父君って…!」
その問いに、振り向いてこう答える。
「近く大皇の宮が参内なさるとか…宮にお聞きになればいい。朝霧を覚えておられるかと…」
(朝霧…?)
「最後に一目お会いしたかった…もう二度とお目にはかかりません」
「吉野君!逃げてくれるの?もう帝の命は狙わないのね?」
応えず、闇の中へ消えていった。

(朝霧…?二度とって… 吉野君……!!)

771 :マロン名無しさん :2007/07/17(火) 22:27:08 ID:???
  | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
  |  これは・・・・・・    |
  |_________|
     ∧∧ ||
    ( ゚д゚)||
    / づ Φ



  | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
  |  吉野君→←瑠璃?|
  |_________|
     ∧∧ ||
    ( ゚д゚ )||
    / づ Φ


772 :マロン名無しさん :2007/07/17(火) 22:28:34 ID:???
思い出話に泣いた

773 :マロン名無しさん :2007/07/17(火) 22:40:35 ID:???
ものすごく切ない感動的な思い出話なんだけど

>その小さな姫はわたしを庇ってくれました。
>泣きながら 怖いのを我慢しながら 必死に石を投げ続け
>とうとうその野犬を追い払ってくれました。

普通……逆じゃあ…?
瑠璃、それは幼きヒーローのポジションだよ。

774 :マロン名無しさん :2007/07/17(火) 22:47:40 ID:???
笑うところじゃないのに
それまでうるうる来てたのに

>野育ちの里娘

で吹いた。吉野君よ、的確すぎるし誉めてるのかソレ。

775 :マロン名無しさん :2007/07/17(火) 22:50:48 ID:???
吉野君の父上がわかってしまった

えらいことですよこれは

776 :マロン名無しさん :2007/07/17(火) 22:53:16 ID:???
吉野君、結局何者なんだ?
それにしても瑠璃が欲しいならなんでもう1、2年早く会いにこなかったかな〜
高彬との婚約前の瑠璃とならパパンのお金で還俗して結婚も簡単だった気がす

777 :マロン名無しさん :2007/07/17(火) 22:58:15 ID:???
嗚呼…運命のいたづら

幼少期瑠璃、かわいい
花が似合う

778 :マロン名無しさん :2007/07/17(火) 22:58:20 ID:???
> 高彬に話せるはずがないことを吉野君はわかっているのだ

言っちゃえばいいのにと思ってしまったんだが

779 :マロン名無しさん :2007/07/17(火) 23:00:39 ID:???
>>778
初恋は特別なんでは
死んだと思ったら生きてたし
鬼になったと信じたくない気持ちもあるんでは

高彬〜試練だらけだがィ`

780 :マロン名無しさん :2007/07/17(火) 23:19:44 ID:???
有能高彬、なんか邪魔者扱いされてる?

781 :マロン名無しさん :2007/07/17(火) 23:44:20 ID:???
瑠璃の脳内が

吉野君>帝>>>>>>   高彬

のように見えてこっちが泣きそうになった。

782 :マロン名無しさん :2007/07/18(水) 02:53:22 ID:???
吉野君のプロポーズに対し高彬がはじめおててちゅーだった時点で立ち位置は決まっていたのさ……ただしこれは壮大な高彬逆転ストーリーのはず

783 :マロン名無しさん :2007/07/18(水) 11:53:05 ID:???
>>780
だよね。有能であること「だけ」を利用されてるというか…

784 :マロン名無しさん :2007/07/18(水) 11:55:38 ID:???
>>774
>容姿という、わたしが持つ唯一の武器を利用して
ここでもさりげなくすごいこと言ってるw

785 :マロン名無しさん :2007/07/18(水) 12:36:28 ID:???
思い出話やらに普通にウルッとしていたけど、
ここでの鋭いツッコミを読んで吹いたw

786 :マロン名無しさん :2007/07/18(水) 12:51:32 ID:???
あのさ、左大臣より偉い人って一人しかいないよな?
官職的に考えて……。

787 :マロン名無しさん :2007/07/18(水) 13:45:05 ID:???
んでもって朝霧ってのは、大皇の宮付きの女房でおk?

788 :マロン名無しさん :2007/07/18(水) 14:43:23 ID:???
吉野君は前天皇の御落胤ってこと・・・?

789 :マロン名無しさん :2007/07/18(水) 15:03:43 ID:???
鷹男と腹違いktkrですかそうですか

790 :マロン名無しさん :2007/07/18(水) 16:23:38 ID:???
瑠璃って額田王ポジション?

さよなら高彬。

791 :マロン名無しさん :2007/07/18(水) 16:45:02 ID:???
高彬…(´・ω・`)

792 :マロン名無しさん :2007/07/18(水) 21:22:22 ID:???
ウワァァァァン
 ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
。   ∧_∧。゚
 ゚  (゚ ´Д`゚ )っ゚
   (つ   /
     |  (⌒)
    し⌒


793 :粗筋中将1/4 :2007/07/18(水) 22:21:09 ID:???
(吉野君…!待って、どこに行くの?逃げてくれるの?)
(…いいえ、わたしの手はすでに血で汚れている…今更逃げるわけにはいきません…
 ほら、あなたにも見えるはずです瑠璃姫…赤く血塗られた…わたしの手が…)

瑠璃は溜まらず飛び起きた。嫌な夢を見た。赤く染まった、吉野君の両の手の…
吉野君はもう後宮にはいない。あの翌日、他の僧侶と共に御所を退出した。
(もうここには いないのに…)

目が覚めてしまった瑠璃は、外の空気を浴びに部屋を出た。
『大皇の宮にお聞きなさい。朝霧を覚えておられるかと』
朝霧を…
おそらくそれは、吉野君に深く関わる言葉なのだろう。
鷹男の母・大皇の宮とどんな繋がりがあるのかはわからないが、とにかく大皇の宮に会い、朝霧について聞かなければならない。
なのに、光徳院の容態が思わしくないため、大皇の宮の参内が延びている状態なのだ。
御所を退出したばかりの吉野君がすぐにまた参内するとは思えないが、日数が経つほどその可能性も高くなる。
それだけ鷹男の命が危うくなるということだ。だからあんな夢を見てしまったのかもしれない。

(…高彬だって、そうよ。あたしがこんなに帝の命を心配してるのに、
 きっとあいつはどっかあさってのとこ警護なんかしてるんだわ)
あの日、瑠璃が呆然と吉野君を見送ったあとに、宿直だと言う高彬が偶然やって来た。
「さっきそこで、唯恵という律師に会った」
思いがけない高彬の言葉に瑠璃はドキッとした。
「承香殿の女御も、評判の美僧だとご贔屓にしてらっしゃるけど、ぼくは何だか気にくわないな…
 瑠璃さんも、信心なんかないはずだろ。相手は僧侶だよ。宮中に参ってまで軽々しいことはしないように。いいね!」
とだけ言って、見回りに戻っていったのだった。
(何が“気にくわない”よ、これじゃ単なるヤキモチじゃないの―――っ!!
 妙な方にばっか気をまわしちゃって、有能だってわりにはどっか抜けてんのよ高彬って…!)

794 :粗筋中将2/4 :2007/07/18(水) 22:24:36 ID:???
何て言ってるのも束の間、八月に入ってすぐ、大皇の宮の参内が決まったのである。
鷹男の帝の計らいで、すぐに引き合わせてもらえることになった瑠璃は、鷹男の母宮に会うのが楽しみでもあった。

「まあ、あなたが瑠璃…いえ、九条どのなのね?
 主上からいろいろと伺って、ぜひお目にかかりたいと思ってましたのよ。ほんとにおかわいらしい方だこと。
 主上とは、かの折にずい分を楽しい思いをなされたそうね。わたくしもあと20年若ければ…というところかしら」
ほほほほ、と声高らかに笑う大皇の宮は、とても快活な人だった。
(大皇の宮って…あたしに似てるかもしんない…鷹男ってマザコンかも…)
などと感想を抱いてしまう瑠璃だった。

「それでもその楽しい思いをなされたせいでお邸が炎上したとか。楽あれば苦あり…というところでしょうね、九条」
はあ、と瑠璃は押され気味に返事をした。だが、大皇の宮はすぐに顔を曇らせた。
「火事というのはほんとうに嫌なものですわ。昔この大内裏も炎上したことがありました」
それは瑠璃には初めて聞く話だった。ちょうど大皇の宮が、鷹男を懐妊していた時のことだという。
幸い大皇の宮は実家に退がっているときだったが、先帝の身を案じ、心痛のあまり流産しかけたほどだ、と大皇の宮は語る。
くすり、と笑った大皇の宮、
「あの時わたくしが流産していれば、こちらの主上はいらせられませんね」
などと、豪気に話すのだった。

795 :粗筋中将3/4 :2007/07/18(水) 22:29:22 ID:???
瑠璃が、懐妊中に火事だなんて大変だっただろう、と話を続けると、
「そうね。けれども先帝も御無事で、わたくしの実家に行幸なさり、それから2年ほどはわたくしの実家が内裏となりましたの。
 いわゆる里内裏ですわ。里内裏というのもなかなかに面白い経験で―…」
大皇の宮の話は止まらないのだった。
三条邸が焼けたことに話を合わせてくれてはいるのだろうが、瑠璃が聞きたいは火事ではなく朝霧のことで、
かと言っていきなり聞くことも出来ず、困ってしまうのだった。その時、宮は再び表情を暗くした。
「ただね、悲しいこともありましたわ。里内裏で妹をなくしましたの。仲の良い…たったひとりの妹姫を――」
瑠璃は、この話を朝霧のきっかけに利用しようと思い、おもむろに言った。
「まこと、人の世ははかないものですものね。まるで秋の朝g」
「いえ、亡くなったのではありません。覚悟の出奔…家出だったのですわ」
瑠璃の予想は外れ、話もかわされた。
それは、大皇の宮の出産の時のことで、慌しい出産の時を見計らって、姿を隠したのだと言う。
そう言って言葉に詰まる宮だったが、瑠璃は、思い切って聞いてみた。
「あの…っ、それって、秋のことですの?」
「ええ、でもなぜ?」
こじつけでも何でもいいや、と、瑠璃は先を続けた。
「その…、秋の朝霧の晴れぬ間に、家をお出になったのじゃないか…と…」

大皇の宮の顔つきが変わった。

青冷めた顔で、女房の絵式部に、他の者を退出させるよう命じた。

大皇の宮と瑠璃、絵式部の3人きりになり、しばらくの沈黙のあと、大皇の宮は聞いた。朝霧とは…ひょっとして瑠璃は…
「あなたは何をご存じなの?わたくしの妹…佐子姫の行方についてご存じなのじゃなくて…?」
(すけこひめ…?)
宮は、瑠璃が知らない様子なので、佐子姫について語った。

796 :粗筋中将4/4 :2007/07/18(水) 22:34:43 ID:???
佐子姫とは、大皇の宮の父が、少しばかり身分の低い女性に生ませた、腹違いの妹姫のことだった。
その女性が亡くなって、宮の邸に引き取られ、幼い頃から宮と佐子姫はこれ以上ないほど仲良く育ったという。
それが、ある朝、たった一首の歌だけを残し、佐子姫は消息を絶った。

 数ならぬ 身ゆえいずちか 去り行かむ
        しかとも隠せ   秋の朝霧
(ものの数にも入らぬ身ですから、どこへなりとも消えましょう
 わたくしの行方を隠してください、秋の朝霧よ…)

「腹違いとはいえわたくしにとっては大切な妹姫…今でも思い出さぬ時はありません。
 佐子姫が姿を消してしまったのはあれはきっと…」
そこまで言って、大皇の宮はハッとし、口をつぐんだ。
宮に話せるのはここまでだ、と。何もかも話したのだから、今度は瑠璃の番だ。朝霧について何を知っているのか…
瑠璃は答えた。とある殿方が、大皇の宮に伺って見よ、朝霧を覚えているのか、と言われたと。
「もちろん覚えておりますよ。当たりまえではありませんか!それよりもその殿方はどういう者です、いったい…」
「こればかりは口が裂けても申せませんわ、殿方としか…」
「瑠璃姫…!」
大皇の宮の願いでも、瑠璃は言うわけにはいかなかった。
口を開かない瑠璃に、大皇の宮は頭を下げてまで頼んでいた。
「どうぞ教えてくださいな…わたくしは20年来ずっと苦しんでおりました。どういう殿方か…せめて年なりと…」
大皇の宮に頭を下げられ、瑠璃は、年くらいなら、と答えた。確か、18か19くらいだと思う、と。
「19…!!」
宮は何か思い当たる節があり、すっと立ち上がり絵式部と瑠璃に言った。
「すぐに院の御所に戻ります。瑠璃姫も参られますよ。よろしいわね、瑠璃姫!」
鷹男の帝には光徳院がお熱を出されたと急使が来たことにし、御所を退出する準備をさせた。
その報せに鷹男は驚き顔を出したものの、心配する鷹男を上手く諌め、大皇の宮と瑠璃は御所を出た。

(大皇の宮には何かお考えがあって、あたしを連れて院の御所にお戻りになられるんだろうけど、まさか
 まさか吉野君が……?)


797 :おまけ中将 :2007/07/18(水) 22:37:09 ID:???
行幸(ぎょうこう)…帝が出かけること

798 :マロン名無しさん :2007/07/18(水) 23:26:22 ID:???
これは帝の落とし子決定?

高彬大事なタイミングでなんと的外れなことを言うんだよ・・・orz

799 :マロン名無しさん :2007/07/18(水) 23:35:51 ID:???
ヤキモチ焼きなオオボケ高彬カワユス



800 :マロン名無しさん :2007/07/18(水) 23:45:05 ID:???
>>799
カワイイ通り越してため息しか出んよ…ほんとに有能なのか高彬…orz
退場フラグびんびんじゃないのか…

801 :マロン名無しさん :2007/07/18(水) 23:48:16 ID:???
しかもライバルが東宮、プラス初恋の男でそいつも高位という。

802 :マロン名無しさん :2007/07/18(水) 23:51:58 ID:???
高彬を応援するのは万馬券を当てるようなものなのでは・・・

803 :マロン名無しさん :2007/07/18(水) 23:54:42 ID:???
今回は鷹男も大皇の宮に押されて坊やしててかわいいよ

804 :マロン名無しさん :2007/07/18(水) 23:57:09 ID:???
>>802
婚約者なのに万馬券はあんまりだー

805 :マロン名無しさん :2007/07/18(水) 23:58:24 ID:???
高彬のヤキモチがかわいいというより間抜けに見える…
大皇の宮様、スゲー。さすが国母。
鷹男マザコンwww
あんまり大皇の宮に気に入られると、瑠璃はまた入内話から逃げられなくなるよ

806 :マロン名無しさん :2007/07/19(木) 00:01:11 ID:???
佐子姫と先帝の子が吉野君ならば、
先帝は異母姉妹両方に子を産ませたってか
鬼畜に見えるが、当時の社会で帝はそういうものか

807 :マロン名無しさん :2007/07/19(木) 00:02:52 ID:???
吉野君は可哀想かもしれんが
殺人はどんな理由があってもいかんぜよ
二の姫はどうしてるんだ

808 :マロン名無しさん :2007/07/19(木) 00:09:32 ID:???
>806
当時でも普通じゃないから吉野に隠れ住んでたのかとオモ

809 :マロン名無しさん :2007/07/19(木) 00:17:43 ID:???
人を殺したりするよりも、名乗り出て政で思うままに人を操る方が鬼のような気がするんだが。

810 :マロン名無しさん :2007/07/19(木) 00:32:47 ID:???
吉野君は女性を操ってます

811 :マロン名無しさん :2007/07/19(木) 09:16:30 ID:???
吉野君になら操られたい!

812 :マロン名無しさん :2007/07/19(木) 09:23:01 ID:???
>>811
まずは君の性別を聞こうか

813 :マロン名無しさん :2007/07/19(木) 12:21:26 ID:???
朝霧だけで、よく気づくな
瑠璃がわざとらしく強調してるとはいえ
吉野君も、誰から朝霧の話を聞いたんだろ?入道から?
どうでもいいことが気になって仕方ない

814 :マロン名無しさん :2007/07/19(木) 18:12:34 ID:???
母君じゃない?
恨み言とか愚痴をこぼしていたんじゃなくて、
つい口ずさんでしまっていてそれを吉野の君がそばで聞いてたとか。

815 :マロン名無しさん :2007/07/19(木) 20:55:10 ID:???
鷹男と吉野君って、異母兄弟で従兄弟なのか・・・


816 :マロン名無しさん :2007/07/19(木) 21:08:09 ID:???
ややこしいなw

817 :粗筋中将1/4 :2007/07/19(木) 22:24:45 ID:???
大皇の宮と瑠璃を乗せた車は院の御所に向かって進んでいたが、車中は内裏を出てからずっと沈黙が続いていた。
瑠璃を連れ出したということは、きっと宮にも何か考えがあるのだろう、と、瑠璃はある予感を口にした。
「院の御所は山科にあると伺っておりましたけど、山科は墓所の多い所…院は変わった場所にお住まいですのね」
大皇の宮は、それも、院の思し召しなのだと、口を重く答えた。院は…
宮は、意を決して、瑠璃の手を握り締め、言った。
「瑠璃姫、よくお聞きになってね。あなたに朝霧のことを教えた殿方…その方はたぶん院のお子。
 わたくしのお産み申しあげた主上には弟宮となる方ですわ…!」
瑠璃の予感は当たった。
(やっぱり…吉野君は佐子姫の…大皇の宮の妹姫の子供だったんだ―――!!)

およそ20年前、内裏が火事にあったことから大皇の宮の実家のお邸が里内裏になって、先帝である今の帝を迎えた。
大皇の宮は今の鷹男の帝を懐妊中だったし、里内裏ということもあってごたごたしており、当然帝にも隙が出来る。
そんな中で、佐子姫は先帝に見染められて、帝の子を身籠ってしまった…
どんな経緯があったのか、ふたりは愛し合っていたのかはわからないが、姉宮は懐妊の身で臨月も近く、
だから、佐子姫は都から姿を消してしまった…

大皇の宮は言う。佐子姫は、宮より劣り腹であることをたいそう気にしており、いつも宮を気遣い、立ててくれていた。
「馬鹿な方!母は違っても父は先々帝の親王でもあり、東宮にも立たれた身…
 病がちであられたため御位は辞退されたものの、そんな父宮の姫であることをどうして誇りにしなかったのか…!」
そうすればこんなことには…、と大皇の宮は嘆く。
けれど、姉宮が懐妊中に妹宮までが懐妊となれば、里内裏の無責任さを問われてしまう。佐子姫はおそらくそれを心配した。
佐子姫は、宮のために、何もかも捨てて身を隠してしまった。

818 :粗筋中将2/4 :2007/07/19(木) 22:28:20 ID:???
佐子姫が失踪した後の院の取り乱しようから、大皇の宮は事を確信した。
けれど、口に出すのは憚られるので、こうして今日に至ってしまったと宮は言う。
大皇の宮は、院にこのことを伝えるために瑠璃を院の御所まで連れていこうとしている。
瑠璃の言うと殿方が佐子姫の子なら…佐子姫の行方を知っているのなら…
瑠璃は黙り込んだ。
(院は…院はもう知ってるんだ。知っていて、こんな子は知らぬ…と…!)

古風で儚く、そのくせ芯の強い佐子姫は、姉宮のために身を隠し、吉野に逃れ…そこで吉野君は生まれた。
美しい四季の巡る吉野で、父君の本当の身分も知らず、幸せに―
母君に慈しまれて、愛されて育てられて―
やがて
小さな姫のために官位を望み、父君への思慕から都へあがりたいと願い…

なぜそこに前左大臣が出てくるのかはわからないが、吉野君は、父君に会わせるという前左大臣の誘いに乗ってしまった。
なのに父君は…吉野君を知らないと言った。
こんな子は知らぬと言って、
吉野君を絶望の淵へと突き落とした。

(吉野君は何も親王になりたくて父君に会いに行ったんじゃないわ。父君が帝だってことも知らなかったんだもの!
 ただ父君として…親として、やさしい言葉をかけてほしかったのよ。官位なんて、二の次で…)
なのになぜ、院は吉野君のことを知らないなどと――

819 :粗筋中将3/4 :2007/07/19(木) 22:32:55 ID:???
瑠璃はハッと思い出し、大皇の宮に問うた。
「8年前、鷹男が…いえ、今の帝が東宮に立たれるかどうかというとき、御病気になられたって本当ですか?」
大皇の宮は、確かに8年前、鷹男の帝が重病に伏し、ほとんど危篤状態にまでなったことがある、と答えた。
吉野君の言葉を思い出していた。『すべては8年前に始まっていた…帝が重病に伏した時から…』
大皇の宮は忌々しげに話を続ける。
当時はまだ正良親王も生まれておらず、親王は今の帝・宗平親王だけであったことから、宮廷中が、東宮問題で大騒ぎだった。
直系の鷹男が死んだ後に備えて、先々帝の叔父宮だの先帝の弟宮だの、有力貴族にあと押しされた傍系の宮だのが東宮の位を争った。
「まだ息のある宗平親王の枕辺で、前左大臣と右大臣があわや掴み合いになった時は、もう口惜しくて口惜しくて…!」
さすがの宮も、泣き暮らす毎日だった、と今でも腹立たししく覚えていた。
「そう!あの時は前左大臣が、自分のお預かりしている血筋正しい親王こそ東宮にふさわしいと言いふらしていて…」
大皇の宮ははっとした。
「…まさか、まさか…あの時の御子というのが…?」
宮も瑠璃も黙り込んだ。

しかし、宮はすぐに否定した。あんな腹黒い男に子を預けるなど…
「佐子姫は、反対なさったのですわ。でも吉野君が…」
瑠璃はしまったと思ったが、「吉野君」は愛称だし、大丈夫だろうと続けた。
「吉野君は、ただ父君にお会いしたかっただけなんです!だから前左大臣の甘言に乗せられて…
 なのに先帝は…院は、吉野君を知らないと仰せられたと言います」
(吉野君が待っていたのはそんな言葉じゃなかったのに…!!)
しかし、大皇の宮は、かわいそうだが、あの状況では院がその「吉野君」を自分の子だと認めるわけにはいかなかったのだ、と言った。
宮廷で力を持っていた左大臣が、血筋の正しい子を手に入れた以上、鷹男亡き後その子を東宮に立て実権を握るのは明白だった。
吉野君に野心がなくとも、前左大臣にはあったのだ。
「おわかりですね瑠璃姫。帝のお立場上、そのように危険な御子を認めることはできないのです」
瑠璃は返す言葉がなかった。しかし、納得もしていなかった。

820 :粗筋中将4/4 :2007/07/19(木) 22:36:30 ID:???
吉野君の気持ちはどうなるのか―
(吉野君は、東宮になりたいなんて思ってたわけじゃないわよ…!好きな姫に見合う位がほしかっただけで…そして父君に…
 やさしい言葉をかけてほしかっただけで…)
しかし父にこんな子は知らぬ、と言われ、利用価値のなくなった吉野君は前左大臣に捨て置かれたのだろう。
吉野に戻ってみれば、瑠璃はもう都に戻ったあとで、
吉野君の母も、吉野君がいなくなって間もなく、心労で亡くなったと、瑠璃は伝え聞いていた。
(ほんとうに、吉野君は、帰る所も…何もかも失ってしまったんだ)
絶望した吉野君は、もう出家するしかなかったのだろう。
やがて、僧として師について宮中に出入りするようになった。

父君に復讐するため?

違う、それならば、ずい分前から宮中に出入りしていたというから、機会はいくらでもあった。
吉野君はきっと…

(遠くからでも父君のお姿を見ていたかったのよ。帝である、父君のお姿を…)

しかし、その吉野君が、なぜ鷹男の命を狙ったのか。帝の位についた今になって…
瑠璃が帝のもとに入内すると聞いたから?それとも――

山科にある院の御所に着いた。大皇の宮が院に吉野君のことを話している間、瑠璃は瑠璃は通された部屋で考えていた。
瑠璃が院に会い、どうなるというのか…
吉野君は先帝の子だった。親王の宣旨も受けられず、父に捨てられた悲運の皇子。
(もう 充分じゃない…)
瑠璃は膝を抱えた。これ以上吉野君のことを知ったら、瑠璃は吉野君のことを本当に憎めなくなる。
鬼となった吉野君を憎めなくなり、院と会っても院のことを詰ってしまいそうだった。
吉野君を切り捨てた院を――

そして、瑠璃は院のもとへと呼ばれた。

821 :マロン名無しさん :2007/07/19(木) 23:02:25 ID:???
うわ、吉野君救われなさすぎる…

822 :マロン名無しさん :2007/07/19(木) 23:13:14 ID:???
吉野君の事情は大体わかったけど
なんで殺す方にいっちゃうかな〜
瑠璃かっさらって駈け落ちって発想は無かったのか?

823 :マロン名無しさん :2007/07/20(金) 00:13:50 ID:???
都で色々見ちゃっただろうしさ。現実に開眼したんだよ
瑠璃姫がどんなに好きでも、駆け落ちなんかするのは先でかえって不幸にする、とか。

824 :マロン名無しさん :2007/07/20(金) 00:19:22 ID:???
鷹男も瀕死の病状で自分が死んだ後の権力争いで喧嘩されたりハードな人生だな
兄弟で瑠璃に惚れるとは好みが似てるのか?
自分が吉野君なら、まず前入道や院に復讐する。んで自分も死ぬ。
瑠璃んち放火したのは俗世の未練を絶つため?

825 :マロン名無しさん :2007/07/20(金) 00:38:52 ID:???
確かに瑠璃を殺す方にいく理由がピンとこないなぁ…
荷葉の女をさらっと殺してるあたりで、殺人にためらいはなさそうだけど
瑠璃に関しては、殺そうとして殺せなかったのが特別なのかな

826 :マロン名無しさん :2007/07/20(金) 00:42:51 ID:???
ここ1、2年で美しさがより増したんだっけ
殺意を抱きだしたからなんだろうか

827 :マロン名無しさん :2007/07/20(金) 00:45:02 ID:???
>>825
ただ単に殺すだけじゃなく、その前に
兄貴が入内させようと目論んでる、ご執心の内大臣家の姫を屋敷ごと焼き払えば
どんだけダメージ与えられるかって考えたんじゃないか?

828 :マロン名無しさん :2007/07/20(金) 01:04:05 ID:???
ここ1、2年といえば瑠璃の縁談話が出てきた頃。
それも吉野君が殺意を抱きはじめたことに関係あるかもね

829 :マロン名無しさん :2007/07/20(金) 01:10:59 ID:???
ついに高彬は消えたか

830 :マロン名無しさん :2007/07/20(金) 07:23:58 ID:???
消すなw

831 :マロン名無しさん :2007/07/20(金) 08:17:05 ID:???
>好きな姫に見合う位がほしかっただけで

って他人事みたいだね。
でも私のせいで、ヨヨ…なんてキャラじゃないか。

832 :マロン名無しさん :2007/07/20(金) 14:15:43 ID:???
復讐だったら矛先は入道に向かうだろう
もっと、複雑に歪んでしまってるんじゃない?

833 :マロン名無しさん :2007/07/20(金) 14:37:29 ID:???
大人っぽい言動だけどまだ20そこそこだよね>吉野君
まだまだ若いがゆえの、いろいろ整理つかない感情がずっとあって、
その上で瑠璃が入内するって聞いたから嫉妬で爆発して、とかかな。
でもそしたら三条邸焼け跡で瑠璃を殺そうとするはず無いか…。

834 :マロン名無しさん :2007/07/20(金) 19:37:48 ID:???
みんな年に一度くらいは高彬のことも思い出してあげてください…

835 :マロン名無しさん :2007/07/20(金) 19:39:18 ID:???
高彬…?

836 :マロン名無しさん :2007/07/20(金) 19:43:11 ID:???
>>834
なんかもうレスする人にすら話題にされなくなってるよね(´・ω・`)

大皇の宮、「馬鹿な方!」って言ってるけど、
それは大皇の宮が位の高いお母さんから産まれたから言えることであって、
佐子姫にしてみれば、劣り腹の自分が懐妊、なんて、血の気のひく重大な問題だよなぁ

837 :マロン名無しさん :2007/07/20(金) 19:53:21 ID:???
>>835
www

838 :マロン名無しさん :2007/07/20(金) 19:57:11 ID:???
>>836
佐子姫にしてみたら、「お姉様を裏切ってしまって申し訳ない」って気持ちが一番だったろうしね。
大皇の宮が日頃から母方の身分を笠に着ていじめるタイプだったら
彼女も「のしあがっちゃるけん!」って開き直ったんだろうけど、逆のパターンだからな。

839 :粗筋中将1/4 :2007/07/20(金) 22:01:29 ID:???
院の部屋へ通された。几帳を幾つも隔てた奥の御帳台の中にいて、その姿は見えない。
「唯恵のことを、知っている者とか…」
声だけが聞こえた。瑠璃はそうだと返事をする。
「唯恵のことは知っています。何も聞くことはない」
瑠璃はかっとなった。
「知ってるって…院は何をご存じだっておっしゃるんです!!吉野君はただ父君にお会いしたくて…
 ただそれだけのために吉野での幸せな日々を捨てて京へ戻って来たんです!それくらい父君にお会いしたかったから――」
「知っています」
院は静かに答えた。
「山深い吉野で、あの子がどれだけ幸福だったか…どれほど愛されて育てられたか…
 吉野君の美しい澄んだ目が、それを物語っていた…」
院の言葉に、瑠璃は答えられなかった。
そして院は語り始める。行幸先の大徳寺で、吉野君と会った時のことを。
吉野君は最初、目の前の帝でもある父を、身分ある貴族くらいに思っていたらしい。

───幸せにしたい 姫がいるのです
   その姫は 身分も位もいとわない世間知らずの姫ですが
   その姫につり合う身分であればわたしは嬉しいと…
   父君は どういう方ですか?
   わたしは もう ずっと 父君にお会いしたかったのです
   もう ずっと…───

吉野君は、まっすぐな、野心などみじんもない目で院を見ていたという。
「だからこそ、わたしはその場で決めたのです。決してこの子をわが子とは認めまい…と」
吉野君は純真すぎた。陰謀の交錯する政治世界、複雑な宮廷社会では生きられない、と判断したのだ。
「だからおっしゃったのですか!?こんな子は知らないって!!」

「…そう。わが子は宗平親王のみ と」

瑠璃は言葉を失い、手を握り締めた。

840 :粗筋中将2/4 :2007/07/20(金) 22:05:32 ID:???
「だから…だから吉野君は出家してしまったのよ…!父君に…こんな子は知らぬと…」
(わが子は宗平親王のみと言われて…吉野君はすべてを捨ててしまったんだ…!!)
その先は続かなかった。
見兼ねた大皇の宮が、瑠璃に言葉をかけた。違うのだと。
「出家をおさせになったのは、院の思し召しなのです」
瑠璃は驚いた。大皇の宮も、先ほど院から聞いたのだと言う。
吉野へ帰り、今までのように幸福に、小さな姫や母君とともに暮らすだろうと、そう願って突き放した子だったのに、
まだ利用できるだろうと踏んだ前左大臣がなおも京中に引き留めていた。
それを知った院が、このまま吉野に帰しても、いつ再び宮廷の争いに巻き込まれるやも知れぬと、
前左大臣の手から連れ出し、元祥寺で落飾させたのだった。
吉野君の意思ではなかったのか、無理やりの出家だったのか、と問い詰める瑠璃に宮は言う。
「…吉野君のおためだったのですよ、瑠璃姫」
慈源阿闍梨に預けたのも、時々は参内させて遠くからなりと心にかけようと思ったためだった。
「それが、院におできになる、せめてものことだったのですわ」

いくら遠くから見止めるためとはいえ、声さえ掛けてもらえない吉野君の気持ちはどうなるのかと、瑠璃は思っていた。
吉野君は父に会いたかったからこそ、何もかもを捨てて京へ来たのだ。
なのに、わが子とは認められなかったどころか、何もわからないまま出家させられてしまった…!
そうして…
やがて参内するようになった吉野君の目に、鷹男はどう映ったことだろう。
同じ父君の子でありながら、
すべてに恵まれ、守られていた東宮…宗平親王は―――

『 忘却は 罪です 忘れ去られた者は 絶望の淵へと追いやられてしまう… 』

(吉野君…!!)

841 :粗筋中将3/4 :2007/07/20(金) 22:09:35 ID:???
顔を覆い泣く瑠璃だったが、やがて院に向かって言い放った。
「院は…光徳院は、間違っておられました…!!」
大皇の宮が驚き瑠璃の方を見るが、一方の院は落ち着いていた。
「…そう。確かにわたしは間違っていました…」

院は再び語りだした。あの夜…正良親王の落飾を命じた夜、
正良親王を脱出させる直前に、吉野君が院の枕元にやって来て、こう囁いたのだという。
「あなたの御子は宗平親王ただおひとりなのですね。宗平親王を守るため、またひとり
 その手で御子を捨てられるのですね…」
それだけ言い、去っていった。
自分からは決して院に近付くことのなかった吉野君が、初めて院に語りかけた言葉だった。
「その言葉を聞いた時、わたしは知ったのです。唯恵がどんなにわたしを怨み、悲しんでいたか…」
わたしは間違っていた、と繰り返す院に、大皇の宮が庇うように言った。
吉野君には政治向きのことがわからない、あの時はあの場ではああするより他にはなかったと。
「おわかりでしょう、瑠璃姫。あなたなら…」
「いいえ。いいえっ!!」
そんな理屈はわかりたくもない、と首を振る瑠璃。
政治向きのことがわからないと言うが、今までその政治の世界から吉野君を遠ざけていたのは誰なのだ。
だから吉野君は、いつまでも子供心のように父君を慕い続けていたのだろう。だから…
(だから鷹男を怨んだのよ)瑠璃は思い至った。
父からただひとりの子と認められ、東宮の地位にあり、小さな弟宮さえ、その前には情容赦なく切り捨てられる…
鷹男の口から発せられた正良親王落飾の命令は、その運命に自分を重ねた吉野君の心に、どれだけ冷酷に、
どれほど残酷に響いたことだろう…!

「…吉野君は、帝のお命を狙っています」
瑠璃は言った。馬鹿な…と、今まで伏していた院が起き上がる気配がする。

842 :粗筋中将4/4 :2007/07/20(金) 22:14:10 ID:???
大皇の宮が、あの呪詛状は、前左大臣の残党ではなく吉野君のものだったのか、と気付いた。
「吉野君を止められるのは、光徳院ただおひとりです…!」
瑠璃は訴えた。前左大臣も死んだ今、帝の位を降りた今、吉野君をわが子と認めるのに、不都合なことはないはずだ。
吉野君はずっと、それだけを思って、思い詰めてしまっただけなのだから……!!

しばらくの沈黙のあと、光徳院が口を開いた。
「唯恵を、ここへ」

吉野君がやって来るまでの間を、瑠璃は、院の部屋で大皇の宮と共に待っていた。
沈む瑠璃に、宮が大丈夫だ、と声をかけてくれる。
間もなく吉野君の元へ御所から急使が行くはずだから。吉野君もわかってくれるはずだから。
しかし、瑠璃は何故か不安が晴れなかった。あの言葉が気になっていた。
『 最後に 一目お会いしたかった。もう二度と お目にはかかりません… 』
まるで運命には抗えないと悟ったような…
だから、朝霧を…自分の身元がわかるような言葉を残したのだろうか。
(あたしは、遅すぎたんだろうか。すべてはもう手遅れなんじゃ…)

夕暮れになり、絵式部がやって来た。
「律師唯恵は、帝のお召しにより参内した由にございます」
北の大原あたりの様子をたいそう気にし、様子を伺うために、呼ばれたのだという。
(吉野君は、きっと今夜鷹男の帝の命を狙う…!!今度こそ本当に手遅れになってしまう―――!!)
瑠璃は走り出した。その背中に向かって大皇の宮が声をかけた。
「院の御車をお使いなさい!大内裏の衛門の衛士はそれですべて退がります!
 わたくし達は軽々しく動けません、瑠璃姫、急いで!!」

吉野君に、鷹男を殺させるわけにはいかない。
いくらそれが吉野君の悲しみの結果でも、これ以上吉野君が罪を負うなんて悲しすぎる。
あたしは、だから絶対吉野君を救い出す!!
あたしは―――!

843 :マロン名無しさん :2007/07/20(金) 22:32:48 ID:???
(ノД`)吉野君…
間に合って瑠璃!間に合って!!

844 :マロン名無しさん :2007/07/20(金) 22:34:56 ID:???
死んだはずの大納言家の姫君が軽々しく動くのは良いのかw

845 :マロン名無しさん :2007/07/20(金) 22:43:59 ID:???
正直今の壮大な展開についていけてない自分がいる・・・
お気楽姫様のちょっと意地っ張りな恋物語♪
じゃなかったんですかorz

846 :マロン名無しさん :2007/07/20(金) 23:51:00 ID:???
先帝に向かって間違ってると言ってのける瑠璃、男前だ

847 :マロン名無しさん :2007/07/20(金) 23:52:51 ID:???
瑠璃があまりに漢だと、ますます高彬の影が……w

848 :マロン名無しさん :2007/07/20(金) 23:57:41 ID:???
親の心 子知らず
子の心 親知らず°・(ノД`)・°・

849 :マロン名無しさん :2007/07/20(金) 23:59:00 ID:???
院の御前から正装で裾持ってダッシュで走り去る瑠璃であった。まる。

850 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 00:09:50 ID:???
たいしていなくても
かわらない
あくまで
きすしただけの
らぶみまんきゃら

851 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 00:17:58 ID:???
>あたしは―――!


―――の部分が気になる。
吉野君が好きだから!が入るんだったらどうしよう(´・ω・`)

852 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 01:56:16 ID:???
>>850
あいうえお作文上手だね(*´∀`*)

ってオイwww

853 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 02:53:07 ID:???
>>845
確かに。気楽なラブコメ時代が懐かしい…

854 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 03:01:41 ID:???
見事なすれ違いだな。身分が身分だから仕方ないのかなぁ…
瑠璃姫急いで〜

855 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 03:26:11 ID:???
> 忘却は 罪です 忘れ去られた者は 絶望の淵へと追いやられてしまう…

このセリフが、重いな…

ウッ(´;ω;`)ブワッ

856 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 03:36:46 ID:???
>>855
このセリフ、現在の高彬にも通ずるものが…
瑠璃の心に占めるスペース小さそう。

初恋の君ってのは、生涯忘れないだろうなぁ…

857 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 03:42:19 ID:???
小さい頃の約束、思いっきり忘れられてたもんな…w

858 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 04:01:38 ID:???
瑠璃、吉野君の「忘却は罪です」を思い出しても、
「だから高彬のことも忘れちゃいけないんだわ!」とはならないのかなw

859 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 06:07:00 ID:???
ちょww忘却を高彬と結びつけるなwww

860 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 07:31:47 ID:???
高彬すっかりネタキャラ…

それより瑠璃間に合ってー!
吉野君かわいそすぎだ

861 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 08:28:39 ID:???
いくらカワイソウでも人を殺したり瑠璃を殺めようとしたり、
自分はいまいち同情心がわかないんだな。
おいしいところを全部かっさらっていってるからむしろ高彬にどうjry

862 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 15:59:46 ID:???
  ,j;;;;;j,. ---一、 `  ―--‐、_ l;;;;;;
 {;;;;;;ゝ T辷iフ i    f'辷jァ  !i;;;;;  高彬はヒーローポジション
  ヾ;;;ハ    ノ       .::!lリ;;r゙
   `Z;i   〈.,_..,.      ノ;;;;;;;;>  そんなふうに考えていた時期が
   ,;ぇハ、 、_,.ー-、_',.    ,f゙: Y;;f.   俺にもありました
   ~''戈ヽ   `二´    r'´:::. `!


863 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 16:17:36 ID:???
ネタキャラというよりも
こうして何度も思い返してあげていないとうっかり忘れてしまいそうで
必死に頭に叩き込んでいるところです。

高彬の立場でできそうなことをかんがえてみる。

下手人の正体を暴き吉野君を殺しちゃう
→瑠璃との間に埋められない溝が
→思わず慰めた東宮に瑠璃心がわry

864 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 16:22:30 ID:???
>>863
吉野君に殺される→さすがに瑠璃が吉野君救済への執着を捨てる→残った鷹男が瑠璃ゲット

865 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 16:30:35 ID:???
ありえるよそれ(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
高彬のほうは殺そうとか思わず牢にぶちこみ東宮のご決断を仰ごうと手を伸ばす。
が、今の吉野君じゃ、瑠璃を殺せなかったのは例外で高彬のことは迷うことなくry

そして高彬は最後まで僧=吉野君とも知らされないまま
ただ皆の心のなかにいつまでも・・・いつまでも……


      .。:*・ ゚ ゜゚ ・+:。       .。:*・ ゚ ゜゚ ・+:。
    .:・゚         ゜・(ノД`)・゚        ゜*。 
  。+゜                           ゚+:.
.:*                               ・:.



866 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 16:37:50 ID:???
瑠璃まにあって無事吉野君を院御所に連れてくる

涙の対面、院は吉野君から瑠璃とのことを聞く

願いを叶えてあげたい院の命令で瑠璃と吉野君結婚(吉野君は還俗して○宮となる)

瑠璃も吉野君も初恋成就


あれ?だれか泣いてる?
でも院の思し召しだから

867 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 16:41:40 ID:???
>>866
鷹男はちょっと泣くかもしれんが
結果的にそれが大団円で誰も困らないんじゃないのか

868 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 16:43:47 ID:???
院最強。

869 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 17:18:57 ID:???
>867
うん、それが1番丸く収まるんじゃないだろうか。誰も泣かないだろ…

870 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 17:29:12 ID:???
瑠璃パパはきっと泣くぞ。


嬉し泣き。

871 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 18:04:04 ID:???
宮家に内大臣家の姫が嫁ぐ
ってのは瑠璃パパにとってはいいことなの?権力増大になる?
宮家のレベルによるか…。

872 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 18:21:26 ID:???
瑠璃パパは瑠璃が普通の公達と結婚したらそれだけで喜ぶよ。
最初に既成事実で無理矢理結婚させようとした権少将も宮家のボンボンだし

873 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 19:41:29 ID:???
吉野君似の女の子が生まれれば、入内させて皇后中宮への立后も夢じゃないだろうしね。

874 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 19:49:26 ID:???
むしろ吉野君が東宮になりそう。
で、右大臣家と内大臣家が対立。

875 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 20:19:01 ID:???
そういや鷹男が帝になったとき誰が東宮になったか書いてなかったね。
でも高彬の姉ちゃんが入内して承香殿女御なってんだから
女御が生んだ皇子が東宮になってるんじゃないの?
吉野君と瑠璃の娘がその東宮の妃になれば政治的にも問題ないよね。


876 :粗筋中将1/3 :2007/07/21(土) 22:16:09 ID:???
院の御所から出た牛車は、夕暮れの京を大内裏へと急ぐ。
瑠璃は、吉野君のことを考えていた。
今夜、鷹男の帝を殺したあと、おそらく、その身がどうなっても構わないと考えているだろう吉野君のことを―
瑠璃は、吉野君に鷹男を殺させたくはなかった。
(それじゃあまりにも吉野君が可哀相すぎる…!!)
ただ、父に会いたくて…小さな姫と吉野でひっそりと暮らしたくて…
たったそれだけのために、大きな罪を背負ってしまった吉野君に、これ以上の罪を、悲しみを負って欲しくなかった。
(だからお願い、間に合って…吉野君が鷹男の帝に刃を向ける前に…間に合って…!!)

大内裏に着き、瑠璃は鷹男の帝の姿を捜して内裏の中を駆け抜けた。
今鷹男がどこにいるのかまるでわからない…
困り果てていると、大皇の宮の女房が、九条、と声を掛けて来た。
帝はどこにいるのか、と詰め寄る瑠璃に、お待ちかねの僧が来たから承香殿に渡ったと言う。
目の眩むような美僧だった、とため息をつく女房たちの声を背に、瑠璃は再び走り出した。

承香殿は、いつもならば女御の華やいだ声で賑やかなのに、今夜は静まり返っている。
(ああ…吉野君! 吉野君…!! )

その時、渡殿の向こうの広廂に、僧侶の座す姿が見えた。
目指すその人の名を、瑠璃は思わず叫んでいた。
「 吉 野 君 … !! 」

877 :粗筋中将2/3 :2007/07/21(土) 22:19:34 ID:???
声に驚き、腰を浮かして吉野君が振り返る。
「瑠璃姫!来てはいけないっ!!」
叫んだのは、鷹男だった。御簾を上げて、吉野君の向かいからその姿を現した。
目の前に帝の姿が現れ、吉野君は懐の刀の鞘を抜く。
「だめっ、だめよっ!!」
走り追いつき、背後から、瑠璃は吉野君の手を掴んだ。
その瑠璃を、吉野君は乱暴に振り払い、瑠璃は思わず倒れこんでしまう。
勾欄を背にした瑠璃に吉野君は振り返り、抜いた懐剣を今度は瑠璃に向け突きつけた。
「高彬出でよ!抜刀を許す!!」
鷹男の声と共に、抜き身の刀を手にした高彬が几帳の陰から現れた。
(高彬!?)
聞く間もなく、高彬は手にした刀を振り上げた。
「だめっ、やめて高彬っ!!」
振り下ろされるその瞬間、瑠璃は顔を覆う。
(いや―――――――――――――!!)

刀は、吉野君を斬りつけた。







目を開けた瑠璃が見たものは、右肩から血を流し膝をつく吉野君と、
血の滴る刀を持った高彬だった。

 高彬が 斬ったの…? 吉野君…を? どうして…
    どうして高彬がここにいるの…!? 

瑠璃は、その恐ろしい光景を、ただ震えて見ているしかなかった。

878 :粗筋中将3/3 :2007/07/21(土) 22:23:11 ID:???
口を開いたのは吉野君だった。斬られた肩を押さえ、高彬に言う。
「罠…か。なぜ、おわかりになった…」
高彬は答えた。
「御読経の夜律師とすれ違った時、わたしは思わず瑠璃姫はどちらかと尋ねてしまいました。
 律師はすぐに、あちらにおられると答えた。それでわかったのです。
 後宮では瑠璃姫の名は伏せられ九条になっている。瑠璃姫の名を知る者は、この事件に関わる者のみ!」

すぐにばらばらと周りから警固の役人が姿を出し、吉野君を包囲した。
吉野君は、逃げられないことがわかり、瑠璃に向かいこう言った。

「瑠璃姫、やはりあなたは…わたしを滅ぼしましたね」

自らの血で塗れた手を眺め、あの夜ひと思いにこの手に力を込めるべきだった、と呟いた。

「これは…罰なのでしょうね。愛執を断てなかった、わたしへの…」

(吉野君――――!!)

陽が落ちた承香殿に、高彬の声だけが響く。
「謀反、露見!
 明法に照らして宣命下るまで、醍醐は通法寺に牢籠すべし。通法寺はただちに寺号剥奪。
 速やかに、いざ これ勅諚なり!」


879 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 22:29:08 ID:???
高彬・・・こんなところで有能ぶりを発揮して、
これって瑠璃に恨まれて三角関係からひとりあぼーんするんじゃないのか?

880 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 22:32:36 ID:???
有能高彬は確かに邪魔者でしたorz
瑠璃姫を知ってることが決め手とはなんという皮肉!

881 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 22:36:25 ID:???
> わたしは思わず瑠璃姫はどちらかと尋ねてしまいました

でも露呈したきっかけはついうっかりな失敗だったという微妙さw

882 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 22:44:24 ID:???
>>881
wwwww

883 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 22:54:01 ID:???
高彬……相変わらず瑠璃が関わると有能な奴。
突然出てくる場面はかっこいいなあ。

884 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 23:04:15 ID:???
高彬・・・久々に格好よかったけどさ
あれじゃヒロインを守るヒーローじゃなくって
お役目大事の有能部下ってだけじゃないか

885 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 23:07:18 ID:???
高彬キタY⌒Y⌒(゚∀゚)⌒Y⌒(。A。)⌒Y⌒(゚∀゚)⌒Y⌒Y !!!


886 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 23:15:34 ID:???
>>884
瑠璃の心境を知らないから仕方がないんだが、
久々に登場できてテンションあがっちゃってるみたいな空気の嫁なさ感を覚えた・・・

887 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 23:28:02 ID:???
徹頭徹尾、高彬は鷹男の忠犬だから
出でよ!
ワン
抜刀を許す!
ワン
ココ掘れ!
ワンワン

888 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 23:31:53 ID:???
高彬、微妙に嫉妬の一太刀?

唯恵の師匠や寺は関係ないと思うが、
当代の帝の命を狙ったんだから、反逆者謀反人扱いなのね。

889 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 23:36:21 ID:???
初恋の人が自分の異母兄弟の血で手を汚すのを止めるため、
瑠璃は今日も内裏を、疾風怒濤のように駆け抜ける
十二単なんて重くない!
婚約者なんて気にしない!
たとえ変人、はしたないと言われようともがんばれ瑠璃!負けるな瑠璃!

890 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 23:37:17 ID:???
>>881
疑惑を確かめるために瑠璃姫と呼んでみた、ではないんだな。
そしてそれを誇らしげに披露する高彬・・・

891 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 23:41:48 ID:???
鷹男っていつもタイミング悪いな
間に合ってほしかった…!

892 :マロン名無しさん :2007/07/21(土) 23:46:34 ID:???
>>889
でも吉野君は大怪我したうえ謀反人として捕まっちゃったし
瑠璃がこれからやれることってさすがにないんじゃないの?
吉野君の身の上話をぶちまけるわけにいかないくらいは瑠璃もわかってるだろうし

893 :マロン名無しさん :2007/07/22(日) 00:10:25 ID:???
カマかけて「瑠璃姫は〜」って尋ねてたらカッコヨスだったのに
これだから高彬は…

894 :マロン名無しさん :2007/07/22(日) 01:35:03 ID:???
傷は肩だから死なないよね?
時代劇しかわからんもんで刀で斬られると即死にそうなイメージなんだが。
しかし死んで欲しいんだか生き残って欲しいんだか自分でもよーわからん。

895 :マロン名無しさん :2007/07/22(日) 02:07:06 ID:???
致命傷じゃあないと信じたいよ

裁きが決まる前に吉野君の事情こっそり鷹男に知らせれば
謀反人だから死罪とすべきでも怨霊になるのが恐いから遠流
とか名目付けられるだろうし、
院や鷹男からあとでこっそり文やってわだかまりとけるかも。

高彬が変に張り切りすぎて深手を負わせてないといいな

896 :マロン名無しさん :2007/07/22(日) 02:10:45 ID:???
いやーきっと体力有り余ってたはずだからバッサーいっちゃったんじゃね?

この時代の介抱って止血程度か麻酔ナシで縫うくらい、とかかな。

897 :マロン名無しさん :2007/07/22(日) 02:18:20 ID:???
止血はまだしも、刀傷を縫合なんて瑠璃には出来ない…
吉野タン……・゚・(ノД`)・゚・。

898 :マロン名無しさん :2007/07/22(日) 02:30:05 ID:???
高彬は間違ったことはしてないハズだけど
このまま吉野君が死んじゃったりしたら
瑠璃は高彬と結婚する気になれないんじゃなかろうか。



899 :マロン名無しさん :2007/07/22(日) 02:37:42 ID:???
もう諦めるしかないよ。
高彬は幼少の頃からヘタレかツメが甘いのが体に染み付いちゃってんだから。

900 :マロン名無しさん :2007/07/22(日) 02:40:37 ID:???
もう高彬じゃなくて高杉くらいでいいよ

901 :マロン名無しさん :2007/07/22(日) 05:05:22 ID:???
>>897
瑠璃は不器用そうだけどきっと本能的にできると信じてる

それか高彬が気をきかせて浅い傷にしてるはずだ
ここで高彬のせいで死亡とかになったら洒落にならんがな

902 :マロン名無しさん :2007/07/22(日) 12:14:35 ID:???
ヤダよ(´;ω;`)
吉野君死んじゃヤダ。

高彬のバカ!だいっ嫌いだ!!°・(ノД`)・°・ ウアァァァ

903 :マロン名無しさん :2007/07/22(日) 12:22:05 ID:???
>>901
高彬の知ってる情報じゃあ気をきかせる理由無いよ
普通にザックリ…


やっぱり瑠璃と高彬って縁が無かったんだよ


904 :マロン名無しさん :2007/07/22(日) 12:54:08 ID:???
あーん、吉野君が斬られた!
高彬のカバ!

905 :マロン名無しさん :2007/07/22(日) 13:00:06 ID:???
「どうです瑠璃さん、意外にできる男でしょう?」
「高彬のカバーーーっ!!」

的会話が浮かんだんだが
そんな能天気展開にはならないか・・・

906 :マロン名無しさん :2007/07/22(日) 13:05:09 ID:???
高彬は吉野君を斬った時
自分と瑠璃姫との赤い糸も切っていたのであった


907 :マロン名無しさん :2007/07/22(日) 13:14:59 ID:???
おい誰がうまいことをry

908 :粗筋中将1/3 :2007/07/22(日) 22:29:17 ID:???
吉野君を連れた役人が去ったあとも、瑠璃は呆然と座り込んでいた。
「瑠璃姫」
鷹男が瑠璃の前に立っていた。
すっと手を出し瑠璃を立ち上がらせ、怪我はなかったか、驚いただろう、といたわった。
瑠璃はその手を振り払った。
「…どうして…どうして斬らせたの鷹男っ!!どうして…!」
鷹男は、確かに、目の前で人を斬れと命じ驚かせてしまったが、
唯恵が瑠璃を斬りつけようとしていたから、ああしなければ本当に危険だったのだ、と強く言った。
「しかし、まさかあの唯恵が、亡き入道に縁の者であったとは…」
取調べが終われば、入道とどうつながりがあったのかもわかるだろう、と言う鷹男に、つい瑠璃は
「…鷹男!唯恵は…唯恵はね…!」
しかしその後は続けられなかった。俯く瑠璃に、鷹男が言う。
「唯恵が怪しいとわたしに進言したのは、高彬なのですよ。瑠璃姫」
だからこそ、清涼殿が万が一の刃傷沙汰で穢れにあっては困ると、滝口の陣に近い承香殿で罠を張ったのだが、
承香殿の女御の女房として後宮にあがっている瑠璃がまさか現れるとは思わなかった。
恐い思いをさせてしまった、と瑠璃を和ませる鷹男に、
瑠璃は、鷹男が唯恵が自分のもうひとりの弟宮であることは知らないのだ、と気付く。
しかし、本当のことは言えないことにもまた思い付く。
言ったところで、帝に刃を向けた以上吉野君を救うことも出来ないだろう。それに…
(話したって…今度は鷹男が苦しむことになるだけで…)

鷹男は、そう言えば、瑠璃は大皇の宮と共に院の御所に行っていたのではないかと思い出す。
宮の忘れ物を取りに来たら、承香殿のほうの様子がおかしくて来てみたのだと言い
瑠璃は、院に戻る、と踵を返した。
こういう事件のあとだし、夜も濃くなったから気を付けて、と鷹男は声を掛けた。

909 :粗筋中2/3 :2007/07/22(日) 22:30:27 ID:???
瑠璃は院の御所に戻る牛車の中で思う。
いくら瑠璃や大皇の宮が口をつぐんでも、いつか鷹男は知るだろう。自分を殺そうとした唯恵が弟宮であることを。
そしてまた苦しむのだ。
正良親王を出家させなければならなかった時のように、院が吉野君をわが子と認められなかった時のように、
帝の立場ではどうすることもできないことを…。
(もう あたしはやだ。これ以上悲しい思いをふやすなんてたくさんよ!)
だから瑠璃は決意した。吉野君を救い出す、と。どんなことをしてでも吉野君だけは救い出す――!

瑠璃の話を聞き、すべては遅すぎたと大皇の宮はうち伏せる。
泣いている宮に、瑠璃は考えていることを言った。
「あたしは吉野君を救い出します」
捕えられて今は醍醐の通法寺に護送されている吉野君が、逃げるのならば、東の近江か南の大和。
「泣いている場合じゃありませんわ。今は一刻を争うんです!」
大皇の宮は、危険なことだ、無理だと言う。それでも瑠璃はやると言う。
院の車を一輌盗まれたことにしてもらい、その車で通法寺に突っ込み吉野君を救うのだと。
「いけません!そんなことをすればあなたにも累が及ぶのですよ瑠璃姫!追捕されたらどうなさるおつもりです」
「それでも、やります」
瑠璃の動かぬ意志を感じ、大皇の宮はため息をつく以外なかった。そして聞いた。
「お好きなの?吉野君を…」
「よく、わかりません」
僧侶の吉野君が頭に浮かんだ。そして、あの遠い日の幼い約束が。
「でもあたしたち、吉野でとっても幸せだったんです。ままごとみたいに結婚の約束までして…
 それだけで助けちゃうっておかしいですか?」
大皇の宮は静かに首を振った。
「では、ね。瑠璃姫。南の宇治へと逃げなさい。宇治には光徳院の別院があります。
 そこに馬を2頭つなぎ忘れておくように、密かにお使いを出しておきましょう。
 いいですね。あくまで馬はつなぎ忘れていたのですよ」
大皇の宮の心に、瑠璃は深く感謝した。これが、大皇の宮や院の出来る唯一で精一杯のことだから―。

910 :粗筋中将3/3 :2007/07/22(日) 22:31:30 ID:???
今すぐに通法寺に向かうため立ち上がった瑠璃に、大皇の宮はある小さな布袋を手渡す。
それは宮が先ほど、院が8年もの間片時もその身から離さなかったもので、吉野君に渡すようにと預けられた守袋だった。
とても大事にされていたものだと―

大皇の宮の部屋をさがり車に乗るまでの間に、院の御所から見える南の空が、火事で赤くなっているのを目撃した。
山科から南といえば醍醐、吉野君が籠められている通法寺の方向だ。
瑠璃は嫌な予感がした。

御所から車に乗り込み、通法寺までと急がせた。瑠璃は願う。

(ああ…お願い吉野君、無事でいて!
 あたしがきっと助けるから、それまでは無事でいて…!!)

911 :おまけ中将 :2007/07/22(日) 22:32:34 ID:???
滝口の陣(たきぐちのじん)…警固の人の詰所
追捕(ついぶ)…逮捕のコト

912 :マロン名無しさん :2007/07/22(日) 22:39:39 ID:???
スゲーよ瑠璃、これでも諦めないなんて

吉野君救出間に合ってー!

913 :マロン名無しさん :2007/07/22(日) 23:34:09 ID:???
そんな瑠璃姫が大好きだー!!

914 :マロン名無しさん :2007/07/23(月) 00:29:42 ID:???
やっぱ瑠璃姫が一番かっこいいな

915 :マロン名無しさん :2007/07/23(月) 00:36:02 ID:???
瑠璃姫と吉野君が結ばれること望んでるやつもいるだろうが
・坊さん
・荷葉の女を利用して殺害
・鷹男・瑠璃殺害未遂
・三条邸放火
・瑠璃に仕える罪のない女房たち焼き殺した
・一生謀反人としてお訪ね者
・また権力に利用されかねん生まれ

さらに内大臣家の姫を誘拐して駆け落ち?どう考えても無理。

916 :マロン名無しさん :2007/07/23(月) 00:46:30 ID:???
帝って……辛いな

917 :マロン名無しさん :2007/07/23(月) 00:50:50 ID:???
無理というかなんか納得いかんなぁ。
高彬の立場は…orz と思ってしまうのもあるし。

918 :マロン名無しさん :2007/07/23(月) 01:23:25 ID:???
>「お好きなの?吉野君を…」
>「よく、わかりません」

これって…瑠璃→吉野君フラグ立ってないか…?

919 :マロン名無しさん :2007/07/23(月) 01:30:02 ID:???
あたしがきっと助けるから、それまでは無事でいて…!!)

ここで死亡フラグだから問題無し

920 :マロン名無しさん :2007/07/23(月) 01:39:04 ID:???

                   r、ノVV^ー八
                 、^':::::::::::::::::::::::^vィ       、ヽ l / ,
                 l..:.::::::::::::::::::::::::::::イ      =     =
                    |.:::::::::::::::::::::::::::::: |     ニ= 璃 そ -=
                  |:r¬‐--─勹:::::|     ニ= 璃 れ =ニ
                 |:} __ 、._ `}f'〉n_   =- な. で -=
  、、 l | /, ,         ,ヘ}´`'`` `´` |ノ:::|.|  ヽ ニ .ら. も ニ
 .ヽ     ´´,      ,ゝ|、   、,    l|ヽ:ヽヽ  } ´r :   ヽ`
.ヽ し き 瑠 ニ.    /|{/ :ヽ -=- ./| |.|:::::| |  |  ´/小ヽ`
=  て っ 璃  =ニ /:.:.::ヽ、  \二/ :| |.|:::::| |  /
ニ  く. と な  -= ヽ、:.:::::::ヽ、._、  _,ノ/.:::::| | /|
=  れ.何 ら  -=   ヽ、:::::::::\、__/::.z先.:| |' :|
ニ  る と   =ニ   | |:::::::::::::::::::::::::::::::::::.|'夂.:Y′ト、
/,  : か   ヽ、    | |::::::::::::::::::::::::::::::::::::_土_::|  '゙, .\
 /     ヽ、     | |:::::::::::::::::::::::::::::::::::.|:半:|.ト、    \
  / / 小 \    r¬|ノ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| \


921 :マロン名無しさん :2007/07/23(月) 02:32:46 ID:???
瑠璃はこのまま吉野君と逃げ延びて帰ってこなくって
残された高彬は二の姫と結婚(よくある振られた者カップル)
て感じかな

922 :マロン名無しさん :2007/07/23(月) 10:34:12 ID:???
>>921
二の姫のことすっかり忘れてた…
そう言えば二の姫が吉野君に一目惚れしちゃったことが
この話の始まりだったんだよな

923 :マロン名無しさん :2007/07/23(月) 11:22:54 ID:???
これはもしかしたら、壮大な瑠璃と吉野君の恋物語だったのかな。
前半には名前しか出てこなかった吉野君が
実はヒロインの最終的な相手だったなんて…。

924 :マロン名無しさん :2007/07/23(月) 20:00:27 ID:???
と思いきや権少将が真の相手

925 :マロン名無しさん :2007/07/23(月) 21:38:59 ID:???
そんな人もいたな<権少将
でも顔で失格だ

吉野君と瑠璃応援しようにも逃げ延びたあとが難しいな
三条邸放火犯だからパパンにはスポンサーになってもらえ無さそうだし
院のことは隠さないといけないんだろうし

926 :粗筋中将1/3 :2007/07/23(月) 22:10:22 ID:???
道は、火事の煙から逃れる里人でいっぱいだった。
「姫!これ以上進むのは無理です!」車を牽いていた者が瑠璃に言う。
車から降り、着ていた唐衣を脱いで袿姿になった瑠璃は言った。お前たちはもういいから御所に帰るようにと。
「これは大皇の宮の思し召しよ!今夜のことは忘れてもらうわ。いい?忘れるのよ!!」
下男たちは、瑠璃の言葉に黙って頷いて、車を置いて御所の方向に帰って行った。
残されオロオロしている牛飼童の胸元を引き付け、言い聞かせる。
「しばらくしたら、この袿をかぶった女がやって来るわ。たぶんひとりよ。
 そうしたらお前はその女をすぐにこの御車に押し込んで、宇治にある別院に向かいなさい!」
宇治に?と聞き返す牛飼童に瑠璃はそうだ、と繰り返す、
「そしてお前もすべて忘れるの。いいわね、忘れるのよ…!!」
はいっ!と強い返事を確認して、瑠璃は人の流れに逆行するように走った。
途中ぶつかった里人に、どこが燃えているのかと尋ねると、この先にある通法寺だと返ってきた。
役人がごっそりやって来て寺の門を打ちつけたと思ったら、小半刻もしないうちに火が出たのだと。
瑠璃は、煙の元を目指して再び走り出す。吉野君のいる通法寺へ。

通法寺は燃えていた。
周りでは、役人たちが右往左往している。瑠璃はその混乱に乗じ、火事で破れた門から中に入ることが出来た。
寺の中はさらに煙がひどい。
しかし瑠璃は、懸命に吉野君を捜した。部屋をことごとく調べ、その名を呼んだ。
いくつかの部屋を抜けたあと、開いた戸の中に、その人はいた。
「吉野君!!」
手を合わせ座していた吉野君はその姿に目を見開いて驚いた。「瑠璃姫…!!」
瑠璃は、吉野君の胸に倒れ込むようにしがみついた。
その首に腕を回し、泣きながら言う。「よかった…吉野君が…まだ無事で…!!」

927 :粗筋中将2/3 :2007/07/23(月) 22:13:02 ID:???
吉野君は信じられない表情で言った。「これは…夢ですか?どうして瑠璃姫がここに…」
夢ではない、助けに来たのだと瑠璃は言う。
「早くその墨染めを脱いで。あたしがそれを着て役人の目を引き付けるから、吉野君はあたしの袿を着て宇治の方に逃げるのよ!」
突然の瑠璃の言葉に、吉野君は、何をばかな、と袿を脱ぐ瑠璃の手を止める。
吉野君は覚悟していた。何人も殺めた自分は、その罪を償わなくてはならない。
そのために、この寺に籠められた時に、腹心の男に火をつけさせたのだと。
火はすぐに回るから、瑠璃こそ早く逃げろと言うが、瑠璃はだめだ、と譲らない。
「こんなとこで死んじゃだめ!吉野君が死んだらみんな苦しむわ。院だってお悲しみになるわ!」
瑠璃の言葉に吉野君は困り、微笑を浮かべるしかなかった。

瑠璃は、大皇の宮から預かった布の守り袋を吉野君に差し出す。院が今までずっと、片時も離さなかったものだ、と伝えて…

はらはらと、子供の髪が落ちて来た。

「わたしの…髪?わたしが、剃髪した折の…」
守り袋の中身を知ると、吉野君の頬に涙が流れた。
「院が…これを片時も離さずに…これを…」
ぎゅっとその髪を握りしめ泣く吉野君を瑠璃は抱き締めた。
「院はね、正良親王を出家させる時、初めて吉野君が院を恨んでいた事を知ったって仰せられてたわ…わかってあげて、吉野君…」
瑠璃は吉野君に語りかけた。正良親王の出家後、すぐに譲位したのも、吉野君に対するせめてもの気持ちだったと思う。
病がちでだったのも、心を痛めていたからだと…
「…わかっていました。私にも」
吉野君は瑠璃を抱き締め返した。

928 :粗筋中将3/3 :2007/07/23(月) 22:14:56 ID:???
「いつまでも、11歳のままの子供ではない。
 父帝の帝としての御立場や、宮廷での複雑な人間関係が、人の心だけではどうにもならないのだとわかっていたのです…」
けれど、わかっていても許せなかった。すべてを失ってしまった吉野君には、
何もかもをその手にできる兄宮の鷹男を怨む以外に救われる道はなかった。
そして、幼い正良親王を落飾させよと命じた兄宮の言葉は、
やはり何も知らぬまま落飾させられた吉野君の孤独と絶望を、再び目の前に叩きつけたのだった。
「もう…わたしにはどうにもならなかったのです…!」
吉野君は静かに語り、静かに泣いた。

「…そうよ吉野君。吉野君は、鷹男の帝を怨んでもいいの…!
 だから、そのためにも生きて!鷹男を怨み続けるためにも生きなくちゃだめ!!」
瑠璃はそう言って吉野君を励まし、自分の袿と交換するために、着ている衣を脱がせようと手を掛けた。
しかし、墨染めの衣の下は、右肩から包帯が巻かれ、血が滲んでいる。
それを見た瑠璃に続ける言葉はなかった。吉野君は肩を押さえ言う。
「おわかりでしょう瑠璃姫…この傷では、とうてい遠くへは逃げられない。だから、瑠璃姫は逃げて―――」
吉野君は言い終わる前に、貧血で瑠璃の腕に倒れ込んだ。

瑠璃は吉野君に、死んではだめだ、と力づける。瑠璃姫…と吉野君は再び瑠璃の腕に支えられ語り始めた。
吉野君が新帝鷹男の命を狙ったのはたぶん、今までの怨みでも正良親王のことが原因でもなかったのかもしれない、と。
「東宮が姫を…瑠璃姫の入内をお望みになっているという噂を耳にして…それ故にわたしは鬼になろうと思った。
 あらゆる幸福をその手にすることのできる兄宮…その兄宮が今度はわたしの姫を…
 大切な思い出の中の姫君さえ手に入れてしまうことがどうしても許せなくて、わたしは心底東宮を憎いと思ったのです…!!」
吉野君は絞り出すように瑠璃に胸の内を語った。
そのために何人も殺めた罪は償わなければならない。その覚悟は出来ている。
瑠璃こそ、火が回らないうちに早く逃げるのだ、と説得する吉野君に瑠璃は言った。
「だめよ!こんなとこで死なせやしないわ!
 鬼になった以上、吉野君は鬼として生き延びるのよ…!」

929 :マロン名無しさん :2007/07/23(月) 23:22:43 ID:???
胸倉を高貴な女房に掴まれて牛飼童もびっくり

930 :マロン名無しさん :2007/07/23(月) 23:23:55 ID:???
院…(つд`)
吉野君を本当に思ってたんだね

931 :マロン名無しさん :2007/07/23(月) 23:26:00 ID:???
吉野君の瑠璃への愛の告白キター
いやいやいや、怨みは捨てようぜ
生きる気力のためでもさ

932 :マロン名無しさん :2007/07/23(月) 23:28:22 ID:???
美形な吉野君なら女の振りして違和感ないな
てか、本当に白拍子と舞姫状態
肩の傷のせいで高彬はすっかりひどい奴ポジション

933 :マロン名無しさん :2007/07/23(月) 23:31:08 ID:???
これで吉野君は連続放火魔

934 :マロン名無しさん :2007/07/24(火) 00:05:28 ID:???
ごめ…号泣°・(ノД`)・°・

935 :マロン名無しさん :2007/07/24(火) 00:06:44 ID:???
泣いた

936 :マロン名無しさん :2007/07/24(火) 00:46:27 ID:???
切ないなー

吉野君ひどいことしてるんだけど自覚して覚悟しちゃってるし
院は吉野君の髪をずーっと持ってたんだし
責め立てる相手がいないしやりきれないよ!

とりあえずザックリ斬り付けた高彬はヒドイってだけだな

937 :マロン名無しさん :2007/07/24(火) 06:31:19 ID:???
牛飼童かわいいよかわいいよ牛飼童

938 :マロン名無しさん :2007/07/24(火) 06:43:00 ID:???
だめだ、泣けて仕方ない…

939 :マロン名無しさん :2007/07/24(火) 07:05:02 ID:???
腹心の男というのに女以外に男の仲間もちゃんといたのかーと思った。


940 :マロン名無しさん :2007/07/24(火) 10:21:23 ID:???
吉野君なら男も手玉にとr

941 :マロン名無しさん :2007/07/24(火) 12:42:01 ID:???
>>940
思っていても、敢えて口にはしなかったことを・・・w

942 :マロン名無しさん :2007/07/24(火) 15:15:19 ID:???
だって吉野君は坊z(ry

少年僧の時はイロイロ苦労したんだろうな…美童だし。
二の姫に口封じ(ちゅう)なんて、なんてことなかったんだろう。

943 :マロン名無しさん :2007/07/24(火) 15:42:23 ID:???
だけど瑠璃とは何も無しか…
これからあるかもw

944 :マロン名無しさん :2007/07/24(火) 22:08:34 ID:???
何もなかったからこそ、掛け替えのない思い出として残っていて、
入内の話で必要以上に思い詰めちゃったんだな…。

945 :粗筋中将 :2007/07/24(火) 22:13:12 ID:???
少し早いですが、思い切って新スレ立てました。移動お願いします。

なんて素敵にジャパネスク連載中 第2帖
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1185282201/

―以下楽屋裏―

946 :マロン名無しさん :2007/07/24(火) 22:20:56 ID:???
>>945
乙ですー。

このスレをきっかけに読み返して
またボロボロ泣いてます。
いよいよ吉野君編クライマックスで楽しみ。

947 :マロン名無しさん :2007/07/24(火) 22:36:05 ID:???
あらすじさんいつも乙。

連載スレに参加すると新たな発見が多くて楽しい。
メインもメインのキャラなはずなのにそのわりには出番が・・・とは思っていたが、
高彬がこれほど哀れなキャラだとは思っていなかったw

948 :粗筋中将 :2007/07/24(火) 23:30:39 ID:???
ひとまずお疲れ様です。
みんなよくも私の好きな高彬をあんなにコケにしてくれましたねw

新スレ移動少し早すぎたでしょうか??
でも今日更新分をスレ数確認しながら語るのも…と思ったので、50レス以上ある楽屋裏をみなさん優雅に埋めてくださいw

今後の予定としては、吉野君編終了後、一日ほど息抜きを入れて、ミステリーへと進むつもりです。
ミステリーの後の「 あ の 人 」編は、一人称でないと進められない回があったので、ご了承願います。

あと、小萩編はいつ入れたらいいでしょうね?やはり連載当初と同じく一番最後か、
アンコール前に入れて、木の香も新しい三条邸を一番最後にしてしまうか…

眠くて文章が変かもしれませんごめんなさい

949 :マロン名無しさん :2007/07/25(水) 01:13:28 ID:???
>>948
乙カレー。粗筋さんは高彬ファンでしたか…w
自分は特に誰ってのはないな〜。

950 :マロン名無しさん :2007/07/25(水) 01:26:59 ID:???
粗筋中将さまいつもありがとう

高彬はこのあとおいしいシーンが待ってるんだから落差を楽しませてくださいw

ところでミステリーで脱いでく扉絵シリーズ話題に出したら描写は可能?
リアル連載の時は3話めで気付いてニマニマしてたんだけどコミクスにないよね。
中将さまは扉絵収録してる画集はお持ちかな?



951 :マロン名無しさん :2007/07/25(水) 02:47:48 ID:???
粗筋中将さん、いつも楽しませて頂いてます。本当にありがとう!

952 :マロン名無しさん :2007/07/25(水) 03:35:55 ID:???
> ミステリーで脱いでく扉絵シリーズ

ΩΩ Ω<な、なんだってーーー!

953 :粗筋中将 :2007/07/25(水) 07:42:04 ID:???
>>950
>高彬が脱いでいくシリーズ
ふふふふふふふふふふふふふ
先日実家でぬかりなく確認してきたところです。お楽しみに(ニヤリ
とはいえ、文章表現になってしまいますが…

954 :マロン名無しさん :2007/07/25(水) 07:53:58 ID:???
>>952
同じく、ぬぁに〜〜〜?!!!(゜Д゜;)

花ゆめ購読者なので連載見てたけど、当時それほどファンではなかったから
全然注視してなかったよ(後日その面白さに気付いて、よく読むようになった)。

なんだろー。瑠璃との初夜にあわせた企画?>高彬の脱ぎ

955 :マロン名無しさん :2007/07/25(水) 09:15:20 ID:???
高彬の脱いでいくシリーズは、コミックス7巻の1/4シリーズで
山内さんがばらしてたよ。

自分もレスで話題にしようかと思ってたw

956 :マロン名無しさん :2007/07/25(水) 12:41:26 ID:???
文章表現に期待してますよ 粗筋中将さん ハァハァ…

957 :マロン名無しさん :2007/07/25(水) 14:01:37 ID:???
粗筋中将さんいつも乙です!

実家の漫画大量処分時に画集も処分してしまったことが悔やまれるorz
カレンダー4月にも使われた、吉野君(髪アリ)が桜の精のような絵が
とても好きでした。

958 :マロン名無しさん :2007/07/25(水) 15:01:29 ID:???
吉野君逮捕の時、高彬がなぜ吉野君が怪しいかと思ったくだりで
「スゲー、高彬有能!」とリア読者のときからこの年まで感動していた。

>>881で目が覚めた。

959 :マロン名無しさん :2007/07/25(水) 18:48:18 ID:???
>>958
原作者の氷室氏は、高彬が好きじゃなかったのかのぉ?(´・ω・`)
ヒーロー活躍の場であっても、よく読むと偶然の産物とは…w

960 :マロン名無しさん :2007/07/25(水) 19:00:18 ID:???
まずみんなに言いたい

高彬「こ れ で 気 が す ん だ か い」

961 :マロン名無しさん :2007/07/25(水) 19:12:56 ID:???
実際高彬を「結局ダメじゃん」とイジれるのも今しかないからなぁ。

いや、違う意味でイジれる時がくるか…w

962 :マロン名無しさん :2007/07/25(水) 19:26:10 ID:???
>>958
むしろ目を覚ましてやるなw

963 :マロン名無しさん :2007/07/25(水) 20:42:39 ID:???
高彬のこと好きだな
瑠璃にたいしてもっとヤキモキしてほしいって思いながら読んでた

964 :マロン名無しさん :2007/07/25(水) 21:59:31 ID:???
氷室さんと山内さんのあとがきと1/4でのやりとりは話題にしたかったけど
連載雑誌とコバルト文庫とコミクスの発行タイミング調べられず挫折。

氷室:高彬をもっと格好よく!みんなも抗議して!
山内:キタキタキター!高彬格好よくしたいなら活躍書いて!
氷室:ごめんなさい
氷室:帝になった鷹男や吉野君カコイイよ。やっぱり高彬をもっと格好よくして!

って感じでおもしろかったんだけどね


965 :マロン名無しさん :2007/07/25(水) 22:04:40 ID:???
確か、山内さんは高彬贔屓だったんだよね。
あのやり取りは面白かったなあ。

966 :マロン名無しさん :2007/07/25(水) 22:50:50 ID:???
他の作品の名前を出しちゃうけど、
BASARAスレも覗いてた自分としては、吉野君と揚羽の最後がかぶる。
どちらも具体的な生死がわからない。
心の奥底では死んでいるかもしれないと思う自分がいるけれど、
生きていることを願っている、みたいな感じが…

どうでもいいが、中学生の時友人と高彬派か鷹男派かで議論したもんだw
吉野君を挙げる人はいなかったな…

967 :マロン名無しさん :2007/07/25(水) 23:11:06 ID:???
いやー厨房にハゲの魅力はわかるまい。

968 :マロン名無しさん :2007/07/25(水) 23:24:50 ID:???
高彬や鷹男とは違う次元にいる感じがする>吉野君

969 :マロン名無しさん :2007/07/25(水) 23:47:39 ID:???
うん、自分は吉野君に萌えたが、
鷹男・高彬と同じ土俵で語っちゃいけないような気がしてた。

970 :マロン名無しさん :2007/07/26(木) 00:09:35 ID:???
反対側の別次元にいるのは守○か?

971 :マロン名無しさん :2007/07/26(木) 00:25:15 ID:???
>>970
言えてるw

972 :マロン名無しさん :2007/07/26(木) 00:51:54 ID:???
もーりーはね…アレだもんねw

973 :マロン名無しさん :2007/07/26(木) 01:25:27 ID:???
おお結構埋まってきた。
埋まりすぎないうちに中将様からの宿題に手をつけない?

リアル連載の通り小萩日記で締めるか、
瑠璃アンコールで締めることにして小萩は先にするか。

自分は瑠璃姫にアンコールを最後にするに1票
ジャパネスクで一番の出来事は瑠璃の結婚ということで
オメ!の嵐でにぎにぎしく終わりたいよ

974 :マロン名無しさん :2007/07/26(木) 06:20:53 ID:???
賛成

975 :マロン名無しさん :2007/07/26(木) 10:37:48 ID:???
>>973
自分もそれがいいと思う。

976 :マロン名無しさん :2007/07/26(木) 13:59:50 ID:???
瑠璃姫にアンコールで〆に一票。
話蒸し返してしまうが私が厨房の時は
吉野君派(熱狂的)はたったひとりだった。
高校でも吉野君一筋ってまずいなかったなあ。

977 :マロン名無しさん :2007/07/26(木) 14:06:20 ID:???
厨房時代吉野君派だったよ。
たしかに周りにはいなかったw
百人一首で最初に覚えた2首は「吉野」が入ってるものだった。

978 :マロン名無しさん :2007/07/26(木) 14:53:45 ID:???
自分は鷹男派だったよ。

そして、>>973さんに反対の反対に一票。

979 :粗筋中将 :2007/07/26(木) 18:26:52 ID:???
了解しました、では、小萩日記は、アンコール前にやりますね。
みなさま回答ありがとうございました。

ジャパネスクは全部で80話近くあるみたいです。
で、本日投下分が46話。折り返してますね。
上手く2スレでおさまるか、3スレ目いっちゃうか…
3スレ行ったら思い切ってざちぇんじもやろうかなw
なので気にせずレスいっぱいください。
何か「こんなことして欲しい!」ってのがあれば言ってください。
応えられる限りやってみたいと思います。

あと、連絡なんですが、来週ひょっとしたら休載する日がちょこちょこ出るかもしれません。
その時は楽屋裏にも一言入れますが、ご了承願います。
ちなみに吉野君逮捕の日は「高彬カッコイイー!」でレスが進むと思ってました…

980 :マロン名無しさん :2007/07/27(金) 03:11:30 ID:???
>ちなみに吉野君逮捕の日は「高彬カッコイイー!」でレスが進むと思ってました…

粗筋さん、いつも乙!
そこが2chならでは…って感じもw
リア厨の時には気付かないストーリーも、何度も読み返し
2chでレス応酬してるうちに、思わぬ落とし穴が待ってることってよくある。
カッコいいと思っていたキャラがヘタレだったと気付いて
ニガワラしたことが何度あったことか…w

981 :マロン名無しさん :2007/07/27(金) 06:30:17 ID:???
粗筋様
 乙です。もう半分越えたんだ・・・。
次は是非「ざ・ちぇんじ!」お願いします。

 リア工だった当時は「高彬カッコイイー!」と思ってましたが、
今見返すと瑠璃にはいい迷惑だ。みんなの的確なツッコミに笑った。

982 :マロン名無しさん :2007/07/27(金) 10:03:03 ID:???
ちぇんじ!ちぇんじ!

すみれの兵部卿宮が好きだ!w

983 :マロン名無しさん :2007/07/27(金) 18:41:50 ID:???
>>982
お、俺はいつの間に書き込みボタンを(ry

984 :マロン名無しさん :2007/07/27(金) 20:11:56 ID:???
>すみれの兵部卿宮
あ〜、いたいたそう言うキャラ
確かに、いい味出してたw

昔は女東宮にムカついてたけど、今は結構すきだなぁ。
なんか、可愛い。自分が歳取ったせいなんだろうなぁ。

というわけで、粗筋様
スレの進度にかかわらず、宜しければざ・ちぇんじの連載もおねがいします。
щ(゚Д゚щ)カモォォォン

985 :マロン名無しさん :2007/07/27(金) 20:59:21 ID:???
粗筋さん乙
毎日楽しませてもらってる
みんなのいじりようが予想外で面白いよ

ちぇんじ、怒涛の展開だったなぁ…
綺羅君のおややの勘違いとか懐かしい

986 :マロン名無しさん :2007/07/28(土) 01:34:13 ID:???
ちぇんじの連載まで頼むのは失礼じゃないだろうか
まるで現状に不満があるようだ。相手の負担も考えよう

987 :マロン名無しさん :2007/07/28(土) 03:55:48 ID:???
>>986
>>979
ちぇんじの件は粗筋中将さん自身が言いだしたんだよ

988 :マロン名無しさん :2007/07/28(土) 12:58:17 ID:???
同時連載強請るのはどうかってことでは?
ジャパ終わってからなら大歓迎

989 :マロン名無しさん :2007/07/28(土) 18:01:44 ID:???
え〜と、ちぇんじの連載望んだ者ですが・・・
>>979の粗筋さんのお言葉にあまえてカキコしました。
現状に不満なんか全くないよ。そういう風に聞こえたなら申し訳なかったデス。
むしろ、ジャパネスク毎日本当に楽しませていただいてます。

それと、同時連載をして欲しいと書き込んだつもりも無いのですが・・・
そう感じ負担に思われたのだとしたら、この点もお詫びします。

アンドそろそろ埋め

990 :マロン名無しさん :2007/07/28(土) 22:16:30 ID:???
10

991 :マロン名無しさん :2007/07/28(土) 22:29:55 ID:???
ざちぇんじ、ジャパネスクが終了して自分に余裕があれば、ぼちぼちとでもやってみようと思います。
この先リアル生活がどうなるかはわからないので、希望的観測としか言えませんが、
ちぇんじ好きの方も多いようなので、前向きに頑張ります!

あと、本日の更新順番などいろいろgdgdになってしまいました。すいません…
長めに取った楽屋裏も残り10きりましたね。語ってくださったみなさんありがとうございます。
では、次は楽屋裏スレか、次スレが立った時の楽屋裏でお会いしましょうノシ

992 :粗筋中将 :2007/07/28(土) 22:31:48 ID:???
あ、>>991は自分です。今日はもうだめだ…

993 :マロン名無しさん :2007/07/28(土) 22:51:00 ID:???
 私も望んだ者ですが・・・もう半分終わったから、「次にお願いしたい」という
意味なんですがね・・・。次に書いた方もそうみたいだし、
「同時連載を強請る」ように見えるのがとても不思議だ・・・。

 と言うことで中将様、頑張ってくださいね。

994 :マロン名無しさん :2007/07/28(土) 23:56:46 ID:???
>>912
今までミスがなかったことがの方が凄いと思う
すぐわかる内容だったし、今日はゆっくり休んでください

995 :名無しさん@そうだ選挙に行こう :2007/07/29(日) 01:48:28 ID:???
おまいもゆっくり休めwww

このスレのおかげで自分が鷹男でも高彬でも吉野君でもなく瑠璃姫派である事を自覚した
くそう嫁になんていくなー。尼になろうよ尼に

996 :名無しさん@そうだ選挙に行こう :2007/07/29(日) 02:23:24 ID:???
おぉ大変だ、995が覚醒してしまった。w

>>992
粗筋さん、無問題ですよ〜
此の位ミスの内にはいりませんて
というか、御本人が自己申告しなければ
多分、皆、華麗に見て見ぬ振りしましたのにw

997 :名無しさん@そうだ選挙に行こう :2007/07/29(日) 11:52:50 ID:???
粗筋中将さん、いつも素敵な文章で読みやすいですよ。ありがとう。
アレくらいのミスは全く問題ないですから。

ちぇんじも気が向けばで結構ですよー。
とか言いつつ、心の隅っこで楽しみにしていますw

998 :名無しさん@そうだ選挙に行こう :2007/07/29(日) 14:42:31 ID:???


999 :名無しさん@そうだ選挙に行こう :2007/07/29(日) 14:45:00 ID:???


1000 :名無しさん@そうだ選挙に行こう :2007/07/29(日) 14:48:52 ID:???
(゚∀゚ )彡⊃ 高彬!高彬!!
  ⊂彡

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もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。


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